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こだま号の旅


 日本に電車が走り始めた歴史は意外と古く(と言いながらいつからなのか調べてないが),戦前でも都市部ではかなりの路線で電車が走っていた。しかし,自らが燃料を積んで走る蒸気機関車やディーゼルカーとは異なり,電車は全線にわたって電線を引いて電力を供給しなければならない。したがって,本来は近距離で頻繁に列車を走らせる必要のある所に適したものなのである。
 さて,東海道本線が電化されたのは意外と遅く,戦後の話である。戦後の復興が一応終わり,これから高度成長期に向かおうという時に東海道本線は電化された。そして,こだま号は東京と大阪をなんと6時間で結ぶ,夢の特急列車として登場したのである。
 やがて日本は国際社会に完全に復帰し,東京でオリンピックを開催するに至る。その頃既に東海道本線の輸送力は限界を超えていたため,オリンピックに合わせて東海道新幹線が開業した。東海道本線の特急列車は廃止され,こだま号の名は新幹線の各駅停車に受け継がれた。開業当時のこだま号は東京−大阪間を5時間で結び,現在は4時間10分で結んでいる。
 新幹線が出来る前は,東京から京都や大阪に日帰りで行くことは普通は考えられなかった。しかし今ではのぞみ号なるものまで登場し,半日程度の仕事なら日帰りが当たり前の忙しい世の中である。
 さて,たまには昔のこだま号のように,ゆっくりと関西に行ってみたいと思った方はこだま号で行ってみるのが良い。実は,往復こだま号のグリーン車に乗って,大阪のホテルに一泊とセットで,新幹線普通車の正規運賃程度で行ける方法があるのである(普通車ならもっと安いが,私は専らグリーン車を使うことにしている)。
 例えば東京駅10:10発のこだまに乗ろう。これなら早起きする必要はない。2階建てグリーン車だから見晴らしがいい。新横浜,小田原。この辺から旅情が出てくる。冬ならみかん畑を見て思わず食べたくなったりする。熱海は停車時間が短いので,みかんは三島駅で買うこと。
 天気がよければ富士山をゆっくり見よう。新富士駅が出来てから,富士山を見られる時間が長くなった。静岡を過ぎてお腹が空いてきた。掛川で暫く停まるが,この駅はホームで何にも売っていない。弁当を買うのなら,豊橋が便利である。9号車のすぐ前に弁当屋とキオスクが並んでいる。浜松で無理して買わなくても,ここでもうなぎを売っているし,他の弁当にも静岡方面の食材を使っていたりするが,大阪へ行く途中に豊橋で買った弁当にちくわが入っているのが何よりも嬉しかったりする。
 三河安城を過ぎて名古屋に着いたら既に1時を回っている。岐阜羽島,米原。冬なら雪の心配をするところであるが,大抵は数分の遅れで済む。京都,新大阪。14:20。はい,お疲れ様。駅のエスカレータでは,パリやニューヨークと同様,右に寄ること。
 ところで,以前上越線で特急「とき」を復活させて走らせたら大人気であった。新幹線の「とき」と「あおば」はどこへ行った? という話はさておき,面白い企画である。では,東海道本線でこだま号を復活させたらどうか? これはまったくもって不可能である。東海道本線はほぼ全線で10分に1本以上電車が走っている。ここに臨時の特急なんか走らせたら迷惑もいいところで,ダイヤが滅茶苦茶になってしまうのである。
 こだま号に似た列車を見つけた。大阪で飲んだくれて,翌朝東京で仕事の方は是非利用されたい。大阪駅0:37発寝台特急サンライズ号である。これには普通車指定席(毛布を被って寝転べる簡易寝台のようなもの)があって,まさにこだま号の料金で東京まで行ける。なぜかこの電車,昔の特急列車の色に塗ってあるし,二階建てなので先頭車両の顔がでかいところも,昔の特急列車を思わせるものがある。夜行なのでスピードはあまり出ない車両を使っていて,東京までは6時間31分。飲んだ後仮眠するにはちょうどいい時間である。


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