海南大付属高校。
その一隅に野望と正義に燃える男たちがいた。
扇子を手に、男が重たい金属の扉を開ける。
「戦いはまだですか、司令官!!」
「フハハ慌てるなレッド。まだ時間はある」
彼らは海南戦隊パープルズ。
表向きは普通の、全国屈指の強さとキャラの濃さを誇るバスケットボール部だが、実は世界制覇を目指す秘密バスケ組織でもある。
彼らの目標はあくまでも世界。
今年は最強のリーダーレッドが3年になり、さらに1・2年にも有能な選手が育っている。今年こそ、世界制覇に先立ち日本制覇をせねばならない。
だが、彼らにはその前にまずやり遂げねばならないことがあった。
それは、神奈川制覇。
海南大は、すでに16年連続県大会で優勝を収めている。つまり、神奈川では不敗なのである。
だが、近年、陵南、翔陽さらに今年は湘北など、軽視すべからざる実力を持ったライバルたちが、海南を王者の地位から追い落とそうと日々腕を磨いている。
しかし、まだ海南には、その前にやり遂げねばならないことがあった。
それは、体育館制覇。
ちなみに今パープルズがいるのは、学校側がわざわざバスケ部専用として建設した体育館である。しかし、彼らが秘密基地としてあれこれ改造してしまったため、もはやバスケの練習をすることは不可能になっている。
したがって、全国を制覇するだけの実力を身につけるためには、他の部活が使っている体育館をパープルズが制覇し、心おきなく練習する必要があるのだ。
司令官がパープルズに告げる。
「さて、今日の相手だが、てっきりハンドボール部が出てくると思って何も調べとらん。ガッハッハ」
「かっかっか、結構結構!!データ一切必要なし!ねーホワイトさん!!」
「おう」
やたら元気な1年生・パープルイエローに、Tシャツ姿のちょっぴり雅なパープルホワイトが、やる気のありそうななさそうな返事をした。
そして今日の対戦相手を倒すため、パープルレッドはパープル・高砂・ブルーとパープル・武藤・グリーンも連れて、体育館へと向かった。
「オレたちが練習するから、体育館を明け渡せ」
そう言って、相手を退去させることができたら彼らの勝ちである。
彼らはすでに、16日間連勝を続けている。
20分後。
「司令官、大変です!」
クラブハウスに残っていたオペレーター宮益が司令官に異変を報告した。
「どうやら戦況が思わしくない模様!ひとまずこちらへ引き返すとのことです!」
数分後、パープルズが帰還した。
パープルイエローは、苛立ちに苛立っている。パープルレッドも不機嫌そうな顔つきである。
「くっそう、いつもだったらレッドの“お前ら運動場でもできるだろう”の一言で楽勝なのによ」
グリーンがくやしげに言い捨てる。
「昨日のバトミントン部も、最後には快くグラウンドへ移動してくれたんだが・・・」
「顔はひきつってましたけどね。雨でしたから」
淡々と話すブルーに、ホワイトが静かに突っ込む。
「バレー部だったら余裕だったのによ・・・・」
イエローの口調も苦々しい。
「一体、今日の相手は誰だったんだ?バレー部じゃなかったのか?」
今まで沈黙の中にいたレッドが、ようやく口を開いた。
「女子新体操部です」
男子相手ならパープルズは無敵だが、女子相手になると分が悪い。
斬り込み隊長的存在のイエローも、レオタード女子が相手となるといつもの調子が出ない。
レッドはレッドで、
「え〜 ブラックじゃないんですか〜?」
と女子高生に言われてかなり不機嫌だった。
それでも一応「外で練習してくれないか」とは言ったものの、返ってきたのは完全に予想通りの答えだった。
「・・・・そりゃあ、新体操はグラウンドではできんわなあ」
さしもの智将・高頭もなすすべなしかと思われた。彼も、女子高生を敵に回すのは厄介だと判断したのである。
「今日は体育館は新体操部にやるか」
その時。
「やるもんか!!」
イエローが叫んだ。
「運動場でだって新体操はできます!」
「新体操をか・・・できるのか?清田お前に」
司令官の一言がイエローの表情を一変させた。
彼は、自分が新体操をする姿を想像した。
それは無理だ。
そう返事しようとした瞬間、レッドの力強い手の平がイエローの頭上に置かれた。
「できる!!よな?」
え・・・・・・?
「でなきゃ外す」
「できる!!やってやる!!」
思わず、イエローは力強く宣言してしまった。
もはや後には引けない。
その様子を見て、レッドは満足げにニヤリと笑った。
これで、彼が自らレオタードを着る必要がなくなったのだ。
さらにレッドは、部屋の片隅に立っていた男に声を掛けた。
「ホワイト、後半いくぞ。アップしとけよ」
「はい・・・・」
ホワイトは、普段通りもの静かに返事をした。だがその後、相変わらず静かな、だが自信に満ちた笑顔と共に言った。
「待ちくたびれましたよ」
なぜ、ホワイトが自信たっぷりなのか。しかも、なぜそんなに待ちくたびれているのか・・・・。
イエローは、一番仲の良かったはずのホワイトの笑顔を、急に恐ろしく感じた。
。
メイメイさん、ホントどうもありがとうございました〜!! 某アジア料理屋さんでのバカトークをこんな素晴らしい作品にまで高めてくださるとは!! 感服です!ってかあなたのことはもう勝手に「ネタクイーン」と呼ばせて頂きます(笑) (コメントは以上ヤブサカ) メイメイさんの聖闘士星矢サイト「香茗楼」はこちら! |