「桜木花道」という名前から、花道の家庭環境を考える。






  初めにお伝えしておきますが、これは、笑えるネタではありません。
  私たちのこのサイトで、こういった系統の文章は珍しいと思いますが、

    どシリアスです。

  花道ファンの方などにはちょっと悲しい表現もあるかもしれません。

  また「名前から設定を推測する」という荒技ですので、
  私自身もこれが正しいとは必ずしも思っていません。(特に前半の設定など…)

  また、この文章は、同人活動やネットでの創作活動などをなさっている方の設定を
  制限するものでもありません。

  おそらくこの文とは違うイメージをお持ちの方は多数いらっしゃると思います。
  もしこの内容がお読みになった方の考えとは違った場合でも、
  「まあそんなふうに考える人もいるかな…」と割り切っていただける、
  心の広い方にお読みいただければと思います。
  よろしくお願いします。








花道の家庭環境についてはさまざまな説があります。
1人暮らし説(母親は別の男性と再婚している、あるいは母親もすでに亡くなっている)、
父親が亡くなってから現在は母親と2人暮らし説、父親も健在説など。

実際井上先生がどのように設定されているかは明らかにはなっていないので、
どれが正解ということはないと思いますが、
今回、あえて「桜木花道」という名前から、花道の家庭環境を推測する、という
力技に挑戦してみました。



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17巻96ページで描かれた、倒れて苦しんでいる花道の父親。
1コマだけ父親の横顔も描かれていますが、
SDを何度も繰り返し読んでいるうちに、私にはふと1つの疑問がわいたのです。


 このお父さんが、果たして子供に「花道」という派手な名前をつけるだろうか? 


この横顔や髪形、服装を見る限り、このお父さんはかなり地味でおとなしそうな印象で、
とても「花道」という名前を付けそうなお父さんではないように見えるのです。
子供には例えば「慎二」や「謙治」などといった名前を付けそうなお父さんです。


では、「花道」という名前は誰が考えたのでしょうか?


その前にまず、原作での設定を考えてみると、花道は中学時代から、いわゆる不良生徒でした。
男の子が不良になるケースとしては、

家庭内で、父親の存在が薄かったか、
本人が父親に対してネガティブな感情を持ってしまったために、

幼年期以降、父親から自然に個性や男らしさを獲得していくことができなかった、
あるいは、父親から褒められたり頑として叱られたりする機会が少なく
(あるいは褒められたり叱られたりしてもそれに反発してしまい)
世の中のルールを学習することに失敗した、というような場合が考えられます。

自分が不良になって反抗することで、ある意味では、悪いことをすれば頑として
叱ってくれる、強い父親の態度を求めているとも言えます。
(これはもちろんケースバイケースで、一概には言えないのですが)


さて、花道という名前は誰が考えたのか。
ここからは私の推測になりますが、
お父さんではないとするなら、この名前を考えたのは花道を生んだお母さん、
あるいはその両親、などの可能性が大きいかもしれません。

花道という名前を付けたのが母親あるいはその両親であれば、
花道の父とは逆に、かなり派手好きで豪快な性格であろう、と思われます。

母親あるいはその両親が名前を考え、父親はそれに従った、という図式もまた、
花道の父親のおとなしさと、家庭内での力の弱さを示しているように思います。

では、花道の両親は、結婚した当時はどんな夫婦だったのか、と考えてみると、
穏やかな性格の花道の父が、花道の母が落ち込んだりしているときにも、
その優しさでおだやかに包み込むような関係だったのではないか、と
私には想像されます。

しかし…、幸せな生活は長くは続かず、母親は、徐々に地味な父親に対して
物足りなさを感じるようになり、ついには父を捨てて家を出ていってしまったのです。
そして花道は、「母親に捨てられた」という、これ以上ないほどの強い悲しみを受け、
そしてそこから、徐々に父親に対しては、
母親をつなぎ止めることができなかった弱い父親のようにはなりたくない
と思うようになり、そこから、極端な形で強さを求める不良の世界へと足を踏み入れ、
父親に対しても強く反抗するようになったのではないだろうかと思うのです。


しかし、花道は本心では知っていた…。

幼少のころから、父は自分をとても愛情深く育ててくれたということを。



父が倒れているのを見た瞬間、花道はそのことを全身で感じ、

なんとか父を助けたい!」 と心からそう思ったのだ。



しかし……、医者の助けを呼ぶために外へ出た花道は運命的な妨害に遭ってしまった。

もし自分が父に反抗して不良になっていなかったなら遭わなかったはずの妨害だった。



花道がそのことを思い出して涙ぐんでいること、 その経験を繰り返し思い出していたことが
安西先生を助けるのに役だったこと、などを考えると、
やはり花道のお父さんはその時に亡くなってしまったと考えるのが自然ではないかと思うのです。 
(これについては私の推測で、皆さんそれぞれ考え方があると思いますが…) 




    自分がもし、あの日あの高校生たちとケンカにならなかったら……


    自分がもし、すぐに救急車を呼ぶことができていたら……



    いや、それよりも、


    自分がもし、父親に反抗して不良になっていなかったら……




  自分は今一人ではなかったかもしれない……。



    こんなに早く自分の前からいなくならないでほしかった……



    でもそれも、自分のせいなのだ……




花道は、いったい何度そう考えただろうか。



そして、こんな思いも時折浮かんだろう…、




    父親は、自分を信じて助けを待ち、そして絶望しただろうか……



    せめて…自分は父親のことを決して憎んではいなかったと伝えたかった……





(もちろん、花道のことなのでこんなにはっきりと言葉で意識してはいないと思うのですが……。)






    ……………………………………………………………………………………





その後しばらくして、花道は神奈川県立湘北高校に入学します。

1巻では女の子にフラれたくらいであれだけ落ち込んでいる花道には、
過去にここまでの辛い出来事があったようには感じられないかもしれませんが、

幼年期以降、父親にネガティブな感情を持ってしまったために
父親から自分らしさ(よくアイデンティティという言葉で言われるもの)と男らしさとを
取り込みはじめることができなかった花道にとって、

その、自分らしさと男らしさを獲得するということは何より大きな課題で、そのために
「自分を認めて受け入れてくれ、なおかつ自分に男性としての好意を持ってくれる人
=『彼女』を得る」
ということが、男・桜木花道としてはその時期何よりも大きな目標だったのです。

中学3年間で50人に振られた、などという常軌を逸した数字も、今思えば、それだけ花道が
女の子から男としての好意を持たれたい、とあがいていたことがわかるのです。


そして花道は、晴子に一目惚れしたことでその兄の赤木剛憲と出会い、亡くなった父親とは違うタイプの、
断固とした意志と、はっきりした善悪の基準を持った「強い父親像」に出会います。

そして安西先生。花道は安西先生を「オヤジ」と呼び、花道にとって安西先生はまるで、
亡くなった、優しく穏やかだった父親のような、「優しい父親像」を果たしているのです。 
しかしことバスケの試合となると、すばらしい決断力と意志を持った「強い父親像」をも担っています。

そして、洋平や、副キャプテンの木暮は、花道にとって、優しく、そして「たとえ自分が
どんなことをしたとしても決して自分を見捨てない母親像」 となって、少しずつ花道を癒しているのです。 
また晴子も、花道の気持ちに決して気づかないことで、花道を拒絶することなく
つねに優しく励ます、という同様の役割を果たしています。 


(( ※もしこの文章から誤解されると困るのですが、私は、母親は子供に対して
叱ってはいけない、と言っているのではありません。 母親も父親同様、子供が悪いことをしたら
それは悪いことだと示さなければなりません。上のことはあくまで象徴的な意味で言っています。 
実際には父親も母親もバランスを取りながらどちらの役割も果たしており、父親も母親も、
子供が悪いことをしたら叱りますが、本気で子供を見捨てたりはしない、という安心感と愛着を
子供との関係の根底に築かなければなりません。))



そして、花道には、類い希なるバスケットの才能と、
さらに、流川楓という、お互いに向上していくための「終生のライバル」が与えられているのです。
 

ここまで花道にとって最高の環境がそろっていたら、
花道が、バスケットと湘北バスケ部とを愛さないわけがないではありませんか!

山王戦で花道が「オレは今なんだよ!!」と言ったのも、
このメンバーでの湘北バスケ部員としての1戦1戦が、
ほかの何を捨てても、花道にとって大切なものだった、

いうことではないでしょうか。


井上先生も、こういった、花道をとりまき援助している湘北メンバーの役割について、
(もし言葉で意識されていなくても無意識には)きっと了解されているのではないのでしょうか…?

そしてもちろん、花道以外の登場人物にも、それぞれのドラマが描かれているのです。


こうして考えると、スラムダンクというのはやはりすごいマンガですね……


……いつか、もし花道がバスケを辞めるときがあれば、すでに花道の心の傷はすっかり癒され、
人間として一人立ちできるほどに成長しているときなのでしょう……。





花道の幸せを、これからも1ファンとして祈っています。
















  ふ〜、最後までお読みいただきましてありがとうございました。m(_ _)m
  もちろんこの文章は私の個人的な考察ですので、違った考えをお持ちの方は
  たくさんいらっしゃると思いますが、そういう方向で考えてみるのもアリかな、と
  思っていただけるなら嬉しいです。

    は〜、このサイトで(少なくとも姉の部屋で)こんなまじめな文章は、
    おそらく最初で最後です。

    これからはまた今までの路線に戻りますので。m(_ _)m



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