Lv6:ガラクタの墓場・別ルート




別バージョン:Lv6:ガラクタの墓場
※アルトネリコ・サージュシリーズにおいて要となる、
対象の精神世界に潜る事によって、心の傷や悩みを通して絆を強くし、
内側から心に直接刺激を与える事で詩魔法を編み出す(心の深い所で発生するものほど強い)という設定の一部を使用。
(心の奥で生まれた魔法の方が強い→信頼関係が強ければ深層に潜れる→
→深く信頼する相手がいる方が強い魔法を習得可能。)

基本事項
・精神世界は複数の階層に分かれている。
浅いところは普段の意識に近い。
深いところには本人も意識しないような潜在願望などがある。
・各階層には、本人の精神の一面を現したその階層のぬしが居る。
顔は同じだが、一部分の抽出でしかないので言動や衣装が違う。
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精神世界へのダイブというものは、
深層に行けば行くほど、侵入者であるダイバーを迎え入れるホスト側は、
欲望や願望を剥き出しにする。
各階層に出現する、本人の一側面を具現化した階層の主も、
極端な一面を表したものが増える。
故に、双方の意思の食い違いや、対立というのはままある事である。
恋人である鴇環(ときわ)の審神者の深層精神に潜った山姥切もまた、
この階層の主である『鴇環』と意思が食い違っていた。
早い話が、自己否定と嫌悪を体現した鴇環には、
彼が恋人に向ける好意が通じないため、苛立っていたのであった。


彼女に辛抱強く言葉で言い聞かせるには、山姥切は冷静さを欠き過ぎていた。
ぼろを纏った、この精神世界の階層の主たる鴇環。
薄く開いた彼女の唇を奪い、舌を絡ませる。
「!」
さすがに身の危険を覚えて、彼女は思わず後ずさった。
すると彼が彼女を逃がさないように、すぐ背後の壁に押し付ける。
ぼろの隙間から、するりと手が入り込む。
「あっ、やぁ!」
「……何もつけてないのか。」
大きく柔らかい胸が、直接手に触れた。それに驚いて、彼は目を丸くする。
この世界の鴇環の格好は、おおむね最底辺といって差し支えないみすぼらしさである。
しかし、まさかブラジャーが最低限の身だしなみから外されているとまでは、思っていなかった。
彼は、あれを現代女性の必需品と認識していたから、なおさら驚く。
「――まあ、いいか。」
どういう心理でブラジャーが消えたかは、彼にとってはこの際どうでもよかった。
いつもよりも脱がせやすいという事でしかない。
ふにふにと隙間から片方の胸を弄びながら、唇を再び合わせる。
抵抗らしい抵抗はない。
それをいい事に、山姥切は彼女の服を剥ぎ取った。
幸いこちらは存在していたパンツも、同様に取り去る。
隠すものが一切なくなった傷だらけの体。
一瞬抱く事にためらいを覚えたが、腹を決めたからにはやり通さなければ意味がない。
最初に腰を抱いて引き寄せた時、痛がるそぶりはなかったのだから、大丈夫なのだろう。
骨ばった手を、鴇環の足の付け根に伸ばす。
辿りついた目的の場所は、恋人の愛撫により、とろりと蜜で潤っていた。
指で中を軽くほぐすように撫でれば、はしたないほどあっけなく蜜が滴り落ちる。
もうすぐにでも、男を受け入れられるほどだ。
自虐的な一面の表出といえども、ここは本能に近い領域の一部。
普段以上に快楽に弱いのかも知れない。と、彼は推測した。
だがこの際、理屈はどうでもよかった。
「これなら大丈夫そうだな……。」
独り言のように呟く。鴇環が求めているのなら、彼には都合がよい。
山姥切は己の装束を最低限だけ緩めると、一息で己の猛りを押し込んだ。
「やっ、ああん!だ、だめぇ……。
わた、し、こんな、愛してもらう資格なんてぇ――ん!」
この期に及んで自虐に走った言葉を、みなまで言わせる前に山姥切は手で塞いだ。
ぎらぎらとした翠玉の瞳には、情欲と同じくらい苛立ちの色がある。
「俺がどれだけ想っているか、分からせてやる。
あんたが音を上げるまで、ここを満たしてやるからな。」
「そんな――あんっ!」
彼が下腹部を撫でてやれば、柘榴石の目には、怯えに期待の色が混ざって浮かぶ。
彼女の女の部分は、喜色と共にきゅんと鳴く。
現実の世界で恋人との閨事を知る彼女は、心の中であっても彼を拒めない。
エゴが剥き出しになる心の世界では、理性で押さえられる本能もまた強かった。
生物として根源の欲望たる、三大欲求に結びついているのだ。
それは承認欲求や自尊心など、二次的とされる欲求を上回るほど強い。
恋い慕う男から与えられる快楽なら、容易に屈するのも当然かもしれない。
「堕としてやる……。」
狂気を孕んだ言葉さえ、今の彼女には媚薬だった。
故に、あえて宣告する必要さえなかったのだが、山姥切は気付いていない。
彼が鴇環の腰を容赦なく揺さぶると、きゅうっと媚肉が彼を締め付ける。
「ひぃん!あっ、あん!い、いい……の。」
瞬く間にただの雌に堕ちた女は、恋人の広い背に縋りついて嬌声を上げた。
―ここの時間は、現実とは連動しないんだったな……。―
精神世界での体感時間は、肉体がある現実世界とは時の流れ方が違う。
その時々によって、如何様にも変わる。
それは、今ほど好都合に感じたこともないなと、
山姥切は彼らしくもない嗜虐的な笑みを浮かべた。


この後、現実世界に戻ってからのこと。
別の日に、鴇環は山姥切の主人である火輪の審神者と共に、審神者の町のカフェに来ていた。
「あんた、最近ちょっとは自信ついた?」
「え?いえ……全然ですけど。
頭が痛い事も多いですし、うまく行かない事もたくさんだし……。」
「そっかー。いやー、あいつがさあ。」
「国広さんが何か?」
「余計な事をそんなに言わなくなった気がするーとか、そんなん言ってたんだよね。
でも、あの時完了のシグナル出てなかったからさ。」
前回のダイブの際は、双方から発せられる精神波動が、一時大きく乱れた。
これ以上乱れたら危険なので、別のダイバーの割り込みか、
あるいは強制終了かという局面だったのだ。
もっとも、すぐに山姥切の波形に鴇環のものが同調するように収束したので、
そのままダイバー側であった山姥切が精神接続を切るまで、外野は待機していたのだが。
そして結局、より深い階層に進めるようになる兆候がないままに終わった。
「そうですよね。でも、何か……その、不思議なんですよね。」
「何?あいつの前限定で、自虐する気分じゃなくなった?」
「そうなんです。何というか……嫌な予感がするって言うか……。
あの時、心の中で何かあったんでしょうか。」
もちろん、山姥切に鴇環が失敗を愚痴としてこぼす事はある。
すると、優しい彼は不器用なりに慰める。
むやみに卑下するなという趣旨の言葉をかけることもある。
以前までの鴇環は、慰めを受け入れる心境になれずに、それについつい自虐で返してしまった。
それが最近、自虐が喉元まで出掛かると、妙な予感がして口をつぐむようになっていた。
「うーん、あっちの事は、直に見てきたまんばさんしか分かんないからね〜。
でも、喧嘩とかじゃないの?
だってさー、深いところだとよくダイバーと喧嘩になるらしいじゃん。」
精神世界は、表層ほど理性が強く、深層ほど欲望が強くなる。
先日鴇環が山姥切を迎え入れたのは、まさにその深層である。
理性の抑えがない、本能と欲望剥き出しの状態なので、
ダイバーと意見がぶつかり、口論になるのは当たり前だ。
これは、ダイブの事前説明でも案内されている。
「あー……じゃあ、そこで怒られちゃったのかもしれないです。」
「ふーん。ま、ほんとの所はどうだか知らないけどさ。
怒られて直すんだったら、あんた根っから素直ないい子って事じゃん?」
心の中でのやり取りの影響は、表層意識に与える影響がとても強い。
きっと、自虐を諌められた影響だろうと、火輪は見当をつけた。
「ええっ?!そ、そんな事ないです……。
根っからいい人って、そもそも怒られる事言わないですもん!」
「まったまた〜。あんたはガチでやばい奴知らないねー?」
のんきに戯れる2人は、真相など露知らず笑っている。
本当のところについては、もちろん知らぬが花である。


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インク壷に置いてあるものの別バージョン。
心の中で何をやってるんだろうって気もするけど、多分気にしてはいけない。