5.大使室から

(3)大使短信

 (ル)広島とオマーンを結ぶ学生達

夏休みも明けた9月、私のところに挨拶に来たいという広島の学生さん達がいるとマスカット市内で学校を経営する日本人女性アル・ムダッファル女史のオフィスから連絡が入りました。訳を聞いてみると、この夏に日本を訪問したバドル外務省事務総長が広島・オマーン友好協会を訪問した際に青年交流が話題となり、その後すぐに友好協会で選抜された2人の若者が同女史の学校に送られてきたとのことです。若者同士の交流を通じた両国の相互理解の促進は、常々バドル事務総長が口にしていることです。でも、後日同事務総長から聞いた話では、この招待計画はその場でひらめいたそうです。わずか2ヶ月余で計画が実行に移されたのですから、随分迅速に手続きが進んだものです。

2人は、高校2年生の佐衛田祐弥(さえだ・ゆうや)君と中学3年生の迫田帆夏(さこた・ほのか)さんです。佐衛田君には、オマーン訪問経験があります。長期の留学は初めてなのですが、オマーン人男性の着る民族着ディスダーシャがもう板に付いています。迫田さんは、オマーンは初めての外国だそうで、何もかも新鮮に映るものの、未だ言葉の問題があって現地校の人々とはコミュニケーションが難しいため何かとフラストが溜まるとのことでした。アル・ムダッファル女史の学校は、最近中東地域でも注目されている日本式の教育法を導入しており、礼儀や躾を教育の場でも重視しています。2人は日本式の鍛錬には慣れているでしょうが、文化を異にする現地の学生達と一緒に学ぶことで新たな経験を積み重ねて行くことになるでしょう。先日、バドル事務総長への表敬訪問を終えたとのことですので、これから本格的な勉強が始まります。

ところで、広島とオマーンとの結びつきが強まったのは、平成6年に広島で開催されたアジア競技大会を契機にしてのことだそうです。大会を前にして、県内の村々に各国から参加する選手の応援が割り当てられたのですが、安東(やすひがし)公民館がオマーン選手団の受け持ちとなったとのことです。公民館では、市民によって「オマーン面白ゼミナール」や「オマーン面白サロン」などが開催されてオマーンについて勉強する一方で、大会が始まるとオマーン選手団の入村式や交流会に皆さん積極的に参加し、オマーンの対戦するホッケーやサッカーの試合を応援したそうです。

アジア競技大会が終了してもこの交流は続きました。平成8年1月にはオマーン訪問団が実現し、これを踏まえて10月に広島オマーン友好協会が設立されました。今では、友好協会の会長を始め関係者が在京オマーン大使の開催するナショナルデーのレセプションにも毎年招待されているとのことです。在京大使の言葉を借りれば、広島オマーン友好協会は日本でもっとも活発なオマーンと関連した組織の一つだそうです。次の大使り、我が国とオマーンのことをお話ししたいと考えています。