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そんなナミさんの花屋が襲われた。相手はというと、当初はインテリ風の男だったものがお会計の段になっていきなり変化(へんげ)した怪人で、手から溶けたロウを飛び出させることが出来る………あいつでございます。(笑)
「これを食らうだがねっ。」
手榴弾のように投げられるロウの塊りへ、だが、臆しもせずに、
「やめてっ、お花が可哀想よっ!」
切り花たちをたわわに並べた店頭に両手を広げて立ち塞がる、エプロン姿も健気で気丈な女性こそは、あの喫茶店オーナーのサンジの奥さん。スタイル抜群で気っ風きっぷもいい、商店街のアイドル・ナミさんだ。
「デリケートなお花にロウなんかかけられたら、死んでしまうじゃないのっ!」
「どるどるどる、切り花はもう既に命を断たれておろうが。」
鼻先にて嘲笑するロウ男だったが、
「馬鹿なこと言わないでっ!」
むんっと仁王立ちになったまま、ナミは毅然と言い返す。
「この子たちはこれから、人を励ましたり癒したりする、間違いなく"生きてる"存在なのよっ!」
おおお、なんてドラマチックな展開でしょうか。
「それにっ。仕入れに幾らかかったと思ってんのよっ! 損害分はきっちり弁償してもらいますからねっ!」
「う…っ★」
「ああ、やっぱりナミさんだvv」
「そだな。性格を変えられる光線でも浴びたのかと思ったぞ。」
おいおい、ルフィ。素に返っとるぞ、あんた。(笑) 騒ぎを聞いて何とか近くまで駆けつけた二人は、物陰から様子を伺っていたのだが、
「あれはバロックワークスの超奇獣です。」
「やはりな。」
まあね。自然発生した怪人なんてもんは、そうそう居なかろうけれど。
「ほら、肩のところに"BW"の紋章が。」
「………。」
…だからさ。自然発生しないだろうこんな特殊な怪人、そうそう色んな組織出身のが乱立してる筈もなかろうに、どっか他のである訳がなかろうが。(笑) 生真面目なんだか、ちょっと抜けてるのか。融通が利かない天然さは、原作の某女性海軍曹長を思わせますが、そんなルフィが手に取ったのがあのヴォイドソードだ。確か微弱な電磁波が出るという、犯人撃退&防衛用装備。
「コマンド・チェンジして来ます。」
「ああ。」
お店の脇に路地から入って、裏口へと飛び込んで。周囲に誰もいないのを確かめてから………。
「こんの野郎がっ!」
愛する奥さんの実家を守るべく、怪人の手の先から噴出されるロウの塊りを、フライパンにて右に左にかっ飛ばしていたサンジであり…この急場にそんなもん持って来てたんか、あんた。
「サンジくん、危ないっ!」
こちらもフラワーアレンジメントに使うお道具色々、台座用にと水を含ませて使うベース用のスポンジだの、剣山大小だのを、手当たり次第に投げ付けていたナミがハッとして声をかけた。
「え? …っ!」
ここまでの攻撃で飛んで来ていたのは、お手玉くらいの大きさで半分柔らかなロウだったものが、
「うわっ!」
新たに飛んで来たのは、がっちがちに堅いロウの固まり。ガィーンンっと大きくも硬質な音を立てて、サンジの手からフライパンを弾き飛ばした威力は絶大。
「あ、あんなもんを食らったら…。」
ただじゃあ済みませんです。骨の数本は軽く砕かれるでしょうし、当たりどころが悪ければ…。
「さあ、観念するだがね。」
「くっ!」
フライパンを弾かれたその拍子に受けた、強烈なしびれが抜けない手を押さえつつ、それでもナミの前、庇うように立ち塞がるサンジへと、ドルドル男が両手を上げて見せる。手指の輪郭がとろりと曖昧に溶け出して、無防備になった相手へ、さあ柔らかいの堅いの、どっちを投げてやろうかと構えたその時だ。
「待てっ! バロック・ワークスの超奇獣っ!」
威勢のいい声が高らかにかけられて、
「なんだがね。」
怪訝そうに振り返った怪人の鼻先、宙を切り裂いてビシィッとばかり、吹っ飛んで来たものは。鋭い手際も見事な技にて、鮮やかに捌かれた電磁鞭の先である。したたかに打ち据えて、しかも先からは"ばちんっ"と音がするほどの高電圧が放たれたらしく、
「ぎゃっ!」
あわわと鼻先を押さえて後ずさりする怪人であり、あれほど熱いロウを自在に操れる奴が怯んだほどということは、
"…どこが微細な電磁波だ。"
あの何とかソードの変化した武器らしいのだが、下手なスタンガンより危ない電圧だということではなかろうか。少々、青ざめたサンジがそれでも"救世主"の登場に胸を撫で下ろす。
「な、なんなの?」
「何でもないですよ、ナミさん。それよか、今のうちです。」
場の迎えた新しい展開をよく判っていないナミさんを、どうどうどうと宥めるように店の奥向きへと押しやって避難させ、
"任せたぞ、ルフィ。"
ちらりと振り返った肩越しに見やったのは………路傍の電信柱の頂上である。
"それにしても…高いところが好きだな、お前。"
こらこら。この緊迫した場面に何ですかそのモノローグは、サンジさん。(笑)
サンジとナミが退避したのを見届けてから。怪人・ナンバー3を退治するべく、その真正面へと向かい合う。身に付けたるはあの奇妙なデザインのコマンドスーツとヴォイドソード。それから、サンジに言われて顔を隠すためにと装着しているフルフェイス型のヘルメット。これも"次空警察"の装備であったらしい代物で、スーツと同様、普段はベルトに連ねられたボックス内に分子状態にて格納されている。こういう…いかにもな装備を身にまとって現れたものだから。しかも、高い電信柱の上という、素人さんが忽然と現れるのは相当無理のある場所に、危なげなくも立っている彼だったりするものだから、
「あっ。」
「お母さんっ、あれだよっ。あれが、モンキィ=D仮面だよっ!」
「かっこいいねぇ♪」
通りすがりの子供達がやんやと騒ぎ、
「これっ、指さしちゃあいけませんっ。」
「見ちゃいけませんっ。帰りますよ。」
新番組の宣伝アトラクションかしらね、危ないわよね、困るわ、あんなのされちゃあ、子供が真似したらどうするの、と。お母様方には少々評判がよろしくないようだったが、それはさておき。
「哈っ!」
反重力装置が付いているらしき特殊スーツやベルトの力をふんだんに利用して、高々と宙を飛び、軽々と宙を舞う。物騒過激な攻勢を避け、先程のヴォイドソードを振るうルフィであり、
"DNA抹消の登録をなされていない奴みたいだな。"
ならば、触れたら消えるということはないがため、遠慮なく打ちすえての捕縛が可能な相手である。
"よしっ。"
続けざまに投げつけられるロウの砲弾を、右へ左へ素早く避けて、再び鞭の形状にしたソードにて、数字の"3"を象った奇妙な髪形をはっしと叩く。そこが触角になっているらしく、
「ぎゃぎゃっ!」
よほど堪こたえるのか跳びはねて逃げ回る怪人だったが、
「あんな小童こわっぱにやられる私ではないだがね。」
その両腕が大きく育って、
「ドルドルハンマーっ!」
「ぐわっ!」
ロウで大きくなった拳が不意を突くような素早さにて襲い掛かり、しかも…堪らず地に膝をついてしまったその足元に、すかさずというタイミングで溶けたロウが。
「しまったっ。」
「これでもはや逃げられなかろう。モンキィ=D仮面もこれまでだがね。」
確かに、これでは身動きが取れない。窮地に立たされ、大ピンチ。
「これで最後だがねっ。」
「………っ。」
襲い掛かった熱いロウ。
「あんなものでくるまれたら火傷どころじゃあ済まないぞっ!」
「ルフィっ!」
絶対絶命の大ピンチ。だが、そこへと閃いた銀の刃…。
「………あっ。」
「何だがねっ?!」
すんでのところで、足元のロウの枷を粉々に砕いて助けてくれた人がいる。ルフィを軽々と腕に抱え、傍らの電信柱の頂上に颯爽と立つ人物は、
「危なかったな。」
「あ、あなたはっ。」
◆◇◆
「………てぇーいっ、やめんかっ!」
「わわっ、何すんだよ、ゾロっ。」
「ああ、いートコだったのに。」
「うるせぇよ。俺をどんな訳の分からんヒーローにするつもりだった。」
あら、鋭い。(笑) 書きかけの原稿用紙を大きな手で没収した剣豪さんにむうと睨まれて、
「そんなもん、決まってんじゃん。モンキィ=D仮面のピンチにいつも現れる、三刀流の緑の戦士・腹巻きマン…あだだだ…。」
あははははvv ネーミングのセンスが今いちだったかな?(笑) 脚本担当の文豪ウソップさん、鼻を思い切り掴まれております。
「あんたもあんただっ! こんなふざけたもんに、一体 何KB使っとるかっ!」
そういう専門用語は使うなってば。(笑)
「離せって、ゾロ。あだだだ…。」
「そだぞ、いートコだったんだから。続きを書いてもらおうよう。」
「………ルフィ。」
その周囲では、他の面々が既に書き上げられた原稿用紙を回し読み中。
「………う〜ん。なんかルフィの性格設定が変じゃない? これ。」
「確かに、人から好かれるってのか、屈託なくて天真爛漫ではあるけれども…。」
「この描写だと…筆者がすっ転んでる某ジャンルのランニングバッカーくんみたい。」(おいおい/笑)
「そうだな。こいつがこんな謙虚な態度を通せるもんかい。」
「なんだと? 失敬だな。その言い方。」
「けどな、一応"次空警察の係官"っていう役回りだしよ。あんまり破天荒が過ぎてもなあ。」
「…あ! こら、ウソップっ。」(逃げられております/笑)
「そんな公安関係の人が戦闘コマンダーへ変身するの?」
「個人的な正義感からやれることじゃねぇだろうがよ。」
「でも…そうね。公安にこだわらないで良いなら、ゾロに当てた方がハマるんじゃないの?」
「悲劇を背負って、どっかで孤高な風来坊ってか。」
「怪人が暴れてても"助ける義理なんかねぇよ"なんて、可愛げのないこと言ったりしてね。」
「でも、実は義に厚いお人よしだから、結局は腰上げちゃったりするところとか。ほら、ぴったりじゃない。」
「お前らなぁ…。」
「いやいや、主人公はやっぱルフィに当てないと。」
「そだぞ。正義の味方の主役は、やっぱ俺がやんねぇとなっ。」
「う〜ん、ルフィに"二つの顔"なんていう切り替えが出来るもんかしらねぇ。」
「そうですね、園児たちの前でも構わずに変身しちゃいそうですよね。」
「…うう。」
「どした、チョッパー。」
「俺、少しも出て来なかったぞ。」
「ああ。だから、それはこれから出てくる予定だったんだよ。ちなみにチョッパーはモンキィ・D仮面の専属ドクターだ。」
「おおお、かっこいいぞっ♪」
「ロビンは?」
「やっぱ、悪の首領の側近だろう。」
「あらあら、随分なのね。(クスvv)」
「但し、虎視眈々と首領の隙を狙ってる。実は親の仇なんだな、これが。」
「…じゃあ"首領"ってのはワニ野郎なのかよ。」
「………。(し〜ん)」×@
「いや、だから。そこまでの設定はまだ考えてねぇって。」
「そっか、俺とナミさん、夫婦なのかぁ〜vv」
「あら、でも、実家に帰ってばかりの奥さんみたいじゃない。仮面夫婦だったりして。」
「こらこら、ナミ。お子様向けの健全なお話にそんなフレーズはよせ。」
……………で。
これのどこが"ウソップお誕生日おめでとう"SSなんでしょうか?
「え?」
「そうだったのか?」
「…お前らな。」
〜Fine〜 03.2.22.〜3.36.
*何か、確か去年のウソップBD話も、ご本人は出て来なかったような。
ごごご、ごめんね、ウソップ。
*ちなみに、
ルフィはコンパクトやバトンで変身する訳ではありません。(こらこら)
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