Albatross on the figurehead 〜羊頭の上のアホウドリ

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《前回までのお話》


 別次界への不法跳躍
トリップやそれに連なる犯罪を取り締まるべく、異次元世界"ラフテル"からやって来た"時空警察"の係官・ルフィくんという少年がいた。だがだが、任務中に不時着事故に遭い、次界転移に必要な指針"エターナルポーズ"が壊れてしまって、彼は元の世界へ戻れなくなってしまう。そんな彼を助けてくれたのが、アラバスタ保育園の園長・イガラムさんと、町の喫茶店のマスターのサンジさん。任務をおびた係官の失踪をまさか放置はすまいから、迎えが来るまでの間、この町で暮らすと良いよと、突然現れた彼の肩書きを考えてやり、支えてやってもいる。さて、そんな彼が追っていた連中は、どうやら組織立っての活動を繰り広げているらしくって。しかも、ルフィが不時着したあの保育園の近辺を探っている模様。そうこうする内にも、悪の組織の爆撃が始まってしまい、町は焦土と化し、混沌と無秩序に包まれ、ルフィは"賢者の石"を探して旅に出………。


  「おいおい、そんな話じゃあなかっただろうが。」

   あはは…、すんません。
(苦笑)


 襲い来るは、彼らの開発した"怪人"たちと、様々な謎と。イガラムさんやサンジさん、そして、謎の仮面の"お助けヒーロー"も、君を支えてくれるから。
(笑) あらゆる困難とと戦いながら、みんなの住む町を守る"モンキィ=D=仮面"を、みんなも応援してくれよな!


   ――― はい、アレの続編です。お覚悟を。





          




  「ふにゃ〜〜〜。」

 開始早々、気の抜けるような声を出す主人公へ、
「そうしょげるな、ルフィ。」
 カウンターに へちょりと突っ伏すようにして柔らかそうな頬をつけ、思い切りしょげている少年へ、通りすがりに…軽くとはいえトレイでポコンとその頭をこづいたのは、この喫茶店"バラティエ"のマスターのサンジである。金髪碧眼、長身痩躯。スリムな肢体に小粋なセンス。料理上手で笑顔が綺麗で、会話もなかなかに豊富とあって、近所の女子中高生たちの憧れの的にして、この商店街やご町内きっての美丈夫だが、残念ながら妻帯者だ、ごめんなさい。…いや、今はそれはともかく。
(笑) きれいな白い手で、さっきは叩はたいた黒髪をわさわさと撫でてやれば、
「だって、今度こそ捕まえられると思ったのに。」
 痛くはなかったらしいが、浮かない顔も変わらなくって。少ぉし長いめのショートカットの猫っ毛をカウンターに散らして、細っこい肩をすぼめている。すっかりと意気消沈したそのままに、どこぞへ沈んで行ってしまいそうなほどという風情にて、再び"はにゃ〜〜〜っ"と嘆く少年であり、
「しゃあねぇだろうが。」
 サンジとしても"良くやった"とまでは喜んでやれず、溜息混じりな声を返した。
「向こうさんが一枚上手なのはいつもの事だ。お前は一人だが、向こうは組織立ってるからな。あんな風に"お迎え"が来ちまってはな。」


  ――― そう。前回のお話の顛末が彼をこうまでヘコませているのだ。


 ルフィは"モンキィ=D=仮面"に変身し、秘密結社"バロック・ワークス"が繰り出して来た怪人・Mr.3と相対したのだが、何とか追い詰めかかったところへ謎の"次元穴
(ディメンション・ホール)"が開き、相手にまんまと逃げられてしまったのである。相手のデータは殆どないため、どこに本拠を構えているのか、その陣容は?最終目的は?と、訊きたいことは沢山あるのに、いつもいつもすんでのところで取り逃がしてしまう。特に今回は、窮地に陥りかかった彼をすんでのところで助けてくれた人がいたのに…と、そんな助力まで無にしたような気がしてならず。それで尚のこと、しょげまくっているルフィなのでもあって。
「せっかく"○○○○"マンさんが助けて下さったのに。」
 ルフィの言いようを聞き咎め…火を点けていない煙草を口の端でぴんと立てつつ、サンジが小首を傾げて見せた。
「…なんじゃ、その"○○○○"マンさんってのは。」
「ほら、いつもボクの危機を救って下さるあの方ですよ。」
 危うしっという窮地に現れては、鮮やかに刃を振るい、助けてくれる"紫のバラの人"…もとえ、緑の腹巻きの人。
(ぷぷっ)スカーフなのかターバンなのか、仮面代わりに目許に布を巻いているせいで顔が分からず、素性も何も不明なのだが、立派な体躯に加えて、ルフィに劣らぬ運動能力の持ち主。しかも…どうやらルフィの味方ではあるらしい、という"助っ人"さんなのだが。
「あいつって、名前…ついてなかったか?」
 だって。前回の終わりを覚えてませんか? 演じてらした某男性が、名前がダサイから却下だと怒ってらしたでしょうが。
「…いや、名前にだけ怒ってた訳じゃ無さそうだったが。」
(あはは/笑)
 という訳で、只今募集中につき仮名という扱いをさせていただきます。
おいおい

  「ゾロも強情だよな。」
  「このままだと、アンパンまんとかバイキンまんとか呼ばれちまうぞ?」
   こらこら、この話の中ではあくまでも"謎の人"だろうが。
(笑)
  「だってサ。」
  「大体、我儘なんだよな、あいつ。こういう演技は苦手だ、とか言ってよ。」

   いいから二人とも芝居に戻りなさい。

「ともかく。今回も人的被害は出してない。それは偉かったぞ。」
「うう"…。ありがと。」
 やっとゆっくり身を起こして顔を上げたルフィの、その前のカウンターへと出されたのは温かなミルクティ、真ん中にジャムが埋まったクッキーつき。
「それにしてもなぁ。」
 ぽりぽりとヒマワリの形をしたクッキーを齧るルフィに、サンジはどこか感慨深げな声を出した。
「やっぱ、お前一人ってのは何かと不利だよな。」
「そうでしょうか。」
 頼りになりませんか?と肩を落とす少年へ、
「いや、そういう意味じゃなく。」
 サンジは指先に持った煙草をチッチッチッと横に振り、
「あんな怪人、何の武装もない自分たちでは手出しさえ出来ないから、大いに頼りにしているサ。」
と、言うべきことは言ってやってから。そのままカウンターの下から取り出した、お店のロゴの入ったマッチで紙巻きの先へ火を点けて、
「ただな。………園長先生から聞いたが、相手はどうやら、あの保育園近くに的を絞って来たらしいじゃないか。」
「はい。」
 一番最初、この少年が現れたのもあの保育園の裏手の路地だ。
「どうやら やはりあの辺りに、次元断層のほつれ目か何かがあるみたいなんですよ。」
 最初のうちは、その場所から離れない方が良いだろうからということで、保育園に派遣されているメンテナンスのお兄さんという肩書で出入りすることにしたルフィだったのだが、そんな彼が…一応は"時空警察の捕縛担当官"である人物がいるにもかかわらず、例の怪人たちもその近辺に頻繁に出没するようになった。
「どうやら向こうさんからも用向きのあるポイントらしいが、だとしてだ。やって来るのを迎え撃つってパターンはこれまでと変わらないながら、それが今までみたいに人の気配のない夜中ばかりじゃなくなるかもしれん。」
 これまでは…大々的に正体を現してこちらの警察や何かに追われたくはないのだろうか、あくまでも隠密裡という雰囲気のこそこそとした動きだったが、
「例えば、今回の襲撃だって。お前をこの商店街へ引っ張り出してる間に、別動隊が保育園を襲おうって段取りだったとしたら?」
「あ…っ。」
 弾かれたように顔を上げ、今初めて気がついたという表情になったルフィへ、
"…こんな初歩的なことにも気がつかないような素人同然の子供に、担当官やらせるってのはどうよ。"
 サンジはサンジで、今更ながらのそういう感慨を胸中に抱えつつ、ちょいとばかり…頭痛を覚えてみたりしていたのだった。



            



 まま、多少は大所帯らしいながらも、相手の目的が…今のところは人や物品の略奪だとか、若しくは騒動や混乱による秩序崩壊ではないらしいのもまた明らかなので、
『世界征服だの何だのっていう野望を掲げて、犯罪結社として大々的に名乗りを上げたなら、それこそお前一人でどうこう出来る次元じゃないんだし。』
 第一、そんな騒ぎが持ち上がったなら、警察や機動隊が黙っていないと思うの。
こらこら そこで当初の方針通り、やれることをこつこつと手掛けながら、ラフテルからの迎えなり連絡なりを待つという姿勢を確認し直して。
『あんまり思い詰めるな。』
 何でもかんでも自分のせいじゃないか、自分が至らないからではないのかと責任を感じて引っかぶるのは、見様によっては傲慢なことだぞと、少々乱暴ながらも励ましてくれたサンジであり、
『良い季節になって来たしな。気分転換に、出掛けて来な。』
 そう言って送り出してくれたのが、

  「どした? なんだか上の空だな。」
  「え? …あっ、あの。すみません。」

 前から声を掛けてもらっていた、サンジの友人・ゾロさんから、
『花見がてらハイキングに行かないか? 近くの山に穴場があってな。』
という打診があって。塞ぎ込んでばかりでは良くないからと、サンジが後押しする格好で、山ほどのお弁当を持たせて送り出してくれたのだが、
"…ダメだな、俺。"
 ゾロさんにしても、何だか元気がなさそうだからって気がついてて、早々とお昼ご飯にしてくれたり、一杯一杯気を遣ってくれてるのに。満開の桜を見上げても、甘い春風に頬や髪をなぶられても、全く好転の気配を見せない現状というものをついつい思い出してしまい、知らず知らず溜め息がこぼれる始末。

  「…なあ、ゾロ。」
こそこそ
  「なんだ。」
  「ハイキングとピクニックってどう違うんだ?」
  「ハイキングは徒歩旅行、ピクニックは野遊びって意味だそうだ。」
  「???」
  「だからさ、田舎道とかてくてく歩いて目的地まで旅行するのがハイキング。
   そっちは"歩くこと"がメインなんだが、ピクニックってのの方は、
   弁当を持ち寄って高原とか庭園とかで遊ぶことを言うんだよ。」
   お花見はピクニックで紅葉狩りはハイキング、と言えば分かりやすいでしょうか。
  「おおお、そうか。」
  「…分かったのか?」
  「何となく。じゃあこれって"ピクニック"なのか?」
  「だから。お前が元気ないからさ。
   このお兄さんが気を遣って、
   ハイキングだったのに予定変更してくれたってことならしい。」
  「あ、成程、そっか。」

    …話に戻れ。
(笑)

 ついついしょぼんとしちゃうけど、でも、それは甘えだよなと。見守ってくれる人がいるからこそ、物思いだなんて贅沢なことにうつつを抜かしていられるんだし…なんて思い直して。ふりふりと首を横に振って、しょげてる気持ちを文字通り振り払う。
「ごめんなさい。考え込むのって俺には何か似合いませんものね。」
 おむすびを片手に"くすす"と小さく笑うと、大きな桜のその花木陰、それは沢山の御馳走を広げられたビニールシートに、向かい合うように座っていた大きなお兄さんが、

  「そんなことはないサ。」

 響きのいい、優しい声音でそう言った。
「元気な方がルフィらしくはあるけどな。悩みとか躓
つまづきとかいうのも抱えるんだなって。何だか、これまで知らなかった新しい所を見せてもらえたみたいで、遠慮が一つ減ったみたいで嬉しいよ。」
 いつだって恥ずかしそうにしていて、大人しく振る舞う少年だったものだから。そうまで緊張しなくてもと思うほど、こちらからの話しかけやら視線やら、一生懸命受け止めてお返事するぞと身構えてる傾向
ふしの強い子だったから。そんな時とは打って変わって、ともすればゾロが傍らにいることさえ忘れて考え込んでた彼だったのが、何だか新鮮だと言ってくれる優しい人。

  「…前ん時はさ、
(再び こそこそ)
   俺が設定が大人しすぎておかしいってさんざん言われたけどさ。
   ゾロのこういう性格だっておかしくねぇ?」
  「そか? 俺だってこんくらいの気配りはすんぞ?」

 あんたたち…。
(笑) まあね。確かにね。

  《その涙が悲しみを消してくれるよ。さあ、お兄さんに何でも話してごらん》

とばかり。咲き乱れる桜の淡緋色を背景に、穏やかそうな笑顔でにっこり笑って両腕を広げてるゾロの図というのは、何だかちょっと…。(あちこちでPCがフリーズし倒すかも。)
「…あんたなぁ。」
 ごめん、ごめん。
(苦笑) 本筋に戻ろう。

「月次(つきな)みな言いようだけどさ。俺で良かったら相談に乗るし、手助けだってするからな。甲斐性じゃあサンジに負けないつもりもある。だから、何だって言ってくれな?」
「はいっ。/////
 あの喫茶店でサンジから紹介されたその時から、何故だかとっても大好きな人。大人びていて頼もしくって、何をやってもその仕草や身ごなしが無駄なく冴えてカッコよく、同じ男なのに見ていてポ〜ッてなっちゃうくらいに"魅せる"人。構ってもらえるのが嬉しくて嬉しくて、特別扱いしてくれるのがドキドキと光栄で、

  "…俺、ゾロさんに逢えたことだけは、この遭難に感謝したいなぁvv"

 こらこら、なんて事を言いますか、この子ったらもう♪






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