天上の海・掌中の星

    “昨夜はハロインだったので” 付け足り

         *いつぞやの“とある真夏のサプライズ♪”の後日談みたいなお話なので、
          別のお部屋のキャラが当然顔で出て来ます。悪しからず。



  ■ おまけ ■


宴もたけなわ…というと大仰ながら。
スパイシーな下味の利いた若鶏のから揚げに、
キュウリで作ったティースプーンへ、
1口ずつ乗っけられた趣向が楽しいポテトサラダ。
キクラゲをこうもりに見立てたあんかけ八宝菜が掛かった堅やきそばと、
コク深いクリームソースのまろやかな、熱っつあつのグラタンコロッケ。
イチゴや黄桃、キウイにマスカットという定番のフルーツのみならず、
カボチャや栗、サツマイモといった、
秋の豊穣をふんだんに使ったスィーツの数々…と、
随分と凝ったご馳走が居並び。
小さな聖獣のトナカイさんとそれから、
本来は姿を隠しておいでの風精や草精、
そちらもサンジの子飼いだというお客様、
本当はもっと大きい図体ならしい、
天聖界からお越しの、
そりゃあでっかいピレネー犬もどきも楽しげに同席しており。

 「サンジサンジ、こいつなんて名前なんだ?」
 「聞いて驚け、さくら3号ふんぼるてぃん・マルガリータ3世だ。」

どこへどう驚いたら良いんでしょうか、天巌宮の御曹司様。
(苦笑)
でっかい尻尾をぶんぶんと振るのへ、

 「お? やるか?」

至近まで進み出つつも、
ぶつからぬよう、さっさか避けて遊んでいるルフィとは違い、

 「………。//////////」

その純白の毛並みへ、
目許潤ませて見入っていたそのまま、
まふっとお顔を埋めての“〜〜〜〜vv”と懐いて見せたのは、
日頃の仔猫の性が為せる技だろか。
(う〜ん)
寡黙な剣豪も交えての、何とも楽しげに沸いているのを眺めつつ、

「ところで。」

賑わいへは傍観の態勢を決め込んでいた、黒髪の大妖狩り様が、
そんな自分と同じスタンスの、金髪の聖封様へと声をかけたのが、

 「記憶違いではないならば、もう一人いたのではなかったか?」
 「おお、さすがにあの場所塞ぎは覚えていたかね。」

さすがに気がつかないはずはないかと苦笑をしたサンジへ、

 「我らにあまり、いい感情をお持ちではないのだろうか。」

何しろ初見が初見だ。
勘違いとはいえ、久蔵があからさまに敵意を示し、
あわや斬り合いになるところだったほど険悪な空気を醸した間柄のこちらを、
今更 歓迎はしにくかろうと、
理解を寄せることへやぶさかじゃあないらしい兵庫だったのへ、

 「先日の逢瀬が原因でっていうんじゃないさ。」

ふふんと意味深に微笑った聖封さん。
ちらりと室内を見回してから、

 「ハロウィンだからってことは関係ないんだろうが、
  支度の途中で、ちょいと面倒な輩の波長を拾ってな。」

それで対処に出払っているのだと、
つまりは“お仕事”だと ぼそりと囁いたのと、

 「…………。」

十分 声はひそめたはずだが、
ひくりと細い顎を震わせ、
金髪痩躯の剣豪が自分の頭上を見上げたのがほぼ同時。
足元まで裾のある、濃色の長衣をひるがえし、
その姿がしゅっと消えたのへ、

 「わふっ、ばうわふっ。」
 「え?え? どしたフンボルテ。」

大きなわんこがやはり頭上へと吠え立て始めて。
それらから何が起きたかを読んだ兵庫とサンジが、
互いにお顔を見合わせた……のだが。
そんな彼らが後に続きかけたその出端を叩くよに、


  ――― ずんっ、と


やたら重々しい響きと共に、室内の空気へと圧力がかかる。
いきなり超高速で上昇を始めたエレベーターや絶叫マシンって、
こんな感覚がするんじゃないかと。
ルフィが後で語ったような、
一気に高々と持ち上げられたようなGが上から掛かったものだから、

 「わっ!」
 「な、なになになに…?」

ルフィとチョッパーがひしとしがみつき合い、
慎重なことも性分がお揃いだったか、
サンジと兵庫殿の双方共に、
後先見ないで飛び出せぬまま、周辺の気配を嗅いでいたところへと、

  ―― ばりん・がんっ、という

何かしらを叩きつけたような堅い炸裂音がし、
彼らの図上を覆っていたはずの天井が、ふるるっと一瞬たわんでから、
霞のように しゅわりすうと解けての消えてしまったのが何とも驚き。

 「な…っ!」
 「あ、ゾロだ。」

群雲から抜け出たばかりの月が、
宙空を翔っていた存在の手にがつりと握られた、
青白い刀身を冷ややかに濡らすようにして照らし出し。
結構な距離のある高みにいるのだろうそんな彼を、
だというのに、悠々と…余力さえ見せつつの勢いよく、
斜め後方から追って来ていた何物か。
太くて長い長い胴をどこまでも引きずりながら伸び上がっての、
食いつかんとしていた光景が、
突然、それも鮮明に、彼らの頭上へと晒された。

 「ふえ…っ。」

ひゃあと身をすくませた、ちょっぴり臆病なトナカイさんが、
でもねあのね、
自分を抱っこしていたルフィはちっとも怯えてなかったのへと、
ついのこととて気を逸らされた。

 だって、ルフィからだって大好きなゾロが大変なのに。
 あんなおっかないのに食いつかれかけているってのに。

なのに、真摯なお顔は揺るがずで、

 「………。」

目を逸らしもしないで一部始終を見守っており。
そんな彼の視線が一瞬、あっと弾かれたのは、

 「久蔵だ。」

そんな呟きを洩らしたそのまま、
破邪殿が立っていた天空の高みへその位置から、
風を切るよに こちらへ落ちて来た存在に気がついてのこと。
この居間にいたところから不意に姿を消した彼が、
何でまた、そんな遠くから落ちて来ているのか。
月を背に負い、影絵のようにしか見えない大妖狩りさんは、
彼もまた自分の得物だろう大太刀を抜いており。
それへと気づいた兵庫殿、彼もまた太刀使いであるらしく、
大ぶりで両手持ちなところはフランベルジュのような太刀を、
どこからともなく取り出したそのまま、
正眼よりも高いめの頭上より、上段へと構えやり。
何もないのに鋭く一閃、夜陰の中をかっ裂けば。

 「…………え?」

たちまち、彼の姿がやや曇ってしまい、
何が起きたの?と、一緒に見守っていたサンジの方を向いたチョッパーへは、

 「結界を咄嗟に張ったんだよ。」

やはり油断なく視線をそっちへ向けたまま、
口の傍に咥えていたたばこも、
まだ新しいのに抜き取ってのもみ消しながら、
金髪の聖封様がぼそりと応じた。

 「あんのバカヤロが、どでかいのを引き当てやがって。
  亜空へ送り返せないならないで、
  こっちの世界へ影響出さずに対処しなくちゃなんねぇだろが。」
 「う、うん。」
 「だったらだったで、俺を呼びゃあいいもんを、
  力任せの一閃で粉砕したれと思ったらしいが。」

何の抵抗もせぬままに、背中から落ちて来た大妖狩りさんは。
お仲間の彼が広げた結界の“分厚い”障壁に受け止められたか、
こっちからだと、まだあと少しはあった高みで、
ふわんと軽やかに弾んでから、その身を急降下から守られており。

 「あの剣豪が、大急ぎで自分の太刀を振るってくれたことで、
  剣圧って格好での盾を作ってくれてなきゃあ、
  ご町内 丸ごと粉砕されとった。」

 「…何だそりゃ。」

途轍もない力を持ってる自覚や自信はあっても、
それが周囲へもたらす影響を失念していたらしくって。
そんな彼らが見上げた先では。
最後の悪あがきで飛び掛からんとしていたらしい、
大蛇もどきの巨大な魔物が、
晩秋の夜空に、その輪郭をほろほろとほころばせての、
滅するところが望めており。
それが完全に溶け込んでしまうと同時、
透けてでもいたのかそれとも、亜空間へと一部が同化していたか、
夜空がまんま見上げられた天井が、
ふっと元の建材や内装の天井に戻ってしまう。
抜き身の太刀を下げていた久蔵も、その得物を宙空へと返していて、
はあと深い吐息をついてから、だが、

 「凄っげぇぞ。ありがとな、久蔵っ!」

ぴょいと、飛びつかれたことでは、
珍しくも おとととたたらを踏み掛かり。
ゾロんこと、助けてくれてありがとうと、
はしゃいでの抱きつくお友達の喜びようへ、
どう反応していいものかと、おどおどして見せていたものの、

 「……俺が行かずとも。」
 「そいでもな、
  あのままじゃあ関係ないとこも壊しちまって、
  あとあとでゾロがしょげちまうとこだった。」

おやおや、サンジさんが見越した顛末、
こちら様は既に把握していたルフィだったようであり。

 “そりゃあまあ、天聖翅翼の片方を預かってる身ですしねぇ。”

それを成長と言っていいものか、
無鉄砲をしなくなり、闇雲な同情をしなくなりと、
陰体との関わりようへも少しずつ進歩をしつつある坊っちゃんは。
ゾロの前身が駆使していた、仙聖最強の防御翼、
ただ単に霊力の容量がデカイからと預かれたんじゃあない。
それをその身に保有しても何の支障もないほどに、
意気地や何やという心のありようも、ずんと育っているからこそ、
受け止めることが出来たのであり。

 「ゾロが戻って来たらば、
  まずは二人で手際悪いぞってとっちめてやろうな?」

にししと悪戯っぽく微笑ったところもなかなかの進化?
そしてそして、

 「〜〜〜〜。////////」

こんな小さい子なのにまあと、彼もまた感心しきりだったのか、
真っ赤な双眸した大妖狩りのお兄さん、
ルフィ坊やをぎゅうと抱きしめ、
まとまりの悪い頭を“よしよしよしvv”と
撫でくり回したのは言うまでもなかったのでございます。


  とっちめる前に雷が落ちなきゃいいですね。
(おいおい)




  〜Fine〜  10.11.02.


  *破邪様の影が薄いような…という、
   Hさんからのご指摘があってハッと気がついた
   大間抜けなもーりんです。
   本誌読んでないなんて言い訳にもなりませんね。
   ゾロがいてこその
   お付き合いの始まりだったのに、(いやまあ、色んな意味で・
苦笑)
   その破邪様が出て来なかったとはねぇ…。
   ワープロを使うことなくの、
   PCで直に、
   ほぼぶっつけという打ち方をしたお話だったので、
   うっかりと忘れてたなんて、クチが裂けたら言えません。
(こらこら)

   とってつけたかのような書き足しですいません。
   こういうことだったということで、どうかよしなに。
   書き足しても影が薄いことに大差はありませんが…。
(こらこらこら)

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