規格外的恋愛に於ける etc.

      …に於ける、不思議な“もどき”
                    
 『蜜月まで何マイル?』より


このオマケは、不思議な“もどき”
 想像力が豊かというか旺盛な方であればあるほど、
  微妙なお話に読めてしまうかもしれないという、
  ええ、はい“微妙な”お話です。
おいおい

***

 本人、何故なのだかはよく判らないらしいが、喉が嗄れてひりひり痛むと訴えるものだから、
『お前は覚えてないだろうが、昨夜は出先で酔っ払って、さんざん大声で歌いまくって大変だったんだぞ?』
 ゾロはそんな風に誤魔化し、その傍らでサンジも頷いて後押しを忘れない。一応微妙に“共犯者”である。あんな詰まらんことの詳細、知らせなくっても良かろうから。で、船医に相談すると、風邪ではない喉頭炎ということで、
『これを舐めさせると良いぞ。』
と、差し出されたのが蜂蜜だった。途端、眸をきらきらと輝かせたルフィだったが、
「こらこら、お前に渡しとくと一気に飲んじまうだろうが。」
 何しろ彼の大好物。同じ大きさの金塊とチョコレイト、どっちを選ぶと問えば、まず間違いなくチョコレイトの方を選ぶだろう超甘党なだけに、壷ごと渡せばその日のうち、いやいや、瞬く間に洗ったように舐め尽くすこと間違いない。だがそれでは、炎症になじませて痛みを抑えるという目的には全然沿っていない訳で、
「だってよぉ。チョッパーが舐めて良いって言ったんじゃんかっ!」
 ゾロが取り上げて高々と頭上に避けた壷を、何とか取り返そうと相手へしがみついて躍起になる彼に、
「舐めちゃいかんとは言ってない。」
 隙を突いてがっしと捕まえると、そのまま膝に抱えてベッドに腰掛けて、
「俺が見てる前で舐めな。そうでもしなけりゃ、一気に全部いっちまうだろが。それじゃあ意味がないんだよ。」
 額同士をくっつけ合うようにして言い聞かせる。ダメだと言ってる訳じゃないのだというのをようやっと理解したらしく、うう"と唸りつつも抵抗をやめた船長殿であり。そんな様子へ息をつくような微笑い方をしたゾロは、
「あっと、スプーンを忘れたな。」
 辺りを見回したが、
「いらねぇよ。」
 ルフィは問題ないよと平然としたもの。
「んん?」
「いつも指で直に舐めてるもん。」
「…よーし。」


 蜂蜜は、馴染みの薄い方にはその粘度を水あめやシロップのようだと解釈されがちだが、実はそんなことはない。抽出した花の種類にもよるが、新しいものであればあるほど真水のようにさらさらで、ちょいっと指先で撫でる程度では指になかなか絡まず、掬いにくい代物なのだ。ゾロもまた“馴染みのない人”であったため、
「う〜ん。」
 何度かやってみて上手くいかず、口許を曲げたのも一時のこと。金色の蜜の中、根元近くまでとっぷりと浸した指を、やや鉤状に曲げて引き上げると何とか絡んだので、とろとろと滴
したたるものを壷を受け皿代わりに添えたまま、素早く口元へ運んでやる。
「ほら。」
「んvv」
 ルフィは嬉しそうに微笑って、唇の中へと迎え入れたその指を根元までちゅぷちゅぷと咥え込み、舌と頬肉とを指の周りへ隙間なくぴったり添わせるようにし、くちゅくちゅ吸い上げるようにしてしゃぶり始める。
「ん、ん…。」
 まるで赤ん坊が母親の乳に無心に吸い付くような懸命さであり、よほど美味しいのか、目許がいかにも悦しげな伏し目がちになっていて。
“こんな甘いものをなぁ…。”
 小指の先くらい小さなあめ玉でも難儀して持て余すゾロには信じ難いことだ。
「ん…。」
 その指先自体から蜜があふれ出ているのを、一滴たりとも洩らさぬように吸い上げているかのような。舌の腹の平たいところ全体で包み込んでいた指の側面を、時折、舌先を尖らせるようにして巻き上げながら舐め上げる。指は結構太くて、よって沢山からんでいた蜜は、だが、1分とかからず綺麗に舐め取られて味もしなくなる。自分から顔を引くようにして男の指を唇からちゅぷ…と解放し、
「ん、もっかい。」
 甘い声で子供のようにねだるものだから、
「判った、判った。」
 苦笑混じりにもう一度、指を壷へと突っ込んだゾロだ。左腕だけで少年の上体を支えるように抱きかかえ、その先の左手で持った小さな壷へ、右手の人差し指を差し入れる。丁度、ルフィをくるりと囲むような格好になり、目の前で匙代わりの指が花蜜に浸されるのをわくわくと見守る船長殿の、無邪気な期待に満ちた笑顔がなんだかくすぐったい。
「ほら。」
「んvv」
 金色の糸を受け皿代わりの蜜壷へとたらたら垂らす指を、待ち切れずか、自分の方から口で“お迎え”をするルフィであり、
「ん、んん…。」
 未練がましく長くしゃぶっていた最後には随分薄まっていた味が、元の濃いものへ跳ね上がったせいか、急いで迎え入れたその一瞬、かすかに眉を寄せて見せる。眉間を薄く寄せた後、んくんくと口の中で蜜を転がして濃さを調整してから、再び“ちゅくちゅく”吸い始める無邪気さよ。
“…くすぐってぇ。”
 伸ばした指の腹から背から、周りぐるりにぴったりくっついた頬肉や舌、濡れて温かな粘膜の柔らかな感触。頬をへこませるようにして“くちゅくちゅる”と吸い上げていたものが、喉近くの奥の部分で…所謂“舌鼓”というやつであろうか、強く吸った舌が離れながら“トゥトゥ”と鳴る。美味しくて仕方がないという陶然とした表情のままに吸い続け、少しすると薄い舌をくりくりと動かし始める。根元から先まで、太めの指の形状をそのままなぞってみたり。爪の間や長い指の節々の細かい窪みまで、余さず舌先で辿ってみたり。そりゃあ器用に舐め取って、もう気が済んだかなと思いきや、
「ん、んん…。」
 根元の股のところに舐め残しを察知して、舌先を尖らせ、ちろちろと攫おうとする。それがまた不意な刺激で、日頃くすぐったがりではないゾロには珍しくも“ぞくっ”とする感覚だったものだから、
「…っと。」
 びっくりしたそのまま、指を引こうとしかかったのへ、逃がすまいとルフィが両手で掴まえる。
「ああ、すまんすまん。退
かさねぇから。」
 くつくつと微笑って元へと戻したそのタイミングに、

  「…あのな。」

 声をかけて来たのは、渋面を作ったシェフ殿である。いつの間にか…2つのマグカップと山盛りのお手製マシュマロが盛られた大鉢とをトレイに載せて、部屋の戸口に立っていた彼で。甲板に出ていない二人に気づいて、わざわざここまで朝の“お十時”を持って来てくれたらしい。だが、
「いちゃつく時はドアを閉めとけよな。」
「いちゃつく?」
 それらしい揶揄には妙に敏感で、すぐさま眉間にしわを寄せて怖げな顔をするほど分かりやすい剣豪殿が、だが、今回は純粋に怪訝そうな顔になっただけだったから、本人、本気
マジでよく判ってはいないらしい。
“…ルフィはともかく、こいつまでそれってのは。”
 突っ込み甲斐のない奴だねぇと、サンジもまた眉を寄せてしまったのだった。


        ***


 さてさて、あっと言う間に月日は流れて。
「…あっ、こぼしちゃった。」
 とあるお宅のお茶の間では、今朝早く、家族仲良くご近所のイチゴ畑で摘ませていただいた瑞々しい旬のイチゴを“おやつ”にいただきましょうと、母御とお嬢ちゃんとがツタさんを手伝って準備中。
「あらあら、ちょっと待ってて下さいませな。今、ふきんを…。」
 飴色の光沢に包まれた広い角卓の上。涼しげなガラスの小鉢を並べていたお嬢ちゃんが、何かをこぼしたらしくって。
「はい、あ…。」
 それへとふきんを手渡そうとしかけたらしいツタさんの声が、何だか尻すぼみになって途切れたため、
“……?”
 一体どうしたのだろうかと、すぐ傍らの縁側で、こちらはお膝へと抱え込んだ坊やの足の爪を切っていた手を止めて、背後のどたばたを肩越しに振り返った父御の目に入ったのは。

  「………。」

 イチゴへとかけられてあったものが、傾いた鉢からでもこぼれたのだろう。その練乳のついたお嬢ちゃんの小さな指先を、少し尖らせた唇に半ばまで咥え込んで“ちゅくっ”と舐めていた奥方である。
「奥様、お行儀悪いですよ?」
 苦笑しながら、だが、さすがにお子達の手前もあってだろう、少々“メッ”という含みのある言いようをするツタさんへ、
「だって、練乳、大好きなんだもんvv」
 悪びれずに言ってのけ、えへっと笑う、相変わらずに無邪気な奥方であり、

   “…………そっか。そういう意味だったのか。”

 お…お父さん? 一体、何年後にピンと来てるんですか? 今なら判るような、何かしらの経験値がUPしたとか?おいおい(笑)


  〜Fine〜  02.4.21.〜4.30.


  *何だかちょっと恥ずかしい代物でしたが、
   いかがでしたでしょうか。
   何のこっちゃと思われた方はそのまま真っ直ぐでいて下さい。
   何だかちょっと横道に逸れてしまって“ぽっ”としちゃった方、
   いけないお話の読み過ぎかも知れません。(笑)

      さてさて、あれれ? ↓

  (実は今回、ちゃんとした?“裏”がありますのvv
   入り方は“いつも”とは違います。
   本文中のどこかからリンクを貼っております。
   お話の流れを辿って下されば、すぐに判る場所ですが、
   どうしても見つからないの…という方は、
   ご面倒でしょうがメールにてご連絡下さいませ。
    ヒント;今回は珍しいものを文中のレイアウトに使っておりますよね?) 



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