来訪者 unexpectedly visiter B
          お留守番U続き 〜蜜月まで何マイル?


          



 足を運んだ上甲板は、進行方向へと向かっている場所だから、そこからの見晴らしはただただ、海原の波打つ丘が延々と続くばかりの壮大なもの。暮色の名残りでほのかに明るいが、太陽は既
とうに水平線へと没していて、ここもやがては宵の夜陰に呑まれることだろう。凪の時間帯でさして風もないことから、この少女が飛び出して来た港町からはまだそんなにも離れてはいない筈。まだ自分のテリトリー内だという気持ちがあるからか、それともそういう方面への危機感どころではないくらい頭に血が昇ったままなのか、少女は勇ましく胸を張ったままであり、憤然としたままの強腰な姿勢を一向に崩さずにいる。愛刀を3本とも腰から抜いて外して、そのまま板張りへと腰を下ろし、刀たちは無造作に腰の傍、適当に並べて置いたゾロであり、特に無警戒な作法を取るでなし、だが、身構えるでもないいつもと変わらぬ態度でいる。そうなのだとは判らないだろう少女は、やっとまともに顔を見やすい高さになってくれた相手を、今度は見下ろす格好でむんと睨みつけ、真正面に立ったまま、おもむろに口を開いた。
「海賊だったのか、お前。ますます許せないっ! 兄が受けた恥辱、代わって私が晴らしてやるっ!」
 何しろ彼らの背後には、麦ワラ帽子をかぶったトレードマーク"ブラック・ジャック"が大きく描かれた帆が"で〜ん"と広げられているし、メインマストには"海賊旗(ジョリー・ロジャー)"がはためいている。ここへと辿り着く途中、弾き飛ばされた甲板に突き立っていた剣を…うんうんと懸命に引っこ抜いて腰の鞘へと戻していた彼女だったが、ゾロは全く意に介してはいなかった様子。今も、熱
いきり立っている彼女に涼しい顔のままでいて、その大きな両手も頭の後ろへ手枕にと回したままであり、
「正々堂々と、か?」
 さして感情も込めない声で訊いてみる。
「ああっ!」
 勿論だ、と、胸を張る少女だったが、
「その割に、さっきのは"不意打ち"だったよな。」
 確かに、ドアから出て来る気配をじっと息をひそめて窺って待っていての、待ち伏せ不意打ちであったような。ゾロの何げない指摘の鋭さに、たちまち顔を赤らめると、
「そ、それは。私はまだ子供だし、ここはお前のアジトだから…。」
「まあ、どうでも良いけどよ。」
 自分から話を振っておきながら、そんな風に言って、しかも"くすん"と笑ったのが、何だかからかわれたような気がしたのだろう。
「何が可笑しいっ!」
 少女は金切り声を上げると、ダンッと甲板を強く踏みつける。もうもう胸の中が混乱していて、ただただ眼前のこの男が憎くて憎くてしようがないというのがありありとしていて。怒りに震えそうになる呼吸を何とか"すうっ"と吸い込んで、
「あのアシュトラーマの武闘大会で、この何年かの毎年毎年、兄上がずっと優勝していたんだ。なのに、お前のような…どこの誰とも素性を明かせぬような馬の骨に負かされた。それがどれほどの恥辱だか。欠片
かけらほどにも誇りなど持たない、根無し草の無頼の者には判るまいっ。」
 彼女は一気にそうとまくし立てたのであった。


            ◇


 それはさながら、数百数千という人々が同時に見た"白昼夢"のような出来事だった。この海域では有名で歴史もある誉れ高い武闘大会に、いよいよの初陣という意味ではない"新顔"が一人か二人は参加することがあるのは例年のこと。通りすがりの渡り剣士などが、たかだか祭りのイベントと高を括って名乗りを挙げる。参加者はこんな田舎の平和な海域の兵士や剣士たちだ。本当に命を張って、人を斬ったことなぞ一度もなかろう連中だろうから、あっさり平らげることが出来ると小馬鹿にしてのエントリー。だが、そういう輩が一回戦を突破出来た試しは一度としてない。確かに、生命のやり取りをしたことがある者は殆ど居ないと言っていい。だが、なればこそ至高の理想を追求し、それを目指しての鍛練を積んで来た。崇高な魂は妥協を許さず、身を削っての習練を皆して怠らずにいる。日々欠かさず丹念に積み上げられた技と力と集中と。それらは、実戦を数多く体験して来たという強者たちにも引けを取らない、よくよく練り上げられた頼もしき武者たちを多数育んで来た実績あるものでもあった。

  ――― ところが。

 そんな強者たちが実にあっさりと敗れたのだ。まず最初に倒されたのは、いつも上位に勝ち上がる常連の武者。大きな体躯の槍使いが、あっと言う間に薙ぎ倒された。それも、素性の知れない、まだ若い青年にだ。
「何者だ、あれは。」
 参加者の登録は形式的なもの。先に述べたように他所の土地からの旅人などの"飛び入り参加"も受け入れているため、さほど厳密に素性を記せという義務はしいておらず、
「旅の剣士としか記されてません。」
「そうか。」
 最初の立ち合いで、いきなり場内からの注目を集めてしまった凄腕の謎の剣士。目鼻から下と頭とを黒いバンダナで包み隠してはいるが、防具は籠手一つつけないという軽装であり、使う得物は白鞘の日本刀が一振りだけ。だというのに、見ていた者たちの殆どが…毎年のこの催しのお陰で目が肥えている筈の観衆たちが、一体何が起こったのだが、すぐには理解出来なかったくらいの鮮やかな"瞬殺"で、屈強な槍使いを大地に叩き伏せてしまったのだ。
「これは侮れんぞ。」
 これまで参加して来た飛び入りとはどこかが違うと、一戦一戦重ねることにより、それもまたはっきりして来た。その切れの良い動きは、時に対戦相手のみならず、観衆たちの目さえ振り切る鋭さで、彼の動線を易々と陽射しの中へと溶け込まさせる。対手の懐ろ深く飛び込んだかと思った次の瞬間には、もう遠く離れていて。後には…頑丈な防具の上から急所を強く叩かれた相手が、意識なく闘技場の上へ倒れるばかり。
「見事な集中と判断力だ。」
「ああ。あれはやろうと思えば、鎧の上からでも、峰打ちであっても、背骨や腕の1本や2本、易々と砕けるだけの剣撃と腕前だ。」
 であるにも関わらず、そこまでするのは大人げないと、ここのルールに則ってきっちり割り切っている。
「あれほどの防具なしの身、ついつい防衛本能が働いて、強めの反射をなすものだろうにな。」
 これまでの飛び入り戦士といえば、どこか"勝てば官軍"という気配の濃い、胡亂
うろんな輩が多かった。だが、この剣士はそういった輩たちとは、どこか根本的な何かが違う。無手勝流ながら圧倒的な、その力の放ち方こそ、いかにも実戦で身につけたことを思わせるような、鮮やかさであったり爆発力であったりしはするものの、姿勢や態度が帯びている気配がどことなく違う。まるで彼自身が妖しく濡れた白刃のようにさえ感じられる、鋭角的なその存在感の中に、どこか…そう、自分たちと同じ、その覚悟の崇高さ、誇りというものを重々匂わせる。
「本当にただの"渡り剣士"なのだろうか。」
「ああ。もしかしたら、どこか名のある国の隠密か、身分を隠して修行中の高貴なお方なのかも知れぬ。」
 勝てば良い、倒せば良い、生き残れば良いという、卑怯・非情の世界を寝床にしていつつ、尚且つ、神や己に恥じない精神性を重んじるなど、どれほどの覚悟や気力の持ち主であろうと、どんな奇跡に守られていようと、そうそう出来るものではない。残念なことながら、世の中は道徳やモラルを必ずしも守っては回っていない。殊に、ただ今現在"英雄乱立時代"にある海の世界において、それこそが正道と子らに最初に言って聞かせる"正義・正当"やモラルは、そのまま"子供の理屈"扱いを受けるのが、認めたくはないが現実だ。そんな、最も油断のならない世界を恐らくは渡り歩きながら、それでいて…誰にも恥じることのない凛然とした態度を、ああまで保てるというのは並大抵のことではない筈なのだ。


            ◇


「確かに"只者"ではなかった訳だ。海賊だったのだからな。」
 大人たちが彼へと注いでいた評価なんか知らない。年に一度の晴れの大会、自慢の兄が人々から誉めそやされるのが、我がことのように誇らしくも嬉しくて。だのに。今年はこの得体の知れない怪しい男にその誉れを攫われたと、その途轍もない怒りが彼女をこうまで衝き動かしたのであろうと思われる。
「お前が台なしにした兄上の誉れを返せっ! 私の剣に斬られて、無様に命乞いをするが良いっ!」
 少女も多少は剣の覚えがありはするらしい。体に見合わぬ大きな剣でなければ、ちゃんと捌けるに違いなさそうで。それを見て取ったゾロは、だが、

   「兄上は何て言ってた。」

 不意にそんな声をかけている。よく通る声ながら淡々とした語調であったことと、そのタイミングが絶妙な間合いであったため、少女は気勢を制されて、
「何がだ。」
「俺のことだ。立ち会った後、何か言ってたのか?」
 問われた彼女は、
「…世間は広いなと。」
 ついのことだろう、すんなりと応じていた。

  『無頼の者にもああいう気概と腕前を持つ者がいるのだな。』

 負かされても平然と、自分の未熟さに苦笑する。ああ、なんと懐ろの深い立派な兄だと感動しつつ、そんな兄に恥をかかせたこの無頼な輩を懲らしめなくては気が済まない。そう思って追って来たのだが、
「………。」
 何故だろう。間近に見たこの男。妙に悠然としていて、いかにも隙だらけなのに…隙がない。あの武闘大会の時に防具をつけていなかったのと同様、今もあまりにも無防備で。刀も柄の方を向こう側に向けて板張りへ並べているし、さっき咄嗟に庇った少年を依然として膝の上に抱えたままでいるし。いつでも抜き打ちの出来る自分と違って、どっかりと座り込んでいる体勢といい、そんなにも自分を舐めているのだろうかと思うほど、数え上げればキリがないくらいハンデキャップだらけなのに、何故だか…どこからどう打ち込んでも恐らくは無駄だろうと感じさせる、一種独特な完成度のような気配がある。それに圧倒されてか、咬みつくような口調はそのままながらも、最初の一太刀以降は、剣を抜き放てずにいる彼女へ、

   「いい太刀筋をしていた。」

 ゾロはぽつりと言葉を返す。
「潔い真っ直ぐな剣だった。決勝の相手よりよっぽど手ごわかったかな。」
 自分の兄への評だと察し、
「判ったようなクチを利くなっ!」
 熱立つ少女を、
「まあ、聞けや。」
 剣豪殿は静かな声で制すと、


  「あのな。
   お前の自慢の兄上を負かした奴を、お前があっさり伸してしまったら、
   それこそ兄上の立場は無くなるんじゃないのか?」

  「……………え?」
(…おいおい)


 それより何より、兄上に倒せなかったものを自分が倒せると思うところが、思い詰めの怖いところ。それこそ"どんな手を使ってでも…"と思ってのことならともかく、武装以外の何の準備もないようだし。最初に構えた"不意打ち"にしても、此処へ辿り着いたその時に、標的が既に甲板にいなかったから已なく待ち伏せたという順番なのだろうし。
"…ったく。"
 向こう見ずにも程があるぞと内心で苦笑しつつ、ゾロは少女への言葉を紡いだ。
「俺たちは海賊だし、俺は人斬りだ。この船の海賊共はどいつもこいつも少々毛色が違っててな。コックやら航海士やら船医やら、その筋でこそ一流になろうってのが目標な、どっか変わった奴ばっかりで。そんなせいでか略奪とか虐殺とかはあんまり好きじゃあないが、俺は別だ。俺の仕事は"戦うこと"だから、必要とあらば人を斬り殺しもする。」
「…う。」
 勇ましく乗り込んで来た割に、やはりその辺りへの認識は浅かったらしい。ここで初めて…少しばかりの殺気を込めた射貫くような目線を投げると、たちまち肩をすぼめて萎縮の気配を見せるから、
"…危ねぇ子だよな。"
 彼自身の言いようではないが、この船でなかったなら、こんな問答の場なぞ構えてはくれない。あっさりと惨殺されているか、愛らしい見目に目をつけられたなら、売り飛ばされる虜囚として易々と捕らえられているところだ。その辺りを考慮していなかったらしい無鉄砲さに呆れ、彼女の兄上に"苦労が絶えんのだろうな"と内心で同情しつつ、
「怖いと思って正解だよ。お前の目の前に居んのは、腕を上げるかそのまま死ぬかするしかないくらい、途轍もない危険や修羅場を掻いくぐることでしか道を極められないような世界に、好きで居るような危ねぇ人間なんだからな。」
 唇の端だけで"くくっ"と突き放すように笑って見せ、
「確かにな、あのきれいな大会に俺みたいなのが混ざったのは反則だよな。お前の兄上や、他の参加者の剣士たちの正真正銘の正々堂々としてた"本気"と、俺の日頃発散させてる"本気"とでは次元が違う。負けたら死ぬしかない世界だから、どんな手を使っても負けないことが先に来る。誇りのためとか何とか、お行儀の良いことを言ってたら、命が幾つあっても足りねぇからな。」
 そんな言い方をするゾロに、
「………。」
 帽子の下、黒い毛並みの懐ろ猫が身じろぎしかけて、だが、胸板に頬を擦りつけただけであったのは、そうと言いつつそういう彼ではないとか何とか、反駁したかったことがあったものの、わざわざ言わずとも判っていることだと思い直したから。戻って来たばかりの彼から、上手くは説明出来ないが…との前置きつきながら、それなりの気概の気配を伝えてもらったばっかりだ。
"………。"
 そんなルフィの様子を、こちらも胸板に感じつつ、
「ま、今日のところは勘弁してくれや。こっちも色々、金とか何とか、要り用だったんでな。それこそ信じられないかも知れないが、俺らは強奪ってのが苦手なんだ。それだから、一番穏当な手段で金品をいただいたって事で、まあ大目に見てくれ。あの島へはもう二度と行かないと思うしな。」
 ゾロは、先程までとは打って変わってやわらかな声音でそうと諭した。早くキリをつけねば、陽は既に沈んでいる。まだ何とか薄明るい暮色も、夜陰の色へとそのベールを着替え始めている。夜の海はたとえ穏やかであっても一際に油断出来ない場所だ。
「………。」
 先程の"衝撃的な指摘"以降、どこか項垂れていた少女は、
「…うん。」
 こくりと頷くと小さな声で応じて見せた。それへと内心で安堵の吐息をついて、
「兄上が心配している。早く帰んな。」
「ああ。」
 納得してくれたことへより、帰ることにしてくれたことへホッとした。非道の非情の卑怯のという誤解なぞ今更なこと、いくらでもぶつけてくれて構わないが、自分に関わったせいで…こんな年端も行かぬ世間知らずが、実際に本当に、難に遭っては後味が悪い。表面的にはさして態度を変えぬままでいるゾロを改めて見やった銀の髪の少女は、ふっと微笑むと、
「かわいい弟だな。」
 ………はい?
"???"
 微妙に。その切れ長の眸を見張ったゾロだということには気づかず、
「お前が"人斬り"だというのは、私を引かせるためのウソだな。」
 少女は言葉を続ける。
「何でだ?」
「兄上と同じ眸をするからだ。その子へ、そして私へ。」
 少女はそう言うと、軽く屈んで小さな手を伸ばし、ゾロの膝の上へ抱えられたままな船長殿の頭を麦ワラ帽子の上からポンポンと軽く叩いた。
「すまなかったな。お前の大切な兄上を悪く言って。」
「………。」
 返事がないのを"何を今更…"と拗ねているとでも解釈したのか、少女は眸を細めて大人のような微笑い方をし、
「邪魔をしたな。帰る。」
 主甲板へ降りる短い階段へと身を返した。それへはさすがに、ゾロも身を起こして後を追う。
「一人で帰れるのか?」
「ああ、自分の船で来たくらいだ。万が一に備えてエターナルポースも持ってる。それに、ここいらの海は庭のようなものだ。」
 それもまた、この海域が平和な証し。こんな幼い女の子が、こんな沖合にまで何の警戒もなく漕ぎ出して来られるとは。本当にここは海の荒くれ男たちが揃って恐れる"グランド・ライン"なのだろうかという不審さえ感じるほどだ。船縁につき立った鋼の鉤爪。そこから下へと降りているロープに手をかけた少女は、まずは宙へ飛び降りるようにして"ぶらん"とぶら下がり、それから慣れた様子で…肘から手首までをガードする籠手の端についていたフックを起こすと、ロープへと引っかけて。あとは簡単、するするするっとロープを滑り降りてゆく。剣を持ち出し、船を駆って、得体の知れない剣士を追って来ただけのことはあって、
"こりゃ、そうとう慣れてるな。"
 見かけによらず、ここまでのお転婆だ。あの、剣の腕前は素晴らしかった兄上殿は、さぞかし甘やかして相手をし、そして最近になって、かなり苦労していることだろうなと、他人事ながらひどく同情を禁じ得なかったりする剣豪だったが。
「じゃあな、元気でな。」
 無事に船へと降り立った彼女だと確認し、鉤爪を引き抜くとロープに搦めてゆっくりと手元まで降ろしてやる。そして、ぶんぶんと手を振る少女に、こちらも手を振ってやると、お騒がせな小さな刺客は船を出し、それはそれはにこやかに元来た港の方へと去って行った。
「…大丈夫かな。」
「ああ。ほら、随分と向こうだが船の灯火が見える。大方、ご自慢の兄上が探しに来てくれたんだろうよ。」
 見ようによってはたいそう器用に、座っていた時のまま、やはり剣豪殿の逞しい胸板に貼りついたままなルフィであり、肩越しに小さくなってゆく小船を見送っていたのだが、
「なあ、ゾロ。」
 ふと。顔は向こうを向いたまま、ぽつりとした声を掛けてくる。そんな彼を、揺すり上げるように、腕の中、抱え直しながら、
「んん?」
 どうしたよと声を掛ければ、
「ゾロってさ、小さい子が好きなんか?」
「…はあ?」
 いきなり何を言い出すかな、この船長さんは。筆者同様、あまりに唐突な発言へ、
「何だよ、それ。」
 訳が分からず訊き返すゾロだったが、
「だってよ、今の子に凄んげぇ優しかった。知るかって言って蹴り出しても良かっただろうにさ。わざわざ一杯説明探してやって聞かせてやってさ。」
「ルフィ。」
「悪人ぶってさんざん怖がらせて追い出したって良かったじゃんよ。女の子だからって贔屓するなんて、サンジのこと悪く言えねぇぞ?」
 何だか…筋が通っているのだか、やっぱり彼らしく無茶苦茶なんだか、よく分からないご意見で、
「そういやチョッパーにも優しいもんな。俺のことも、小さいから好きなんか? 大人になったらダメなんか?」
「…お前ね。」
 唇を尖らせてぷんぷんと、ややこしい焼き餅を焼く人である。自分には肌合いで分からせたこと、彼女には言葉を尽くして説明したように受け取れて、その扱いの不公平にむくれている彼なのだろう。…だからさ、言葉が要らない、深い理解を持ち合ってる間柄だってこと、嬉しがってなかったか? あんた。
「あのな、ルフィ。」
「知らねぇよ〜だ。」
 拗ねてる割に手足を搦めて抱き着いたままの幼い船長さんへ、一体どんな説得をしたのやら。小半時もして何とか納得だけは引き出せたようだったものの、


  「ゾロ。」
  「んん?」
  「俺、やっぱりゾロの立ち合い、観たかったっ!」
  「………あのな。」


   あのお嬢ちゃんの兄上同様、
   あんたも大変だよねぇ、未来の大剣豪さん。
(笑)



  〜Fine〜  02.6.8.〜6.17.

BACK**

  *ルフィ、ずっとゾロの膝の上。
   何だか妙なお話になってしまいましたね。
   書けば書くほどに、
   どの辺が"ゾロル"なんでしょうか?というお話になってゆくものだから、
   Morlin.が一番ひやひやしてました。
(笑)
   まま、ルフィがお留守番していた間、
   ゾロがどんな風に男を上げていたかということで。
(おいおい)


back.gif