Moonlight scenery

          "Stray puppy?" D
 

 


          





 思わぬ無頼たちの乱入に、されど浮足立つこともなく。まず最初に、最も守らねばならない存在を隠し部屋へと押し込んだ護衛官様。お次に打ちます手立ては………というと。
“まずは。”
 手元の携帯を操作し始めたゾロであり。もしもルフィを庇ったままでいたならば、こんな急場に何やってるんだと、悠長な構えの彼であることへちょいと焦れかかってたことだろう。だがだが、この場に居残っているのは、此処の施設に熟知したチョッパーと、警備関係のシステムに関しても“機器・装置であるから”と一応は通じているウソップだったから。
「………お。」
「そう来たか。」
 彼が手掛けた“手立て”にも、すぐさま気がついた。そうこうする内、職員たちを集めたらしき、ナースセンターから“ざわり”という気配の揺らぎがざわめき立ち、
「…じゃなかったのか?」
「様子を見て来い。」
 そんなやり取りや慌ただしい足音が聞こえて、何人かが廊下を駆けてゆく。
“3人、外へ出たか。”
 足音で距離を測り、タイミングを見て携帯のボタンを幾つかゾロが操作した途端。ガラガラガラ…ッと何とも大きな物音が轟いて来たのへと、ウソップがくつくつと必死で笑い声を押し殺す。
“外来との境のシャッターを降ろしたんだな。”
 中が透けて見える格子タイプのものながら骨組みは頑丈で、少なくとも素手や銃くらいではそう簡単に壊せやしなかろう。そんな物音に、人質を集めたステーションではますますのざわめきが広がったようで、少々殺気だった雰囲気の中、何人かが様子を見に行かされた模様。
“このドアはステーションからは死角になってた筈だが…。”
 それでも、外来への通廊の途中にあるのだ。誰も此処を確かめに来なかったことからして結構な手落ちであり、医師や看護師、職員の数が思わぬほども居たので目が届かなかったのか。
“王宮内の小さい施設だと思い込んでたんだろな。”
 ま、それはともかく。ドアの前を通過した足音を確認してから、そっと、そのドアを開いて外へと身を滑り出させる。壁に張り付いた陰そのもののような、気配のなさと静けさと。一応の武器は特殊警棒1つという身だのに、恐れもしないで敵の前へ身をさらそうとする彼には、さすがに…ウソップもチョッパーも固唾を呑んでしまったが、
「あ、そうだ。」
 何か閃いたらしいウソップが、カウンターの一番下の引き出しを引く。新品のダスターやらナプキンやらが整然と収めてあるのを掻き分けて、彼が掘り出したのが…1台のノートパソコン。
「??? 何でこんなところに?」
「何でじゃないって。さっきゾロが確認していたような、非常事態に必要な情報ってのを、此処にいながらチェック出来るようにって、端末がつなげるようになってるんだよ。」
 今は一応、一番簡易なものとしてノートパソコンをつないであるだけの話で、
「もっと本格的な端末装置だってつなぐことが出来る。今日みたいなテロや戦闘がらみのものだけじゃなく、災害に遭ったり火事や何やで王宮執政施設が使えなくなる恐れだってあるだろうが。そんな事情から、ここが大本営になることだってあるかも知れないからな。」
 勿論、そんな怖いことが襲い来るなんて、他の国に比べたら低い低い確率だけれど…と。起こってほしいことじゃないから、そうと付け足したウソップだったらしいけれど。現に危急の中にある彼らなんだってこと、果たして判っているんだろうかしら。
「えと、さっきの最初の物音は、ゾロが携帯からのリモートコントロールでスプリンクラーを稼働させたんだよな。」
 それもかなりの出力で水を撒いたらしくって。いきなりの驟雨を受け、周囲に植えてあった木々の梢で、緑の葉っぱたちが大きな音を立てるわ暴れるわ。そんな物音に、誰かがやって来たのかもと様子を見に出て行った3人を、シャッターを降ろすことで引き返して来れなくし、そして今、それへの様子見にと連絡口まで出て行った数人へと忍び寄りに向かったゾロであり。廊下に設置されている防犯カメラの映像を、ウソップが手際よくモニターへ呼び出した。さすがは最新機器を集結させてある施設で、カメラも高性能のデジタル方式。銃身の長い恐らくは機関銃だろう武器を肩にかつぐ格好、油断の気配もなくはない姿勢にて、連絡口まで向かう2人ほどの男らの背後から、するすると近づく影が見える。躊躇や用心深さという気配のまるでない、それはまるで…たとえは悪いかもしれないが、蛇が音もなく滑らかに地を這って接近する様子を彷彿とさせて。並んでぶらぶらとした歩調で歩む、賊二人の背後に距離を見て近づいた護衛官殿。籠手に包まれた左腕と、右手の警棒とを彼らの頭上に振り上げ、がっつりと同時に叩きのめした過激さよ。やり方は至って簡素だったが、それなりに屈強な無頼漢たちが、それも一度に二人も、声もなく倒れたとあって、
「………ゎ。」
 あまりに臨場感あふれる画像だったので、見学者だった側の二人は…ちゃんと台本のあるサスペンス映画を観ているような錯覚に陥ったほど。
「鮮やかだね。」
「それがあいつの仕事だからな。」
 こらこら、ウソップさん。そんな言い方だと語弊が。
(苦笑)
「あと3人だな。」
 職員たちが集められているナースセンターの方の画像をモニターに子画面として呼び出せば、ゾロが気配で数えたその通りの残党たちが、部屋の中央へ集めた看護師たちを銃で脅しつつも…何となくそわそわしている様子。
“頭数がこうも減ればなぁ。”
 王宮の医療機関だから、小規模のものでしかも警備も薄いだろうと高を括っての突入を敢行して来た“先陣部隊”なのならば、その部分だけは迂闊だったねとチョッパーが苦笑する。それとも、今日が避難訓練でばたばたしているという情報を得ての強行だったのかな。だったら何とか、隙を衝いたつもりだったという点ではうまく食いついた方なのかな。こんな風に状況を分析出来て、その只中に居ながら…どこか他人事になりつつあるのは、十分すぎる安心感が沸いて来たから。着実に相手の手勢を削ってゆく手際のよさと、危険極まりない銃を構えている相手との対峙なのだと思わせないほど、落ち着き払った動きをこなしているゾロの冷静なお手並みの物凄さがあってのこと。
“それもこれも。”
 王宮にとってのみならず、きっときっとゾロにとっても何にも替え難い宝物。腕白で可愛いルフィ王子を、これ以上はない安全な所へ匿ったからだろうなと。うくくと笑ってしまう余裕まで出たチョッパーで。これでまずはルフィが無事だから、心置きなく振る舞える、集中出来るに違いない。そんな彼が見やった先の壁。先程ぱかりと開いたのを目の当たりにした自分たちでなければ、恐らくきっと気がつかないだろうほどに、何の継ぎ目も痕跡もなく。するんと平らな一枚板の壁材が張られてあるだけ。
“あんな仕掛けまで、ゾロ、よく知ってたな。”
 全部が片付いたらゾロに食いついてやろう。俺の牙城なのに、秘密だったのに、勝手に調べたなって。余裕も極まって、事後のことまで考えているチョッパーの横で、
「…お。」
 ナースセンターの様子を観ていたウソップが、小さく声を上げる。モニター画面には難しい顔になった3人の賊たちが、そんな少数にて何とか人質たちを取り囲んだまま、それでも…奇妙な現象に不審げな表情を隠し切れていない模様。5人もの手勢がたかが様子見に出て行ったまま戻って来ないのだから、そりゃあ落ち着けないことだろう。業を煮やしたらしい顎ヒゲの男が、もう一人を連れてその場を離れる。たった一人であれ、銃を持っている相手に素手で立ち向かうような、無謀な医者や事務員はいなかろうと踏んでのことであり、ハンドトーキーを手にしたがチッと舌打ちをしてジャケットのポケットへと戻してしまう。
「あれ? そういえば、何で連中は連絡を取り合わないの?」
 表へ締め出された連中から、どうしましょうかと何かしらの連絡が行っておれば、第2陣の様子見部隊は出されなかった筈だろに。首を傾げたチョッパー先生へ、
「ハンドトーキーは此処では使えないんだ。1階フロア周辺に限ってだけど、外回りのぐるりに強い磁気を流してる。」
「はぁあ?」
 そんなの知らないぞと素っ頓狂な声を出すチョッパーの口を慌てて塞ぎ、
「今だけだよ。きっとゾロが監視用の機器の出力を弄って、互いに干渉させ合わせてるんだろな。そんなせいで、外部との無線での通信は出来ないようになっている。」
 携帯電話は、それ専用の館内アンテナが設置されてるからな。その周波数だけは大丈夫なようにって、計算されてるジャマーが流れてるようなもんだ。うくくと意地の悪い笑い方をしたウソップ、
「あれでなかなか、頭を使っての対処も出来んだな。」
 ただの筋肉馬鹿かと思ってた。でも、考えてみりゃ、今時の戦術には敵陣味方どちらにだって必ず“コンピューター”ってスペックが出て来る訳だしな。今頃気づいたぜ、これ、あいつには内緒な? 彼もまた、余裕が出来ての茶目っ気たっぷりな言い方をしているらしく、
「おお、来たぜ。相手方の大ボスが。」
 顎にひげをたくわえた、きっとこいつが相手のリーダーだろう偉そうな男。そいつが手下を連れて、今まさにこの部屋の前の通廊へとやって来ており、特に隠れだてもせぬまま、殴り倒した二人を手近な消火栓から引っ張り出したホースで縛り上げていたゾロを見て、
「…っ。貴様、何してやがるっ!」
 怒鳴ったボスの横で、手下がジャキリと機関銃を構えたものの、

  ……… っっ!

 ほんの一瞬の差で。弓なりに撓らせるように よーくしごいてヒュンッと勢いよく、彼の右手から繰り出された特殊警棒の切っ先が、その銃口を天井へと弾いており。ガガガ…ッと一気に連射された弾丸たちの雨あられは、真上の天井内装材を抉っては降らせて、彼らの頭へと降りそそぎ。
「うわっ!」
「こら、撃つのを止めねぇかっ。」
 慌てたボスからの制止の声がかからずとも、引き金から指を離していた手下だったが、
「…おい?」
 埃舞う通廊にご本人までばったりと倒れていたのへは、頭目が目を剥いてギョッとする。特に銃声がした訳でもなく、なのに倒れたなんてと。自分たちに何が起こったやら、全く判らなかったらしいのだが、
「こんな少数でよくもまあ、この王宮に強襲を仕掛けたもんだな。」
 ニヤリと笑ったゾロが、その雄々しい肩口へトントンと軽く当てている特殊警棒で、真下から顎先をがつーんっと殴り上げたから引っ繰り返ったのだとは、
“第三者として こやって観てなきゃ、判りっこないっよね。”
 あまりの早業だったし、彼の得手も知り尽くしている自分たちだったから。警棒によるアッパーカットが決まったのだという流れが読めたのであり、そんなことを全く知らない賊らの頭目には何が何やら、訳が分からなかったに違いない。丸腰同然の男が、音も立てず、派手なアクションも見せぬまま、あっさりと仲間を倒してしまったとは、到底信じ難かったらしいのだが、

  「ほほぉ、そうかい。あんたが此処の警備の要って訳か。」

 王宮の警備の責任者さんが居合わせた不幸のせいで、こうまでのアクシデントに見舞われている自分たちなのだと、素早く察し、ここから何事か立て直そうと構える粘り強さはなかなかのもの。やはり彼らは単なる“先乗り”の切り込み班だったものと思われて。例え最後の一人になったとて、その一人が橋頭堡代わりとなり、外部で待機中の仲間を導くことが出来れば御の字という手はずになっているのだろう。だからこその、少数精鋭。スピーディーに事を運べばそれでいいという顔ぶれだったらしいのだが、
“どうして自分は大丈夫と信じて疑わないんだろうか。”
 いや…まあねぇ。そのくらいの自負がなくっちゃ、実戦部隊は務まらないでしょうが、ウソップさん。モニターに映し出される真剣勝負のにらみ合いを、こちらもまた息をひそめて見守っていたのだが。そんなVIPルームの静けさを、ふいにぶち破ろうとしている気配がじわり。

  ――― めきめき、ばりがり………。

 そんな不審な音がして。
“え?”
 ウソップとチョッパーが顔を見合わせ、同じ“不吉なもの”へと思いが及んで立ち上がる。彼らが同時に見遣った先では、何にもなかったはずの壁に、ぴきぴききとひび割れが入っていて、

  「だ〜〜〜っ! ゾロの馬鹿っ。こんなトコに閉じ込めるこたないじゃんかっ!」
  「あああっ。」

 大きな物音がした部屋。相手だってそれに気がついた。しかも、ゾロがその“声”へと、判りやすいまでの反応を見せたものだから。
「ははぁ〜ん。この部屋に、まだ誰か居たって訳だ。」
 視線が流れたのを見透かされ、ドアをきっちりと指摘されてしまったのだ。どんな事態の最中にあっても、沈着冷静で動じない彼だから。日頃であれば、こんな簡単なボロを出す筈がないのだが…隠し部屋に放り込んだ筈のルフィの声というのは、あまりに唐突なフェイントすぎたらしい。
「馬鹿はどっちだ、静かにせんかっ!」
 慌ててウソップがカウンターの陰から飛び出し、せめてすぐに取っ捕まらないようにと、同じカウンターの陰へ引っ張り込もうとしたのだが、
「やだっ! 俺はゾロが活躍するとこが見たいっ!」
「馬鹿野郎〜〜〜っ!」
 それがゾロの邪魔になるっつっとろーが、何でだよ?、現に今の今 困ってんだよ…と。押し問答をしている内にも、賊のリーダーさんがVIP室へと近づきつつある。揉めてる二人を執り成す術もなく、どうしよどうしよと泡を食ってたチョッパーが、
「…あ、そーだ。」
 こちらさんも何か思いついたらしく、自分の体をあちこち叩いて何かを探し始め、白衣の下に着ていたシャツの胸ポケットに触診で何か見つけると、よほど焦っていたのか、ボタンの隙間から大きな手を突っ込んで見せる。
「どした、チョッパー。」
「取りたいものがあるんだよっ!」
「ボタンを外した方が早かないか?」
 じたばたしている様子に、自分たちの悶着も忘れて近づいて、ほらとルフィが代わって手を突っ込んで。
「これか?」
 ポケットに入っていたのは、銀色の細いホイッスル。そうそうと受け取ったお医者様、口にくわえると思い切り吹いたものの、
「…壊れてんのか?」
 何にも音は響かない。まま、これ以上の物音をさせて犯人を刺激し、火に油を注ぐような真似になるよりはマシだったのだが。それにしたって…と怪訝そうに眉を寄せたウソップの傍ら、
「その笛、どっかで見たぞ。」
 ルフィがあることに気がついた。数字の9や英文のコンマに似た、運動競技用のじゃなく。平たいサンバホイッスル・タイプでもなく。真っ直ぐな棒状の管が2本ほど並んでいる綺麗な笛で、
「音がしなくて正解だって言われたんだ、えっと…。」
 何でなのかを思い出しかかっていたルフィに、ウソップが掴み掛かったのは。正面のドアのノブががちゃりと動いたのに弾かれてのこと。呑気な会話を繰り広げている場合ではないと、現状を思い出しての反射で。これはなかなかの手際だったが、
「ここにも人質がいたんだな。迂闊だったぜ。」
 しかも、いかにも綺麗に整えられたインテリアやカウンターがある。成程“VIP室”かと、ほくそ笑んだ賊の野卑な顔に、こちらがゾッとしたその間合いへ。


   ――― 遠い遠いところから。何かが駆けてくる物音が。


 車のエンジン音や靴での駆け足の音でもない。妙に荒い、鼻息みたいな音と、ざかざかと何かを激しく蹴立てる音。それが何か…を素早く見切った護衛官が、手元で素早く、ワンアクションで開いたのが携帯電話。
「ゾロっ!」
「ああ。」
 チョッパーの声に応じながら操作すると、通廊の向こうでガラガラ…というけたたましい音が轟いて、今度はシャッターが上がっている模様。しかも、
「どわっっ!」
「なんだ、こいつっ!」
 外へと締め出しを食っていた、賊の仲間のものらしい慌てた声が聞こえ、すぐさま、
「ぎゃああぁぁっ!」×@
 混声合唱の悲鳴が鳴り響く。
「な…。」
 一体何が起こっているのだと、ドアノブに手をかけたままでいた大将が…ドカドカという賑やかな物音と共に突進して来たものへギョッとし、
「どわっっ!」
 思わずのことだろう、銃を向けたが、
「何しやがるかなっ!」
 そんな銃口へは、ゾロが身分証を収めた自分のパスケースを水平に投げつけて、脇へと逸らした。がら空きになった胴体目がけ、勢い良く突進して来たのが………。

  「バホォオゥン!!」

 ちょっとしたプロレスラー並みにまで育っていたご立派な体格を、助走をつけて宙へと躍らせている。
「あ、メリーだvv
「凄いな〜。いつの間に仕込んだんだよ、チョッパー。」
 王宮の中庭にいた筈の巨大なモップ犬。オールド・イングリッシュ・シープドッグのメリーが、猛烈な勢いで垣根や茂みを飛び越え薙ぎ倒して駆けつけたのらしく。
「こないだからタイムを測っていたんだ。この犬笛がどこまで遠くで聞こえるものかって。」
 そのつど、おいしいジャーキーのおやつをもらえるのでと、勇んで駆けて来るメリーなのだそうで。
「…呑気に感心してないで、そいつを起こしてやった方が良くないか。」
 いい子いい子と撫でられてご機嫌そうな巨体に乗っかられたまんま、白目を剥いてる大将さんに、皆さん故意に気づいてない振りをしていたらしいが。医療施設で倒れた人間が手遅れになるなんて不祥事は困ると、そこは医師としての職務意識が沸いたらしいチョッパー先生。もうちょっと楽しんでたかったのにと悪趣味なことを言うルフィに小さくメッと怖い顔をして見せたのであった。



   ――― いやぁあ、相変わらず埃ばっかりが立つ王宮ですこと。
(苦笑)










   clov.gif おまけ clov.gif


「そういえば。」
 この大騒ぎに紛れてうっかりスルーされるとこだったが、

  「ゾロ、インフルエンザっ。」
  「うっ、覚えてやがったか。」
  「あ、そうそう、そうだったvv
  「なになになに?」

 こんな単語だけのやり取りが通じ合う、ゾロとチョッパー、ウソップという彼らが羨ましいらしいルフィが割り込んだが、ゾロは…さして“困った”というよな逼迫の表情は見せてはいない。…というのが。

  「う〜ん。なんて腕をしてんだか。」
  「尻に打ったらどうだ?」
  「いや〜、どこも一緒だ、こりゃ。」

 ただでさえ鋼のように鍛えられた体な上に、針を刺すなんて“攻撃”だから。咄嗟に筋肉が反応するらしく。診察室のテーブルの上、使用済みの針がどんどんと並べられてゆくばかり。

  「だから。力を抜けと言うに。」
  「だから。無意識の反応なんだからしょうがないだろうが。」

 ちくちくと針先を刺されるのが痛くない訳ではないのだけれど。刺す側の困ったお顔の方が何となく気の毒で。点滴じゃないんだから皮下注射でいいのだけれど、あまりに浅いと、しかも力を込めていると、注入したワクチンが逆流してしまうほどなので。

  「ぞ〜ろ〜〜〜。」
  「知らねぇってばよ。」

 足音といい、困った“体質”があったもんである。
(笑)

  「な〜んだ。そういう意味で、注射が苦手だったのか。」
  「う〜〜〜ん。」

 やっと見つけた弱みを笑ってやろうと思っていたらしいウソップにしてみれば、何とも微妙なところだったのでと、複雑そうな表情を見せていたけれど。ルフィにしてみれば、こんな困ったところもまた、新しく見つけたゾロの“意外性”であり。


  “ゾロって可愛い〜いvv


 いや、その反応はやっぱりおかしいと思うんですけれど。
(笑)




  〜Fine〜  04.11.02.〜11.18.

  *カウンター 155,000hit リクエスト
     ひゃっくり様
            『“Moonlight scenery”で、ルフィの護衛に務めるゾロ』


  *何か微妙に。
   護衛をやり遂げたのはメリーだったような気もしないでないですが。
(爆)
   お待たせして申し訳ありませんです。
   それと、頑張った割に全然シリアスにならなくてすみません。
   最近の Morlin.は、本当にどうかしていると思います。
   きっとアニメが、ツボを押しまくりのDBFに入ったからでしょうねvv
   あああ、なんてギャグ大好き人間なんだか。


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