月夜見
 puppy's tail 〜その112
 

 ハロインは楽しvv
 

おねさん、こんにちは。お久ゃしぶいですvv
テレビとかでも、
何だかいちゅまでも あちゅいあちゅいってゆってましゅね。
そんなことないよね、
朝なんて寒ぶい寒ぶい時も あゆのにねって
お散歩中のマキちゃんとかとゆってたら、
ママが “そっかぁ?”ってひょこんて
そんなこと あゆかぁ?ってお顔してから、
“…あ、しょかしょか、そうかもな”って。
ちょっとあわあわして言い直したりしゅるの。
あれってなんだろね?


     ◇◇


金木犀の甘い香りも馥郁と、
それは爽やかな朝を迎えるようになった奥箱根の奥向きの。
そりゃあ閑静な住宅街の一角は、
麓の都内ではまだまだ夏日になったり
半袖が仕舞えないと言ってる様相とは微妙に異なり。
すっかりと秋めいたお日和が日々深まりつつあるのだが…。

「いやぁ、うっかりしてた。」

ママは毎朝誰かさんの懐で目を覚ますので、
多少の冷え込みなんて関係ない身。
なのでついつい、
坊やの寒くなったネ発言へ “そっかぁ?”とこぼしてしまったのであり。
またもやキョトンとしてこちらを見やる坊やの視線を避けるよに、
壁にかかっていたカレンダーを眺めやって、

「……。」

どう言い訳しようかと彼なりに頑張って案じているものか、
妙に黙りこくっていたかと思や、

「そういや、ハロインまでもう1週間しかないじゃないか。」

うあぁ、これはしたり〜…と重大事ばりに目を剥くところが、
ルフィさんらしいっちゃらしいところ。(笑)

「まーま、はおインてなぁに?」

ワイドショーなどで取り上げられているのが前倒し過ぎて、
まだまだ日があると油断してたぞと。
胸の前にて両手でぐうを作ってのそれから、
意味なくあちこちの抽斗を開けたり納戸をのぞき込むルフィの後をついて回り、
キャアキャア騒いでいる海(カイ)くんはもっと意味が判ってないらしく。
そんな相変わらずに可愛らしい母子の行進を
なんてまあまあ微笑ましいと見やっていたツタさんが、

「奥様、そんなところには関係あるもの仕舞ってませんよ。」

何を探しているルフィなのかなんて、あっさりお見通しのお母さん。
気を利かせて近間へ用意しておくなぞという
差し出がましいことなんて致しません。
こういうお楽しみ、
こちらから先手を打ってあれこれ差し出すのは僭越かもと思ってか、
訊かれるまでは目に見える準備をしないでいようという
わきまえた構えだったツタさんらしく。

「去年お召しになった魔女っ娘と黒猫のコスプレ衣装なら、
 こちらの押入れのスケルトンボックスに。」

それでも一応、お屋敷の裏手にあるくらからは出しておいての、
リビングに近い階段下の収納庫へ移していた辺り、
過保護からの甘やかしの範疇で気を利かせはしたお母さま。
キャスター付きの衣装ケースをガラガラと引っ張り出したのへ、
おおうvvと満面の笑みになった小さな奥方が早速食いつく。

「おお、そうだったこれ着たんだった。」

そうそうとウキウキと蓋を開けて、
フレアの利いたミニスカートに、黒マントと二―ハイソックス、
魔法使いというより“魔女っ子”といういでたちの一式を引っ張り出して
胸元へとあてがってみる。
カイくんにはマスコットの黒猫さんという意匠、
猫耳付きのカチューシャに
肉球付きの手袋とベルトの後ろにお尻尾がついてる半ズボンという、
やっぱり可愛らしいコスプレで。

 “これで追い返される魔物が居たら世も末だ。”

ゾロパパさん、それって身内びいきからの自画自賛?(笑)
新聞読んでる振りでいたお父さんも、
小さな王子が肉球付きのミトンのような手袋を手にし、
ぱふんぱふんと打ち合わせだしたのへは、
そうだな嬉しいな楽しいなと言わんばかりに目許を和ませる。

 “ゾロってば、判りやす〜いvv”

これこれお母さん、そこは見て見ぬ振りですってば。(笑)
新聞を脇へと除けたゾロなのへ、ではと自分もその傍らにぽすんと座って、
さて、可愛い坊やには何の仮装をさせましょうかと、
ルフィも一応真面目に“検討”に取り掛かる。
参考になさいますか?と ツタさんが差し出したのは、
隣町の写真館がポストへ放り込んでったらしいお子様向けの貸衣装のカタログで、

「…さすがツタさん、遺漏がない。」

ありがとーvvと受け取ったご夫婦の前まで、
小さな坊やをおいでおいでと手を引いて導いてくれた
やさしいお母さんも加わって、
みんなでカタログを覗き込む。

「ドラキュラは前の年だったかにやったしなぁ。」

 タキシード姿が一丁前だったねぇ、
 可愛かったなぁ。

トリと、オラオラと、リュック?』参照ってですね。
そっちもやはり“かわいい系”の扮装で。
まま、まだこんな幼い年頃なのだから、
女の子みたいなふんわりフリフリという路線でも問題はないかもで。
今年はどうしたものか、
やっぱホラー系のお化けじゃないとおかしいのかな、
忍者とか鎧武者のカッコなら七五三でやれるしねぇと。
それももしかして履き違えなのだが
でもまあ、そういう方向の“仮装”はそっちで…と思うのも
こちらのお宅だけの突飛な発想ではないはずで。
お写真のご本をあーでもないこーでもないと指差してる大人たちの
話の内容にはとんとついてってない肝心のカイ王子様。
ママがお膝に置いてる魔法使いの三角帽子を頂戴と譲ってもらい、
お顔が全部すっぽり入ったかぶりようで
パパとママとを萌えさせてから、

 「パパは? なに着ゆの?」

 「…はい?」 × @

何の含みもないまま、
大人たちの意表を突いた一言を放った辺り。
びっくり箱なところはしっかとお母様譲りな坊や、
どんな腕白さんになるかが楽しみですねと、
窓の外でヒタキが きちちっとさえずって飛び立った秋の午後。



     〜Fine〜  16.10.24.


 *イベント大好きご一家にとって、
  秋からこっちはお楽しみが満載なんでしょうね。
  今年はパパも何かのコスプレしないとねvv(ワクワク♪)

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

bbs-p.gif**


戻る