月夜見 “大剣豪、出張す”  〜月夜に躍る・]

           〜るひ誕記念DLF作品



          




 最初に予定していた期日内できっちりと“お仕事”を完遂し、まるで昨日までも連綿とそうだったみたいな顔で、馴染みの集まる小さなスナックへと顔を出した大怪盗さんは、それでも…自分が不在の間に何か連絡やトピックスはなかったのかを確認しに来たらしかったが、
「どうやら“楽し〜く”お仕事して来たみたいねぇ。」
「お陰さんで。」
 これも所謂“ポーカーフェイス”か。ナミがにぃ〜っこりと笑ってのお声をかけて来たのへ応ずれば、カウンターの中、相変わらずの痩躯をぴしっとした背条で引き絞った雰囲気も…日頃の2倍増しに棘々しい、ここのオーナーシェフ殿がいかにも不機嫌そうな顔を向けてくる。
「ルフィが拗ねまくっとったぞ?」
「? なんで?」
「だから…。」
「連れてける訳がなかろうよ。それにお前だって許可するまいに。」
 言ってる意味合いは判るのだろうが、
「何でそう…お前の方が当然顔でいるかなぁ。」
 ゾロが言うように、もしも“連れてけ〜”っというルフィの駄々を聞いてやっていたならば、何を考えてやがるんだとサンジは猛烈に怒ったに違いない。そういうコトの順番はようよう判るのだが、でもね?

  “まるで親から置いてけぼりを食ったみたいな顔、してたんだからな。”

 悔しぃ〜とか、ずるいぃ〜とか言って喚いて暴れたり不貞腐れたりするなら、まだね。煽ったり宥めたりにも方法はあったかも。けれど、そりゃあしょんぼりと、肩をすぼめて憔悴しちゃっていた坊やだったから、理不尽とは判っているけど、そんな顔をさせたゾロのこと、やっぱりムカっと来ちゃったお兄様であったらしい。
「………土産くらいは用意してやってあるんだろうな。」
 せめてもの意趣返し。エスプレッソを出しながら、これ以上泣かせそうなことをしやがったら承知せんぞとの意を込めて訊けば、
「そっちは心配ないよ。今日明日中にも“報酬”が届くから。」
 珈琲の芳醇な香りへ眸を細めつつ、半分くらいは思い出し笑いという雰囲気にて…にんまりと笑った“大剣豪”さんである。







            ◇



 仕事があろうとなかろうと、その身を置いて拠点にしていたあの港町も、自分には悪くない肌合いのする場所だが、あそことは随分と違った気分が堪能出来た数日間だった。同じ海沿いでもこうも違うかと感じるほど、原風景というのだろうか、どこまでも果てがない大地や海をどこででも楽しめるような。深呼吸するのが爽快な、どこか懐かしいほど自然の多いおおらかな土地。観光客相手の手慣れた愛想ばかりでもない、気のいい素朴さが住人たちからも感じられ、俺なんかが言うのも口はばったいが、豊かな国ってのはこういうところのことを言うんだろうなって思ったね。陽が落ちれば、月からの光が妖しいほどに明るい静かな夜が訪れる。梢の揺れる音が潮騒の音にも聞こえる、けれど、それが唯一の音という静謐の中。庭へと張り出したバルコニーへ出られる大きな窓が、やはり月光を受け、青く濡れて光ってる。その格子が床に敷かれてる分厚い絨毯へ、四角い陰を落としているのが目映いくらいに青くって。隣りのリビングへと通じる扉がそっと開いて、一人分の人影がさしたのへ、
「………ヴルルル〜〜〜。」
 広い寝室の片隅、この何日かだけ特別に寝床をここへと移されていた、やたら毛並みの長い巨きなワンコが低く唸ったが、
「…メ〜リイ、静かに。」
 そのくらいの物音で起きるような、繊細にしてお上品な性分ではないと聞いていたから。きっとずっと起きてて待機していたらしい少年の声が、ベッドではなく壁際の陰の中から聞こえて来た。この寝室の様子も当然のことながら監視されてる。王子様にもそれは判っていたそうで。おやすみなさいの後、隋臣長とかいう人が控えの間へ戻るまでにという大急ぎでベッドから飛び出して、カメラの死角となる位置のこっちへと潜んでた王子様。自分に忠実なワンコへと素早く声をかけ、
「ほら。俺のお友達だ。だから吠えるな。」
 不審な物音に気がついてという前振りのまま、足音も立てないままという慎重さで、次の間から入って来た人影へ、腕を伸ばしてきゅうっとしがみついて見せて。ほら“不審人物”ではないよと、王子が直々に示してあげれば。打って変わって“きゅ〜んきゅ〜んvv”と甘えた鼻声。本来の慣れがある護衛官さん本人ではないにも関わらず、懐いて見せるメリーであり。これも賢いからこその、聞き分けのよさという奴なのだろう。これで警報関係はクリア出来たとホッとして、王子様が開口一番に訊いたのは、
「あのね、ネットカフェで指紋が見つかったっていうのは。」
 さあ寝なさいとさっきまで居てくれた隋臣長さんに訊いてみたこと。正体不明の怪盗“大剣豪”が入国したっていうことが、どうしてこちらの陣営に判ったのか。その話の中で、警察のデータにある指紋が見つかったからだよと説明は受けたものの、何でそんな危険なことをしたのかなと、実を言えば気が気じゃなかったのだそうで。こんな他愛のない依頼、受けてくれただけでもありがたいのに、こんなことで拭いようのない大失点が彼についてしまい、万が一にも捕らえられたら、申し訳無いどころの騒ぎじゃないと思ったからだと。だが、ルフィ王子には見慣れた護衛官の制服姿のその人は、
「ああ、うん。入国しましたよって、知らせたくてね。」
 わざとにやらかしたことだから、心配しないでと笑ってくれた。別に日にちを切ってなかったことだから、そんな必要もなかったのかもしれないけれど。どうにも連絡なんて取れない間柄だったから、待つばかりってのは不安じゃないかなって思ってサ。そこで、そんな無様を故意に やらかした彼だったらしい。何だそうだったのかと、やっとのことホッとした王子様なのを見やっていた怪しき侵入者は、あらためましてのご挨拶を贈った。


  「初めましてだね、王子様。」
  「うん。こんばんわ、怪盗さんvv


 今回の依頼は何と、王子様ご本人からのもの。やっと本人とのお目通りが出来て、さて。一応の打ち合わせは、彼の侍従の一人だというひょろりとした青年と一通りの情報交換という格好できっちり詰めてはあったものの、現地である此処へ来たのも今が初めての、文字通り“ぶっつけ本番”だとあって。実は王子様以上に彼自身も興奮していたかもしれない。追っ手を持つような非合法な行為をこなすのだから、緊迫感はどんな仕事であれ同じだが、今回の依頼はちょっとばっかり毛色が違う。

  『あのね? 依頼したいのは…』

 非合法ではあったけど、非道なことじゃあなかったからね。むしろ面白そうなことへのお誘いだったし、どうしてもあなたをという依頼でもあったから。それで気安く引き受けたのだけれど、

  『人質取って逃げ回った揚げ句に、
   何も盗まなかったっていうのは汚名にならないの?』

 だって名にし負う“怪盗”さんなのに。そんなことまで心配してくれた可愛い王子様。
「それもまた依頼のうちなんだから構わないって。」
「でもさ…。」
「そういつもいつも目に見えて“奪った”と判る仕事しかしないってんじゃない。」
 今更だぜ、そりゃあ。こんなことくらいは判っていて依頼を引き受けたのだしな、だからそういう方面での心配はしなさんなと宥めてやって。
「王子様こそ、いいのかい?」
「? 何が?」
「誘拐されかけたってこと。広く知れ渡っちゃうかもだよ?」
 それこそ国家の威信をかけてでもという工作をしまくることで、何とか表沙汰にはならないのだろうが、所謂“その筋”とやらの知るところには知れるのかも。王子様ご本人という究極の“内部協力者”があったから可能だった部分も少なくはないことだってのに、
「王宮の警備や王子自身に隙があるとは思われないか?」
 面目はともかく、警備態勢が甘いなんて格好のスミをつけることになんないかい? そっちを心配して訊けば、
「ああ、それは大丈夫。」
 にっぱしと笑った王子様が言うには、
「ウチの連中は凄んげぇ負けず嫌い揃いだからな。もっともっとって厳重な体制を敷くだけのことだ。」
 今回の騒動の張本人であるくせしてね。まんま我がことの誇り、そうと言いたげにむんと胸を張る可愛らしさよ。まま確かに、地上班を巧妙に操作して自分を追い詰めてしまった人物あり、こちらはちょっぴりズルをして、モーター装備のリールやら射出器やらを使ったのに、冗談抜きの徒手空手なその上、殺気さえ帯びない完璧な忍び寄りにて、結構な高さのバルコニーまで軽快に登って来ようとしている気配の持ち主もあり。しかもそっちは、この高さを一気にクリアしようとしている、人並み外れた体力と技能を持つ“化け物”みたいだし。
“俺に似てるって護衛官さんが、これほどの実力があるのにその筋の評判に上っていないのは…さ。”
 それだけ、この国の情報管理が締めるべきところはきっちりと締めているからに他ならない。
“なのに、俺へは辿り着いちまったんだからな。”
 おお怖い怖い、余計な手を出さないに限るよなと内心でこっそり苦笑をしていると、
「それに、何処の誰にどんな勝手なことを言われても関係ないしさ。」
「んん?」
「ウチは小さい国なりに情報戦でのし上がって来たっていう一面があるからね。口外出来ない秘密とかやり口とかも色々と抱えてて。アナリストたらいう肩書を振り回す奴らの中にはサ、そういうのを少しほど漏れ聞いたって程度の中途半端なデータだけで“全てを知ってる”ってな顔をして、根性の汚い国だの図太い王だのなんて、よくよく知りもしないで叩こうとするケースもあるこたある。」
 ………おや。のほほんとして見せてても、存分に甘やかされてても、そういうことは一応知ってはいるのだね。童顔なせいで ずんと子供に見える王子様。それがちょっぴり真摯なお顔になってそんなことを口にして。でも、
「でもさ、父ちゃんはいつも言ってるんだ。ホントの事を知ってる人がいれば良いって。大切な人、大好きな人が、ホントをちゃんと知ってるんなら、そうでない馬鹿に何を言われても耐えられるって。」
 にっぱりと笑って見せてから、
「だからサ。今回の騒動も、ウチの警備は決して緩んでなんかないってこと、俺自身がちゃんと判ってりゃ良いことだからな。」
 えっへんと。胸を張った王子様が見せた溌剌とした笑顔の、何とも魅惑的であったことか。

  「………ふ〜ん。」

 王族の坊やの、ちょい傍迷惑な我儘、には違いない依頼だったのだけれども。侍従や係官の皆様へ迷惑をかけたかったからじゃあなくって、彼らを信頼していればこその引っ掻き回し。信頼し合ってこその茶目っ気だって言いたいらしく。こうまで納得しているのなら、これ以上自分が関わって、ましてや“アフターケア”なんざ考えるのは僭越かもなとこちらも納得。
「………判ったよ。せいぜい、バレてからのお仕置きを心配してな。」
「そっちこそ。次に縁があったとしても、その時は今回みたいにはいかないぞ?」
 一応は“誘拐犯”と“被害者”なのに、お互いを心配し合ったり牽制し合うってのも何だか妙なもんだねと。くすくす、ひとしきり笑い合ってから。それじゃあ帰るな、うんバイバイvvとこっそり手を振って別れた。もう二度と合う機会なんてないのだろうね。楽しい鬼ごっこが出来て嬉しかったよと、名残り惜しげに見送ってもらいつつ、

  「ルフィっ! 無事かっ!!」

 声の主さえ見ようともせず、夜陰に姿を溶け込ませる。気配を消して、そのまま真っ直ぐに手近な樹の幹へと飛び降りて、枝ひとつ揺らさぬまま、下まで降りると。結構な数が集まっていた他の護衛官さんたちの気配に紛れて、さりげなくも足早に、その庭を後にした“怪盗さん”だったそうじゃ。


  ババの話は、これでしまいじゃ。さあさ、いい子は早よう寝んねしな。
(こらこら)






            ◇



 ただでさえ繋ぎが取りにくい筈の“大剣豪”への遠い異国からの依頼は、なんと…アイテムやツールを支援してくれている技術屋のウソップから齎
もたらされたもの。
『少しばかり遠い国だが、若いのに知識もあって腕も立つ、ちょいと風変わりな技術屋仲間がいてな。』
 情報の世界では有名な王国のその情報網の一端、ちょっぴりコアなデータを収集する担当らしいその“技術屋”くんが、お前のファンサイトってのを見て、どうしても繋ぎを取りたいって頼られてな、と。
『ファンサイトぉ〜〜〜?』
 おいおい、まずはそっちかい。
(笑) 通り名の“大剣豪”をタイトルに掲げ、今まで分かってるところの特徴や、これまでに関わったらしい事件などを網羅してあり、ファンたちが好き勝手な討論会チャットを開いたり、ファンコールを寄せていたりするサイトが幾つかあるのだそうで。いつぞやルフィにそうやって取っ捕まったように、妙なドジ踏んで尻尾を掴まれてやいなかろうなと時々見回ってたところが、異様に関心を示してる、その知己の存在に気がついた。名前やアクセス先は巧妙に隠していたが、こっちはその道の専門家で、しかも個人的にも知り合いという相手だったから。すぐにも直接のコンタクトは取れて。知り合いの知り合いに窓口を知ってる奴がいると持ちかけて接触してみたところが…今回の、何とも可愛らしい企みを持ちかけられた。しかも、
『これが、その王子様だと。』
 これを見せたら絶対に話に乗るだろうってウソップが見せた写真は、ピントがぼけてたその上に不意打ちらしき曖昧な表情をしていた代物。だが、そうだったことが却って…逆効果でゾロからの関心を呼んだ。これがくっきりしていた写真だったなら、その時点で“全然似てねぇよ”とばかり、あっさり蹴られていたところ。
“やっぱ、あんまり似てはなかったよな。”
 ピントの甘い写真がどこかルフィと酷似して見えて。それで、そんな子からの頼みなら聞いてやってもいいかなぁと、心が揺れたというから、結構甘いというか…何ともはやな怪盗さんだった訳だけれども。
(笑) 実際に面と向かって逢った王子様は、お元気そうなところは似ていたが、やっぱり似てない別人としか、ゾロには思えなくって。まだちょっと時差ボケの残る体を長々とベッドに横たえ、そんなこんなを思い出していたところへ、

  「ぞーろっ。」

 勝手知ったる何とかで、自分に馴染みの方のルフィが、ノックもなしにフラットへと入って来る。
「お前なぁ、せめて応対があってから開けな。」
「何だよ。鍵さえ交ってない奴が言えた義理じゃなかろうに。」
 バ〜カ、それは無理から開けようとする奴にドアや鍵を壊されたかねぇからだよ。でもさ、そうされてる間に逃げる時間を稼げないか? ここに居る俺へってほど絞り込んでの用がある奴に、そうそう警戒が要る相手ってのは今んトコいねぇからな。憎まれ口めいた語調での軽口を叩き合って、今んところは最も警戒の要らない相手である坊やに“ああそうそう”と思い出したことをそのまま告げる。
「キッチンに行って冷蔵庫を開けてみ。」
「??? なんでだ?」
「いいから。」
 思わせ振りな言いように背中を押され、少々怪訝そうなお顔をしつつも…好奇心は旺盛な坊やが姿を消して、3・2・1・0っ。
「うっわぁ〜〜〜っ、美味そ〜〜〜っ!」
「そこで食うなよ? こっちへ持って来い。」
 おうっvvと打って変わっての嬉しそうな声と共に、戻って来た坊やが抱えて来たのは、緩衝材も入ったままの箱ごと放り込んでいたらしき、果物の空輸便ケース。その中には、大きめのアヒルの卵ほどもある楕円形の果実が並んでいて、
「これってスター・マンゴーだろ? 確か、R国ってトコが品種改良したって評判で、でもまだ収穫される数が少ないから、本国の中でないとなかなか完熟ものは食べられないって。」
 しかも、一個1万円はするんだってなと。さすがは腕のいい料理人の弟で、しかも食いしん坊さんだからね。こういう方面の情報にはアンテナも素早く働いて鋭いらしい。何だ説明は要らなかったかと苦笑をし、赤みを帯びた皮の表面、まるでスタールビーみたいな“*”の模様が浮き上がっているのを見て取って、
「この模様が“食べ頃”のサインなんだってな?」
「うん、そうだぞvv なあなあ…vv
 おねだり丸出しのお顔と声に、苦笑が止まらぬままな怪盗さん。
「いいよ、食っても。」
 甘いものはあんまり好みじゃないし、自分は実は本場で堪能済みだったから。やりぃ♪と大喜びの坊やが、実は食べさせてもらえるものと先回りして持って来ていた果物ナイフ。さすがは女性客に人気のグリルスナックを時々手伝ってるだけあって、ちょっと特殊なマンゴーの捌き方も知っていたらしい。縦に半分に割ってから、皮に身が残るよう、賽の目に切って、半円状の皮からめくるように押し出せば、水泳キャップに整然と張り付けられたキューブキャンディーみたいに、黄桃色の果実が並んでお目見え。いっただきま〜すとそのままかぶりつく無邪気な坊やが、
「うんめぇ〜〜〜っvv
 極楽の至福を噛みしめるお顔こそが、こちらの御馳走。嬉しい美味しいと忙しそうな坊やに苦笑し、
「何個かはグル眉にも渡しとけ。デザートを作ってくれるだろから。」
「おうっ!」
 まだ何にも言ってないし聞いてないのにね。全部をやるよと、意志の疎通は既に通っている模様。食いしん坊なこの腕白さんに、ちょっとだけ似ていた王子様を思い出す。

  『あのね? 依頼したいのは、俺を少しの間だけ“盗み出して”ほしいんだ。』

 代々の皇太子が使って来たという翡翠宮。その主寝室の床には隠し扉があって、秘宝の有処を記した地図が隠されているんだって。ひいひい爺ちゃんが若い頃乗ってたクラシックカーが、百年振りくらいに留学先だった海外から戻って来てサ。その中の隠しにあった日記に書いてあったって、ウソップが見つけてくれたの。でもでも、俺はいつだって監視されてる中にいるし、俺が出掛けてたって部屋は誰かが見てる訳だし。だから、そこにいた俺が攫われりゃあ、皆の注意はしばらくほど、全部が全部そっちに向くはずだからね? その隙にウソップが絨毯めくって隠し扉を探してくれる。
『………それって、別にこそこそやんなくたっていいんじゃないか?』
『ダメなんだって。サンジもゾロもナミも、絶対にダメって言い出すに決まってるもの。勉強がおろそかになるとか危険なことをしかねないとか言ってサ。』
 そうまで昔のものっていうと、紙なら風化しちゃってるかも知れない。虫に食われてボロボロかも。それでも良いのかって聞いたらば、良いってお答えだったので、まあいっかと引き受けた。


  “…結局、どんなお宝だったのやらだよな。”






         ◇◆◇



「ところでゾロは、俺が攫われてからもあんまり心配してなかったらしいな。」
 サンジが言ってたぞ? そうと言われて…まんざら嘘ではないのでうぬぬと口許をひん曲げるのは、あの怪盗さんにそっくりに変装されてたなんていう、いやな肩書きを頂いてしまった某国の特別護衛官さんで。
「あれは、グル眉の野郎が先におたつきやがったから。その反動ってやつだよ。」
 二人ともが泡を食ってても始まらなかろうと、サンジの浮足立ちぶりで却って冷静になれたのだと、そう言いたかったらしいのだが、
「………ふ〜〜〜ん?」
「何だよ。その声はよ。」
 彼には珍しくも、目許を眇めての目一杯怪訝そうなお顔を向けてくる。この野郎め、そんな顔しても十分可愛いじゃねぇかと、サンジさんに負けないようなことを思いつつ、
(おいこら)
「お前こそ。」
「んん?」
「俺にそっくりとかいう怪盗に、抱えられても気がつかなんだのかよ。」
「途中でちゃんと気がつきました。」
「どっからだ? 寝室から退避するときは、疑いもしなかったんだよな、確か。」
「うう"………。」
 何せあれほどの大騒動だったので、ルフィは無事だし実害もなくって良かったでは済まされず。一応の実況検分やら何やらという顛末書用の調査はあったし、今も一応は憎っくき怪盗への追っ手をかけている真っ最中。とはいえ、
『実害はなかったのだし、取っ捕まえる理由をこっちは公表出来ないからなぁ。』
 何より、そんな簡単に尻尾を掴まれるような人じゃあないからと、ウソップが心配は要らないって言ってはいたが。
「ね、寝ぼけてたんだからしょうがないじゃんか。」
「何で噛んでんだよ。」
「うっさいなっ。」
 ぷいぷいと怒ってしまった王子様だが、その実、
“うわ〜〜。もしかしてゾロってば、何か気づいてる?”
 ハラハラしていたのは言うまでもないことでございました。
(苦笑) ねえねえ、それよか、一体どんな秘宝の地図だったのサ。


   “ひいひい爺ちゃんの名誉のためにも、それは内緒だっ。////////


    ………おんやぁ?







  〜Fine〜  05.5.27.〜6.23.

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  *秘宝は各自で想像していただくとして。(おいこら)
   結局六月末までまたいでしまった“るひ誕”でしたな。
   こんなお遊びをしてしまい、
   お初のお客様には不親切極まりなくって済みませんでした。
   これもDLFと致しますので、よろしかったらお持ち下さいませです。
(笑)
   あああ、そうこうしてるうちに、ナミさんのお誕生日じゃないですか。
   ウソップのお話もとうとう書けなかったのに。
   (だってあんな展開の真っ只中…。)
   ががが、頑張りますね? それではまたvv

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