4
夜空のお散歩の途中の高台。どうやらお役所らしい建物の屋上で、ちょこっと休憩したのを覚えてる。手袋やコートにブーツでしっかり包まれてたから、ちゃんはちっとも寒くはなかったけれど、
『ほら、暖まるよ?』
どこに持っていたのかしら。サンタさんはちゃんに、カップにそそいだミルクをくれた。ほかほかでほんのり甘くて。蜂蜜の匂いがしたの。それを飲んでから少しして、何だか急に眠たくなって来て………。
「………あれ?」
眸が覚めたらおウチのベッドにいたの。カーテンが少しだけ開いてたところから、朝になったよ、起きなさいって眩しくて。ほかほかのベッドの中、ぎゅうって抱っこしていた縫いぐるみ。褐色の毛皮のトナカイさんは、でもね、ちょっとだけ小さくなってて。何よりも、昨日ほどには暖かくなかったの。
「…チョッパー、帰っちゃったんだ。」
サンタさんのお手伝いしなきゃいけないもんね。ベッドの上に起き上がって、チョッパーじゃないけど同じくらい大きな、トナカイさんの縫いぐるみを抱っこする。そんなちゃんの眸が、
“…あれ?”
壁際のクロゼットの取っ手に留まった。そこにハンガーで下げられてあるのは、昨夜の夢の中、ちゃんが着ていたコートだ。真っ赤で毛皮がついてた、温かだった可愛いコートだ。その下には手袋とブーツも置いてある。
「…わぁ〜っ。」
「お母さん、お母さんっ。あのね、昨夜ね、サンタさんが来たんだよ。」
バタバタって飛び込んだ台所には、チキンにケーキ、テーブル一杯にたくさんの御馳走。小さなツリーは山のようなお菓子の袋に埋もれそうになっていて。お母さんは一体何があったんだろうかって、ただただ呆然としていたの。
「…サンタさん?」
「うんっ。あのね、サンタさんがトナカイさん、お迎えに来たの。そいでね…。」
手振り身振りで一生懸命。お母さんとお父さんにはお話ししても良いって、サンタさんも言ってたから。小さなちゃんは呆然としているお母さんへ、昨夜のお話しをしてあげたの。やっぱり半信半疑だったお母さんだけど、ちゃんがあんまり幸せそうだから、きゅうって抱っこをしてあげて。何度も何度も十字を切って、神様に感謝をしていたみたいです。
◇
「なあなあ、昨夜、おれサンタ見たぜ。」
「あ、俺も俺もっ!」
「俺も見たっ! ソリが走ってたの!」
「そいでさ、ソリにさ、が乗ってなかったか?」
「うんうん。あれってだった。」
「いーなあ、。」
「ねぇ、お母さん、どうしてちゃんだけ?」
「きっとちゃんがいい子だったから、サンタさんがご褒美にって乗せてくれたんだよ。」
「ふ〜ん。」
「さあさ、ケーキを切りましょう。」
「はぁ〜い。」
◆◇◆
朝一番にお買い物のやり直しをしてから、慌ただしく出港したゴーイングメリー号。遠くなる港町を船端から眺めやりつつ、チョッパーは何だかご機嫌だ。さっきから鼻歌が止まらない。町に流れてたクリスマスソング。途中からハミングが二重奏になって、振り向くとロビンが笑ってる。
「なんか面白いクリスマスだったぞvv」
「そう? でも、あなたのお誕生日も祝いしなくちゃね。」
入っちゃダメだぞとルフィとサンジから言われていて、自分だけがキッチンに入れないので何だか退屈だ。
「作り置いてたお菓子も全部、ちゃんにあげちゃったから。一から作り直してるそうよ。」
「うわあ〜、大変なんだ。」
だったら尚更“お手伝い”したいのに。お前の誕生日なんだから、お前が“手伝って”どうすんだ…と、ウソップにおデコを“つん”ってされちった。大きな眸をちょこっとだけ“ハの字”にして、どこか困ったようなお顔をしているトナカイさんに、ミス・ロビンは小さく笑って、
「大丈夫よ。皆、とっても楽しそうだから。」
心配は要らないわよと窘めたが、
「……………じゃあ、やっぱり混ざりたかったな。」
「?」
「オレも皆と“楽しい”がしたいもん。」
ロビンはくすくすとまた笑った。なんて可愛いトナカイさんだろうか。
「それは仕方がないのよ? お誕生日を祝ってもらう側の人が、唯一しなくちゃいけない“我慢”なのだから。」
「そか。じゃあ仕方ないな。」
青いお鼻をひくひくと震わせながら、チョッパーは笑うとまた海の方を見て、クリスマスソングをハミングしだす。
――― ねえ、ドクター、ドクドリーヌ。
オレさ、サンタクロースのトナカイと間違えられちゃった。
人違いなのに、何だか嬉しかったよ?
どうしよっかって思ったけどさ、どっかで“大丈夫”って安心してた。
だってオレ、海賊だもんな。
仲間を信じなくてどうするよ、だもんな。
えっえっえっえっvv
〜Fine〜 02.12.20.〜12.21.
*物凄く“やっつけ仕事”になってしまいましたが、
どうしても間に合わせたくて頑張ってみました。
チョッパーのお誕生日、やっぱりお祝いしたくなりまして、
去年と同じXmasネタですが、
しかも何故だか“ドリー夢”ですが、
お楽しみ頂けましたなら、筆者もたいそう嬉しいです。
←BACK/TOP***
|