キミが隣りにいる奇跡

       〜かぐわしきは 君の… 8

     7



某ゆにくろの、お値頃なウルトラライトダウンもある中、
今年は、高価なダウン製品やコートも売れ行き好調なのだとか。
羽毛は高値だそうだけど、
今年もまた途轍もない極寒が予想されることと、
消費税が上がる前に…という駆け込み需要だったりするとかで。
こういった格好の消費の向上をもって
“景気が良くなりつつある”とか
斜めなことを言い出したらあきまへんで? 某首相。(う〜ん)
それはそれとして、
かつての憧れだった、
ビクーニャのストールとかも売れまくりなのかなぁ…。




     ◇◇


日本のテーマパークなどでは、
ハロウィンが終わると すぐにもというノリで
それはきらびやかなイルミネーションが広場に飾られ、
大きなツリーもしつらえられて、
やたらとムーディーな
クリスマスショーを紹介するCMが流れ始めるが。
キリスト教では“アドベント”というのがあって、
降誕祭のある週を含めた四日曜から数え始めるものだとか。
感謝祭も終え、12月に入り、
ニューヨークのとても有名なクリスマスツリーの点灯式が行われ、
これでやっと、正式な“もうすぐクリスマス”感もひとしお

 “…なんていう厳密なことを構える人は、
  まだまだ日本では少なかろうね。”

ブッダ様がそう感じたのも無理はなく。
こちらは、朝食を食べながら観ていたニュース番組の中で
その点灯式の模様も観た格好の最聖のお二人だったのだが、

 「うわぁ、大きなツリーだねー。」

アメリカは何でも大きいねぇなんて
それは無邪気に感心していたイエス本人からして、
クリスマスがどういう日なのか、判っているやらいないやら。

 “本人に直接訊いてみるのが、
  一番手っ取り早いんだろうけれど…。”

もしかして…という言い方は失礼ながら、
今年はさすがに真っ当な把握をしていたとしても、
はたまた 相変わらず微妙に誤解したまんまであっても。
あまりに間近に迫っている日なだけに、
キミの誕生日だろうに とは、さすがに言いにくいもの。
何かしらの形でお祝いをと考えている身としては、
それを“サプライズ”なものへと持ってけないからで。

 “そんな芝居がかったことを構えるから、
  気張りすぎて空振りしたり、
  気まずい形で露見しちゃったりして、
  結果として失敗するのだっていうのは判るけど…。”

だとして、それならば
キミのお誕生日だからお祝いするねと、
前以て本人へ大々的に言っちゃったとしても、

 “クリスマスとは別個のものだと
  思い込まれちゃうかも知れないしなぁ。”

あれですね、祭日が誕生日な人と同じ感覚ですね。
祭日だから学校に来れなくて、
おめでとうと言われるだけでもいいのに、
そういう形でさえ祝ってもらえないという場合もあるアレですね。
夏に祭日が少ないのはそのためかと思ったもーりんは、
勿体なくも ブッダ様より1日お姉さんです。(いや、日にちが)
また、お正月生まれとかクリスマス生まれのお人は、
さすがに忘れることなく祝ってもらえるものの、
プレゼントやお祝いのケーキが全国行事と一緒くたなので
なんか詰まらなかったという話も良く聞きます。
つまり、

 『そっか、そういやそうだったね。
  わたしの誕生日って、クリスマスと同じ日なんだ。』

イエス様の場合も、
こういう流れになるかも知れないということですね。
かと言って、
クリスマスという日は、あのね?…と
更に紐解くのは、それこそつや消しな気もしますしね。
いっそのこと、

 『そうだよ、
  世界中がクリスマスを祝っている中だけど、
  わたしは君の誕生日の方が大切なんだよ、モナムール』…って、

 “なんですか、そのもな何とかって……って、あ……vv”

 「…っ、……vv////////」

まずは余計な付け足しに気を取られてからながら、
今、それ良いかもとか思いませんでしたか、ブッダ様。
心の中で ポンvvと手を打っていませんでしたか?
皆様に お見せ出来ないのが残念なほど、
凄っごく良い笑顔になっておられますけれど。(笑)

 “いっ、いやそんなっ。
  そんな あざといことなんかっ、
  ちちちち、ちっとも全然っ。///////////”

真っ赤になっての ぶんぶんぶんと、
勢い良くかぶりを振っておれば、

 「? ブッダ? どうしたの?」

ついでなのか、
東京の有名どころイルミネーションも紹介されていたのへ、
綺麗だねぇと頬笑んでいたイエスが、
ようやくブッダの様子がおかしいことへと気づいたようで。
ひょいと不意な間合いでお声を掛けられて、
ますますと慌ててしまった釈迦如来様、

 「い、いやいや、なんでもな…。」
 「わあ、大丈夫っ?!」

かぶりの振り過ぎか、軽い目眩いがしたらしく、
コタツの天板へ手をつくほど、
くらりと倒れかかったブッダだったことへこそ、
あたふた慌てたイエス様だった、
これまた相変わらず にぎやかな朝だったようでございます。





さて師走というと色々とやることは一杯で、
対外的には お歳暮の手配や年賀状の準備。
お家のことで言えば、
迎春準備…は クリスマスと同じく まだ早いとしても、
大掃除はいつ手掛けたって良いくらい。
普段のお掃除ではいちいち手をかけないところを
この機会にやっつけたいブッダ様、

 「まだ何とか暖かいうちに、
  窓ふきや網戸掃除は済ませないとね。」

あとカーテンも洗いたいし、
畳を上げて隅々まで一掃したいし。
換気扇も年末にお料理を張り切る前に磨いておかなきゃだし、
電灯の笠も分解掃除しておきたいし。
古新聞や雑誌も、最終収集日までに まとめておかなきゃだし。
そうそう、コタツ布団とコタツ敷きも、
物干しで広げてはたいて埃を払わないと…と。
この小さな六畳間から、
いくらでもお掃除のネタを掘り出してしまえる彼なのへ、
イエスとしては感心しきり。

 “やっぱりブッダって 奥さん業に向いてるのかなぁ。”

こらこら、イエス様。(苦笑)

 「じゃあ今日はとりあえず、窓を磨いて網戸を洗おうかvv」

天気予報によれば、一日中 快晴で気温も高めとのことなので、
窓を開け放っていても大丈夫だろうという判断から出された指示に、

 「ううう、は〜い…。」

主夫モードのブッダ様に誰が逆らえようものですか。
そんな風に思いつつの渋々と、
でもでも、
茨の冠をタオルをねじった鉢巻きに自主的に取り替えて、
ヨシュア様もまた、頑張る所存を示して立ち上がる。
窓と言っても、
キッチン前の小窓は
ブッダが毎日、食器洗いの仕上げにと磨いているし。
あとは腰高窓が二面だけ。
なので、クリーナーで磨くのはブッダに任せ、
その間に、網戸を外して階下の外水道がある洗い場へ運び降ろし、
薄めた洗剤でざかざかと、泥や油汚れを落とすと水洗いですすぎ、
壁へ立て掛けて干すところまでをイエスが頑張れば。
今日は干し場を自分たちが使っていい日だったのでと、
洗濯機で洗ったカーテンを抱え、ブッダが干し出しにと降りて来て、

 「わあ、綺麗になったねぇ。」
 「でしょーvv」

えっへんと胸を張りかかったものの、
ひゅんっと風が吹くと、さすがに水で濡れた手はたちまち冷える。
動き回ったことでちょっぴり体温が上がったか、
凛々しくもジャージの袖を腕まくりしていたイエスだったが、
手元を冷ました風には、
思わずのこと おおうと肩をすくめたものだから、

 「あ、ほら早く部屋へ戻って。」
 「うんっ。」

案じたブッダから急かされて、
自分の二の腕を自分で抱くようにし、
たったかと二階へ上がって行けば、
コタツの脇には、広げた新聞紙の上に外された電灯。
勿論のこと、イエス様ばかり働かせていませんとも、
ブッダ様も電灯の笠のお掃除を手掛けておいでで、

 「これ、もう済んでるの?」
 「え? あ・うん。」

じゃあ提げるねと、
長身だし腕も長いイエスがひょいと、
さすがにこれへは踏み台も要ったが、
それでも難無く元の位置へ設置し直すと、
コンセントも差し直しての元通り。
それから手を洗いに流し台へ向かえば、
コンロに向かっていたブッダ様、
細かく刻んだ野菜を、まずは刻みニンニクで炒めて取り出し、
そこへ溶き卵とごはんを手際よく投入して煽り炒めて…と、
いかにも食欲をそそる香ばしさのチャーハンを作っておいで。

 「わあ、いい匂いだねぇvv」
 「でしょうvv すぐ出来るからね。」

少し早い目だけど、お昼にしちゃおうねと、
実は冷蔵庫の中も拭いたついでに整理したらしく、
それでのこの段取りというから、ある意味 無駄がない流れ。
イエスが広げていた新聞紙を片付けている間に、
こちらも野菜たっぷり、小さな浮きみパスタも混ざったスープ、
なんちゃってミネストローネを添えて、
二人揃って“いただきます”と手を合わせ、
ほかほかで仄かにスパイシーなチャーハンを美味しくいただけば、
冬場ならでは、高度が低いからこそ室内の奥まで届く陽が
押し入れの襖にあたって明るいし暖かい。

 「窓がきれいになったから眩しいくらいだね。」
 「そうだね。」

今月のお掃除、この暖かさと競争になるねと、
妙にワクワクしておいでのブッダ様。
主夫魂に火が点いたらしいのも、時期的に まましょうがないかと、
諦め半分ながら イエス様が納得しておれば、

 「あ、ご飯粒。」

ひょいと手が伸びて来て、
イエスの口許近くにくっついていた米粒を、
ブッダの優しい指が摘まみとる。

 「あ、ごめん。//////」

小さい子供みたいで恥ずかしいなと赤くなる彼なのへ、
お髭はあんまり汚さないのにねぇと、
ふふふと苦笑し、そのまま自分の口へ運んでしまうのは、
無自覚な所作であるらしく。
イエスもこのごろではいちいち何か言うこともない。
以前は、例えばその手を捕まえて
ぺろんと返してもらって(?)いたりもしたが、

 『あ、えと…。/////////』

くすぐったいからか、
イエスが口許をくっつけることになるのが照れるのか、
それだとブッダが真っ赤っ赤になって当惑してしまうので。
しまいには

  もう取ってくれなくなっちゃうかも知れない

のは味気無いからと(その前にくっつけないよにしなさい)笑
そんな愛情あふるる所作をナチュラルに披露してくれるの、
見られなくなるのは惜しいとばかり、黙っていることにしたらしく。

 “私にくっついてたものを食べちゃうのが、
  ちょっと嬉しいなんて言ったら、変なイエスだと思われようし。”

でも、何で嬉しいのかな、私やっぱり変なのかなぁと、
仄かに真っ赤になるお顔、陽の目映さが隠してくれる中、

 “最近はイエスも慣れちゃったか、
  ごめんて言って私の手を捕まえなくなったよねvv”

コタツのお向かいで、
英字パスタの入った具だくさんなイタリア風スープを口へ運びつつ、

 “ああいうのって子供扱いみたいだし、
  お行儀悪いぞと指摘されてるみたいで
  そこがイヤなのかなって、思ったりもしたんだけど。”

多少は照れつつ、でも“ふふーvv”と笑っているイエスだから。
そうじゃあなかったみたいだしね/////////と、
こちらさんも…実はかすかにときめいておいでなブッダ様だったりし。
最初は勿論のこと“ついてるよ”と言ってあげていたのだが、
それだとなかなか指が辿り着けないイエスだったので、
ほらここだよと、取ってあげた方が早くって。

 それから、取ってあげた米粒は……あのあの。/////////

台ふきんで拭うという処置が、恐らくは“正解”なのだろうけれど。
米粒だって食べられるために生まれた存在だし、
汚いものに こぼれちゃってた訳でなし。
それどころか……

 “ああでも、イエスにくっついてたもの、抵抗なく食べちゃうのを、
  しかもちょっと嬉しいことだなんて思ってるのが判ったら、
  変なブッダだと思われるよね、どうしよう。////////”

でも、何で嬉しいのかな、私やっぱり変なのかなぁと、
仄かに真っ赤になるお顔、陽の目映さが隠してくれる中、

 “何であんなに慣れてるのかなぁ。
  やっぱりラーフラくんにしてあげてたのかなぁ。”

でも、王族の王子様がそういうことするかなぁ?と、
気になると言えば…が、別の方向へ逸れているイエス様だし。
ブッダ様はブッダ様で、

 “何でこんなに慣れてるものか。
  マリアさんとか、もしかしてペトロさんとかにも
  してもらっていたのかなぁ。”

でもそれって、教祖として示しが
…そういうことにはこだわらないイエスかなぁと。
こちら様も、気になると言えばの内容が、
別の方向へ逸れているブッダ様だったりしで。

 「あ、イエス、
  昨夜のプチトマト、まだあるけど食べる?」

 「うん、ほしいなvv」

冷たいものだから訊いてからと思ったらしく、
食べたいとのお返事へ よしきたと立ってゆき、
冷蔵庫から小ぶりの鉢を取り出してくるブッダであり。
差し向かいの元の場所へと腰を下ろしつつ、

 「はい、あ〜ん。」
 「あ〜ん♪」

最初の1つを摘まみあげ、
どうぞと直接お口へ食べさせてあげたブッダだったのは。
それへ衒いなくお口を開けて、
もむもむと美味しそうに食べちゃったイエスなのは。


  どうやら、意識もしてない
  “いつものこと”になっている
  そんなお二人であるらしいです、はいvv






    お題 F“当然のように”




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  *神戸のルミナリエも始まりました。
   師走もたけなわ(?)そろそろ押し詰まって来ましたが、
   別の色々が襲い来たので
   ちょっと集中出来ませんでした。(う〜ん)
   もう少し詰め込む予定だったところまで
   またまた、辿り着いてませんので、
   続きで頑張りますね。


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