FUJISAN
剣ヶ峰 (3776m)

白山岳 (3756m)

久須志岳 (3740m)
              ( 2011.11 十里木高原より )
平成22年8月19日(木)〜20日(金),1泊2日
   ★ 総所要時間: 10時間 50分
   ★ ハイキング標高差: 1806 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


 ついに‥と言うか、ようやく機は熟した。 久々に揃い踏みとなった「インチキ山屋」が、満を持
して日本の最高峰 「富士山」 (3776m) に挑戦する。 が、モチロン! 富士山にはロープウェイな
ど無いから、 “インチキ” の出番はない! (笑)
 富士山を知らない日本人はいないであろうし、世界的に見てもその知名度と外観の美しさは
トップレベルの山岳である。 今さら説明は必要ないと思うが、何と言っても 標高は2位以下の
アルプスくん達に583m以上も差をつけて、ダントツに聳える独立系の巨峰だ。
富士登山の人気は凄まじく、初心者からベテランに至るまで (インチキさんも含め) 実に様々
な人達が毎年訪れている。 普段は山登りなどに全く縁がなく、興味がない人でも 「富士山」だ
けは特別な存在であるようだ。 最近新聞で知ったのだが、7年間ほぼ毎日登って年間100回程
度、都合750回以上も登り続けている (現在も継続中) 方もいらっしゃるそうだ (驚)。
その富士登山は、基本的に7・8月の2ヶ月間に限定されるため登山者が集中し、特に週末や
お盆期間では大混雑して登山道が渋滞することも珍しくないという。 4本の登山道に山小屋が
合計で60軒以上、駐車スペースは2300台以上もあるのに収容しきれない日が多いというから、
まったくもって驚きだ。

    
          富士山 ・ 山頂部  ( 第二火口棚 付近から望む 雪渓と剣ヶ峰 )

 山頂を目指す4本の登山路は、登山口の標高が低い順に 「御殿場口 (1440m)」, 「須走口
(1970m)」, 「吉田口(河口湖口; 2305m)」, 「富士宮口(2390m)」 となっており、インチキ山屋
的には最も早く山頂に到達できる富士宮口を利用したいところだが (笑)、 今回は敢えて標高
差のある 「須走口」 (「富士山東口」, 「東表口」などとも呼ばれる) からの登頂をめざした。そ
の理由は次の通りだ。

 まず、御殿場口は距離が長すぎて体力的に無理なので除外した。 一番人気の吉田口は、諸
施設の充実と交通アプローチが至便である為に利用者が最も多く (特に ”にわかハイカー
が多い) 混雑度が高いのでパス。 残る2つのルートのうち須走口は、比較的利用者が少なく静
かな山登りができる (ただし、本八合目から上は吉田口と合流するので、静かで空いているの
はそこまでだが…) のと、森林限界が 2700m 付近と高めである為、とかく単調でつまらないと
風評されている富士登山路の中でも 緑に覆われている範囲が広く、高山植物も比較的多く見
られる事などがこのルートの特徴だ。 さらに、下山道では 「砂走り」 と呼ばれる砂礫の堆積し
た急斜面の専用ルートがあり、豪快な砂の急斜面を一気に下る (御殿場口にも、更に長距離
で豪快な 「大砂走り」ルートがある) など、最も景観の変化に富んだコースであることから須走
口を選択した。
また、コースが真東に面している為、定番の 「御来光」 を眺める際にも、必ずしも山頂からで
ある必要はない (登山コースの途中からでも眺められる) のも理由の一つだ。 まあ要するに、
どうせ登るなら色々変化があって楽しい方がいい…という、“インチキなくせに欲張りで安易な
選択” とでも言おうか!? (笑)

          
                 富士山・剣ヶ峰 ( 久須志岳 より )

 登山コースが決まったところで、次は日程と段取りだ。 やはり標準的な1泊2日の日程が (
山病
を回避するためにも) ベストであろう。
御来光を日本一の山頂で迎えたいという登山者が圧倒的に多いそうで、その為に真っ暗な登
山道をカンテラ下げて (笑) 登頂するようだが…、我らは山頂での御来光にはこだわらない
し、夜道は嫌いだし、人が多いのもイヤッ、極寒の深夜に起きるのもゴメンなので…(笑)、 1日
目は八合目あたりの山小屋までゆっくり時間をかけて登り、充分にからだを休める事とした。
 翌日、御来光を山小屋で迎えてから出立し、朝の清々しい空気を浴びながら山頂へ向かう。
お鉢めぐり」で最高峰の 「剣ヶ峰」 (3776m) を経由してから、「砂走り」 で下山する… とい
った行程での初登頂を計画した。 あとは、天候と体調と運の問題である (笑)。
 また、大混雑の予想される週末を避けて日取りを決め、駐車場が空き始める (前日に山頂
御来光目的で入山した人達が帰りはじめる) 時間帯として、午前9時から11時までの間に新五
合目の登山口に到着するように入山する事とした。 勿論、山小屋はあらかじめ予約を入れて
おいた (富士山の場合、予約なしでの宿泊は 無理だそうだ)。

         
                剣ヶ峰 から 大内院(火口) を見下ろす

 東名高速道路・御殿場IC を降りて、国道138号線を 「山中湖」方面に向かう。 例によってい
つもの事ながら、下界からは富士山の姿は見えていない (悲)。 天気予報では、連日晴れの日
が続いていたのに、今日に限って 「晴れのち、曇り時々雨」 の予報だ (誰かさんの行いが悪い
のだろうか…?! 笑)。
 中央道から連絡する東富士五湖道路・須走IC の脇を抜けて 「ふじあざみライン」に入る。
かなりの勾配であるが、御殿場から都合40分ほどでふじあざみライン終点の 「須走口新五合
」 に午前10時前に到着した。 前日、駐車場に停められず下り車線に路肩駐車した車列が、
平日であったにも関わらず2kmほど手前まで続いていた。 途中、ふじあざみラインを下ってき
た車と10台以上すれ違ったので、恐らく駐車場には空きが出ているだろうと期待していたが、
実際には 第1P から 第3P まで (合計約200台収容) 殆ど満車状態で、何とか一番上段に位置
する 第3P の枠外にかろうじて駐車することができた。
まずは、ラッキー!! といったところか(笑)。
 標高1970mまで一気に上ってきた訳であるから、30分以上の時間をかけてゆっくりと身支度
を整え、周辺を散策したり軽い準備運動をして体を高度に慣らす。 この間にも車は次々と上っ
てきており、次第に枠外から場外へもはみ出していった。 いやはや、タマゲタ状況だ (汗)。

         須走口新五合目 (1970m )

 午前10時30分、いよいよ新五合目Pを出発し行道を開始する。 駐車場のすぐ上には大きく
迫る富士山の姿があるはずなのだが、全身に白いガスを纏っており ”御隠れ中” である。第
1P の駐車場入口まで下り、「富士山須走口五合目」の標識が立つ登山口に入る。
早速2軒の山小屋兼・土産物売店が並んで待ち構えており、客寄せ争いをしている (汗)。 ここ
で富士山名物? の 「金剛杖」 を(記念も兼ねて) 1本購入し、今回の強力な “助っ人” になって
頂いた (笑)。
     須走口 (富士山東口) 登山口 

 売店前を通り抜けて、まずは 「古御嶽神社」 (2000m) へと向かう。 小さな社がポツンと建っ
ており、みんな登山の無事を祈願しているようだった。 我らは素通りして (笑)、その裏手から
本格的に始まる樹林帯の登山道へと歩を進める。 始めのうちはツガ、モミなどの針葉樹が主
体で緩やかな登りが続く。 時折陽が差す程度の薄曇りではあるが、暑すぎないので丁度いい
感じだ。 さすがに登山道もよく整備されていて、歩きやすい。
時間はたっぷりあるので、小休止をはさみながら順調に進むと辺りは広葉樹林へと変わって
ゆく。 やがて、所々で砂礫地が開いて左側 (南側) が見渡せるようになり、砂走りの下山道を
下っている人達が見えた。 登り始めてから約90分、ようやく最初の休憩ポイント、新六合目
される 「長田山荘」に到着した。
既に標高は2400mを超えているが、それでもまだ暑くてTシャツは汗でビッショリだ! 塩分を補
給するため、持参したキュウリの浅漬けをまるごと一人1本ずつペロリとたいらげる。 さらにマ
ユは、味噌汁が飲みたいと言い、山小屋で注文して塩分を増強していた (!!)。 これが、てっきり
カップ味噌汁 (インスタント) が出てくるかと思いきや、ちゃんとしたホンモノ (!?) の味噌汁で、し
かも絶品の旨さだったのだ (笑)

   
         樹林帯を緩やかに進む             最初の休憩地 新六合目 (2420m )

 充分にエネルギーを補給したところで、再始動する。 程よく身体も慣れてきて順調に上へと
進むと、次第に背丈を越す樹木は姿を消し低木と砂礫が主体となってきた。 そろそろ森林限
となるが、沿道には幾種類かの高山植物も散見できる。
やがて前方の視界は大きく開き山頂部も視認できるようになる。 六合目の 「瀬戸館」 に達し
たところで、2度目の休憩を取る。 この辺りからも南側の下山道 「砂走り」 の様子がよく見え
る。
   
      六合目、下山道 (砂走り) が見える        森林限界を越え 視界が大きく開く

 六合目を過ぎると、足元からは緑が少なくなり、黒い溶岩混じりの荒涼とした斜面を登る。 途
中、本六合目にあたる場所で山小屋跡の石積みと小さな石碑を通過し、着々と高度を上げた
ところで七合目の 「大陽館」 (2930m) に到達した。すでに3時間半を経過し、さすがに疲れは
隠しきれないので (汗)、 ここで少々遅めの昼食をとり身体を休める。

   
          山頂が見え始める                    七合目 (2930m )

 七合目を過ぎると傾斜が強まり、肌に当たる風も冷たくなってきた。 山頂部がガスに覆われ
太陽が隠れた事もあり、もはや半袖シャツ姿では限界の為、長袖のシャツを重ね着する。
標高は3000mを超え、酸素も薄くなってきたようなので (そんな気がするので)、 水分と同時に
酸素補給もしながら、部分的に下山道と重複した斜面をさらに上へと進む。
見晴館」の建つ本七合目に到着すると周囲は白く覆われ始めるが、視界を遮るほどのもの
ではない。 この本七合目の標高は3140mで、吉田口や富士宮口での八合目に相当する高さ
だという。 この 「合目」 って一体どういう尺度で、どうやって決められたのか? 前から不思議
に思っていたのだが…、ちょっと調べてみると富士山の場合についても諸説があり、どれも定
かな裏付けはないようだ。 まあ、だいたいの目安! って、事でしょうか!? (笑)。

         3000mを越えて、本七合目の鳥居を望む

 さて、本日の目的地 (宿泊地点) となる本八合目まであと200mくらいだが、登り一辺倒の道
はザラついて滑りやすく、足運びも辛くなってきた。 さすがにマユは元気で、まだまだ足取りも
しっかりしている。 ママは 本格山屋のK子さんに貸して頂いた ストック 2本を上手く活用して
力配分しているようだ。 息も少し上がってきたので “応援グッズ” として頂いた酸素缶も強力
なサポートを果たしている。
自分はといえば、写真を撮るのを口実 (?) に、いちいち立止まって小休止しながら、重たくなっ
てきた足を引きずり… カメより遅く進むので (笑)、すぐ二人に距離を空けられてしまう! (汗)。
まあ、急ぐ必要もないのでマイペースで歩く (実際、それが大事だと思います! 苦っ)。 金剛杖
に体重を預けてエッチラ歩いていると、下山してきた人に 「がんばってください!」 と声を掛けら
れる始末だ。 よっぽど辛そうに見えたのだろうか!? (笑)  しかし、見た目は悪くても気持ちの
方はしっかりしているので大丈夫だ。 ただ、足腰が少しワガママなだけの事である (呆)。

        八合目の直下、砂礫の急斜面 

 いよいよ八合目にあたる 「江戸屋」 まで来た。 ここには、吉田口と須走口の下山道の分岐
があるので確認をしておく。 登りはこの後の 本八合目から先 (明日のルート) が吉田口と合流
して共通の登山道となるが、下りの方はここまでが共通で分岐することになる。 ここで間違え
て下ってしまうと 全く別の場所に出ることになるので注意が必要だ。 下の登山口まで戻ってか
ら気づいたのでは遅い!! ハッキリ言って、”やり直し” は不可能に近いと思うので…(笑)。 
 休憩したところで、本日最後の登りにかかる。 宿泊予定の山小屋まであと一区間、もう目の
前 (上) に見えている。 あたりを白く覆っていたガスも取れてきたので、ふたたび山頂方面も視
認できる。 ママとマユに遅れること5分 (10分位だったかも…?!) で本八合目の 「胸突江戸屋
(3380m) に到着した。

 時刻は午後4時半すぎ、青空がきれいで空気もウマい。 山小屋前のテラスでしばらくマッタリ
した後、宿泊の手続きをする。 寝場所に案内されてから、10分後には食事 (夕食) を済ませて
くれとの事。 食事所はかなり狭いので、来た人からサッサと済ませて、早く場所を空けろという
事なのだと思う。 まあ、事情はよくわかっているので仕方ないとはいえ、急き立てられているよ
うで慌ただしい。

        本八合目 (3380m)、 胸突江戸屋・前

 富士山の山小屋では “おかわりなしのカレーライス” が定番だと聞いていたが、その通り
だった (笑)。 しかし、量も少なくあまりにも物足りないので、(なぜか) お汁粉と、トン汁を追加
注文し 三人で分けあって胃に収めた (笑)。 ちなみに、モチロン!! お湯を入れるだけの ”インス
タントカップもの” である。 何もすることがないし疲れてもいたので、すぐに就寝となった。
まだ7時前だというのに、周りの人たちも同様だった。 おそらく大半の人たちは深夜1時ごろに
出立 (起床) して、山頂で御来光を迎えるからであろう。
それにしても 一人当たりのスペースは狭く、寝返りすらできない状況なので三人とも殆んど眠
れなかった。 まあ、山小屋とはそういうものなので、今更どうこう言うべきではないが…、目を
閉じて身体を休めることに専念した。

                 ****** ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ *****      

 予想通り、殆んどの人は深夜にドタバタと (騒々しく) 出立し、午前2時頃には静けさが戻っ
た。 日の出時刻は5時前後との事なので、その頃に山小屋のお兄さんが起床を促して声を掛
けてくれた。 我らを含め、残っていた人たちはみんな東面の展望台 (テラス) に集まって御来
光を待つ。
人が多くないので、それぞれにベストの場所を確保できて快適だ。 混雑した山頂で重なり合っ
て、人の頭越しに見るよりは遥かにいい。 実際、天候も幸いして素晴らしい写真が撮れた。
午前5時5分、東の雲海からの見事な御来光に感激する。 きっと山頂では歓声も上がってい
るに違いない (祝)。

   
        AM 5:05  本八合目より               果てしなく広がる朝の雲海

 身支度を整え、朝食のお弁当を受け取って本八合目の山小屋を出立。 まだ朝焼けに染まる
さわやかな登山道を、上空に見える山頂目指して歩く。 吉田口からの登山者と合流するが、
人の数は多くない。 日程と行動計画のチョイスが (我ながら) 適切だったからだと思う。 ピーク
帯では列をなして歩いたり、渋滞することもあるというから、周りの人達を意識することもなく
(その意味で) 快適な山登りができたのではないだろうか (満)。
 ほどなく、八合五勺の 「御来光館」 に到着。 山頂で御来光を迎えた人たちが早くも列をなし
て、眼下の下山道を下ってゆく様子を眺めながら、ここでゆったりと朝食のお弁当を食べること
にした。

   
        八合五勺を越え、近づく山頂               九合目 (3570m )

 しかし、余裕をみせていられたのもここまでで (笑)、この後は更に傾斜が強くなり溶岩のゴロ
ゴロする赤茶けたザレ場をジグザグに折り返しながら登山道が伸びている。 昨夜の寝不足も
加わって、足の重さだけが増加したようだ (笑)。そして、写真を撮る間隔も何故か狭くなってき
た(??) 
九合目(3570m) の鳥居を越えると、山頂はよりハッキリと見えてくるが、なかなか近づいて来
てはくれない。 この辺りが今回最大のガンバリどころだ。 最後は駒犬と白い鳥居が待ち構え
る、胸突き八丁の石段を登って ようやく 「須走口頂上」 (3710m) に到 達した。

    
        山頂部がはっきりと見えてくる           須走口(吉田口)・頂上 (3710m )

 山頂に上がるとさすがに人口が多く賑わっている (笑)。 だが、身動きが取れないような大混
雑ではないので、まずは座れるスペースを見つけて休息を取ることにした。 久須志神社と、記
念の土産物などを販売する 山頂山小屋の露店があり、一瞬ここが日本一の山頂である事を
忘れてしまいそうな光景が展開している。
多少の疲れはあるものの、”インチキをしなかった山屋” たちの体調に問題はないので、これ
より日本最高所のトレッキングコースである 「お鉢めぐり」 を敢行する。

    
      久須志岳より、大内院と剣ヶ峰を望む       白山岳 (3756m) の南裾へと進む

 久須志神社のすぐ裏手を上がって、丘のように盛り上がったところが 富士山頂8座の一角
久須志岳」 (3740m) だ。 冷たい風が吹き抜けているので、山頂部はさすがに寒い。 真夏で
も防寒着はやはり必需品である。
ここで初めて、山頂大火口の 「大内院」 と、その奥に聳える最高峰の 「剣ヶ峰」 が姿を見せ
る。 思わず 「凄い!」 と唸らせるほどの壮大な眺めだ。 我らはここから北回りで山頂を周回す
ることにした。
「富士山」 という呼名も他の山岳同様に総称である。 山頂部には直径約800m, 深さ約200mの
大噴火口を囲むように8つのピークが集まって構成されている。 「お鉢めぐり」とは、これら8つ
のピークを極楽浄土を現わす八葉の蓮花に見立てて一周したことが起源であるということだ。

    
     白山岳南麓より 大内院と金明水 (右下)         もう一つの火口 小内院

 まずは、久須志岳から すぐ北隣に聳える 富士山第2の高峰、三角点のある 「白山岳
(3756m) 方面へと向う。 コースは白山岳の南麓を回り込んで第2の小火口 「小内院」 の縁へ
と続くが、左手の下方には 「金明水」 としてあがめられている霊水場が見える。 下に降りて近
くまで行くこともできるようだが、ここは素通りして上から眺めるに留める。
小内院の縁を通って山頂の西縁へと出る。 ここから初めて、富士山の (須走口から見て) 裏
側の展望が開ける。 見事な雲海に邪魔されて下界の景観は得られないが、南アルプスの高
峰群が雲海から頭を出している。 アルプスを下に見るとは、さすがに ”富士山” はニッポンい
ち!!
、”おじさん” とは違う (寒)、 頂上だからといって ”下らない” 冗談はさておき (!?)、西縁を
さらに進むと足元から切れ落ちている荒々しい谷のようなところがある。 ここが富士山の西面
に刻まれている 「剣ヶ峰大沢」、 俗に言う 「大沢崩れ」 である。
これを過ぎると 「西安河原」 と呼ばれる平坦地を歩く。 ここにはかつて観測装置や休憩所が
設置されていたそうだ。 この辺りから眺める大内院も凄い迫力で火口の底部 (標高3535m) も
視認できる。
続いて、いよいよ間近に迫った「剣 ヶ峰」に向かって、西縁のスロープを緩やかに登る。

    
    山頂西縁・大沢崩れ、 南アルプスを遠望       西安河原、 次第に近づく剣ヶ峰

 そして、ついにインチキ山屋が日本最高所の 「富士山・剣ヶ峰」 (3776m) に立ったのである
(祝)。 これ以上高い場所は日本には存在しないのだ!!  
旧富士山測候所の立派な建築物が残されているので360度の展望は得られないし、(正直言
って) チョット山頂っぽくない気がして興ざめ気味だが…、人工の階段を上った観測所の前に
“日本一を示す石の標柱” と2等三角点が埋設されている。
この標柱を前に記念撮影するための順番待ち行列が 階段の下までつながっていた。 この時
はせいぜい7〜8m位の行列で、時間にしても10分以内だったかもしれないが、並ぶのはキラ
イなので 行列に加わることはせず、スキをみて標柱だけ撮影したら…、逆光で真っ黒でした!!
(笑)。 混雑時は、この為の行列に30分以上も並ぶそうだ (驚)。

   
        富士山・剣ヶ峰 (3776m )          剣ヶ峰から続く砂礫の急坂 ・馬ノ背

 日本最高所の滞在時間は10分足らずで (笑)、剣ヶ峰から 「馬ノ背」 と呼ばれる急坂道を下
って 「三島岳」 方面 「富士宮口頂上」 (3720m) 地点へと向かう。 この馬ノ背は正に急坂で、
しかもズルズルと滑って危険なため、降りるのにかなり苦労した。 逆回りでここを登ってくる人
もいたが、この登りは相当に辛いだろうと思った。
富士山表口ともいわれる富士宮口には 「頂上浅間大社奥宮」 が鎮座しており、ここも賑わ
いをみせていた。 また、ここには夏季限定の 「山頂郵便局」 がある。 記念に購入(利用)する
人も大勢いるようだ。

   
       頂上浅間大社奥宮 (3720m)            東縁の荒涼とした山麓帯を進む

 小休憩をとって、次の 「御殿場口頂上」 (3700m) へといったん下って、少し登り返したとこ
ろ が 「東安河原"賽ノ河原)」 と呼ばれる平坦な砂礫地だ。 東面の眺めがよいので山頂の
御来光ビューポイントの一つだそうだ。
ここから、山頂の東縁にあたる荒涼とした山麓帯を 「成就ヶ岳」, 「伊豆ヶ岳」, 「大日岳」 と渡
り歩いて、約2時間をかけて周回した日本最高所のトレッキングを終了した。

                 ****** ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ *****       

          
               「砂走り」 ルート (七合目を過ぎた地点から望む)

 須走口・吉田口共通の下山口は、久須志神社の少し手前から始まる。 山腹に大きくジグザ
グを刻んで、滑りやすい砂地の下降が続くので、砂ぼこり対策 (マスクとサングラスなど) をし
て大股歩きをする。 下山ではストックや金剛杖の存在が、また一段と重要で、有ると無いとで
はだいぶ疲労度に違いが出るのではないかと思う。

            須走口下山道、八合目に向かう

 「八合目下山道分岐」のある江戸屋で、経路を確認して右に折れ、更に七合目の「大陽館」
まで一気に下り、休憩をとる。 いつもながら、下りは早い。 さっきまでいた山頂部がみるみる
遠ざかってゆく。 その分、膝への負担も大きく、いつも難儀するのは下り道の方だ。
七合目を出て若干トラバースした後、いよいよ 2890m地点 から 「砂走りルート に突入する。
イキナリ深い砂場 に急降下をしてから、約700mにわたり砂礫の堆積した急斜面を延々と一直
線に下ってゆくダイナミックな下山路である。

    
    いきなりの急降下から 「砂走り」 が始まる        途中、ガスに視界を遮られる

 ”1歩で1m以上も下るために、高度も面白いようにグングン下がってゆく” と、ガイドにはある
が、実際はそんなに “面白い” ものではない。 文字通り走り下りる人もいるようだが、今回同
時刻に下っていた人の中には、経路の途中で濃霧の区間があったせいもあり、走っている人
はいなく、みな慎重に足元を確認しながら下っていた。
砂のクッション作用が 多少緩和してくれていたようだが、膝への負担はやはり強かった。 終盤
は膝が痛み始めていたので、後ろ向きにゆっくりと歩いて負担を軽減する作戦に出た (苦笑)。
ママは靴の中に小石が入り込み易かったので、途中で何回か靴を脱いで砂払いを繰り返しな
がらの下山となった。 砂除け (スパッツ) は必需品だ。 約1時間半の砂走りルートもようやく傾
斜が緩んだところで、休憩スペースと売店 「吉野屋」 の建つ 「砂払五合目」 (2230m) に到達
した。
         砂払五合目 (2230m ) 

 文字通り、ここで砂を払ってその先の樹林帯へと繋がる中継点だ。 有料で顔を洗う事も出来
るそうだ。 遥か彼方に離れてしまった山頂部を振り返ると、砂走りルートがまるで滑走路のよ
うに長く伸びていた。 ソリで滑り降りるのも有りかな…!? などとムチャクチャな想像もしてみた
が (笑)、それはともかく、むしろ小走りで駆け下りた方が 膝への負担は軽かったのかな…
とも思った。 勿論、転倒の危険性も高いので その点は要注意だが…、どうなんでしょうねぇ…
(?)
 砂払五合目を出て、すぐに樹林帯の下り道へと入る。 限界の近い膝にとっては普通の下山
道も辛い、かなりのゆっくりペースで下る自分にママとマユも付き合ってくれ、ひとりぽっちで富
士山の樹海に置き去りにされる事態だけは、どうやら避けられたようだ (笑)。
部分的に登山道と交わりながら、やがて完全に合流して傾斜が緩み 「古御嶽神社」 に辿り着
く。 あとは舗装路を少し歩いて、ゴールの 「須走口新五合目」 に戻った。 「お疲れさまー」と、
待ち構えていた登山口にある2軒の売店 (山小屋) が盛んに誘導しているが、ママが土産物を
みるというので、その内の1軒に立ち寄る。 やはり下界は蒸し暑いので、その間ソフトクリーム
を頬張りマユとベンチでくつろぐ事にした (笑)。

         
                「砂走り」の終点付近から 富士山を振り返る 

 駐車場までヘトヘトの足を引きずって戻り、靴を脱ぎ装備を解く。 何はともあれ、みな怪我も
なく無事で戻れた事に、まずは感謝する。 心配していた天候も崩れることなく、中間部で若干
のガスにまかれたものの、山頂部では終始晴れていたので上々である。 全般に雲が多いので
下界の展望は殆んど得られなかったが、それも富士山が高すぎるのであるからやむをえまい
(笑)。 ただ、惜しむらくは両日とも下界からは富士山の姿が全く現れない (見えない) ので、
「遊歩記」 のタイトルバックを飾る写真が撮れなかった事だ (大笑)。

 ふじあざみラインを下り、国道138号線を山中湖方面に少し上がったところにある 日帰り温
泉施設
須走温泉・天恵」 に立ち寄り、登山の疲れと汗を洗い流して、ついでに遅くなった昼
食も取る事にした。 温泉の休憩スペースには大きなリュックを持った3人組の若者が横になっ
ていた。 きっと同類族 (!?) に違いない。 とっても眠かったが、ふたりに励まされ (おだてられ
…!?) 東名高速道に乗り、帰路へとついた。
                                   ( 2010.9.3 記 )

立寄り温泉情報


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