Bikkle on the Web 日記 短編小説
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空港にて
書き手:朗

 2月14日。空港のロビー。
彼女は待ち続けていた。飛行機の到着はかなり遅れている。彼女は時計をちらりと見た。先ほどから、もう何度同じことをしているのだろうか。約束の23時はかなり前に過ぎていた。もうほとんど、まわりには人がいない。
 不思議な静寂がロビーを支配していた。

 静寂を破ったのは飛行機の到着を知らせるアナウンスだった。しばらくして、彼女の目に見覚えのある男が映った。彼の方に小走りで近づく。隠そうとしても、その感情は抑える事などできないようだった。
「ただいま。」
「・・・うん。」
 おかえり、と言おうとしても言葉にならなかった。そのまま彼の胸に飛び込んでいった。久しぶりの煙草の匂い。
「12時まわっちゃった。」
 しばらくして彼女はつぶやいた。
「チョコ渡そうと思って持ってきたんだけど、バレンタインじゃなくなちゃったね。」
「そんなことないよ。」
「え?」
「僕の時計はまだ、2月14日さ。」
 彼の言葉通り、腕時計は14日の午前11時を示していた。
 ふと、見上げた彼女の唇に彼の唇が重なった。
 二人の14日は、まだ13時間もあった。

後書き
 うひ〜、ごめんなさいっ。僕の気の迷いですっ。これ書いたのは確か、大学1年の冬でした。若かったんです。あの頃は。
 男の時計、別に遅れてるわけじゃありません。彼は外国から帰ってきた所なのです。だから、時計は向こうの時間のまま。ニューヨークなんかだと、結構時差ありますからね。