|
||||||
カッコ悪いフラれかた 改札近くの、ホームを見渡せる窓から、電車を降りたアイツがゆっくりと歩いているのが見える。足取りが重い。こちらの方が高い場所にいるのと、うつむき加減で歩いているので表情を読み取ることはできないが、いつもの彼女とは雰囲気が違う。やっぱり、泣いているんだろうか。 悪友から電話がきたのがちょうど30分前。「おまえには知らせておこうと思って……よろしく頼むよ。」ヤツは最後にそう付け加えた。 アイツの想いが届かないであろうことは、最初から僕にはわかっていた。だけど、ヤツから電話がきたと嬉しそうに話す彼女に、そんなことは言えなかった。 彼女が僕のことを男として見ていない事はわかっている。こんな時、僕が何を言ってもなんの意味も無いこともわかっている。逆に、こんな時にそんな事を言われても、フラフラと流されてしまうような人間だったら、僕は彼女のことを好きになっていないだろう。 ホームからは、階段を上がるとすぐに改札だ。もうすぐ彼女の姿も見えるはず。そうしたら向こうもこちらに気付くだろう。そして、賢明な彼女のことだ。何故僕がここにいるのかもきっと気付く。そうなったらもう逃げられない。
|