気付いてるんだろうなぁ。
書き手:朗
留学生のサーシャが、どこからかビールとテンプラを持って来たので自然に呑み会へ流れていった。
乾杯の題目を何にしようかと10分程悩む。既にコップになみなみと注がれたビールをそのままにしておくのも良くないということで、とりあえず梅雨に乾杯することにした。
乾杯をしたら、まずその一杯は一気に飲み干すのが礼儀というものだ。
隣に座っていた後輩が、すかさず僕のコップをビールで満たす。お、ありがと。女の子にお酌してもらうのっていいね。などと言いながら、なすのテンプラを堪能する。
「先輩、この間あれだけ酔っ払っておいて、お酒嫌いになったりしないんですか?」
ビールを注ぎながら彼女が聞いて来る。当然、嫌いになるわけが無い。
「この間はひどかったよなあ。」
同期の高村が合いの手をいれる。
確かに、この間の呑み会はかなり荒れた。日本酒を一人で一升呑み、記憶を無くすほど酔っ払ってしまった。後で聞いたところによると、かなり長い間いろいろと意味不明のことをわめきながら気持悪そうにしていたらしい。
あれ以来、サーシャの僕を見る目が違うのが、ちょっと嫌だ。
「それにしても、なんであんなに荒れてたんだ?」
後輩がちょっと席を立った隙に、高村が聞いて来た。
「なんか、悩み事でもあったんじゃないんすか〜。」
高村は、にやにやしながらちょうど戻って来た後輩をちらりと見る。
ああ。気付かれてるんだろうなあ。きっと。
後書き
ん〜、梅雨に乾杯ってところまでは実話です。そのあとはいつもの妄想モード。
何も言ってないのに、友人には密かに気付かれてるっていうシチュエーション
ってのも、結構面白いですね。 |
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