Bikkle on the Web 日記 短編小説
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体温
書き手:朗

 さっき水を撒いたばかりだと言うのに、ベランダはすでにただの
コンクリートと化している。窓に取り付けてある、この間ガレージセールに二人で行ったときに買った、一個百円の風鈴も、ちりりとも言わない。

 ただ、時間の止まってしまった空気に満たされているかのような感じの、そんな二人の空間だけが存在していた。

 先程から彼女はナントカとかいうゲームに集中している。彼女の話から察するに、今はどうやら最後のボスキャラとの対決の真最中のようだ。
 僕の方はと言うと、そのゲームに対して興味なんて物は全く無いのだけれども、彼女がそう望むので、その彼女を後ろから包み込むようにして座り、
彼女の背持たれ役をただ黙々とこなしつつ、ゲームの画面をぼおっと、特に何も考えずにただ眺めていた。

 じわじわと、汗が浮き出て来てはお互いのシャツに染み込んで行く。
「なあ、暑くないか?」
「なんで?」
 ふとした僕の問いに、彼女は振り向きもせずに答える。
「だってさ……ほら、今、夏だろ?……それに、こんな蒸した部屋で二人してくっついてたら……」
 ふと、彼女がコントローラを置いた。軽く後ろを振り向く。ふっと軽くため息をつく。そしてそのまま彼女の顔が僕の肩に乗っかる感じで持たれかかってくると、彼女は僕の耳元でささやいた。
「でもね……こういうのってさ……なんか、幸せじゃない?」
 テレビからは、華々しいエンディングの音楽が流れ始めていた。

後書き
 まあ、夏だろうとなんだろうとイチャイチャしたい気持は良く分かりますけどね。
 でも、暑いものは暑いです(笑)