Bikkle on the Web 日記 短編小説
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同じ空の下に居る
書き手:朗

 奴が自分勝手なのはいつものことで、今回のことだって周囲に何の相談も なく決めてしまった。マリにだって話してなかったらしい。そのことで、 何度彼女に電話で愚痴られたことか。
 まあ、そんなこんなで奴は単身外国へ行ってしまった。成田のロビーで、 僕を含めた友人連中のバカヤロー、モウカエッテクンナ、マリハオレガモ ラッタ(もちろん、これは冗談だが。)などという見送りの言葉を肩で受け 流し、奴は飛行機に乗り込んでいった。

 その帰り、僕はマリを送っていった。何を話していいのか、とりあえず黙っ て運転に集中する。結局、沈黙に堪えられなくなったのは僕のほうだった。
「ついていかなくて、良かったの?」
 口を突いて出た言葉がそれだったことに少し落ち込みながら、でも、答えが帰ってくるのを待つ。
「私も仕事、あるしね。」
 なんとも優等生的な回答。そして再び訪れる沈黙。彼女はそれから、ずっと窓の外ばかりを見ていた。

「送ってくれて、アリガト。」
 あと2、3分もすると、彼女のアパート。彼女が再び口を開いたのは、そんな時だった。
「……どんなに離れていても、同じ空の下に居るんだって。同じ空気に包まれているんだって。だから寂しくなんて無いって、そう、思うことにしたの。だから、大丈夫。……大丈夫だから……。」
「そんなこと言ってると、次は宇宙に行くとかいいだすぞ。あいつ。」
 僕にできるのは、彼女を降ろしながら冗談を飛ばした後、アクセルを踏んで早急にその場を去ることだけだった。
 マリは友達だ。そう、自分に言い聞かせる。涙なんかに惑わされちゃいけない。

 結論としては、その一ヶ月後には奴の後を追いかけて行っちまった訳だけど。
 まあ、それもアリかなってことで。

後書き
 遠距離恋愛してる人って、かなり多いですよね。僕の周りにも何人かいます。最寄り駅が違うだけで遠距離という人から、日本を縦断しないと会えないくらいの距離の人まで。一度、じっくり話を聞いてみたいものです。