【 報告 II 】

/// 裸族にご注意 ///




In Santo Domingo


2001年夏
エクアドル・サントドミンゴ郊外にて




裸族といえば、ジャングルのずっと奥地の秘境まで行かなければ
会えないように思っていた。

しかしエクアドルの首都キトからバスでたった2〜3時間
(余裕で日帰りできる)のところに裸族が住んでいるのである。


彼らの部族名は“コロラド”。
上半身が裸(女性も)で髪やカラダを赤く染めている民族である。


キトに住む友達・フアンと一緒に彼らの住む集落へ向かった。

サントドミンゴ市に到着し、長距離バスを下車。
そこは、この近辺に裸族が住んでいるなんて
思えないくらい都会だった。

『裸族=(イコール)=秘境』という式が頭から離れない私には、
こんなにも易とも簡単に『秘境(?)』へ突入できるというのは
信じられない想いだった。

バスターミナルからはタクシーを使用。
タクシードライバーに、
「コロラド族に会いに行くんだい。」
と伝え、乗車した。

10分くらいで到着した。
到着したところは集落内の(短距離)バス・ターミナルだった。
タクシードライバーから、
「帰りはここのバス・ターミナルからバスに乗って市内に戻れる。」
と言われた。

ついに裸族の集落にやってきたのだ。

しかし、辺りの様子はイメージしてたものと違っていた。
普通の田舎となんら変わりがないものだった。

人々は皆、服を着ていた。


近くにいた人に尋ねた。

「この辺、コロラド族が住んでる筈でしょ?」

「そうだ。この辺一帯はコロラド族の集落だ。
お前たちは何しに来たんだ?」


「んーと、それはコロラド族を見てみたくて。」

「コロラド族の何が知りたいんだ?」

「えっと...、文化とか習慣とか...、
赤くカラダを染めてるのって有名でしょ。
テレビで見たことあるんだ。
それにしても、みんな服着てるんだね。」

「平日は、みんな畑仕事をするんだ。
だから、みんな服を着ている。
土日は観光客が集まるから、服を脱いでカラダを朱に染める。」

「・・・・・・。」

− そんなの裸族じゃない。−

すっかり文明社会を生きている、
普通の全く普通のどこでも見られる人々だ。

昔ながらの習慣故に裸で暮らしているのではなく、
観光客に見せるためだなんて...。

しかも、外見上の『裸族』であるのは7日間のうちの
たった2日間だけで、5日間は普通の見慣れた人であるのだ。 



そのことは、友達・フアンも初めて知ったことだった。

「・・・残念・・・。」

その地元の人は我々を気の毒に思ったのか
「ちょっと待ってろ。」
と言い残し、
そして立ち去った。

しばらくすると、彼は親切にも
コロラド族のシャーマンを呼んできてくれたのである。

やってきたのは髪を赤く染め上半身は裸(おじいさん)だった。

そのシャーマンに連れられ、小屋の中に入った。

シャーマンは、民族の生活や伝統のことを一生懸命話してくれた。
しかし残念ながら私のスペイン語力ではあまり理解できなかった。

そして、次は伝統儀式を見せてくれた。
我々のために『お払い』のようなものをしてくれた。



伝統儀式が終わるとシャーマンはUS$20.-を要求してきた。

「えっ US$20.-?」
「2人でUS$20.-だ。」
「高いよ。 US$20.-だなんて。」
「US$20.-だ。」

フアンと顔を見合わせた。

US$20.-と言えばエクアドルではかなりの大金だ。
いや日本でだって大金である...私には。

フアンは「US$5.-だけ払ってやろうぜ。」と言った。
US$20.-はさすがに払えないので、
『これで許してよ』
と二人分としてUS$5.-を手渡した。

私はフアンの家に1週間居候していることもあり、
フアンの分も払った。


シャーマンは、『しょうがないなぁ』という表情をし、
「残りの分は、次回いつか来たときに。」
と言ってくれた。

ホントはUS$5.-でも納得いかなかったのだった。



さて、折角サントドミンゴまで来たのだから
このまま帰ってはもったいないと思い、
もう少し奥地に入ってみた。

1キロくらい歩いたところで別の集落を見つけた。
同じように裸なのはシャーマンだけだった。
そしてシャーマンから話を聞いたり、
お払いのようなものをしてもらった。

ここでも、先ほどと同じく、二人分としてUS$20.-を要求された。
US$20.-はこの地域の相場らしい。



ここに来た観光客はみんなこんなに高額払っているのだろうか。
額は交渉しだいではあるだろうが、その言い値は高すぎる。

そのシャーマンはとてもいい家に住んでいるが、それを見ると
今まで多くの観光客から大金を巻き上げてきたのがよく理解できる。


← シャーマンの名刺

そのシャーマンはこんな立派なカラーの名刺を持っていた。


所詮、大都市近郊に住む裸族なんてこんなものだろうと思った。
秘境民族らしさを見せるのは、観光客の集まる土日だけ。

全身を赤く染める土日は仮の姿で、
本当の彼らの姿は、
服を着て畑で農作業をしている平日の方であろう。
それは普通の田舎に見られる風景と変わらない。
彼らは、観光客から得る収入でかなりいい生活を送っている。



首都キトから日帰りで秘境民族に会いに行こうというのは
考えが甘過ぎだったようだ。

コロラド族はサントドミンゴ周辺だけでなく
もっと奥地にも住んでいるのだそうだ。
きっと、本当の秘境民族らしい生活を送っていると思う。




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エクアドルで、本格的にこの裸族の暮らしがみたいのなら
もっと奥地にいかなければならない。

それでも、観光客を意識した裸族でいいのなら、
土日にサントドミンゴ郊外に行けばよい。
高額のチップを用意して。





− In Santo Domingo」 おわり −


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