横浜市立大学吉岡直人教授、中田宏市長宛「公開質問状」を提出

 

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2005年05月11日

横浜市立大学吉岡直人教授、中田宏市長宛「公開質問状」を提出

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ●吉岡直人(横浜市立大学):中田市長の“大ウソ”発言「市大の中味に口を出したことは一度たりともありません」に対する「公開質問状」 (2005.5.9)

公開質問状

横浜市長 中田 宏 様

 横浜市立大学に勤務する吉岡直人と申します。

 市長が本年度の本学入学式で述べられた「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」(市大ホームページより引用、以下同様)という発言に疑問が沸いてきましたので質問させていただきます。

 この発言に対しては、すでに本学の旧数理科学科の2教授より、数理科学科の存続について、市長が口を出したのではないか、という疑問・抗議が寄せられていることは記憶に新しいところです。2教授の言っておられることは、まことにその通りであると私も感じておりますが、ふと立ち止まって考えてみますと、それ以前の問題として以下のことがあるのではないか、と疑問が沸いてきました。

 すなわち平成14年に、市長は「横浜市立大学あり方懇談会」なるものを立ち上げられました。あれは、何のために作られたのでしょうか?「口を出す」ための材料を取り揃えるためだったのではないかと、つい、勘ぐってしまうのです。そうではなく、意見を聞き置くためだけであった、と市長がおっしゃるのであれば、ここでは一先ずそうしておきましょう。

 ではその後に、市立大学内部の組織としてではなく、市の組織として、前田副市長を本部長として設置された「横浜市大学改革推進本部」は何のためだったのでしょうか。市長の号令でそのような組織を作ること自体「口を出す」ことに他ならないように私には思えるのですが間違っているでしょうか。
 以下、具体的にその理由を述べます。

 平成15年12月1日に、貴職は「市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方」と題する文書を公表されました。これには「『横浜市立大学の新たな大学像について』を基本的に尊重して、改革を推進していく」と書かれており、それぞれの項目ごとに「(設置者の考え方)」が示されています。
 たとえば、「第3章 教育研究体制の改革」の項目では、「プラクティカルなリベラルアーツ教育(実践的な教養教育)を総合的に行うことを目的として3学部を統合し国際総合科学部(仮称)とすることについては、高く評価する。」とした上で、「国際総合科学部(仮称)を構成するコースについては、編成数や内容を大学の案を参考にしながら設置者として更に検討する。」と、「中身に口を出す」ことを明言しておられるのではありませんか。また「口出し」は細かい点にまで及び、「教職課程について、大学の案では『原則として廃止する。』としているが、取得できる教員免許の教科を精選し、存続させる。」と、その内容を覆す決定もされています。これらはほんの一例にすぎず、このほかにも類似の表現が随所に見られます。

 さらに平成15年12月17日には、貴職が作られた上記「横浜市大学改革推進本部」は、「コース案等検討プロジェクト部会設置要綱(要旨)」なる文書を全教員に配布し、その中で「12月1日に公表した『市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方』に基づき、設置者として、コースの設定等の検討を行うため、コース案等検討プロジェクト部会を設置します。」(下線筆者)と、ここでもはっきりと「中身に口を出す」ことを公言されています。また、「2 検討内容及び検討体制」の項では、「設置者としての案を作成します。」、「大学改革推進本部等により横浜市としての意思決定を行います。」とも明言しておられます。

 「市大のことは市大でやる。(中略)大学自身が考えるべきである」(入学式挨拶より)という市長の言葉とは裏腹に、貴職がしてこられたことは、細部に至るまで「中身に口を出す」ということであったのではないでしょうか。
 コース案等検討プロジェクト部会のメンバーの何人かが本学教員であったことは言い訳にはなりません。彼らは、貴職が作られた「横浜市大学改革推進本部」の「プロジェクト部会」のメンバーに過ぎないのですから。

 これらのことから、貴職の本学入学式における「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」という発言は、学生・市民を欺くものであるとの疑念が胸を去りません。このことについて、5月末日までに文書でお答えいただきたく、お願い申しあげます。
 早々

平成17年5月9日
横浜市立大学・研究院・教授
吉岡 直人

 

投稿者 管理者 : 20050511 00:00