[麻生外相]中国「脅威」発言、政府見解より踏み込む livedoorニュース 「毎日新聞」(2005.12.23)

 

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[麻生外相]中国「脅威」発言、政府見解より踏み込む

 麻生太郎外相が22日の記者会見で中国の軍事力増強について「脅威」との表現で懸念を表明したことが、波紋を広げている。民主党の前原誠司代表の「脅威論」に同調したものだが、政府見解では中国を「脅威」とまで位置づけていないためだ。日中関係が険悪な中での踏み込んだ発言に、中国側は反発している。

 ◇民主・前原氏に同調

 麻生外相は会見で、中国を「現実的脅威」とする前原代表の発言に同調。「かなり脅威になりつつある」との表現で、軍事費の透明化を促した。

 前原代表と歩調をそろえた形の発言だが、政府は中国が「脅威」との見解を取っていない。防衛庁によると「脅威」(threat)とは日本侵略の「能力」と「意図」が結びついて顕在化するもの。冷戦時代の旧ソ連に対してさえ、防衛白書は「潜在的脅威」(potential threat)としか言ってこなかった経緯がある。

 中国が公表した今年度の国防費は前年度比12.6%増の2447億元で、過去5年間で約2倍に膨らんだ。05年版防衛白書は「軍の近代化の目標が、中国の防衛に必要な範囲を超えるものではないのか、注目していく必要がある」と警戒感を示しつつ「脅威」との表現は回避している。

 麻生外相は今月7日のアジア外交演説で中国の台頭を「待ち望んでいた」と中国側に前向きなメッセージを送ると同時に「軍事面での透明性に欠ける」と注文をつけていた。「脅威論」に一気に踏み込んだのは、前原氏の発言に刺激され思わず持論が飛び出したものとみられる。

 安倍晋三官房長官は22日午後の記者会見で外相発言について「中国は国際社会の中で責任ある国として軍事費の透明性を確保すべきであり、麻生外相もそういう観点から言ったと思う。基本的な考えとしては(政府内に)大きな違いはない」と説明。閣内不統一との見方を否定しつつ「脅威」との直接的な言及は用いなかった。外務省は中国の台頭を「脅威」でなく「チャンス」と捉えつつ、国防費の透明化を促す立場を取っている。それだけに外相発言について「『内容が極めて不透明ということであれば、かなり脅威になりつつある』という前提つきの発言で、政府見解を踏み外したものではない」(外務省幹部)と説明するなど、火消しに躍起となっている。【佐藤千矢子】

■麻生外相発言の要旨

 (中国の軍事力の)内容が外にはなかなか分かりにくいというのは、透明性という点に関しては不信感をあおる。前原さんが言っている(中国が)脅威で、不安をあおっているというのは確かだと思う。隣国で10億の民を持って、原爆を持って、軍事費が毎年2ケタの伸び、連続17年間、内容がきわめて不透明というんだったら、どんなことになるかなあということに関しては、かなり脅威になりつつある。そういう意識はある。

2005年12月23日02時31分