錬金術の土壌 小泉「改革」とライブドア(1) 株式分割 「規制廃止」 米国が要求 「しんぶん赤旗」(2006.1.25)

 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-01-25/2006012501_02_0.html

 

 

参考資料

「ホリエモンの錬金術」ミラーサイト

横浜市立大学、想定外? ホリエモン逮捕で「トップマネジメント講座」の講義概要をあわてて削除(2006.1.24)

関岡英之氏の偉大な発見 「年次改革要望書」 森田実 (2005.5.8)

05/8/2メディアが完全無視した竹中郵政民営化担当大臣の「ウソ答弁」とゼーリック米通商代表の手紙――郵政民営化特別委員会 桜井議員の質疑より(2005.8.11)

 

 

2006年1月25日(水)「しんぶん赤旗」

錬金術の土壌

小泉「改革」とライブドア(1)

株式分割

「規制廃止」 米国が要求


 ライブドア(東京都港区)グループをめぐる証取法違反事件は、前社長の堀江貴文容疑者(33)ら経営幹部の逮捕に発展しました。資本金六百万円でスタートし、十年で時価総額一兆円へ。ライブドアの急成長は「規制緩和」を巧みに利用した金融テクニックに支えられていました。不正な手法を駆使した同社の「錬金術」の闇を検証します。


 「小泉内閣の規制緩和のおかげで、非常に商売がしやすくなっています」―。同社機関誌『ライブドア』(二〇〇五年冬号)で、堀江容疑者は自民党の武部勤幹事長と対談し、こう語りました。

 ライブドアの株価つり上げに欠かせないのが大幅な株式分割でした。これは、米政府と日本政府、財界が一体となってすすめた規制緩和の典型でした。

◆外資参入狙う

 米政府が株式分割の規制撤廃を具体的に要求したのは、商法「改正」に先立つ二〇〇〇年十月十二日付で出した「規制撤廃および競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブに基づく日本政府への米国政府年次要望書」(年次改革要望書)。日本政府に対し、商法「改正」で「株式分割時の一株当たりの基準価格に関する規制の廃止」を「必ず取り上げる」よう強く求めたのです。

 同要望書は、商法「改正」について「外国企業が日本市場に参入し業務を行う能力にも大きな影響を及ぼす」と指摘。「投資や金融取引に対する大きな障害を排除」できる内容にすることを要求。日本市場への外資参入を容易にするねらいを、露骨に表しています。

 アメリカ政府の年次改革要望書に盛り込まれたことは、郵政民営化をはじめ次々と実現されています。その狙いについて作家で経済評論家の水澤渓さんはこう指摘します。「端的にいえば、日本を自分たちの都合のいいようにアメリカナイズして、日本の財産を奪ってしまおうということではないでしょうか」

 実際、米要望書に呼応するかのように、日本側もいっせいに株式分割の規制撤廃を提言しています。

 米要望書のわずか五日後の十七日、経済団体連合会(現日本経団連)が「商法改正への提言」で規制撤廃を要求しました。

 同年十二月十二日には、政府の審議会「行政改革推進本部規制改革委員会」(現・規制改革・民間開放推進会議)が同様な見解を発表しました。

 同日、政府はただちに「見解を政府の『規制改革推進3か年計画』に最大限盛り込む」方針を発表。翌年には、商法が「改正」され、株式分割の規制は撤廃されたのです。日本共産党は、この商法改正に反対しました。

 最初にアメリカ政府が声を上げ、次に日本の財界が提言、さらに政府審議会が提言し、政府が政策とする――。アメリカ政府と日本の財界が直結した「規制緩和」の流れが鮮やかに浮かび上がります。

 その結果、ライブドア事件にみられるような、不正常な投資が増大して市場がかく乱されることになったのです。

◆弊害承知の上

 「バブル」効果が出ることは予見されていました。経団連は〇一年九月、上場制度に関する意見書の中で「投資単位の引き下げ(分割で一株の価格を下げること)により投資家層が拡大することで需給関係が変化し、株価が上昇する可能性もある」と指摘しています。

 「アメリカは株式分割の弊害を承知の上で、外資がさまざまなきわどいやり方で大もうけできることを狙ったのではないでしょうか。それに便乗したのがライブドアだったのではないか。そういう点で今回の事件は、対米追従の小泉政治への警告ともいえます」と、前出の水澤氏は批判します。(つづく)

▼株式分割 一株を複数の株に分割すること。一株あたりの単価を下げて、投資家が株を購入しやすくするのが本来の目的。一定以上は分割できないようになっていましたが、二〇〇一年の商法「改正」でこの規制は撤廃され、無制限に分割できるようになりました。 ライブドアは、一株を百株に分けるなど極端な分割を繰り返し、一時的な株式の品薄状態を演出。投資家の買いを誘って株価は急上昇しました。