“米長流”経営で紛糾する将棋「名人戦」移行問題(続)(2006.5.16)

 

資料

“米長流”経営で紛糾する将棋「名人戦」移行問題(2006.5.9)

米長邦雄氏が、東京都教育委員/日本将棋連盟会長としてふさわしくない理由

 

 

目次

(1)社説:名人戦問題 まずボタンのかけ直しを 『毎日新聞』(2006.5.16)

(2)060516将棋:名人戦移管問題 共催案に毎日新聞社が回答書 「解消通知撤回が先」 毎日新聞(2006.5.16)

(3)名人戦問題:ヨネちゃん、名人戦をこれ以上傷つけてはいけない−−大橋巨泉 『毎日新聞』(2006.5.15)

(4)将棋:名人戦移管問題 「あくまで毎日と契約」 米長・連盟会長が発言 『毎日新聞』(2006.5.13)

(5)名人戦問題:将棋連盟、毎朝共催を提案 通知書取り消さず 『毎日新聞』(2006.5.10)

(6)記者の目:将棋連盟・米長会長、中原副会長に…=山村英樹(学芸部) 『毎日新聞』(2006.5.2)

(7)名人戦問題:将棋連盟が補充説明書…本社「協議に応じる」 『毎日新聞』(2006.5.23)(加筆2006.5.24)

 

 

(1)社説:名人戦問題 まずボタンのかけ直しを 毎日新聞(2006.5.16)

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060516k0000m070175000c.html 

 

社説:名人戦問題 まずボタンのかけ直しを

 将棋名人戦の主催を毎日新聞社から朝日新聞社へ移そうという日本将棋連盟(米長邦雄会長)の理事会の動きが明るみに出て1カ月余がたつ。この間、多くの読者から名人戦を守るという本社への励ましをいただいた。

 連盟から名人戦の第66期以降の契約解消をする旨を伝える「通知書」が送られてきたのは3月末だった。それと前後して本社を来訪した中原誠副会長はこの「通知」が、朝日新聞との間の隠密裏の交渉を踏まえての連盟理事会の「苦渋の選択」だと説明した。

 もともと現在の名人戦は本社の前身の東京日日新聞社が世襲名人位を買い取り、それを連盟に寄贈して創設した史上画期的な棋戦だった。戦後、契約更改紛糾につけこんだ朝日が連盟と毎日との交渉中に別契約を結んだことで朝日主催で行われた時期もある。しかし76年には連盟と朝日の交渉が決裂、連盟の懇請を受けた毎日に復帰した。この際毎日は、堂々と朝日の契約終了を確認し、通告した上で交渉を開始している。

 契約上はもちろん、こうした歴史的経緯に照らしても信義にもとる「通知」に対し、本社は一貫して撤回を求め、その上で66期以降の契約内容について誠実に話し合う意思を示している。しかし連盟理事会はこれを拒んだまま新たに名人戦の毎日・朝日共催という提案を行った。身勝手な構想を一方的に突きつけてくる非常識はともかく、不可解なのは米長会長ら理事会がこの間、ファン注視のこの問題について社会的な事情説明や意思表明をほとんど行っていないことだ。そればかりか朝日移管案をめぐる理事会決定や、本社とのやりとりについて、従来の説明や事実と異なる発言が飛び出し、その信義誠実への疑念まで呼び起こしているのはどうしたことか。

 連盟理事会は棋士には連盟の苦しい財政事情を訴えたという。だが、これまで本社はじめ棋戦を主催する新聞各社はみな経済動向を踏まえて契約金の上積みをしてきたではないか。なのになぜ財政難が生じたのか。またそれをどう克服しようというのか。その説明もせずに、まるでアメ細工のように勝手にスポンサーをすげかえたり結びつけたりして収入増を図ることができると思い描いたのならば、公益法人の運営に責任ある者として安易にすぎよう。

 一方、共催案に前向きな朝日新聞は将棋と囲碁の名人戦を共に主催するのを強く希望してきたと聞く。だがもとは読売新聞が始めた囲碁名人戦と、毎日の将棋名人戦だ。他紙が育てた棋戦を二つそろえるのが、言論機関である新聞社の事業としてそんなに意義深いことなのだろうか。それより自前の棋戦を知恵を絞って日本一に育て、相応の資金を棋界に提供するのが文化貢献のあるべき姿なのではないだろうか。

 将棋文化は棋士やファンにはもちろん日本人すべての宝である。その宝を預かる将棋連盟は、まずかけ違えたボタンのかけ直しをはっきり決断し、人々が将棋にかける誇りや夢を守ってほしい。

毎日新聞 2006年5月16日 0時11分

 

 

(2)将棋:名人戦移管問題 共催案に毎日新聞社が回答書 「解消通知撤回が先」 毎日新聞(2006.5.16)

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/issue/news/20060516ddm041040110000c.html 

 

将棋:名人戦移管問題 共催案に毎日新聞社が回答書 「解消通知撤回が先」

 日本将棋連盟(米長邦雄会長)の理事会が名人戦の主催を毎日新聞社と朝日新聞社の共催とする新提案を示した問題で、毎日新聞社は15日、新提案への回答書を米長会長あてに提出した。

 回答書は「弊社は当初より、貴連盟が一切の協議なしに名人戦の第66期以降の契約解消を通告してきた3月28日付の通知書の取り消しを求めております。通知書が撤回されたならば、弊社は第66期以降の契約内容について誠実に話し合う用意があることも、以前から繰り返し述べてきた通りです」との内容。

 情勢見て最終判断−−朝日回答書

 一方、朝日新聞社も15日、新提案への回答書を出した。「名人戦を単独主催したいという考えに変わりはありませんが、共催案にも基本的に異存はありません。実現するためには、毎日新聞社の同意など、いくつかの条件があります。これらを見極めながら最終判断をしたい」との内容。

 理事会は3月末、名人戦の主催を毎日新聞社から朝日新聞社へ移す方針を決定。だが、今月9日、両社の共催とする新提案を示し、15日までに回答を求めていた。

 将棋連盟は両社の回答を受け、「改めて理事会で今後のことを検討し、5月26日の総会に臨みたい」との米長会長談話を発表した。

 毎日新聞編集局長、棋士に説明会−−50人参加

 毎日新聞社は15日、東京・一ツ橋の如水会館で、棋士への説明会を開催した。

 棋士の中から開催を望む声があったためで、約50人の棋士が参加。名人戦問題についての毎日新聞社の考え方について、観堂義憲・東京本社編集局長が説明した。

 観堂局長は「弊社は当初から『第66期以降の契約について、誠実に話し合う用意がある』と、理事会に申し上げている。話し合いを始めるためには、契約解消通知を撤回してもらわなければならない」「理事会は『通知書を撤回すると、第66期以降の契約は自動継続になる』と主張しているが、弊社は撤回しても、自動継続になるとは考えていない」と語った。その後、棋士との質疑応答を行った。毎日新聞社は16日、大阪でも同様の説明会を開催する。

毎日新聞 2006年5月16日 東京朝刊

 

 

(3)名人戦問題:ヨネちゃん、名人戦をこれ以上傷つけてはいけない−−大橋巨泉 「毎日新聞」(2006.5.15)

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/issue/news/20060515org00m040124000c.html 

 

名人戦問題:ヨネちゃん、名人戦をこれ以上傷つけてはいけない−−大橋巨泉

 「ヨネちゃん、名人戦をこれ以上傷つけてはいけない」。米長邦雄・日本将棋連盟会長とは古くからの友人で、将棋ファンでも知られるタレントの大橋巨泉さんは、名人戦問題について将棋連盟の対応を厳しく批判し、棋士には「名人戦の歴史と重みを考えて行動してほしい」と訴えた。【聞き手・油井雅和】

 今回の名人戦問題に関しては、米長君のやったことに100%承服しかねます。

 ゴルフでは全米、全英オープンやマスターズよりも賞金を出しているトーナメントだってあるんです。だからといって、そうしたトーナメントを全英オープンや全米オープンの上には置かない。お金が少なくても世界最高のトーナメントなんです。それぐらいスポーツや文化というものは歴史とか伝統を大事にするわけです。

 将棋みたいな何百年という歴史あるものが、そうしたものを失ったら自殺行為です。米長君が今回やったものは、それに輪をかけて、より悪い方向に進んでしまった。いきなり毎日に「あと1期でやめます。朝日に行きます」とは……。

 その後に米長君がやったことには、あいつとは絶交してもいいくらい怒っている。「全棋士に100万円ずつ出させる」だとか「今、毎日がお金を出してきても受けられない、朝日が怒るから」とか。おかしいでしょ。彼は「将棋は礼に始まり礼に終わる」人だった。それが、今は礼節の礼もない。

 共催案は毎日も朝日も受けられないでしょう。「両社は報道、観戦記などで競い合う」なんてありえない。毎日だって朝日だって何億っていう契約金を出すのは独占掲載したいからでしょ?

 今後どう落ち着こうと、もう名人戦に傷がついてしまっているわけです。最後にはもしかしたら毎日新聞が「これ以上傷つけたくない」と我慢するかもしれないけれど、それは将棋連盟がすべきこと。毎日がすべきことじゃない。

 連盟の運営を上任せにする棋士にもある程度責任がある。棋士になったからには、一番取りたいのは賞金王ではなく名人。名人になりたくて棋士を目指したはず。名人は金では買えない。歴史と伝統のある社会に入り棋士となった以上、名人位というものと名人戦の歴史と重みをじっくり考えて行動してほしい。あとで後悔するのは自分なのだから。これ以上名人戦が傷ついて、名人を取ってもその意味がなくなってしまったら、君たちの時代に「単なるタイトルの一つ」になってしまったらどうするのだ。

(毎日新聞2006年5月14日東京朝刊から)

 2006年5月15日

 

 

(4)将棋:名人戦移管問題 「あくまで毎日と契約」 米長・連盟会長が発言 毎日新聞(2006.5.13)

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/issue/news/20060513ddm041040147000c.html 

 

将棋:名人戦移管問題 「あくまで毎日と契約」 米長・連盟会長が発言

 日本将棋連盟(米長邦雄会長)の理事会が名人戦を主催する毎日新聞社に対し、第66期以降の契約解消を求めてきた問題で、米長会長は12日の東京将棋記者会の定例会見で、「この問題をどのような形で26日の棋士総会にかけるかは未定」と語った。

 理事会は9日、名人戦を毎日新聞社と朝日新聞社の共催とする新提案を示したが、米長会長は「両社からまだ回答がないので、議案は決められない」と説明した。また、「朝日新聞から(単独主催の)申し入れはあったが、毎日の単独でも共催でも、あくまで毎日新聞と契約したいというのが理事会の意向」と述べた。だが、毎日新聞社が求める契約解消通知の撤回には、依然として応じる姿勢を見せなかった。

毎日新聞 2006年5月13日 東京朝刊

 

 

(5)名人戦問題:将棋連盟、毎朝共催を提案 通知書取り消さず 「毎日新聞」(2006.5.10)

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060510k0000m040172000c.html 

 

名人戦問題:将棋連盟、毎朝共催を提案 通知書取り消さず

 日本将棋連盟(米長邦雄会長)の理事会が名人戦の主催社を毎日新聞から朝日新聞に移す方針を示した問題で、同連盟は9日、毎日新聞と朝日新聞の共催とする新たな案を両社に提示した。

 米長会長と中原誠副会長らが本社を訪れ、北村正任・本社社長あての提案文書を提出した。提案の内容は、(1)名人戦は両社共催にする(2)両社は報道、観戦記等で競い合う−−など。15日までの回答を求めている。

 一方、毎日新聞が当初から求めている3月28日付の契約解消の通知書は取り消さなかった。

 米長会長はこれまで、棋士会での説明や本社にあてた文書で、「(契約解消は)自動延長しないという申し入れ」「誠意をもって名人戦実現に向けて協議させていただく」「毎日新聞に名人戦をやっていただくために努力する」などと述べていた。

 毎日新聞社社長室広報担当の話 当社は当初より、第66期以降の名人戦について日本将棋連盟が一方的に契約解消を通告してきた3月28日付の通知書の取り消しを求めております。また、通知書が撤回されたならば、同連盟と誠実に話し合う用意があると繰り返し述べてきております。

 朝日新聞社広報部の話 弊社は日本将棋連盟と毎日新聞社との交渉を第一と考え、推移を見守ってきました。名人戦は長年要望してきた棋戦であり、単独の主催を念頭に置いてきました。この考えに変わりはありませんが、米長会長の新たな提案については、真摯(しんし)に検討したいと考えています。

毎日新聞 2006年5月10日 5時00分

 

 

(6)記者の目:将棋連盟・米長会長、中原副会長に…=山村英樹(学芸部) 毎日新聞(2006.5.2)

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/issue/news/20060502ddm004070029000c.html 

 

記者の目:将棋連盟・米長会長、中原副会長に…=山村英樹(学芸部)

 名人争った時の心どこへ−−経営者になれば一変か

 中原誠・日本将棋連盟副会長の手は、その紙を出す時、少し震えていた。声もこわばっていた。3月28日午後2時すぎ、毎日新聞東京本社が入るビル内の喫茶店。米長邦雄会長名で出された「通知書」のコピーが、初めて我々がこの件、つまり、毎日新聞から朝日新聞への名人戦移管の動きが進行していることを知ることになったきっかけだった。

 中原副会長と言えば、名人獲得は大山康晴十五世名人の18期に次ぐ通算15期を数える、将棋界を代表する棋士の一人。米長会長も史上最年長、49歳で名人を獲得し、ファンだけでなく社会的な感動を与えた大きな存在だ。本社の北村正任社長あてのその「通知書」はすでに発送し、翌日にも本社に届くという。

 少しイヤな予感はしていた。6日前の3月22日。新潟県佐渡市で行われた王将戦第7局2日目の午後、中原副会長が「ちょっとお話が」と、私を控室から連れ出した。「来週、毎日新聞学芸部長とお会いしたい」と言う。普段は隠し事をしない副会長が「用件はお会いした時に」と言った。それでも、まさかこの話が出てくるとは思わなかった。4月は名人戦七番勝負が始まり、朝日オープン選手権五番勝負も始まる時期だ。

 私が将棋担当を命じられてから、この4月で20年になった。担当になった翌年、第45期の中原対米長戦の七番勝負に同行したのが、担当記者として初めての名人戦だった。このシリーズは対局中に米長氏が鼻血を出し、中原氏の了解を求めて止血の処置を取るなど、両者がフェアプレーの上で持てる力を出し切った熱戦が続いた。その6年後の第51期。名人へ7度目の挑戦を果たした米長氏が宿願の名人位を獲得したのも印象的なシリーズだった。

 この2回の七番勝負をはじめ、お二人には仕事をしながらさまざまなことを教わった。現在のトップ棋士の将棋が「盤上の勝負は盤上で」という側面が強いのに対し、人間対人間のすべてをさらけ出すような勝負が盤側にも伝わってきた。

 15年前には、当時の理事会首脳が毎日新聞から朝日新聞へ名人戦主催社の移管を画策したことがあった。それに真っ向から反対したのが大山十五世名人、米長、中原の3氏。米長氏は大山十五世名人とは普段意見が合わなかったが、「米長さん、頼れるのはあなたしかいない」(米長会長のホームページから)と、手を握られて連携し、若手棋士の集まりではともに熱弁をふるって将棋界の世論を盛り上げ、大事になる前に事態を沈静化させた。

 時はめぐり、2人とも日本将棋連盟の首脳となって、3年前から2年間は中原会長・米長専務理事、そして昨年からは米長会長・中原副会長の体制で経営に携わることになった。

 棋士たちの間に、この名実ともに最強コンビが運営に大活躍してくれるものとの期待があったのも事実。しかし、日本経済の停滞や将棋ファンの減少で連盟の収入が減り、逆に棋士数の増加もあって、経営状態は思うに任せず、棋士の間にも不満がたまっていた。「経営者になってからの2人は、人が変わったようだ」との声も上がるほどだった。

 米長会長も、中原副会長も焦りがあったのだろう。今回の件はそれがまずい方向に向かってしまった。新聞社が契約金を出し一緒になって棋戦を運営する形は、そう多くの世界であるわけではない。新聞社側は将棋を、日本を代表する文化の一つとして位置づけて将棋界を支援してきた。新聞社からの収入が現在の将棋連盟では約6割を占めるが、これがそう伸びるわけではないのは連盟側もわかっていたはずだ。少なくともここ20年は連盟側の契約金アップの要請を毎日新聞をはじめ各新聞社側も好意的にとらえ、もめることなく推移してきた。なのに30年間一緒に名人戦を運営してきた毎日新聞に何の連絡もなく、裏で朝日新聞と高額の移管交渉を進めるとはどういうことなのだろう。

 名人戦の会場でも大盤解説会に来たファンからも今回の件で「頑張ってください。毎日新聞あっての名人戦です。それにしても将棋連盟理事会のやり方はおかしい」などといった声が寄せられた。このまま進むとそれだけで将棋界のイメージダウン、損失は計り知れないものがある。かえって将棋連盟の進む道を狭めるのではないか。

 以前「ともに勝つ」のタイトルで、本紙に米長会長の半生を描く連載があったことを覚えている読者も多いだろう。この言葉は会長が好きな言葉だ。また、中原副会長は色紙に「人間万事塞翁(さいおう)が馬」とよく揮ごうする。今お二人がなすべきことははっきりしているはずだ。あの名人位を争ったころの気持ちに戻って、対処を期待したい。

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 ご意見、ご感想は〒100−8051 毎日新聞「記者の目」係へ。メールアドレスkishanome@mbx.mainichi.co.jp

毎日新聞 2006年5月2日 東京朝刊

 

 

(以下、加筆2006.5.24)

(7)名人戦問題:将棋連盟が補充説明書…本社「協議に応じる」

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/news/20060523k0000m040046000c.html 

 

名人戦問題:将棋連盟が補充説明書…本社「協議に応じる」

 日本将棋連盟(米長邦雄会長)が名人戦を主催する毎日新聞社に対し、第66期以降の契約解消を求める通知書(3月28日付)を送った問題で、同連盟はこの通知書の補充説明書(5月19日付)を本社に郵送した。通知書自体は撤回しないが、「一方的に契約を破棄する意図はなかった」と記し、本社との協議を求める内容。これに対し、本社は22日、「契約破棄の申し入れは撤回されたと判断する」との回答書を連盟に提出。第66期以降の契約内容について、協議に応じる意向を伝えた。

 本社「契約破棄撤回」と判断…双方が話し合いへ

 連盟の補充説明書は「通知書にはストレートに『第66期以降の契約に関しては、解消させていただきたく、ご通知申し上げます』とあり、何の事前相談もないままの、一方的な契約破棄の申し入れと誤解されたとしても無理はなかったと思います」と記したうえで、「貴社との協議なしに、一方的に契約を破棄する意図は全くなく、このような誤解を招く文書を発出し、ご迷惑をおかけしたことは、深く反省し、おわびします」と謝罪。「すみやかに、貴社と誠意ある協議に臨み、双方が納得のいく話し合いをしたいと考えています」としている。

 本社の回答書は「この『補充説明書』をもって、3月28日付『通知書』での一方的な契約破棄の申し入れは撤回されたものと判断します。第66期以降につき誠意ある協議に臨むことは了承します」と話し合いに応じることを表明。「協議の開始は、第64期の七番勝負が進行中であり、対局者が落ち着いた環境の中で対局できるよう最大限の配慮をするためにも、七番勝負が終了してからにしたいと考えます」と提案している。

 連盟の理事会は名人戦の主催を毎日新聞社から朝日新聞社に移す方針を決定し、3月末、毎日新聞社に契約解消を求めてきた。5月9日には、両社の共催とする新たな案を提示した。

 毎日新聞社は当初から「契約解消通知を撤回すれば、話し合いに応じる」と主張してきたが、理事会は「撤回すると、契約が自動的に継続される」と反論。本社は18日、「撤回しても自動継続されるとは判断していない」との文書を連盟に提出していた。

 毎日新聞社社長室広報担当の話 将棋界最古の伝統と最高の権威をもつ名人戦を大切に育てていく立場から、日本将棋連盟と「双方が納得のいく話し合い」に応じるつもりです。

 米長会長の話 回答書を受けて、当連盟としましても第66期以降の名人戦について、毎日新聞社との話し合いをさせていただきます。

毎日新聞 2006年5月22日 19時32分 (最終更新時間 5月23日 6時47分)