突然だった。
一陣の疾風、漂うのは白い羽。
振り返った先には・・・あなたが居た。

見慣れた赤いバンダナの少年。名を"戸岐 航平"
彼は、昔の私の仲間。
そして・・・今は・・・・・敵。
「や、メグルさん。」
敵。
そんな事を感じさせない位、彼は私に声をかける。
明るく、声をかける。
「戸岐君・・・!?どうしてここに・・・」
それは予想外だった。
彼と顔を合わせる時、いつだって私から出向いてた。
彼から私に会いに来るなんて滅多に・・・いや、無いに等しい。
「そーんな怖い顔しないでよ。」
いつもの何処か企みのある瞳で彼が笑う。
見なれた笑顔に少しだけ懐かしさを感じつつ。
「だ、だって・・・戸岐君、この前・・・」
そこまで言って、私は口をつぐむ。

先日。

ロッカクが瀕死の状態で帰ってきた。
彼は多くを語らなかったけど・・・
それは・・・戸岐君の仕業・・・・・。
しかも、彼はヤコウさんを殺めてしまったという。
今、彼がその気になれば、私を殺す事だって容易な事。
その考えが、私の口を閉ざした。
「ふーん・・・。やっぱ知ってるんだ、その事。
じゃ、どーせそろそろお説教に来る頃だったんじゃ無いの〜?」
頭の後ろで手を組みつつ、私の考えていた事を言ってしまう。
「・・・・・。」
「当たり。でしょ。」
そりゃぁ、そこまで完璧に代弁されてしまったら、私は眉を顰めるしかない。
けれども。
判っているのなら話は早い。
「戸岐君、この前の」
「あ〜、ストップ。俺、お説教聞きに来たんじゃ無いし〜。」
身を乗り出した私を彼が手で制し、思わず身を引く。
「ねぇ、メグルさん。一つ聞くけど、何でそんなしょっちゅう、
しょっちゅう俺にお説教すんのかなぁ〜?」
「うっ・・・・・お、お説教、のつもりじゃ・・・」
「いーや、お説教だね。毎回毎回くどくどくどくど・・・。
いい加減聞き飽きちゃったって。あんただって毎回同じ事言うの、飽きてるでしょ?」
対して、何も言えなくなる私・・・
確かに、飽きてるといえば飽きてはいる。
しかしお説教は飽きる・飽きないの問題ではないはずで・・・
「ともかく。」
パン、と手を叩く音にはっ、とする。
「俺さ、お説教嫌だし、たまには別の方法を、と思って出向いた訳。」
「別の・・・方法・・・?」
彼がここまで来たのは"改心"・・・では無かったのか・・・。
少し、残念・・・・・。
「それで。別の方法というのは・・・?」
それが有るというのなら、私もお説教は勘弁してあげよう。
「・・・・・気になる?」
・・・何か企んでる。
あの子悪魔的な笑顔がそう告げている。
ともかく、私はコクン、と頷いた。
「じゃ、教えてあげる。
デート。デートしよっ、メグルさんv」
「・・・。・・・えっ・・・?」

耳を疑った。

だって今、かなり聞きなれない単語が・・・
「聞こえなかった?で・え・と。」
「えっ・・・い、いやっ・・・あのっ・・・!!」
すっかり慌てる私を、彼は笑いを噛み殺しながら見つめる。
・・・意地悪・・・。
でも、今の私には反論できる余裕が無い。
「駄目?」
「だだだ・・・駄目っ!!」
咄嗟に出てきた言葉を聞いて、彼はきょとんとした。
「何で?」
理由を聞かれても・・・。
私だってどうして「駄目」と言ったのか判らない。
「だって・・・敵、同士なんでしょ、私達・・・」
「じゃ、今日だけ敵味方関係無し。それならいーでしょ?」
「でも・・・」
「まだ不満?じゃ、何でメグルさんは俺とデートすんのが嫌なのさ。」
「じゃぁ、何で戸岐君はそんなにまでして私とデートがしたいのっ!?」
混乱していた所為か、叫んでしまった事に赤面する。
彼の方は一瞬、ひるんだが、またすぐに何事も無かったかの様に言った。
「そんなの。デートしたいからに決まってんじゃん♪」
理由に・・・なってない・・・。
はぁ、と溜息を付くと彼は少しだけ不機嫌そうな顔をした。
「・・・仕方無いなぁ〜・・・。」
眉を顰め、戸岐君は続ける。
「メグルさんが嫌だ、ってゆーなら、デートは諦めるよ。」
その一言に安心するの反面、
ちょっとだけ、残念な気もした。
・・・のも束の間。
不意に掴まれた腕。
恐る恐る、視線を彼の顔まで持って行くと・・・
にっこりと、
それでいて子悪魔の様な笑顔が向けられていた。
「と・・・戸岐君・・・!!?諦めたんじゃ、無かったの・・・!?」
「デートはね♪」
「それじゃ一体・・・!?」
と、聞くのと同時にその腕が引かれ、
自然、彼に抱き付くような形となる。
「拉致っちゃえば、問題無いよね・・・♪」
如何にもからかう様子で、彼は私の頭をポン、と叩いた。

為す術無く拉致された私は今、戸岐君の隣に居る。
拉致・・・というか、誘拐というか・・・。
まさかあんな簡単に小脇に抱えられるだなんて思っても無かった。
本っ当に、私は為す術無く拉致された。
しかも・・・この場が"空"とあれば・・・。
「言っとくけど、飛び降りようなんて考えないでよ。メグルさん。」
「そんな事・・・まず考えない・・・。」
流石にそんな度胸と勇気は持ち合わせていない。
「戸岐君、これからどうするつもりなの・・・?」
「んー?そだね〜・・・」
腕を組み、考える素振りを見せる。
「このままRI−ONの方に売り渡してあげよっか?」
彼の一言に血の気が引き、一瞬、飛び降りようかと真面目に考えた。
・・・一瞬だけ・・・・・。
「そんな泣きそうな顔しないでよ。俺、苛めっ子みたいじゃん。」
少しだけ眉を顰め、彼はぼやいた。
「残念だけど〜。今はゲート開かないんだよねぇ・・・。あー残念。」
飄々としている様子を見ると、私を地球に戻す事が目的ではないらしい。
改めて胸を撫で下ろし、その場に座り込む。
戸岐君の龍、ライトナイツナイトの羽が心地よい。
そういえば、この龍に乗るのは初めてだ・・・
ジゲンジョーカを失ってから色んな龍に乗ってみたけど、
結局、相性の良い龍は見つからなかった。
「白い・・・羽・・・。」
座り込んだ場所を撫でてやりつつ、そんな事を呟く。
「俺、ナイトの羽が一番好きなんだ。」
私の独り言を聞いていたのか、戸岐君が振り返る。
「優雅な翼の中に雄々しき強さを秘めている。
・・・そんな感じがするから。」
再び、彼が前を向く。
翼に秘めた強さ。
それは・・・彼の強さの証。
「おー、見えてきた見えてきたっ。」
突然、彼が身を乗り出す。
つられて私も下を見ると、
そこは・・・見覚えのある場所だった・・・。


To be continued.

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後書です。結局また二分割。・・・阿呆か?私。
デート♪デート♪・・・って。これ、デートか・・・・・???(笑)
まあ。そんな訳でオリジナルです。前回の「明るい話が書きたい」
宣言により、今回はとんでもなくラブラブになる可能性大。だって
私は戸岐メグ派。(爆)
余談ですが。私の考える戸岐は、ナイトの翼とメグルとを無意識に
重ねております。無意識ですよ。(何)