+ Cross Mind 〜Meguru's side〜 +
懐かしい風を感じた──
もう二度と感じるはずの無かった裏球の風
──生きてる・・・・・──
規則正しく響く鼓動に疑問を持つ
何故・・・私は生きているの・・・
戸岐君と闘って、
私の身体は水晶に封じられたはずなのに・・・
ゆっくりと身体を起こすと、壊れた祠が見えた
「メグルっ!!」
「・・・ユキノ、ちゃん・・・・・?」
私に気づいた彼女が駆け寄ってくる
「よかった・・・・気が付いて・・・・・」
ずっと看ていてくれたらしい
安堵と少しの疲労が混じった様子で
彼女は微笑んだ
「私・・・一体・・・・・?」
「レイジがね、シンセイバーを使って
あの水晶を壊してくれたの」
「レイジ君が・・・・・」
一度覚悟したとはいえ、やはり自分の命は惜しい
その上、彼にシンセイバーまで使わせてしまい
私は何だか申し訳なくなった
「・・・・・・・・。」
「メグル、大丈夫・・・?」
「えっ・・・う、うん・・・。大丈夫
それより、レイジ君達は・・・・・?」
見当たらない、と言う事は
彼等は今なお別の場所で闘っているのだろう
「レイジ・・・そうよ、レイジがっ・・・!!
何か・・・嫌な予感がするの・・・・・」
ふと、背中に悪感が走る
それは彼の身に起こる事なのか、それとも・・・
「・・・行きましょう、レイジ君達の元へ」
対して彼女は深く、頷きかえした
雪野ちゃんのゴーラオーが大地を駆ける
私達は焦る気持ちを抑え、目的の場所へ向かっていた
「頑張って、ゴーラオーっ!!」
彼女の励ましに応えるかの如く、
龍はそのスピードを更にあげる
「・・・嫌な予感がする・・・」
「レイジだったら大丈夫よ
・・・そんな簡単にやられたら、私が許さないものっ・・・」
彼女の言葉に、曖昧に笑いかえす
レイジ君の事もそうだが、
それ以上に感じるこの焦燥感は何なのだろう・・・
「メグル!あれ見てっ!!」
突然の声にハッ、とし
示された方向に目をやると
そこには夜の闇よりも濃い漆黒の巨大な龍がいた
「・・・何て事・・・!!」
───真龍・・・、
忌々しげに見つめると、その下に横たわる人影が見えた
一瞬ではよく判らなかった
でも、よく見るとあれは・・・
「・・・・・!!」
見覚えのある、人だった
「っ・・・、戸岐君っ・・・・・!!」
最期に見たのはつい先刻なのに、
その変わり様には思わず眼を覆う
血濡れた顔、その眼は既に虚ろげで・・・
「どうして・・・何でっ・・・戸岐君が・・・・・!!」
「メグルっ!?」
泣き崩れた私の肩を、ユキノちゃんがそっと抱いていた
一体、彼が何をしたというのだろう
その代償は、死に値するものなのだろうか・・・
私には何も出来なくて、
ただ、抗いようの無い結果を見せ付けられる・・・
───その時、
ほんの刹那だけ、彼の瞳が
私に何かを伝えようとしていた
微かに動いた口から紡ぎ出された言葉、
届くはずの無い言葉だけれども
「・・・・・!」
彼の言葉を聴いた気がした
「・・・・・・戸岐君・・・・・・・」
自分の言いたい事ばかり伝えて、
私には何も伝えさせてくれないのに・・・・・
気づいた時にはいつも、手の届く場所には居ない
遥か遠く、私の知らない所・・・・・
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