+ Cross Mind  〜Toki's side〜 +



とくん・・・とくん・・・
耳の奥で何かが規則的に鳴っていた
とくん・・・・・とくん・・・・・
何か。
それは、自分の中で流れる時間
─腕が痛い・・・足も、頭も、全部・・・・・
身体中が痛くて、それに何か、眠くて・・・
俺、何が起こったんだっけ・・・?
神竜石を手に入れて
大空を倒すと決めて
闘って
・・・それから───


センコークーラの攻撃が
俺と、ライトナイツナイトを捕らえた
鈍く伝わる衝撃
でも、それは計算通りだった
大空レイジを確実に葬る為の・・・
揺れた視界の中
近距離で穿たれた白い翼が
奴の心臓を一貫したのが見えた

勝った・・・・・

刹那のうちに確信した勝利を
俺は、信じて疑わなかった
小さな白い龍がその主を庇うように仁王立ち
覆せるはずの無い状況でも
その眼は敵意の色を失わなかった
「ちっちゃいのに頑張るね〜
でも、そいつ、もう死んでるよ・・・♪」
皮肉な笑みを浮かべると
ようやく安心できた気がした
ずっと感じていた、
得体の知れない疎ましさから縁が切れる
・・・そのはずだったのに
投げ出された腕の先、その指が微かに動いた
思わず、全身が凍り付く・・・
──生きている・・・いや、生きていた・・・
「っ・・・はぁっ・・・!?」
ナイトの攻撃は、確かに心臓を貫いたのに

「チビ・・・。オレ、諦めてないから・・・!!」

真っ直ぐと向けられた瞳は
敵意ではない強さを秘めていた
意味、判んね・・・
一体、何がそうさせるのか
・・・何で、立てんだよ・・・あいつ・・・・・!!?
倒したはずのセンコークーラが再びその身を現した
その姿を認めると同時に、自分の鼓動が激しく鳴った
「・・・っていうか・・・。無理だろ・・・?
・・・その身体で、まだ・・・・・」
目の前に居る龍に、恐怖を感じた
違う・・・先程までの龍と
目の前の龍は咆哮と共に幾度と姿を変え
相次ぐ変化の果てに見たのは
光を纏う龍と、白い・・・閃光だった


───・・・圧倒的だった
勝ち目が無い事も、薄々と感づいていた
それでも
引き下がるのは今更だった
我侭を言ったとはいえ、最後までやり遂げたかった
でも、その結果がこれじゃぁざまぁ無い
「あれ・・・が、・・・真、龍・・・・・」
深い闇を携えて空に浮かぶ真龍は
静かに俺達の有り様を見下ろしていた
そして。もう一人・・・
その人は、いつか見たような泣きそうな顔で
俺の名を呼んでいた

「・・・っ、戸岐君っ・・・!!」

遠く、その声が木霊する
もう聞けないと思っていた声、
もう一度、聞きたかった声が・・・
そっか・・・あんたは、生きていてくれたんだ・・・
「・・・・・メグ・・・ル」
でも、俺はもう・・・この声を届ける事も出来ない
ふっ、と自分の体が持ち上がる
見上げると、そこには俺の血で汚れる事も厭わない
見覚えのあるスーツが映る
「よくやった、航平・・・」
親父・・・・・?
「命を懸け、お前は・・・見事真龍を復活させた・・・」
その頬に、初めて、一筋の光るものを見た
「お前こそ・・・本当の勇者だ・・・・・」

──── 初めて、

その人に褒めてもらえた
自らの置かれている状況とは裏腹に
自然と嬉しさが込み上げた
「へへっ・・・・・イェーイ・・・・・」
勇者として、俺は目的を果たしたんだ
「ゲームクリア・・・・・♪」
"自分"という犠牲を払って、
その使命を全うした
だが、完璧なエンディングでは無かった
唯一、
勇者がお姫様を裏切った事だけを除いて・・・・・

「あー・・・楽しかった・・・」

薄れゆく意識の中、
記憶に焼き付いている彼女の姿が俺を振り返った