時、アセリア暦4354年。
闘技大会で有名なユークリッドに、また一つ、
新たな歴史が刻まれた今日この頃。
「オリジン!!」
眩い光と共に現れた、"根源"を司る精霊、オリジン。
精霊は、自分の前に置かれている壊れた剣と輝く鉱石を認めると
スッ、とその手をあげる。
刹那、剣の欠片と鉱石は一瞬にして融合し、剣は元の姿を取り戻した。
「さぁ、これで大丈夫だろう。」
「ディムロスっ!!」
言い終わるや否や、少女はその剣を手に取った。
柄の中心に位置する"コア・クリスタル"がそれに共鳴した。
「ディムロス・・・ね、聞こえる?ディムロスっ。」
「・・・・・リ・・・リス・・・?」
聞きなれた声を聞き、彼女は安堵の溜息をついた。
「本当に、有り難うございました。クラースさん、クレスさん。」
修復された剣、−ソーディアン・ディムロス−を大事に抱え、
リリス=エルロンは深々と頭を下げた。
「いや、私の召喚術が役に立ってよかった。
別次元の人物と出会う、貴重な体験も出来たしな。」
召喚に使ったダイヤモンドの指輪を仕舞いながら彼、
クラース=F=レスターは笑いかけた。
「あのっ・・・本当に・・・申し訳ありませんでした、リリスさん。」
今回。一番の問題となったクレス=アルベインは未だにリリスを直視できずに居る。
「そーんな気にしないでくださいよぉっ。突然、あんな所に現れた私も私ですからっ!!
それに。いい経験が出来ました。お兄ちゃんと同じくらい強い人と戦えて♪」
クレスを元気付けるかのように、彼女は明るく言って見せた。
実際、彼女の言ってる事は満更嘘でもない。
何せ、戦う事を楽しむ娘ですし。(私論)
それを感じたクレスはやっと安心して顔を上げた。
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
「おい、リリス。そろそろ・・・」
「・・・は〜い・・・」
急かしたディムロスにリリスは渋々返事を返す。
「それじゃあ皆さん。慌ただしくて申し訳ないんですけど、
私達、そろそろ行きますね。本当に、有り難うございました。
・・・・・あっ。ディムロスもよろしく、って言ってます♪」
二人には聞こえない、剣の声をリリスは代弁する。
その様子を少し、不思議そうに見つめながらもクラースが口を開いた。
「そうか・・・。時間があれば君の世界、それにその物言う剣について
も聞きたかったんだが・・・。仕方無いな。では。道中、気をつけて。」
名残惜しくは思いながらも、彼は別れの決心をする。
「リリスさん、もし困った事があったら僕が時空を超えて
助けに行きます。・・・必ず・・・!」
素で熱い台詞を言われ、彼女は少し頬を紅らめながら「ありがとう」と笑いかえした。
そして、最期に軽く会釈し、彼女は人気の少ない路地裏へと駆けていった。
「それじゃ、ディムロス!時空転移お願いねv」
剣を掲げると、途端に眩い光に覆われ、次の瞬間には
少女と、剣の姿は無かった。
側を過ぎる心地よい風。
身を照らす暖かな陽光。
目を開ければそこは・・・・・
そこは・・・・・・・・・・・・・・・。
「何処よ。」
目の前に広がる異様な光景に、リリスは思い切り眉を顰めた。
ってか、それ以前に風も陽光も感じてないんだけどね。(私論)
辺りを見回すと、そこは部屋のようだった。
所狭しと置かれた機械・・・?の山々。
物々しい雰囲気に、彼女の背に悪寒が走る。
「ねぇ、ディムロスぅ〜・・・。ここ何処〜?」
「お・・・おかしいな・・・。私は確かにリーネに飛んだはずなんだが・・・」
当の本人(剣)は原因不明のアクシデントに声を唸らすばかり。
「何処の時代かも判んない?」
「むー・・・何か懐かしい感じはするのだが・・・」
− 刹那。
「氷結は終焉。せめて刹那にて砕けよ・・・!!」
何者かの呪文詠唱、そして・・・
「インブレイスエンドぉっ!!!!」
発動。
凄まじい爆音。しかもそれは・・・
リリスの居た部屋を直撃♪(死)
崩れゆく部屋。何が起こったのか判らず混乱するリリスは
自らの不運を呪い、その意識は事切れた。
外は、長く続く吹雪だった。
その日の医務室はとても平和で、軍医・アトワイト=エックスは
散らかった薬棚の整理をしていた。
「(・・・これは・・・こっちだったかしら?)」
彼女が首を傾げた瞬間、
バンッ
「アトワイト、居るっ!!?」
「ハロルド?どうしたの一体?」
滅多に取り乱す事の無い彼女、ハロルド=ベルセリオスは
後ろにピエール=ド=シャルティエ従えてずかずかと歩み寄る。
「・・・人、吹っ飛ばしちゃった。」
またか。
と、軍医は小さな溜息を漏らす。
「何の術で?」
きっとまた、上級晶術だろう。等と思いながら看護の準備をはじめる。
「インブレイスエンド。なんだけどぉ〜・・・その被害者がねぇ・・・」
シャルティエが気絶したその人を示す。
「・・・年端もいかない少女だったり・・・・ね。」
その一言に。
アトワイトは思わず包帯を落とした。
頭の中で誰かの呼び声が響く。
よく通る、女性の声。
不意に、自分の頬に当たる手で、リリスは目が覚めた。
「気がついたかしら?」
自分を覗き込む女性の顔。
大きな帽子がよく似合っている。
「良かった・・・。一時はどうなる事かと思ったわ。
あなたみたいな子が晶術の直撃を受けたんですもの・・・。
ふふっ、余程体が頑丈なのね。」
冗談めかした様子で女性は笑う。
「あの・・・ここは?」
「ここは地上軍拠点地、"ラディスロウ"の医務室よ。
私は軍医のアトワイト。貴方のお名前は?」
「リリス・・・リリス=エルロン、です・・・。」
聞きなれない言葉の意味について考えながら、自分の名を名乗る。
− 地上軍、ラディスロウ、アトワイト・・・・・
これらの共通点といえば、ただ一つ・・・
− 天地戦争・・・ −
血の気がサアァ・・・っとひくのを感じた。
「(ううう嘘っ!!?まさか・・・私、天地戦争時代に転移しちゃったんじゃ・・・)」
そして更に彼女を悲劇が襲う。
「(・・・!!無いっ・・・ディムロス無くしちゃった!!?)」
直してもらったばかりの剣が無い。
お馬鹿。(私論)
「アトワイトさんっ!!私が持ってた剣見ませんでした!?
こんくらいの・・・柄が赤くって・・・」
「・・・さぁ・・・見てないけど・・・。けど、貴方を運んできたハロルドと
シャルティエ・・・あ、ハロルドって言うのは貴方に術を直撃させた本人で・・・」
「何処にいますその人!!?」
「ハ・・・ハロルドだったら、ここを出てまっすぐ行った突き当たり・・・
って、リリスちゃん!?駄目よ、まだ病み上がりなんだから・・・!!
あっ・・・あら・・・ら・・・?」
疾風の如く飛び出した彼女を、アトワイトは
結局止める事が出来なかった。
To be continued.
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後書です。今回は私の大好きなリリスの小説。
ファンダムの「リリスがんばります!」を元にしています。
元はといえば、あれでリリスに惚れました。(笑)
因みに、途中に有る「私論」あれはつまり"ツッコミ"です。
それにしても、無理の有る題材で書いてるなぁ、霜庵さん。
無駄に長い小説ですが、続きを読んでくださる方は下の
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