(「都立調布北高校コーラス部・音楽部OB会会報」平成10年度第1号(通巻3号・1998年9月)より引用)

旅行貯金とは何か

 皆様は、「旅行貯金」という趣味の存在をご存知でしょうか。要するにどんなものかというと、ほら、町には「郵便局」と呼ばれる施設があちらこちらに建っているでしょう。で、通常はそこにお世話になるケースっていうのは、切手を買ったり、貯金をしたり、郵便振替を使ったり、あるいは簡易保険なんてのもあるかもしれないけれど、ふつうはそういった郵政省の行っている事業のお世話になる時に行くのであって、ただそこの郵便局に行くためにそこを訪れる、などということは良識ある市民はあまりしない。ところがここに、御苦労にもわざわざ電話帳で所在を調べ上げて訪れ、窓口でハンコをもらって帰ってきて喜んでいる、というあまり良識のない市民がいるんです。それが「旅行貯金」。種村直樹あたりのレールウェイライターが提唱し、あるいはアマチュア無線愛好家の間で行っている人もいるとかいないとかいうことも聞いていますが、私も中学生の頃から「郵便局名」を蒐集しております。
 イメージを持っていただくために、具体的にどんなことをやっているのか紹介すると、(1)郵便局の住所を調査する。電話帳とかで調べます。住宅地図を使って詳細にやるときもあります。最近は私も社会人なので、有休を使わないと(使うし)平日の郵便局なんかにはなかなか行けないので、この辺の下準備はそれなりにしないとロスが出るんですね。でも、例えば地番のみで住居表示をまだしていない地域なんかだと、どうしても場所のあたりをつけられない時もあるんですが、それを現地で探すのもまた醍醐味ってやつで。(2)郵便局に行く。これは文字通り、貯金業務の営業時間9時から4時までの間に郵便局の窓口に行くわけです。(3)貯金をする。10円以上であればいくらでもいいんですが、私は郵便局に行った数と貯金額を同じ数にしています。(4)ハンコを押してもらう。こういうけったいな貯金をする人は旅行貯金家だってことは郵便局の人も心得ているようで、特に何も言わないでも局名のハンコと「主務者印」という朱印を通帳に押してくれます。(5)それを繰り返す。1日中やっていると、東京都の区部みたいにたくさん郵便局があるところだと20局以上回れます。意外なところに意外なものを見つけたり、ふと立ち寄った古本屋で前から探していた○○の××の漫画を見つけたり、と、郵便局に行くだけでなく、町のいろんな様子を知ることができるのもおもしろいところ。(6)データの整理。1度行ったところに間違えてまた行かないために、行った郵便局はチェックしておきます。今はMicrosoft Accessというデータベースソフトを使って整理していますが、たかが郵便局に大袈裟な、という感じですね。でも便利です。
 私の98年9月現在での個人的なデータですが、行った郵便局の数は1537局。北は青森県から西は岡山県まで22都府県。一番多いのが東京都の767局、以下千葉県257局、長野県251局。当然のことながら住んだことのある地域の郵便局には多く行ったことがあるわけですね。そのうちホームページを作ったら、一覧とかのデータを載せるかもしれません。そういうことやっている人が世の中には結構いますね。で、そういうのを幾つか見て、私も1500を越えるくらいの郵便局を回っていると、どうやら旅行貯金家の中堅くらいにはなれそうです。ちょっと自信が出ました(←出すなよ)。
 いかがでしょう。他の人にお勧めできるほど建設的・建徳的な趣味でもないですし、我ながら暇なことだとも思いますが、かれこれ10年以上も続けているところを見ると、他人にはわからない魅力があるのかもしれませんね。

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