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50年代アメリカのマイナー盤について

▼K氏からのメールでM&A CD1072カバスタ録音集の解説書の内容を知ることが出来た。そこには、MercuryやVoxがバイエルン放送に著作権料を支払ってテープを正規に購入した(演奏家の承諾は不明−)ことが書かれていた。あのWF指揮といわれたハイドン/ロンドンAlfons Dressel指揮ミュンヘン放送響の戦中放送録音もその一例。バイエルン放送の正規テープを使ってMercuryがMG10050として発売している。この録音は、Royalでは1401カール・リスト指揮として52年に出た後、76年Discocrop RR441として出て、メロディアやSFB返還テープを使ったDGのCDでもWFの録音として扱われた。(Royaleでは1370で43年のWFのティルが指揮者名なしのベルリン交響楽団として出ている。また「新世界」で有名なカールリストという指揮者は実在する。)
研究家として有名なMr. Ernst A. Lumpeによると「これらは不充分な研究が誤った結果を招いた」としている。本当に今まで日本のWFフリークと言われる人々は手をつけてこなかった分野なのかもしれないし、手をつけていたとしても発表しなかった分野であろう。
[ARSC Journal Ernst A. Lumpe氏の論文](Lumpe氏は技術的にも音楽的にもWFではないとしている)

またあの巨匠のエロイカで有名なUraniaであるが、これもWard BotsfordというVoxのプロデューサーによって作られたVoxのレーベルである。VoxのHP[Voxのポリシー]にはこのことについて書かれている。おそらくUraniaエロイカは合衆国的には「合法的」に作成されたものなのだろう。Voxのフランクも同じプロセスといえるようだ。
米国の私家盤AllegroとRoyaleは「歴史的プロデューサー」として合衆国では名高いMr. Eli Obersteinによってつくられた。これらはRecord corporation of Americaのレーベルのひとつ。LumpeによるとMercury盤やDecca盤をコピーしたり、消息筋からドイツの放送局音源を購入したとしている。Mercury社が当時のバイエルン放送の米代表と契約したという情報もLumpeの論文にある。
アメリカのマイナーレーベル(ウェストミンスターも含む)や私家盤製作者が、米国の演奏家を使わず、欧米の報酬の安い演奏家や戦前の放送音源を使ったのには理由がある。戦中から50年代にかけて「高額な報酬」を主張したアメリカの演奏家組合が原因だ。マイナーレーベルには米国の演奏家は高嶺の花であり、カタログを充実させるためにそのような手段に出たようだ。(2000年9月)

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