Web ページ: 文学散歩
『文学散歩』(美し国三重)
『わが町松阪』を20回連載させていただきました。今月号より、新しく文学散歩を連載させていただきます。どうぞ、ご愛読下さい。
記紀のころ(1) (1993年10月発行)
神風の伊勢と言われる私達の三重県は海と山と平野と川に恵まれた歴史の古い土地です。其の麗しい風土からは多くの歌が生まれ、物語が語られて来ました。
今回は三重に生まれた文学者・小説家、またこの地を首題にした作品、更に著名な歌枕など紹介してゆきたいと思います。
遠く時代をさかのぼり神話時代の物語、猿田彦と細女命(ウズメノミコト)のハネムーンが阿邪詞(阿坂・・・アザカ)にあったとは、今に伝わる何射加(アザカ)神社の由来記です。
比良夫貝にはさまれて哀れソコドのみ魂(底につく)ツブタワのみ魂(水つぶがぶつぶつあがる)アワサクのみ魂と化した猿田彦のエレジーを、わしらの海の物語と松崎浦の古老達は今も信じているそうです。愛する夫を失った細女命の復習のとばっちりを受けたナマコの口の伝説は機会があれば又詳しく述べる事に致します。
悲劇の皇子日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が愛人弟橘媛(オトタチバナヒメ)を相模の浦で失い、はては伊吹山の白猪の毒気を受け傷心の身でたどり着いたのは四日市の采女(ウネメ)の里でありました。「わが足三重の勾(マガ)りのごとくしていと疲れリ」と詠まれた歌が三重県の語源であると云われております。