美奈の夏休み

7〜恥辱のオムツ




 ハサミでむりやり美奈のショーツを切っちゃったのはやり過ぎかもしれないけど、でも、玲子の言うことはその通りだった。私にしたって、美奈のバッグから着替えのズボンとかキュロットとかを取り出しちゃったし、実際にはそこまではしなかったけど、ショーツなんかもタンスに戻しちゃおうと思ったんだもの。それはつまり、美奈がこれから当分の間、オムツをあてて生活することになるって知ってたからだった。
 あの日、つまり、美奈を私のマンションに預かるって話がまとまってから玲子のお店に立ち寄った日、玲子が私にみせてくれたのが医療用のオムツカバー(ベッドから立ち上がることができない病人や排泄機能に障害を抱えた人のためのオムツカバー)だった。そして玲子は、それを美奈に使わせることを提案したんだ。いろいろと話し合って相談し合って、結局は私も玲子の提案に乗ることにした──私のマンションに預かっている間、美奈にはオムツをあてて生活させようって決めちゃったわけだ。だからスラックスを持ってこないように(だって、オムツで大きく膨れたお尻にはスラックスやキュロットなんて窮屈で穿けないものね)言ったんだし、ショーツも必要ないわよって言いかけたんだね。もっとも、私のマンションじゃなく玲子のお店で早速オムツをあてようとしてるのには私もちょっとびっくりしちゃったけどね。

 さて、ショーツを切り取られた美奈だけど。
 突然のことに、自分の身に何が起こったのか、もうひとつわかってないみたいだった。ただ、金属製のハサミのひんやりした感触に驚いたように、スカートの裾を持ち上げていた両手の力を突然ぬいたからチェックの生地がふわりと美奈の下腹部を隠しちゃって、そのせいで、ほんとに赤ちゃんみたいなつるつるの股間が見えなくなったんだけどね。で、それがきっかけになったみたいに私は立ち上がることにした。
 立ち上がって、ふと玲子の方を見ると、彼女が美奈に向かって無言でなにか指示を与えていた。何も言わずに、ただ指だけを動かして──その指は、寝台の方を差ししめして止まった。
 美奈の方は、前歯できゅっと噛みしめた下唇を僅かに前へ突き出して目を伏せてみせたんだけど、でも、玲子がもう一度寝台の方を指差すと、仕方ないっていう感じで(飼い主に叱られた子犬みたいに)のろのろと動き始めた。そうやってゆっくりと体を動かし始めた美奈はもう一度だけ許しを請うみたいに玲子の顔をちらと見て、で、玲子にじとっと睨みつけられて、とうとう観念したようにふっと小さく息を洩らしてから寝台に手をついて体を捻るようにして上がって行った(それとも、子猫の方が似てるかな?)。
 そしてそのまま、胸の前に両手を組んでぎゅっと目をつぶる。
 それを見た玲子は満足そうに頷いて言った。
「そうそう、それでいいのよ。そのままおとなしくしてらっしゃい。じゃ、亜紀が美奈ちゃんにオムツをあててあげてちょうだいね」
「え、私?」
 不意に名前を呼ばれて、私は少しおたおたしながら玲子の顔を見た。
「あたりまえよ。もともと、美奈ちゃんのお世話は亜紀がする予定だったんだから」
「だって、私……オムツのあて方なんて知らないわよ?」
 そりゃそうだよね、私はまだ学生なんだから。
「でも、故郷にいた頃はお兄さん夫婦とも同居だったでしょ? たしか、甥っ子がいるんじゃなかったっけ。その子のオムツを取り替えてあげたこともないの?」
 玲子が、何かを思い出そうとするみたいな顎に指先を押し当てるような仕種をして言った。
「そりゃそうだけど、でも……」
 たしかに、私には小さな甥っ子がいる。だからオムツやオムツカバーを目にしたこともある。だけど、(最初の方にも書いたけど)私と兄嫁とはなんとなくウマが合わなかったもんだから、その甥っ子のオムツを取り替えてあげたりミルクを飲ませてあげたりというところまでは面倒をみてあげたわけじゃないんだ(私としてはそういうことをしてみたかったけど、ちょっと遠慮をする、みたいな感じになっちゃって)。
それにだいいち、もしも私に育児の経験があったとしても、こんなに大きな赤ちゃんにどうやってオムツをあてていいんだかわかる筈がないよね?
「あら、できないの?」
 玲子は、なんとなく笑いを含んだような声で、念を押すみたいに訊き返してきた。
「……うん」
 私はなぜかドキマギしながら、でも正直に応えるしかなかった。
「そう。亜紀にはできない、か。……じゃ、私がやってあげなきゃいけないってことかしら。──そうなのね?」
 玲子の声がねっとりと絡みつくように思えた。
「あ、ああ……そう、そうね。……玲子にお願いするしかないわよね」
 私は玲子の声に絡み取られるように、口の中でぼそぼそと応えた。
「確かに承ったわ、亜紀のお願い。もうこれで何の心配も要らないわよ。みんな私にまかせて、亜紀はのんびりしていればいいわ。──みんな私にまかせて、ね」
 言葉の最後の方を妙に強調しながら、玲子は両目をきらきら輝かせて言った。
「え、ええ……」
 私は玲子の雰囲気に気圧されて小さく頷いた。
「そのかわり、何度も言うようだけど、私の言うことにはちゃんと従ってちょうだいね。美奈ちゃんもだけど、亜紀、あなたもよ?」
 玲子の目が少し細くなった。
「あ、うん……」
 私はなんとなく背筋が冷たくなるような思いにとらわれながら、それでも、いつのまにかコクンと頷いていた。玲子が本当は何を言いたいのかなんて考える余裕もないままに。

 私たちの会話を聞いているのかいないのか、美奈は目を閉じたまま体を固くしていた。
 そんな美奈のスカートを玲子がそっと捲くり上げた。ショーツを剥ぎ取られたばかりの無毛の下腹部が剥き出しになる。美奈が体を更に固くしたのか、お腹が微かにふるっと動き、眉毛と睫が同時にひくんと震えた。だけど、両手は胸の上でおとなしく組んだままだった。羞恥と屈辱に充ちたオシオキを受け、その間に自分の体の中に溜めこんでいた羞ずかしい液体を溢れさせるところを一部始終に渡って見られてしまった今、美奈の心には玲子に逆らってみせる気力は微塵も残っていない筈だ。ただおとなしく玲子のなすがままにされることしか、かわいそうな美奈にはできない。
 玲子は美奈の両方の足首をつかむと、右手に力を入れて強引に持ち上げた。羞じらうように膝を曲げて両脚をすぼめていた美奈だが、意外に力強い玲子の腕にかかれば、それこそ本当の赤ちゃんみたいに両脚が真っ直ぐに伸びて、ぐいっと高く引き上げられてしまう。そしてそのまま、お尻から腰にかけてまでが寝台から離れちゃったんだ。
そうしてできた体と寝台との隙間に、さっきから広げられたまま(そんで、僅かとはいえ美奈のオシッコで濡れちゃったまま)のオムツとオムツカバーを玲子はささっと敷き入れた。
 両脚を高く持ち上げられ、お尻の下に水玉模様のオムツを敷きこまれたその美奈の姿は、例えでもなんでもなく、オムツを取り替えられる赤ちゃんそのままだった。胸の上で頼りなげに両手を組み、ぎゅっと目を閉じた顔を小さく震わせているその姿は、自分では何もできないちっちゃな子供にしか見えない。私は、それまでよりももっと美奈のことをいとおしく思うようになりかけてる自分をみつけた。なんとなく、胸がきゅっと締めつけられるような感覚さえ伝わってくる。私の心の中で、美奈は本当に私のちっちゃな妹に変身しちゃったみたいに思える。それじゃ、玲子は怖くて厳しいママの役かな──私は自分のそんな思いつきに、クスッと胸の中で微笑んだ。
 高く持ち上げられた両脚の間をくぐり抜けるようにして、玲子が手にしたオムツが美奈のお尻からおヘソの下へ広げられた。ちょうど、微かな滲みの付いている辺りが美奈の恥ずかしい部分を覆うような位置になっている。オシッコで濡れた直後はまだ美奈の体温が残っていて幾分かは温かかっただろう滲みも、今は冷房のためにすっかり冷えきっている筈だ。びっしょり濡れたオムツが美奈の大事なところを覆い隠し、冷たい感触をぞくりと伝える。
「ひん……」
 美奈が目を見開き、泣き出しそうな喘ぎ声をあげた。
「あらあら、急にどうしたの?」
 どうしたの?も何もないもんだ。美奈が思わず喘ぎ声を洩らしちゃった理由は玲子にはわかっているだろうに、わざと美奈をからかってるんだろう。ほんとに困った友達だ。
「だ、だって……」
 美奈は自分が置かれた窮状を訴えようとした。だけど、その声は言葉にならずに途中で終わってしまう。それもムリのないことだと思うよ。まさか、『あてられたオムツが冷たく濡れてて気持ちわるいんです』とは若い女の子が口にできる言葉じゃないよね。
「だって──どうしたの? ちゃんと言ってくれなきゃ、わからないわよ?」
 でも玲子の方はそんな美奈の胸の内を充分に察していながら、面白そうにそう言ったんだ。ひょっとして玲子、美奈をいじめて楽しんでるの?
「だって、だって……ああん、そんなこと……」
 下腹部を覆いつくそうとしているオムツのじっとりした感触と玲子からの言葉の責めに耐えられなくなったみたいに、美奈は体をくねらせた。
「うふふふ、言葉にできなきゃできないでいいのよ。──美奈ちゃんはオムツの外れない赤ちゃんなんだもの、まだおしゃべりも上手じゃないのよね?」
 美奈の両脚の間を通した股当てのオムツをおヘソのすぐ下でちょっと折り曲げながら、玲子がまるで幼児をあやすような口調で言った。そして、体と直角に広げられている横当てのオムツの端を持ち上げると、それを優しい手つきでそっと股当ての上に重ね、もう一方の横当ても同じように美奈のおヘソの下に持ってゆく。その後、美奈の下腹部をふんわりと覆ってしまったオムツの様子をじっくりと点検するように見渡してから満足そうに頷いて言葉を続ける。
「じゃ、赤ちゃんが喜ぶような物を美奈ちゃんにあげましょうね。上手にできるかしら?」
 そう言うと玲子は白衣のポケットから小さくて柔かそうな何かを取り出し、それを掌に載せて美奈の目の前に差し出してみせた。もちろん、私も興味を惹かれて玲子の手に載ってる物に目を向ける。それは、全体的には淡い飴色のゴムみたいな素材でできてて、そのうちの所々がピンクのプラスチックになってる柔らかそうな物だった──ひょっとしてこれって、赤ちゃんが口に咥えるオシャブリじゃないの?
「……」
 美奈もびっくりしちゃったのか、なにやら不思議そうな表情を浮かべて何も言えなくなっていた。
「さ、お口を開けてごらん。赤ちゃんはみんな、オシャブリが大好きなのよ。特にこのオシャブリはうちのお店で扱ってるうちで一番高級でいい材料を使ってるんだから、美奈ちゃんも気に入ってくれる筈よ」
 黙りこくってしまった私たちとは対照的に玲子はにこやかに微笑みかけながら、手にしたオシャブリを美奈の唇に押し当てようとする。
「あむ……ぐう……」
 ムリヤリ口の中に押し込まれたオシャブリを舌で押し出そうとしている美奈の唇から、言葉にならない声が洩れた。
「あらあら、オシャブリはイヤなの? ま、いいわ。でも、それならそれで、さっき言いかけたことをちゃんと言ってちょうだいね。はっきりと大声で、ね」
 玲子は、美奈が吐き出そうとしているオシャブリを尚も強引に押し戻しながら意地のわるい言い方をしてみせた。美奈がそんなことを口にできるわけがないって充分に知りながら。
 さかんにオシャブリを押し出そうとしていた美奈の唇の動きが急に止まった。どうやら、玲子から意地のわるい選択を迫られているんだってことがわかったみたいだ──まだおしゃべりのできない赤ちゃんみたくオシャブリを口にふくんだままでいるのか、それとも、自分の下腹部を包みこんでいるオムツの気味のわるい肌触りのことをこと細かに言葉にするのか。それは、どう考えてもむごい選択だった。もしもオムツのことを言葉にする方を選べば、それがなぜ濡れているのかということまで玲子は問い質すに違いない。そして、美奈はその質問には応えられない筈だ。それを言葉にするのは、あまりにもつらいことなんだから。
 とうとう美奈は観念したような顔つきになって、唇に押し付けられているゴムのオシャブリをおずおずと口にふくんだ。オシャブリを咥えた美奈は唇が僅かに前に突き出すような顔つきになり、妙にあどけない、あいらしい表情になるものだった。大きなオムツでお尻を包みこまれ、赤ちゃんのようにオシャブリを口にふくんだ中学生──私の目に、寝台の上に横たわる奇妙な幼女の姿が映っていた。
「それでいいのよ、美奈ちゃん。うふふ、でも美奈ちゃんたら、ほんとに赤ちゃんみたいな格好がよく似合うのね。とっても可愛いわ」
 やっとのことでオシャブリから手を離し、その手を美奈のほっぺから顎先へ、そして、まだ膨らんでいない胸の方へとゆっくり這わせていきながら玲子がにっと笑った。
「あ……むあ……」
 オシャブリを口にふくまされたために言葉の自由を失った美奈が、ビクッと身をよじって呻いた。
 玲子の白くて細い指は、まるでそれ自身が一匹の生命あるみだらな虫ででもあるようにひくひくと蠢き、薄い生地でできたブラウスの上から美奈の肌の感触を確かめでもするみたいに次第次第に体の下の方へ這い続けた。固い乳房(まだ”乳房”とは呼べないかもしれないけれど)の先にちょんと突き出した小さな乳首のすぐそばをそっと通り抜け、薄い胸板から筋肉質の脇腹をつつと辿り、まだくびれもはっきりしないウエストラインに沿ってきゅっと締まったおヘソ(これまでこんなにまじまじと見たことはなかったけれど、今はスカートがお腹の上に捲り上げられてるからついつい覗きこむみたいになっちゃう)のすぐ下へ。
 そうして玲子の手は、再びオムツの端を握った。美奈が体をよじったせいで少しみだれてしまったオムツを優しい手つきでちゃんとあて直すためだ。それから玲子は、オムツカバーの左右の横羽根をそっと持ち上げた。いよいよ、美奈の下腹部は幼児のための羞ずかしい下着で完全に包みこまれちゃうんだ。そう思うと、自分のことじゃないのに、私の胸からドックンドックンという音が聞こえてきそうに思えた。いつのまにか、頬も熱くなってくる。
 玲子の手がオムツカバーにかかった感触が伝わったのか、美奈が自分の下半身の様子を確かめようとするみたいに頭を上げた。でも、自分の下腹部を覆い隠している水玉模様の布オムツ(それも、秘密の部分に触れているところは微かに変色して滲みになっている)を目にした途端、もうこれ以上のことを直視することができなくなったみたいに首を一度だけ弱々しく振ってからおずおずと元の姿勢に戻っちゃった。
 その間も、玲子は手の動きを止めなかった。右と左の横羽根を美奈のおヘソのすぐ下で重ねるとお互いをマジックテープで留めて(こうすると中のオムツもしっかり固定されて、よれたりずれたりすることが少なくなるんだよ。甥っ子の世話をしたことはないけど、高校時代に家庭科に保育実習の授業もあったから、そのくらいは私も知ってる)しまい、それから、美奈の両脚の間に広がってる前当てを静かに体の前の方へ持ってくる。で、左右の横羽根に三つずつ付いてるホックに前当てのホックを嵌めこんで、ぷつっぷつって音をたてながら留めてくんだ。それを見てて気がついたんだけど、一番下(つまり、ウエストの方じゃなくて太腿の方ね)はホックが左右に二つずつ付いてるんだね(あとで玲子に尋ねてみたんだけど、介護用のオムツカバーの場合だと、着用する人によって腿の太さがいろいろだから調整できるようにそうなってるんだって。赤ちゃん用のだとどの子もだいたい同じような体格だからそんな必要はないってことだけど)。
「さ、できたわ。これでもう、いつオモラシしてもかまわないわよ」
 玲子は、オムツのせいで大きく膨れた美奈のお尻をぽーんと優しく叩いて言った。
 その言葉を耳にした美奈が、閉じてる瞼にまたぎゅっと力を入れて泣き出しそうな表情を浮かべた。そのひょうしに、口にしてるオシャブリが小さくヒュッと鳴った。
「あら、オムツをあててあげてる間にすっかりオシャブリも上手になったのね。さ、おててを引いてあげるから立っちしましょうね。ほーら、あんよはじょうず」
 玲子は、すっかり幼児に言い聞かせるみたいな口調になっていた。オムツをあてられ、オシャブリを咥えさせられた姿の美奈にとって、そんな玲子の優しげな口調は却って更に羞恥を刺激されるばかりだった。だけど玲子は──自分の言葉を耳にする度に美奈が頬を真っ赤に染めることに妖しい悦びを覚えているのかもしれない玲子は──尚も美奈に向かって羞ずかしい言葉を投げかける。
「まあまあ、オムツのせいでスカートがすっかり膨れちゃって。そういえば、街中でも時々こんな格好をしてるちっちゃな女の子を見かけることがあるわよね──スカートの裾からオムツカバーをちょっとのぞかせてよちよち歩いてる女の子。美奈ちゃんも見ることあるでしょう?」
 両手を引かれて寝台の傍らにおり立った美奈の姿はミニスカートがオムツのためにぷっくりと膨らんで(両手で押さえてないと)しらない間に捲れ上がってしまい、玲子の言うように、まるでちっちゃな女の子がとてとて歩いてくみたいな、かっわいいっていうかあらあらっていうかあどけないっていうか……とにかくそんな感じになっちゃってたんだ。



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