偽りの保育園児



    第二章 〜女の子に〜

               
【一】


 両脚に女児用のソックスを履かされ、下腹部の飾り毛を一本残らず剃り落とされた上
にタックを施されて、前から見る限りでは股間を幼女のそれとまるで変わらぬよう変貌させられてから、葉月は皐月の手で腕を引っ張られ、体を引き起こされた。
 だが、羞恥に満ちた責め苦はまだ残っている。
「さ、今度こそ、すっかり女の子になっちゃった葉月ちゃんのあそこにお似合いのパンツを穿こうね。さっきは勝手に駆け出してころんしちゃったけど、今度はおとなしくしてなきゃ駄目よ。また勝手に駆け出しちゃったりしたら、今度はどんなことになるかわからないから、おとなしくするよね?」
 今度また逃げ出そうとしたりしたらどんな目に遭うか知れたものじゃないわよと言外に匂わせながら、皐月は、純白のソックスだけを身に着けた葉月の体を正面からじろじろ眺めまわした。
 その間、葉月は羞恥に満ちた表情で目を伏せ、股間を左右の掌で覆い隠すことしかできないでいた。皐月の手で体の自由を奪われているわけではないものの、さっきは思わず逃げ出そうとして失敗し、その結果、スラックスに足を絡め取られて転んだことを口実に、下腹部の飾り毛を失うのみならず、ペニスと陰嚢を両脚の間に後ろ向けに折り曲げられ、強引に下腹部の皮膚の中に押し込まれて幼女めいた股間に仕立てられてしまうといった手ひどい扱いを受けたばかりだ。皐月に言われるもでまなく、今度また逃げ出そうとすればどんな仕打ちが待っているか知れたものではない。しかも、運良くこの部屋から逃げ出すことができたとしても、この姿で街中に駆け出すことなど到底かなわない。
「いいわよ、葉月ちゃん。恥ずかしそうにあそこを掌で隠しておどおどする様子、本当に小っちゃな女の子みたいで可愛いわよ。大人の女の人だったら胸も隠すところだけど、葉月ちゃんはまだ保育園の女の子だもん、胸にまで気がまわらないのよね。そんなとこもとっても子供らしくていい感じよ。このぶんなら、遠藤先生にたっぷり可愛がってもらえるに違ないね。早く明日にならないか、葉月ちゃんも待ち遠しいでしょ?」
 皐月は、二人の視線を受けてもじもじと体をくねらせる葉月に追い打ちをかけるように言ってから、執務机に手を伸ばし、園長がセーラーワンピースの上に重ね置いたシナモロールの女児用ショーツをつかみ上げ、伏し目がちの葉月の顔を斜め下から覗き込むようにして続けた。
「さ、お待ちかねのシナモロールのパンツよ。葉月ちゃんみたいな小っちゃな女の子はみんな大好きな可愛いパンツよ。小っちゃい子でも男の子は恥ずかしがって穿きたがらないけど、葉月ちゃんは女の子だもん、こんな女の子パンツが大好きなんだよね?」
 皐月が手にした、股ぐりのゴムのせいで今にもくしゅくしゅに丸まってしまいそうなコットンの女児用ショーツ。葉月は顔を伏せて見まい見まいとするのだが、なぜとはなしに視線がちらちらとそちらを向いてしまう。そうして、ショーツが目に映るたび、慌てて伏し目がちに視線をそらすといったことを繰り返すのだった。
「じゃ、ころんしないよう、今度は体を支えてあげるわね。ほら、右足を上げて。ちゃんとしないと、せっかくの可愛いパンツを穿かせてもらえないわよ」
 スラックスとトランクスを脱がせる時は皐月が葉月の体を押さえていたが、今度は、転んでしまわないようにという口実で葉月の体を後ろから抱きすくめるのは園長の番だった。
「や……」
 小さな女の子用のショーツを穿かされそうになる羞恥と、背中に感じる張りのある乳房の感触とに、葉月は、両腕を体の横にぴったりつけた状態で園長に背後から抱きすくめられたまま、ひどくなまめかしく聞こえる喘ぎ声を漏らした。同時に、園長の手でタックを施されるまではだらしなく縮こまっているばかりだったペニスが、どういうわけかぴくりと反応してしまう。
「ほら、園長先生もおっしゃっているでしょ、右足を上げなさいって。あ、そうか。葉月ちゃん、まだ小っちゃいから、どっちが右でどっちが左かわかんないんだっけ。じゃ、先生が教えてあげる。いい? お箸を持つ手の方が右で、お茶碗を持つ手の方が左よ。さ、わかったら、右足を上げてちょうだい。ううん、大丈夫。葉月ちゃん、あんよは得意じゃないみたいだけど、ころんしちゃわないように園長先生が体を支えてくださってるからね。だから、ほら」
 それこそ、まだ左右の区別もつかない幼児に教えるみたいに言って、皐月は葉月の足首をつかみ、床から右足を上げさせた。
「や、やだってば。そんな、女の子のパンツなんていやだってば……」
 いくら足を踏ん張っても、体格でも体力でもかなわない姉に抵抗できるわけがない。それでも葉月は無理矢理に上げさせられた足をばたばたさせて、まるで聞き分けの悪い幼児そのまま地団駄を踏んで皐月の手を拒む。
「何を言ってるの、葉月ちゃんてば。女の子が女の子パンツをいやがるなんて、変なことを言うのね。――あ、そうか。葉月ちゃんは裸んぼうのままがいいのね。そうか、そうよね。小っちゃい子は、お洋服を着るのが窮屈で、裸んぼうのまま遊ぶのが大好きだもんね。やんちゃな男の子も、おとなしい女の子も、そこだけは同じなんだよね?」
 皐月は葉月の抵抗の真意をわざと取り違えてみせ、にっと笑うと、手にした女児用ショーツを改めて執務机の上に戻した。
 皐月の予想外の行動に、一瞬きょとんとした表情を浮かべる葉月。
 けれど、それで羞恥に満ちた責め苦が終わったわけではなかった。
 ショーツを執務机の上に戻した皐月が、園長に向かって
「園長先生、葉月ちゃんから手を離してあげていただけますか。どうやら葉月ちゃん、裸のままがいいみたいなので、このまま砂場で遊ばせてあげようと思います。もうすぐお昼でお日様は高いけど、砂場がある場所は丁度お向かいのマンションの日影になるから、裸んぼうでも、ひどい日焼けをする心配もありませんし。ええ、裸んぼうで砂場で遊ぶ葉月ちゃんのこと、お向かいのマンションに住んでいる人たちもベランダから眺めて、可愛いって言ってくれるに違いありません。二階よりも上だと、保育園の塀よりも高くて、視界が遮られることなんてありませんから。明日から保育園に登園する葉月ちゃんの、ご近所さんへの一日早いお披露目みたいなものですね」
と言い、それに応じて園長の手が離れると同時に、葉月の手を引いて今にも部屋から出て行こうとするのだった。
「待って、待ってよ、姉さ……み、御崎先生。こんな格好で外へ連れてかれるだなんて、そんなの……」
 ドアの方にずるずる引きずられて行きながら、葉月は必死の思いで両脚を踏ん張り、皐月の手を振りほどこうとして身をよじった。
 それに対して、皐月の方は涼しい顔で
「あら、どうして? 葉月ちゃんは裸んぼうのままがいいんでしょ? 他の保育園や幼稚園でも裸んぼう保育とかって子供たちに窮屈なお洋服を着せないでお遊戯をさせたり体操をさせたりしている所もあるけど、子供たち、みんな楽しそうにしているわよ。だから、葉月ちゃんも裸んぼうがいいんじゃないの? もっとも、他の保育園や幼稚園じゃパンツはきちんと穿かせているみたいだけど、うちは本当の裸んぼう保育を葉月ちゃんで試してみてもいいかなって思うんだ。葉月ちゃんも、その方が嬉しいよね?」
と応じて、葉月の抵抗などまるで知らぬげにずんずんと歩を進める。



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