偽りの保育園児



「さ、もう、そろそろでしょ。脱衣場から今まで、よく我慢したわね。ほんと、葉月ちゃんはお利口さんだこと」
 皐月は、半皮かぶり状態になっているペニスの先端の皮膚を中指と親指でそっと押し広げると同時に、人差指の先を、我慢汁を溢れさせている赤黒い割れ目に押し当て、これでもかとばかりに、けれど決して力任せにはならないよう細心の注意を払いながら、つっと擦りあげた。
「ひ……」
 悲鳴じみた喘ぎ声が聞こえて葉月の腰がぶるんと震え、ペニスがどくんと脈打つ。
「そう、それでいいのよ。これまで我慢してきたけど、もういいの。お姉ちゃまに抱っこしてもらったまま最初に白いおしっこを出して、それから、普通のおしっこを出せばいいのよ。こんなふうにして葉月ちゃんにおしっこをさせてあげられる日が来るのをお姉ちゃまはずっと待っていたんだから、なにも遠慮することなんてないのよ」
 強引に後ろ向けに折り曲げられたペニスの先からとろりと溢れ出す精液の雫を掌に掬い取り、それを皐月の目の前にかざしてみせながら、葉月はねっとりした声で囁きかけた。
 皐月は慌てて目をそらしたが、一瞬目にした、純白の泡との対比で微かなコントラストをつくる乳白色の雫が網膜にしっかり焼き付いて、瞼を閉じると、却って鮮やかに浮かびあがってくる。
 皐月の膝にお尻を載せて座る姿勢をとらされたせいで、太腿を持ち上げられ、肛門がペニスの先端よりも下になってしまう。そのため、勢いなくとろとろ溢れ出る精液は、両脚の間の皮膚を伝って肛門のあたりへ滴り落ちてゆく。
 自分の放出した精液で自らの肛門を汚される屈辱に葉月は身をよじるのだが、皐月の手で腿をおさえつけられているところに、射精直後の脱力感とが相まって、その場から逃げ出すことはかなわない。

 やがて、肛門のまわりに集まった精液の雫が、葉月の下腹部を包み込んだ細かな泡が弾け元のボディソープを溶かしたぬるま湯に戻って、次第次第にお尻から床に滴り落ちる始めた。
「園長先生のお部屋と、お家の新しいお部屋、それに、今。葉月ちゃんは今日だけで三回もお姉ちゃまに白いおしっこをさせてもらったことになるのよ。わかる? 昨日までは自分でおちんちんをいじって白いおしっこをしていた葉月ちゃんだけど、今日からは違うのよ。これからはずっとお姉ちゃまがさせてあげる。白いおしっこも普通のおしっこも、おしっこはどっちも、お姉ちゃまがさせてあげる。――ううん、お姉ちゃまだけじゃないわね。お家じゃお姉ちゃまだけど、保育園じゃ遠藤先生だもの。それに、他の先生方も。よかったね、葉月ちゃん。これからはずっと、優しい保育士さんたちにおしっこをさせてもらえるのよ。これもみんな、葉月ちゃんを保育園に通わせてあげることにしたお姉ちゃまと、それを許してくださった園長先生のおかげなんだから、そのことを忘れないで、可愛い年少さんになれるようしっかり頑張ろうね」
 皐月は、勢いよく射精することを許されず、力なくじくじくと精液を溢れさせながら時おりびくんと身を震わせる葉月のペニスを指先でぴんと弾いて、小さな子供に言い聞かせる時の口調そのままに囁きかけた。
 そう、葉月は、今日だけで三度も皐月の手で精液を搾り取られたのだ。実の姉の手でペニスをいたぶられ、とうとう我慢できなくなって精液を溢れさせてしまうのがどれほど惨めなことか、それは、とてもではないが、本人以外には想像もつかない屈辱だろう。しかも、三度ともが、年相応の男性として扱われるのではなく、成人した男の象徴たる『精液』ではなく、幼児めいた『白いおしっこのおもらし』として処理されてしまったのだから、その絶望感は殊更だ。
「全部出しきっちゃうまで、お姉ちゃま、葉月ちゃんを抱っこしていてあげる。だから、寂しくなんてないのよ。水族館のトイレじゃ、お姉ちゃまは葉月ちゃんが一人で上手におしっこできるかどうか近くで見ていてあげただけだったよね。だから、葉月ちゃん、おしっこでパンツもナプキンも濡らしちゃったんだよね。でも、今からは違うのよ。もう二度とあんな可哀想なことにならないよう、これからはずっとお姉ちゃまや他の保育士さんたちがちゃんとおしっこさせてあげる。だから、無理して一人でしなくてもいいのよ。葉月ちゃんは年少さんになったばかりの小さな女の子だもん、おしっこをするのが上手じゃなくても、ちっともおかしくないの。――いいわね? おしっこをしたくなったら、ちゃんと先生方に教えるのよ。もしも一人で勝手に保育園のトイレへ行って、水族館の時みたいにパンツを汚しちゃったら、替えのパンツの用意ができないかもしれないんだから。そんなことになったら、パンツを穿かずにお友達と遊ばなきゃいけなくなって、恥ずかしい思いをするのは葉月ちゃんなのよ。だから、ちゃんと言いつけを守れるよね?」
 葉月の体を後ろから抱きかかえて慈母のように優しく教え諭す皐月。けれど、その口調とは裏腹に、皐月の言葉は、葉月にとっては、体の自由を奪うためにがんじがらめに巻き付く鋭い棘の付いた鎖以外の何ものでもなかった。おしっこをしたくなって勝手に保育園のトイレへ行ったりしたら、下半身丸裸にして他の子供たちの中に放り込むわよと、皐月は告げているのだ。排泄の管理は私や私の同僚の保育士たちに委ねなさい。さもなきゃ、これ以上はないくらい恥ずかしい目に遭わせてあげるからね――つまり、皐月は、冷酷にそう宣告しているのだった。
 それに対して、葉月は一言も発せない。うんと言って頷くことができるわけもなく、かといって、皐月の膝にお尻を載せたままペニスの先から精液を滴らせている姿では抵抗することもかなわない。
「お返事はどうしたの? 葉月ちゃんはお利口さんなんじゃなかったっけ? 年少さんとはいっても、もう保育園のお姉ちゃんなのよ、葉月ちゃんは。お喋りのできない赤ちゃんじゃないんだから、きちんとお返事できるよね? それとも葉月ちゃんは簡単なお返事もできない赤ちゃんだったのかな? ふぅん、だったら、パンツを穿かずにお友達と一緒にいても平気だよね。だって、赤ちゃんは裸んぼうでいるのが大好きだもの。へーえ、葉月ちゃん、明日から保育園のお姉ちゃんだと思ってたのに、本当はまだ、裸んぼうでいるのが大好きな赤ちゃんだったんだ。だったら、上も下も丸裸でお友達と遊ばせてあげた方がいいのかな」
 屈辱にまみれた表情で唇を震わせる葉月に向かって、皐月は、口調こそ優しげだが容赦のない言葉を投げかけた。
「や、やめて……丸裸だなんて、そんなの……」
 首をうなだれた葉月の口から、よく注意していないと聞こえないようなかすれた声が漏れ出た。
「あら、裸んぼうは嫌なんだ。そうよね、葉月ちゃんはもう赤ちゃんじゃないんだもん、保育園のお姉ちゃんだもん、裸んぼうは恥ずかしいよね。だったら、お返事できるかな。保育園のお姉ちゃんらしく、きちんとお返事できるかな」
 皐月は葉月のお尻をぽんぽんと優しく叩いて返答を促した。
「……お、おしっこしたくなったら、せ……先生に教える。葉月、おしっこしたいからトイレへ連れて行ってって先生にお願いする。……それで、先生に、お、おしっこさせてもらう。……葉月、勝手にトイレへ行ったりしない。……だ、だから……だから、裸んぼうは……」
 葉月は身を固くし、決して後ろを振り向こうとはせず、首をうなだれたまま、蚊の鳴くような声で言った。
「はい、よくできました。最初からそんなふうにお返事をしていればよかったのに、どうして葉月ちゃんはだんまりをしていたのかしらね。でも、もういいわ。ちゃんとお約束できて、葉月ちゃんが本当にお利口さんだってこと、お姉ちゃま、よぉくわかったから。せっかくできたお約束だもん、ちゃんと守って、明日からは保育園の先生方におしっこをさせてもらうのよ」
 葉月の返答に皐月は満足そうに微笑み、一時に比べれば幾らか縮こまってきたペニスをそっと撫でさすった。
「白いおしっこはもうすぐおしまいかな? じゃ、次は普通のおしっこね。おねむの間におねしょしちゃわないように、しっかり出しておこうね」

 そんなふうにして葉月はまるで幼児扱いのままおしっこをさせられた後、改めて真っ白の泡に包まれて体を洗われ、シャンプーハットをかぶせられた幼児めいた姿で頭を洗われてから、ようやく、羞恥に満ちた入浴シーンから解放されたのだった。



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