幼児への誘い・3



「雅美ちゃんはよく頑張ったわ。一番上のおねえちゃんとしてしっかり頑張り続けた。でも、本当はお母さんに甘えたくてしかたなかったんでしょう? 私は雅美ちゃんのお母さんじゃない。雅美ちゃんのお母さんのお姉さん。でも、雅美ちゃんを甘えさせてあげられるわよ。小さい頃から胸の中に溜め込んできた気持ちを私にぶつけていいのよ。それが私から雅美ちゃんへのご褒美なんだから。雅美ちゃんを小っちゃい子供の頃に戻して思いきり甘えさせてあげることが私からのご褒美なんだから。そのためにこの家に招待したんだから」
 美智子はすっと目を細めた。
 雅美は上目遣いにおずおずと美智子の顔を見上げた。
「だから、この家にいる間、雅美ちゃんは小っちゃい子供に戻るのよ。まだおむつの取れない、哺乳壜のミルクしか飲めない赤ちゃんに戻るのよ。そのためにお部屋も着る物もベビーベッドも雅美ちゃんの体の大きさに合わせて特別に用意したんだから。でも、正直言って、どんなふうにこの話を切り出せばいいか迷っていたの。今日から雅美ちゃんは赤ちゃんになるのよって急に言っても雅美ちゃんが頷くわけないものね。だけど、結局は迷うことなんてなかった。だって、私が話を切り出す前に雅美ちゃんがおもらししちゃったんだもの。トイレのドアの前でおもらしして自分のスカートとショーツを汚しちゃって、それから、着替えさせてあげた新しいショーツとスカートを今度はおねしょで汚しちゃったんだもの。だから、雅美ちゃんをおむつの赤ちゃんに戻すのは、思うよりも簡単だった。――私が用意しておいたお部屋や着る物を見ておもらししちゃうなんて、本当は雅美ちゃんも赤ちゃんに戻りたかったんでしょう? いいのよ、恥ずかしがらなくても。これまで頑張ってきたんだもの、小っちゃい頃に戻りたいと思っても無理はないわ」
 雅美の粗相は紀子がジュースに混入した睡眠薬と利尿剤のせいだ。美智子もそのことは知っている。知っていながら、おもらしもおねしょも本当は雅美自身がそうしたかったからだと決めつける美智子だった。そうして、これまでとがらりと口調を変えて、再び幼児に対するような言葉遣いで言うのだった。
「さ、あんよを開いてちょうだい。おしっこでよごれちゃったところ、きれいきれいしまちょうね」
 半ば強引に雅美の両脚を開けさせると、美智子は、自分の脚を雅美の両脚の間に滑り込ませた。そうすると、いくら雅美が脚を閉じようとしても閉じられなくなってしまう。
 そうしておいて美智子は、無数の泡で真っ白になったスポンジを雅美の内腿に押し当てて、ほのかにピンクに染まった肌の上をすっと滑らせた。
「あん……」
 脚の付け根という感じやすいところをスポンジが這いまわる感触に思わず喘ぎ声を漏らしてしまう雅美。
「あらあら、なんて声を出してるの。赤ちゃんのくせにそんな声を出すなんて、雅美ちゃんはおませさんなのね」
 雅美が僅かに体をのけぞらせる様子に、美智子の目が細くなった。
「あ、赤ちゃんなんかじゃありません。私、大学生です。赤ちゃんじゃありません」
 喘ぎ声を振り絞る雅美。
「あら、約束した筈よ。おもらしとおねしょでショーツとスカートを汚しちゃったから雅美ちゃんは赤ちゃんになるんだって。それに、おむつまで汚しちゃったのは誰だったかしら。おむつにおもらしするなんて、赤ちゃんじゃなくて何だっていうのかしら」
 美智子はそう言って、内腿の肌に這わせていたスポンジで雅美の一番感じやすいところを責め始めた。
「でも、でも……」
 約束したのは本当だ。おもらしに続いておねしょまでしてしまい、狼狽しきっているところに美智子が言葉巧みにそういう約束を持ち出してきて、雅美もついつい頷いてしまった。今さら反論もできない。それに、おむつをあててみたい、おむつの赤ちゃんに戻りたいという思いがなくもない。ついさっき美智子が言った通り、母親に甘えられなかった幼児の頃をもういちどやり直せることができればという思いはいつも胸の中にあった。
「あらあら、おませさんなのは声だけじゃないのね。体もおませさんなのね、雅美ちゃんは」
 雅美の逡巡など知らぬげに、美智子がおもしろそうに言った。いつのまにか、スポンジを覆う無数の白い泡の中に、てらてらといやらしく光る細い糸みたいな物が混ざり始めたことに美智子は気づいたのだ。よく注意していなければ見逃してしまいそうな、本当に細くて、すぐに切れてしまう糸。正確に言えば、糸そのものというより、そっと指で掬い上げた時に滴る水飴みたいな、ねばねばした糸をひく雫だ。
「ほら、恥ずかしいおつゆがこんなに溢れてる。恥ずかしいお汁をこぼすなんて、雅美ちゃんのここ、本当におませさんだこと」
 美智子は、白い泡に混じるいやらしい滴りを雅美に見せつけるためにスポンジを持ち上げ、もう片方の手で雅美の秘部をつんつんとつついた。
「いや……」
 雅美はびくっと腰を震わせて、幼児が拗ねていやいやをするみたいに力なく首を振った。
「でも、仕方ないわね。おむつの外れない赤ちゃんでも、雅美ちゃんは本当は大学生だもの、年齢にふさわしい感じ方もするわよね。赤ちゃんと大学生とが奇妙にいり混じった子だものね、雅美ちゃんは。おしっこでおむつを汚しちゃう赤ちゃんのくせに、恥ずかしいおつゆでお股をぬるぬるにしちゃう大学生だものね。いいのよ、恥ずかしがらなくても。そんなところもみんな含めて私は雅美ちゃんが大好きなんだから。そんな雅美ちゃんにご褒美をあげたいんだから。――もう少し、きれいきれいしまちょうね。おしっこが残っているとおむつかぶれになりやすいから」
 美智子はあらためてスポンジを雅美の下腹部に押し当てた。
 雅美の表情が僅かに変化したのはそのすぐ後のことだった。
 それまでの羞恥に満ちた表情に、微かに戸惑いの色が混ざる。
 そうして、時間が経つにつれて、どこか絶望的な表情さえ浮かべる雅美。
「どうかしたの、雅美ちゃん? 顔色がすぐれないみたいだけど」
 スポンジを持つ手を動かしながら、雅美の表情の変化に気づいた美智子が気遣わしげに声をかけた。
「な、なんでもありません」
 今にも消え入りそうな声で雅美は応えた。
「なんでもないわけないでしょう? どうしたの、具合が悪いの?」
 美智子は手の動きを止めると、様子を探るように雅美の体を見るわした。と、すぐに、美智子の脚のせいで閉じられない両脚を摺り合わせるようにして雅美が下腹部をひくひくさせていることに気がつく。
「ちっちなのね? 雅美ちゃん、ちっちしたいのね?」
 雅美の様子を見て取った美智子は確認するように言った。
「……」
 雅美は応えなかった。けれど、違いますと言わないのは、無言でそうと認めたのと同じこと。
「いいわ。じゃ、ちっちしまちょうね。お風呂にはおむつがないから、わたしがちっちさせてあげる」
 美智子はスポンジを鏡の前の小物入れに置くと、まるで年齢を感じさせないかろやかな身のこなしで雅美の背後にまわりこんだ。そうして、雅美のお尻と太腿の間のあたりに手をかけて、そのまま雅美の体をひょいと持ち上げてしまう。
「な、何をするんですか」
 思いもしなかった美智子の行動に両脚をばたつかせながら雅美は驚きの声をあげた。
「暴れちゃダメよ。泡で滑りやすいんだから、あまり暴れちゃ床に落ちちゃうわよ」
 あやすみたいに言って、美智子はそっと膝を曲げると、背中から抱え上げた雅美のお尻を自分の膝の上に載せて、雅美の体を抱え直した。
「赤ちゃんはね、こんなふうに抱っこしてもらっておしっこさせてもらうのよ。さ、ちっちしようね。ほら、ちぃー」
「いや。いやです、こんな格好。こんな、赤ちゃんみたいな格好」
「だって、雅美ちゃんは赤ちゃんだもの。ほら、窓を見てごらん。可愛い雅美ちゃんが映ってまちゅよ」
 美智子に言われて、ふと雅美も窓の方に目をやった。西の播磨灘に残っていた夕焼けも消えて、外はすっかり暗くなっていた。そのせいで、浴室の照明に照らされた美智子と雅美の姿が窓ガラスにくっきり浮かび上がっている。明石海峡を行き交う大小様々の船の明かりに重なって窓ガラスに映る雅美の姿は幼児そのままだった。シャンプーハットをかぶって下腹部をボディーソープの泡で真っ白にして小さな体を背中から母親に抱き上げてもらっている赤ん坊そのままだった。
「さ、いつまでも我慢していると体に良くないから、ちっちしまちょうね。お船に乗ってる人に見てもらいながらちっちしまちょう。はい、ちぃーでちゅよ、ちぃー」
 言って美智子は、両腕で抱えた雅美の体を窓の方に向けた。もちろん、船から雅美の姿が見えるわけはない。それでも、美智子はわざと雅美の羞恥を煽るためにそう言った。
「いや、いやです、こんな格好でおしっこなんて」
 恥ずかしさで体中を真っ赤に染めて雅美はさかんに身をよじった。
「あら、まだ出ないのかしら。あまり我慢すると体に悪いのに。いいわ、じゃ、出させてあげる」
 雅美のお尻を自分の膝に載せて雅美の体重を受け止めるようにして、美智子は右手でタオルをつかみ上げると、タオルの端をきつく人さし指の先に巻き着けるようにして、その指を雅美の尿道に近づけた。
「な、何です? 何をするんです?」
 不安にかられて美智子の手から逃れようとする雅美。けれど、美智子の膝の上から逃げ出すことはできない。
「大丈夫でちゅよ、痛くありまちぇんよ。赤ちゃんのうんちが出ない時はお尻の穴をこよりで刺激してあげればいいの。それと同じで、雅美ちゃんはおしっこが出そうにないから、おしっこの口を刺激してあげるんでちゅよ。ただ、ここにはこよりに使えそうなティッシュが無いからタオルを代わりにするだけ。端を丸めて、これでくすぐってあげるだけでちゅよ」
 美智子は人さし指の先に巻き付けたタオルの端をそっと尿道に差し入れた。
「やん……」
 途端に雅美の体がびくんと震える。
「我慢してちゃダメでちゅよ。赤ちゃんはね、おしっこしたくなったら我慢なんかしないでおもらししちゃうんでちゅよ。雅美ちゃん、夕飯を食べながらおむつを汚しちゃったでしょ? 今さら我慢するなんて変でちゅよ」
 さかんに幼児言葉で雅美の耳元に囁きかけながら、美智子はタオルの端で尿道をくしゅくしゅし続けた。
「やめて、やめてください、伯母様。そんなことしたら本当に……」
 今にも泣き出しそうな声で雅美は言った。
「本当に? 本当にどうなっちゃうの?」
 美智子が人さし指に力を入れた。
「本当に、本当に……ああん……」
 雅美は瞼をぎゅっと閉じた。
 その様子を目にした美智子はゆっくり人さし指を抜いて、指先に巻き付けていたタオルを浴室の床にふわっと落とした。
 たぱ……たぱたぱ……たぱたぱたぱ……。 最初は一度だけ聞こえたバスマットに雫が落ちる音が二度三度と続けて聞こえるようになり、とうとう、続けて浴室に響き渡るようになる。
「いいのよ。それでいいのよ、雅美ちゃん。ほら、窓を見てごらん。窓ガラスに映る自分の姿を見てごらん」
 美智子はわざとのように優しく言ったが、雅美は目を閉じたままだ。両目をぎゅっと閉じたままだが、さっき目にした窓ガラスに映る自分の姿が瞼に焼き付いたままで、それ以上の恥ずかしい姿をしているんだと思うと、とてもではないが目を開けることなんてできない。
(私、私、このまま赤ちゃんになっちゃうのかしら。おもらしに続いておねしょまでしちゃって、その後はおむつをおしっこで汚しちゃって、今は赤ちゃんみたいに抱っこされておしっこさせてもらってるんだもの。こんなの、赤ちゃんだよね。私、赤ちゃんだよね。伯母様、言ってたっけ。この家にいる間、雅美ちゃんは赤ちゃんになるんだよって。それがご褒美なんだよって。赤ちゃんに戻って思いきり甘えさせてあげるのがご褒美なんだよって。そんな恥ずかしいこと……でも、でも、本当にそんなことができたら)
 雅美はおそるおそる目を開けた。羞恥のせいで顔を伏せたままだから、見えるのは浴室の床だ。浴室の床に敷いた清潔なバスマットだ。それから、それから……バスマットの上に飛び散る無数の雫だった。浴室の照明をきらきら反射して飛び散るおしっこの雫だった。
 それを見ているうちに、雅美の顔に、どこかうっとりしたような表情が浮かんでくる。
(私、伯母様に後ろから抱っこしてもらっておしっこさせてもらってるんだ。お母さんもこんなふうにしておしっこさせてくれたのかな。私が赤ちゃんだった頃、こんなふうにしてくれたのかな。私、妹の世話ばかりしていたように思っていた。でも、でも私が本当に小さい子供だった頃は私もお母さんにいろいろ世話をしてもらったんだろうな。――帰りたい。あの頃に帰りたい。赤ちゃんだった頃に帰って甘えたい。自分だけじゃ何もできない小っちゃな子供の頃に帰りたい)
 遠くの海を行き交う船から浴室の中が見えるわけがない。わけがないけれど、なんだか、美智子に抱っこされておしっこさせてもらっている姿がみんなに見られているみたいな恥ずかしさがこみあげてくる。真っ白な泡を透かしておしっこを溢れさせている秘密の穴まで覗き込まれているみたいな恥ずかしさが胸を満たす。そうして、その恥ずかしさが奇妙な悦びに姿を変えるのがわかる。
 雅美の下腹部が再びじんじんと疼き始める。

 たぱたぱたぱ……たぱたぱ……たぱ……。
 最後の滴りが床に落ちる恥ずかしい音が浴室の壁にこだました。
「もういいの? もう出ちゃった?」
 最後の一滴が滴り落ちてからもしばらく雅美の体を後ろから抱き上げたまま、美智子は雅美の耳元に囁きかけた。
 雅美は無言でこくんと頷いた。それまでに比べると、どこか幼児めいた仕種だった。
「そう。じゃ、もういちど、おしっこの雫をきれいきれいしまちょうね。おむつかぶれにならないように。せっかくのすべすべの雅美ちゃんのここが赤く爛れないように」
 美智子は雅美を洗い椅子の上に戻した。今度は、美智子が自分の脚を差し入れなくても、雅美は大きく両脚を開いたままにしている。
「あら、えらいわね、雅美ちゃん。自分であんよを開いてくれたのね」
 美智子は、シャンプーハットをかぶせたままの雅美の頭を優しく撫でた。
 雅美は再び無言でこくんと頷いた。
「それじゃ、一度、シャワーで泡を流しちゃいまちゅよ。それから新しい石鹸できれいきれいしまちょうね」
 美智子がコックをひねると、少しぬるいシャワーの湯が噴き出した。少しぬるい――ついさっき美智子に抱っこしてもらいながら迸らせたおしっこと同じくらいの温度のお湯。不意に雅美は我に返ったようにはっとした表情になると体を固くした。
「私、私……」
 美智子に向かって何か言いかけて、でも、何を言おうとしていたのか自分でもわからなくなって途中で口をつぐんでしまう雅美。
「いいのよ、何も言わなくて。赤ちゃんはね、何も言わなくていいの。何も言わなくても、まわりの人達が赤ちゃんが何を欲しがっているのか考えてその通りにしてあげるのよ。赤ちゃんがどうして欲しがっているのか考えるのは、みんな周りの人達にまかせておけばいいの。赤ちゃんは、ただただ周りの人達に甘えて、泣きたくなったら泣けばいいし、おしっこしたくなったら出しちゃえばいいの。おしっこが出た後で『ちっち』って教えてくれれば周りの人達も助かるけど、本当は赤ちゃんはそんなことも考えなくていいのよ。したいようにすればいいの、ただそれだけなのよ」
 美智子の言葉に合わせてきめ細かい泡に包まれたスポンジが肌の上を這いまわる感触が下腹部から伝わってきた。それから、もういちどシャワーのお湯に下腹部がしとどに濡れる感触。まるで、まるで……おもらししてしまった時みたいにびしょびしょになる感触。
「これでいいわ。じゃ、次は髪を拭きましょう。髪を拭いてから湯船に入りまちょうね」
 雅美の下腹部を洗い終えた美智子はそう言って、かぶったままだった雅美のシャンプーハットを持ち上げた。それから、きちんとたたんで棚に置いてあるバスタオルをつかみ上げて、雅美の頭にふわっとかける。
 決して力まかせではない、髪の一本一本、雫の一つ一つまで丁寧に拭き取ってゆく美智子の手の動きが心地よい。
「さ、できた。すぐに湯船に入れてあげまちゅからね」
 バスタオルを棚に戻した美智子はそう言うと、洗い椅子に座っている雅美の体に両腕を絡ませるみたいにして抱き上げた。おしっこをさせた時とは違って、今度は横抱きだ。
「ほら、あったかいお風呂でちゅよ。おねむの前に体を温めまちょうね」
 幼児言葉で雅美に話しかけながら美智子は湯船の縁をまたいだ。埋め込み式になっている湯船だから、雅美を抱いたままでも、縁をまたぐのはさほど苦にならない。
 豪奢な造りの屋敷にふさわしく、大人が何人か一緒に入れるくらいにゆったり大きな湯船をたっぷりのお湯が満たしていた。美智子は、場所によって深さが違う湯船の真ん中と縁との半ほどの所で膝を折ると、段差になっている部分にお尻を載せた。そんなふうにすると、乳房の少し下あたりまでお湯につかる格好になるから、雅美のお尻を膝の上に載せることができるし、雅美の体のかなりの部分がお湯につかることになって、その浮力もあって、片手だけで雅美の体を支えることができる。
「雅美ちゃん、お風呂、気持ちいいでちゅか?」
 美智子は、雅美の首筋を左腕の肘の内側で持ち上げるようにして言った。
「……」
 美智子の言葉に、けれど、雅美は無言だった。すぐ目の前に美智子の豊満な乳房がある。これまでも妹たちも一緒に何度も美智子と入浴したことはあるけれど、美智子の乳房をこんなにも間近にしたことはない。それが、もうすぐ目の前、それこそ、舌を伸ばせば届きそうな所に、年齢を感じさせない形のいい美智子の乳房があるのだ。そのことがとても気恥ずかしくて何も応えられないでいる雅美だった。
「あら、ひょっとして、おっぱいが欲しいのかな。いいわよ。雅美ちゃんは赤ちゃんだもの。赤ちゃんはおっぱいが大好きだものね」
 頬をピンクに染めてちらちらと乳房を窺い見る雅美の視線に気づいて、美智子は笑顔で言った。
「そんな、おっぱいが欲しいだなんて……」
 胸の内を見透かされて、雅美はうろたえるばかりだった。
「いいのよ、恥ずかしがらなくても。おもらししちゃって、おねしょしちゃって、おむつを汚しちゃって、それから、私に抱っこされておしっこさせてもらった赤ちゃんなんだから、今さら恥ずかしがることもないのよ、雅美ちゃん」
 そう言ったかと思うと、美智子は、返答も待たずに雅美の体をぎゅっと引き寄せた。もともと雅美の顔が美智子の乳房と同じ高さにあったから、そうすると、雅美の唇がすぐに美智子の乳首に触れる。
「さ、おっぱいしまちょうね。お乳は出ないけど我慢してちょうだいね」
 美智子は、年齢を感じさせない上向きの乳首を雅美の唇に押し当てた。
 雅美は両手を突っ張って美智子の手から逃れようとしたものの、体格に差がありすぎて思うにまかせない。それに、正直なところを言えば、雅美には本気で美智子の手から逃れようとする気持ちはなかったのかもしれない。言われるまま乳首を口にふくむのが恥ずかしくて、それで、体を退こうとする素振りをみせただけかもしれない。
「何をむずがっているのかしら、雅美ちゃんは。ほら、雅美ちゃんの大好きなおっぱいでちゅよ、思いきり吸ってちょうだいね」
 美智子の感情も高ぶっているのだろう、上に向いていただけの乳首が、次第次第に固くなって、つんと勃ってきた。その固い乳首を雅美の唇をこじ開けるみたいにして押し当てるものだから、とうとう口を閉じていられなくなって、雅美はおずおずと乳首を咥えてしまう。
「そうそう、それでいいんでちゅよ。おじょうずでちゅね、雅美ちゃんは」
 美智子は、左手で雅美の首筋を支え、右手で雅美の喉のあたりを優しく撫でた。
 美智子のそんな手の動きに誘われるようにして雅美の唇が僅かに動いた。
 雅美の舌の先が乳首に触れる感触があって、美智子の下腹部もじんと疼きだす。
 美智子の乳首がますます固く勃ってくる。
「そのまま、夕飯の後でジュースを飲んだ時みたいに吸えばいいんでちゅよ。難しいことなんてないから、ほら、吸ってちょうだい」
 美智子は右手の指先を、雅美の顎から喉へかけてこちょこちょとくすぐるように動かした。
 雅美の舌がおそるおそるのように動いてぴんと勃った美智子の乳首を舐めたかと思うと、それに続いて唇が動き始めた。夕飯の後に口にふくまされた哺乳壜の乳首の感触を思い出すみたいに、最初はおずおずと、そうして、やがて、ぴちゃぴちゃと音をたてて。
「雅美ちゃんは赤ちゃんになるんでちゅよ。ちっちもまんまも自分だけじゃできない赤ちゃんになるんでちゅよ。好きなだけお母さんに甘えることのできた赤ちゃんに戻るんでちゅよ。このお家にいる間中ずっと赤ちゃんでいるんでちゅよ」
 それまで雅美の喉を撫でていた右手をいつしか雅美の下腹部に持っていった美智子は、幼児に言い聞かせるみたいに雅美の耳元に囁きかけた。そうして、軽く折り曲げた右手の中指で雅美の秘部を優しく愛撫し始める。
「ん……」
 びくんと体を震わせた雅美が、左手を美智子の背中にまわして強くしがみついてきた。乳房に埋めた顔がひどく上気している。
「感じちゃうのね、雅美ちゃん。でも、そうよね。雅美ちゃんは本当は大学生だもの。年頃の女の子だもの、こんなところをいじられたら感じちゃうわよね。なのに、雅美ちゃんは、おむつを汚しておっぱいを欲しがる赤ちゃんなのよね。うふふ、なんだか変な気もするけど、でも、それでいいのよ。本当の赤ちゃんになっちゃったら、自分が赤ちゃんの頃に戻れたんだってことが自分でわからないものね。だから、赤ちゃんの気持ちと大学生の気持ち、両方を持ち続けなきゃいけないのよ。こうやって、おっぱいを吸いながら恥ずかしいところを恥ずかしいお汁でぬるぬるにしちゃえばいいのよ」
 美智子は指先に、お湯で濡れただけとは違う、ぬるぬるした感触をはっきり感じ取っていた。雅美の下腹部はお湯の中に沈んでいるけれど、それでも、それが雅美の秘部から溢れ出した愛液だということは間違いない。
(なんて可愛いのかしら、雅美ちゃん。これなら大丈夫、ちゃんと高志のお嫁さんになれるわね。紀子さんから高志が自分の部屋に隠していたいやらしい本のことを聞かされた時はびっくりしたけど、でも、却って好都合だわ。このまま雅美ちゃんを赤ちゃんに仕立てちゃえば高志は雅美ちゃんのことをずっとずっと好きになる筈。それに雅美ちゃんも小さい時から高志のことを慕ってくれてたんだから、問題ないし。これで、雅美ちゃんはずっとこの家にいてくれることになるわね。高志のお嫁さんとして、そして同時に、私の可愛い新しい赤ちゃんとして。高志だけの一人っ子だったけど、私だって女の子も欲しかったのよ。だけど、高志が生まれて一年少しでうちの人が死んじゃって、二人で始めた雑貨輸入のお仕事は私一人で継ぐことになって、気がついたら高志だけの一人っ子。なのに、美佐江のところばかり女の子が三人もいるなんて不公平だわ。だから、雅美ちゃんは私が貰ってもいい筈。そうよ、雅美ちゃんは、神様から私への最高のプレゼントなんだわ。そうでなきゃ、家系だもの、雅美ちゃんだってもっと体が大きくなっていたに違いない。なのに雅美ちゃんの体がこんなに小さいままなのは、神様が私に授けてくださるためにそうしてくれたに決まってる)
 美智子は雅美の口に乳房をふくませたまま、尚更に雅美の秘部を責めたてた。そうして、美智子の中指が動くたびに体を震わせ、美智子の乳首を強く吸ってしまう雅美だった。
 や……。
 ぴちゃぴちゃぴちゃ……。
 く、ん……。
 雅美の喘ぎ声と雅美が美智子の乳首を吸う音が何度も何度も浴室にこだました後、不意にガラス戸が開いた。
「あの、大丈夫ですか、奥様。お風呂が少しお長いようですので、ひょっとしたら湯あたりとかお具合がすぐれないのかと心配になってご様子を伺いにまいりました」
 人が一人通れるか通れないかくらいにガラス戸を引き開けて顔を覗かせたのは紀子だった。
 その声を耳にした途端、雅美は自分の顔を美智子の乳房に思いきり押しつけた。美智子の乳首を吸っている姿を紀子に見られたと思うと羞恥のあまり顔を会わせることができない。かといってどこにも逃げ場のない湯船の中、そうすることしか思いつかなかった。
「ごめんなさいね、心配かけちゃって。でも、いいのよ。いろいろあってお風呂が長くなっちゃったけど、雅美ちゃんも私も大丈夫だから。ほら、雅美ちゃんたら、こんなに元気に私のおっぱいを吸ってくれてるでしょう?」
 雅美が乳房に顔を埋めた理由は美智子にもわかっている。わかっているけれど、その理由をわざと取り違えて美智子は紀子に応えた。
「いえ、それならよろしいのですけど。それでは、奥様と雅美お嬢ちゃまの着替え、ご用意してございますから、いつでもお申しつけください。私は脱衣場でお待ちいたします」
 豊満な乳房に自分から顔を埋めた雅美の様子を見た紀子は美智子と無言で目配せを交わすと、そっとガラス戸を閉めて脱衣場に姿を消した。
「紀子さんも心配になって様子を見にきてくれたし、そろそろあがりましょうか。いくらなんでもこれ以上いたら本当に湯あたりしそうだし」
 美智子はそう呟いてから、紀子と会話を交わしている間も休めることなく動かし続けていた中指の動きを止めた。
 美智子の体にしがみついていた雅美の手から力が抜け、美智子の乳房にぎゅっと押しつけていた雅美の顔が離れる。
「あらあら、雅美ちゃんの顔、真っ赤でちゅね。待っててね、すぐにお風呂からあがって冷たいジュースを飲ませてあげまちゅからね。あ、でも、その前にちゃんとおむつをあててパジャマを着るのよ。湯冷めして風邪をひいたりしたら大変だものね」
 美智子は、上気した雅美の顔を見おろしてそう言ってから、雅美の体を抱いたまま湯船を出ると、足早にガラス戸の方に歩いて行った。
 ガラスに映る姿に気づいたのだろう、美智子が戸のすぐ前に立つと、紀子がすぐに戸を引き開けた。
 途端に、一度は離した顔を再び美智子の乳房に押しつける雅美。紀子と顔を会わせられない恥ずかしさがありありだ。
 けれど、美智子も紀子も、雅美の羞恥など気にかけるふうもない。
「雅美お嬢ちゃまをお預かりいたします。その間に奥様はお召し物を」
 紀子はバスタオルをさっと広げると、それを両腕にかけて美智子に向かって差し出した。
「それじゃ、お願いね。雅美ちゃん、紀子さんに体を拭いてもらってちょうだいね」
 すがりつく手を強引に振りほどくようにして美智子は雅美の体を紀子に預けた。
「あらあら、ほこほこの温かい体ですこと。雅美お嬢ちゃま、お風呂は気持ち良かったでちゅか?」
 雅美の体を受け取った紀子は、両腕の上に広げたバスタオルで雅美の丸裸の体を手早く包みこむと、そのままそっと脱衣場の床に横たえさせて、体中に付いている水滴を手際よく拭き取り始めた。
 けれど、雅美は何も言えないでいる。
「お風呂につかりながら奥様のおっぱいを吸ってたんでちゅね。やっぱり、哺乳壜よりもおっぱいの方がいいんでちゅね」
 雅美が無言なのをいいことに、紀子はますます雅美の羞恥をかきたてるような言葉を続けた。雅美を赤ちゃん扱いして羞恥心をくすぐり、想像もつかない羞ずかしさで包み込むことで雅美の心をかき乱して精神を赤ちゃん返りさせるためだ。
「それに、奥様に大切なところも可愛がってもらっていたんでちゅね。おっぱいを吸いながら恥ずかしいところを可愛がってもらって気持ちよかったでちゅか」
 雅美の体についた水滴を拭き終えた紀子は、皮を剥くみたいにしてバスタオルを広げて、雅美の下腹部を覗き込んだ。
 下腹部についた水滴も丁寧に拭き取った筈なのに、雅美の秘部のあたりはぬるぬるに濡れているように見えた。紀子に言われて湯船で美智子の指に責められた時の感覚がよみがえってきたのに加えて、紀子に言葉でいたぶられてひどい羞恥を覚え、その羞恥が被虐的な奇妙な感覚に姿を変えて下腹部を疼かせるために溢れ出てきた愛液のせいだった。
「あらあら、お股が濡れてきてまちゅよ、雅美お嬢ちゃま。おしっこが近いのかもしれないから急いでおむつをあてまちょうね」
 雅美の下腹部が濡れてきた本当の理由を知りながら、紀子はそれをおむつをあてる口実にして言った。
「いや、おむつはいやです」
 それまで押し黙ったままの雅美だったが、おむつという言葉に、力なく首を振って震える声で言った。
「我が儘はダメよ、雅美ちゃん。お風呂でおしっこしちゃうような子は今度いつまたおもらししちゃうかわからないんだから、ちゃんとおむつをあてなきゃ」
 紀子が雅美の体を拭いている間に下着を身に着けてバスローブをまとった美智子が雅美の顔を見おろして言った。
「へーえ、雅美お嬢ちゃま、お風呂でおしっこしちゃったんですか」
 美智子の言葉に、紀子はわざと驚いたような声を出した。
「夕飯の途中におむつを汚してからまだあまり時間が経ってないのにお風呂でおしっこしちゃうなんて、本当、雅美お嬢ちゃまはおしっこが近いんでちゅね。そういえば、おもらししてすぐにおねしょだったし、奥様のおっしゃるように、いつおしっこ出ちゃうかわからないでちゅね。やっぱり、おむつが手放せない赤ちゃんなんでちゅね、雅美お嬢ちゃまは」
 雅美の秘部がますます愛液で濡れる様子を眺めながら紀子は言葉を続けた。
 そう言われて、雅美は口をつぐむしかなかった。おもらしもおねしょも紀子がジュースに混入した利尿剤のせいだし、夕飯を食べながらおむつを汚してしまったのも、浴室でおしっこをしたくなったのも、実は、利尿剤の効果がまだ残っていたせいだ。けれど、雅美はそんなこと全く知らない。どれも、自分の粗相だと思いこんでいる。
「さ、おむつをあてまちゅよ。抱っこして、おむつの用意をしてあるバスタオルの所へ連れて行ってあげまちゅよ」
 紀子は、唇を噛みしめる雅美の体を横抱きにすると、脱衣場の出口近くに広げたバスタオルのそばに進んだ。



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