化け猫情報処理論文集 システムアナリスト平成11年問1



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問1 情報システム部門の役割の見直しについて

 従来、情報システム部門は企業の中でユーザニーズに基づいて、情報システムの企画・開発・運用・保守などを行ってきた。しかし、近年、企業の経営戦略上の要請や多様化するユーザニーズ、情報技術の急激な進展に対応するため、情報システム部門の役割の見直しが必要になっている。
 情報システム部門の役割の見直しには、情報システム部門を企画部門として位置づけたり、従来の任務の一部又は全部をアウトソーシングしたり、ユーザ部門に企画・開発・運用・保守の一部又は全部を任せたりすることなどが挙げられる。
 一方、企業にとって情報戦略は経営戦略を支える要素として、また、情報システムは経営課題を解決する手段として、ますます重要になっている。したがって、情報システム部門の役割の見直し計画は、効率化や人的資源不足などの解決だけをねらうものであってはならない。情報システム部門の役割の見直しに当たっては、次のような点を考える必要がある。

  • 企業内で保持すべき機能
  • 情報戦略を立案する機能・役割の組織編成
  • 情報システム化にかかわる社内のテーマ・資源・コストの管理統制の仕組み
  • 情報システムの企画・開発・運用・保守が最も効率良く実行されるための組織編成と業務分担
  • システムアナリストなどの高度情報化人材の育成方法
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。


 
 設問ア あなたが策定に参画した情報システム部門の役割の見直し計画について、その見直しが必要になった背景と情報システムを取り巻く環境を、800字以内で述べよ。 
 設問イ あなたが策定に参画した情報システム部門の役割の見直し計画の概要を述べよ。また、その見直し計画の中で、あなたが特に重要と考えた点は何か、具体的に述べよ。 
 設問ウ 設問イで述べた見直し計画について、今後に残された課題とその取組方針を、あなたはどのように考えているか、簡潔に述べよ。

 



(平成13年5月執筆)
(設問ア)
1.当社の情報システム部門再編計画の背景
1.1.旧情報システム部の概要
 当社は年商1千億円、従業員数約千名の中堅食品メー
カーである。当社では約30年前に情報システム部を設
置し、業務の電算化を推進してきた。当初はごく限られ
た伝票をパンチャーが入力し、帳票を出力するだけのシ
ステムであったが、その後各部門に端末が配置され、更
にクライアントサーバシステムへと移行し、最近ではパ
ソコンによるEUCが行われるにいたっている。
 昨年までの情報システム部の主な業務は以下のとおり
であった。
 ・基幹システムの運用管理
 ・社内のハードウェア・ソフトウェアの管理・更新
 ・社内のパソコン研修、ヘルプデスク
1.2.旧情報システム部の問題点
 当社では当初より情報化のための人材を社内で確保す  400
ることが出来ず、実際の業務は社外に委託していた。委
託先は関連会社の子会社のシステム会社で、当社からも
情報システム部の人間を出向させている。このような環
境にあっては、当社の情報システム部の人材は、単にシ
ステムの運用管理の補佐が出来るに過ぎず、情報戦略の
立案を期待し得る人材は皆無であった。
 情報システムの役割が単に業務の効率化から、経営戦
略の成否を左右するものへと変遷する中にあって、当社
においても情報システム部門の抜本的な改革が必要とさ
れるようになってきた。当社経営陣は情報戦略本部の設
置を決定し、情報システム部の他に、経営企画部、経理
部、生産管理部等から人材を集め、情報戦略本部開設準
備室を発足させた。経営企画部次長であった私はこの準
備室長に任ぜられ、情報システム部門のあり方を見直し、
情報戦略立案体制を構築する責任者となった。
                           800

(設問イ、ウ)
2.情報戦略本部の概要
2.1.情報戦略本部設置の基本方針
 情報システム部門の役割を見直し、他の部署も巻き込
んで情報戦略本部を設置するにあたり、私が最も重要で
あると考えたのは役割分担の明確化である。私は情報戦
略本部には後に述べる3つの部を置き、それぞれの機能
を明確にするとともに、外部に委託する業務についても
明確に定義することにした。3つの部の役割および外部
に委託する業務については以下の通りである。
2.2.戦略立案部
 戦略立案部は経営戦略に直結した情報戦略を立案する
ことを業務とする。要員は経営企画部、情報システム部
経験者を中心に確保し、私が部長に就任した。
 具体的な業務としては、グループウェアによる社内情
報共有化システムの見直し、インターネットを利用した
電子商取引導入の検討、ERPパッケージ導入の検討等  400
が挙げられる。
 最新の情報技術の実態や他社における導入実績の調査
等に関しては、必要に応じ社外のコンサルタントに委託
した。しかし、最終的な意思決定に際しては、部員全員
が十分に理解した上で議論を深め、経営陣に提言する内
容を決定することを徹底している。
2.3.情報システム部
 情報システム部の体制は、旧情報システム部をほぼそ
のまま引き継いでいる。その業務内容は情報システムの
開発・運用・保守等の実務に限られるものとした。
 しかしながら、前述のように当社情報システム部には
情報処理技術を持った者がほとんどおらず、実際の業務
は関連会社の子会社に委託しているのが実情である。
 私は当面の間、情報システム部の要員には、システム
アドミニストレータ的なスキルのみを期待することにし
た。つまり、実際のシステム開発・運用・保守は外部委  800
託し、情報システム部はその窓口としての機能を果たす
ことにしたのである。そして、従来通り社内のパソコン
研修やヘルプデスクも情報システム部の業務とした。
2.4.管理部
 管理部は情報システムの費用対効果を検証することが
主な任務であり、経理部および監査部経験者より人材を
求めて編成した。管理部長は当面常務取締役情報戦略本
部長が兼務していて、彼は通称CIOと呼ばれている。
 具体的な業務としては、情報システムの効率性を評価
するための内部監査の実施や、特に新規調達の際のコス
トの適切性の検証等である。また、本部内の経理・総務
関係の実務も担当している。これにより、従来はほとん
ど行われていなかった、情報システム部の発注に対する
コントロールの体制が確立された。
 部内には本格的なシステム監査を行うスキルのある要
員がいないので、専門の会社に委託して、監査を実施し 1200
ている。システム監査報告書の提出先は言うまでもなく
管理部長、すなわち情報戦略本部長(CIO)である。
3.情報戦略本部の今後の課題
3.1.人材育成の必要性
 情報戦略本部の最大の課題は要員のスキルアップと人
材育成である。上述の3つの部において、それぞれの役
割を果たすためには、以下のように人材を育成する必要
がある。
1)戦略立案部
 経営戦略に直結して情報戦略を立案するためには、経
営学と情報技術の両方のスキルが求められる。私自身も
含め、部の主要メンバーがシステムアナリスト、上級シ
ステムアドミニストレータ、中小企業診断士等を取得す
る必要がある。
2)情報システム部
 情報システム部の情報処理技術者は、現状では第二種 1600
情報処理技術者1名と初級システムアドミニストレータ
3名がいるだけである。システム開発等を社内では行わ
ないにしても、プロジェクトマネージャやアプリケーシ
ョンエンジニア、テクニカルスペシャリスト、ソフトウ
ェア開発技術者等を育成して行くことが望まれる。
3)管理部
 管理部においては、情報システムの信頼性・安全性・
効率性を監査するため、システム監査技術者を育成する
ことを目標としている。
3.2.人材育成のための方策
 以上のような人材を確保するためには、外部からの人
材登用も有効である。先般情報システム部長が解任され、
後任には関連会社から転籍して来たプロジェクトマネー
ジャ資格保有者が就任した。
 しかし、同時に社内の人員を教育して行くことも必要
である。私は資格取得のための研修費用補助と資格取得 2000
者への手当て支給を提案し、経営陣の了承を得て実施し
た。今後この制度を活用して資格を取得する社員を増や
すことが課題である。


<みなさんのコメント要旨>

  • (工事中)。129 131






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