情報処理技術者試験午後 II 論文コーナー



論文論

情報処理技術者試験午後 II 論文について

午後 II 論文の採点方法と合否判定

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論文論

 論文を、その記述される内容によって3つのタイプに分類してみよう。

1)学術論文型
 学術論文では、まず客観的な事実だけを論理的に記述しなければならない。そこでは最初に研究方法を明確にし、再現または検証可能であることを示しておく。次にその研究によって明らかになった事実を正確に記述し、そこから合理的に導かれる結論を明快に記述しなければならないのである。
 そこまでの記述があって、その後に初めて推論や研究者の意見を書くことが許される。しかし、あくまで推論は推論であって、確認された事実とは異なることを明確にしなければならない。また、今後検証すべき課題とその展望についても記述し、今後の研究に繋げるのである。

2)採用試験小論文型
 入学試験や就職試験で小論文を課すのが流行のようである。これによって受験生の学力だけでなく、人間性を見るのだという大義名分を振りかざす者がいるが、こんなもので人間性は分かるまい。しかし、少なくとも日本語がちゃんと書けるかどうかを見るのには極めて有効であろう。
 さて、そのような論文では、問題として、あまり具体的でないテーマが与えられることが多い。そのテーマに沿って、自分の考えを自由に記述すればよいのである。例えば「教育についてあなたの考えることを述べなさい」と漠然とした出題がなされた場合、日本国の発展のためにはそもそも教育とはかくあるべし・・・と論じても良いし、逆に、例えば幼児教育について、あるいは僻地での教育のあり方についてなど、個別の問題について深く掘り下げても構わない。それぞれに本人の考え方がはっきりと記述され、採点者を納得させられれば高い評価が得られるであろう。
 なお、卒業論文は本来1)である筈であるが、教員のレベルの低い大学等では2)でよしとするところもあるようである。このような教育を受けた者の場合、午後 II 論文で苦労することはある程度避けられないであろう。

3)資格試験論文型
 いわば中間型で、経験論文と呼ぶ人もいる。情報処理技術者試験午後 II 論文もこれに該当する。
 特定の分野で具体的なテーマについて、自分がやってきたことを客観的に記述するが、学術論文ほどの厳密性は求められない。また、自分の考えや希望についても、かなり自由に記述することが許されるのである。

 2)はどんなことを考えていてどんなことが出来そうな人間かを見る論文、3)はどんなことを考えてどんなことをやっているかを見る論文、1)はどんなことをやってどんなことを考えたかを示す論文なのである。

 
情報処理技術者試験午後 II 論文について

1) 午後 II 論文のある試験区分
 情報処理技術者試験は高度成長期に通商産業省が始めた国家試験で、当初は一種(SE向け、今日のソフトウェア開発技術者)、二種(PG向け、今日の基本情報処理技術者)の2区分からスタートした。その後、特種(今日のアプリケーションエンジニア)が加わり、更に情報処理システム監査技術者(今日のシステム監査技術者)とオンライン(今日のテクニカルスペシャリスト・ネットワーク)を加えた5区分で実施されていたが、平成不況の中で区分が増えて、若干の改正を経て今日に至っている。
 午後 II 試験で論文が課せられる試験は、当初は特種と監査だけであったが、今日ではシステムアナリスト、プロジェクトマネージャ、アプリケーションエンジニア、テクニカルスペシャリスト・システム管理、上級システムアドミニストレータ、システム監査技術者の6区分で実施されている。

2) 試験形式の変遷
 午後 II は4000字以内ということがよく言われる。確かに一貫して4000字以内の論文を2時間で書き上げるのであるが、細かい点で徐々に変わってきているのである。
 平成5年までは、要旨400字以内、設問ア800字以内かつ、設問ア〜ウで2000字以上と定められていた。(上限は資料がないが、恐らく3600字であろう。)
 平成6年からは形式が大きく変わった。この年から、受験生が経験した業務内容を一覧表にした用紙(業務経歴書)を事前に作成して持参し、試験中はそれを見ることは許されず、答案提出の直前にその用紙を鞄から取り出して答案用紙の最後のページにあらかじめ貼ってある両面テープを利用して貼り付けて提出することになったのである。答案の要旨は廃止され、設問ア800字以内かつ、設問ア〜ウで2400字以上4000字以内と改められた。この時点での答案用紙は、原稿用紙(25字×16行)10ページのうち、最初の2ページが設問アで、各ページ右下に400、800と書かれていた。3ページ目からは1200、1600、2000、2400、2800、3200、3600、4000と書かれており、規定の字数に達しているかどうか分かるようになっていた。
 平成12年の秋には、字数がマイナーチェンジされた。この時から、設問ア800字以内かつ、設問イ+ウで1600字以上3200字以内となったのである。したがって、それ以前は採点対象外となっていた、設問ア750字、設問イ+ウ1600字で、合計2350字の答案でも、合格できることになったのである。これは、次のような場合の矛盾をなくしたためであろう。
 (1) 設問アが700字ラインまでなのに、設問イ+ウが3200字以上ある答案(そんな論文書く人は滅多にいまいが)が、採点基準を満たしているのにも拘らず、答案用紙に正しく記入できない。
 (2) 設問アが700字ラインまでで、2ページ目の下4行が空白。設問イ+ウが1650字ラインまでの答案は、2350字しかないので採点対象外であるが、6ページ目の2400のところを過ぎて、7ページの2行目まで記入されているため、採点対象と錯覚する。
 そして、平成13年以降も字数に関しては平成12年秋の形が踏襲されたが、この年から業務経歴書が廃止された。ところが、答案用紙の最初に業務経歴書をより詳細にしたアンケート欄のようなものが出来、試験時間内にこれを記入しなければならなくなった。そこには論文の標題も記入させるし、対象としたシステムに関しては、企業規模・利用者数やハードウエアの台数、ネットーワーク構成などの概要も記入が求められるようになったため、益々時間が厳しくなったのである。

3)実際の字数は
 以上のように、現状では2300字程度あれば合格する可能性がある。むしろ4000字近い冗長な論文よりも、2500字以内の簡潔明瞭な論文のほうが良いとする意見さえあるのである。ところで、この字数であるが、これはあくまでも行単位で数え、行数×25文字で計算したものである。よく、120分で2400字書くのだから、3秒に1文字書かなければならないなんて計算をする人がいるが、実際に書く字数は果たして何文字であろうか?
 最も短い論文を考えてみよう。

(設問ア)
1.(標題)
1.1.(標題)
 本文、2段落で計7行。
1.2.(標題)
 本文、2段落で計6行。
 箇条書き5行。
1.3.(標題)
 本文、2段落で計6行。
(合計28行:700字ライン)

(設問イ)
2.(標題)
2.1.(標題)
 本文、2段落で6行。
2.2.(標題)
 本文、1段落2行。
1)(標題)
 本文、2段落6行。
2)(標題)
 本文、2段落5行。
3)(標題)
 本文、2段落5行。
2.3.(標題)
1)(標題)
 本文、1段落3行。
2)(標題)
 本文、1段落3行。
3)(標題)
 本文、1段落2行。
(設問ウ)
3.(標題)
3.1.(標題)
 本文、3段落7行。
 箇条書き5行。
3.2.(標題)
 本文、2段落7行。
(合計64行、1600字ライン)

 これらを合計すると、行数の内訳は以下のようになる。

  ・標題行:17行
  ・段落の1行目:23行
  ・段落の途中の行:19行
  ・段落の最後の行:23行
  ・箇条書きの行:10行

 さて、標題の行は、平均で15文字としておこう。そして、段落の最初の行は24文字、最後の行は確率的に13文字で終わるとしよう。また、箇条書きの行は、平均10文字として、計算してみよう。

  17×15+23×24+19×25+23×13+10×10=1681(字)

 なんのことはない、27%は空白なのであった。なお、この計算では空行は入れていない。私はケチなので、空行を入れずに書く癖が付いているが、空行を入れても1600字ラインに達していれば良いとする意見もある。箇条書きも増やせば、実際には1500字でも合格する・・・ほんとかな???

 
午後 II 論文の採点方法と合否判定

1) 世間で言われていること
 通信教育会社の参考書などによく書かれていることは、
  (1) 午前試験で60%程度得点できないと足切り。
  (2) 午後 I 試験で60%程度得点できないと足切り。
  (3) 午後 II 試験で60%程度得点すれば合格。
 以上の3段階で、それぞれ60%近い受験生が不合格となり、結果として合格率が7%程度になるというものである。しかし、このように段階的に篩い落としていると云う確証はない。午前・午後 I が余程酷くない限り、一応午後 II 論文は読むという噂を聞いたこともあるのである。しかしながら、午前や午後 I で中の下の人の論文まで採点されるとすれば、合格率が7%の試験であるから、総合点で評価されれば午前も午後 I も低得点では合格出来る筈がない。やはり午前を心配するようでは話にならないし、午後 I はしっかりと対策を立てた上で、論文を準備して行くことが合格の必要条件であろう。

2) 論文の採点方法の考察
 上記 1) の世間で言われていることによると、論文も100点満点で採点されていることになる。しかし、そうであろうか?
 試験を受ける際に、解答用紙をよく見てみよう。午後 I の解答用紙の表の左下には、採点欄がある。各問2桁で、合計が3桁であるから、少なくとも100〜297点満点で試験が行われていることは確かである(10進数を使っていれば =^^=;)。4問中任意の3問を選ぶ区分は、恐らく120点または150点満点であろう。監査のように、必須問題がある区分では、選択問題の配点が異なる可能性もある。何れにせよ、午前も午後 I も答案を点数化して評価していることは確かである。
 ところが、午後 II の解答用紙には、どこにも採点欄がない。これには、2つの考え方がある。
  (1) 合格か不合格かを決めるだけで、点数は付けない。
  (2) 査読者には、別途採点結果を書き込む用紙が配布される。
 私は100点満点で点数を付けるようなことは行われていないのではないかと考えている。合格か不合格かだけかも知れないし、あるいは優良可不可で採点し、優良可の場合には、午前・午後 I との総合で評価するかも知れない。

3) 論文の採点方法の噂
 こんなことを言った人がいる。「論文の採点は、学術論文の審査と同様に、2名の査読者による評価で行う。2名が合格と言えば即合格、2名が不合格といえば即不合格。意見が分かれた場合には、別の査読者1名が加わり、多数決で決する。」
 ここで、学術論文の審査について補足しておこう。学術論文は若い頃1ダース以上書いているが、その審査過程は概ね以下のようになる。
 (1) 学会の編集部に届いた日が受付日となるが、受理された訳ではない。
 (2) 査読者2名(学会によっては3名)に論文のコピー(普通は投稿者がコピーをして提出する)が配られ、期日を決めて評価させる。この時点で、論文は概ね4段階に評価される(ここでは仮に優良可不可で示す)。<優>(即受理):そのまま掲載可。<良>(条件付受理):査読者が指摘した問題点が修正されれば掲載可。<可>(保留):査読者が指摘した問題点が修正された上で再審査。<不可>(却下):改訂しても掲載に値しない論文である。
 (3) <可>の場合、再審査され、<優>になれば、受理され、即掲載可となる。<良>の場合、受理されるが、問題点の修正が求められる。再び問題点が多く指摘され、<可>となった場合、受理はされずに再々審査となる。
 (4) <優>となった論文が順次掲載されるが、その際受理日が明示される。
 この受理日が問題で、どちらが先に世界的な発見をしたかは、この受理日で決まるのである。田中さんのノーベル賞も、同様の研究を発表した海外の研究者の論文よりも受理日が早かったことが勝因であった。もっとも、私の場合は他の人と競争になるような研究はしたことがないので受理日はどうでも良かったが。(=^^=;;

4) で、情報処理試験はどうなの?
 ほんとのところは、よく分かりません。(=^^=;;; ← 無責任猫




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