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「ふぅ〜ん。悪魔の実っていうの。」
石畳の上、空になった台車を押して、店先まで帰る道すがら。あたしはルフィから、さっきこの眸で見た“不思議な奇跡”の説明を受けていた。だってさ、信じられる? 眸の前で空中にぱあっと広がりながら眼下の海へと落ちつつあった数十個の花火玉。1個や2個なら手を伸ばせば掴めたかもしんないけれど、その1個に2個にどれを選べば良いの?と思うくらいの状況だったのよ? こういう時ってさ、妙に情景がくっきり見えるのよね。どうかするとスローモーション効果までかかってたりして。(笑) ほら、どうしたんだい。何とか手を打ちなよ、ほらほら…って、誰かからからかわれてるみたいに。そんな中に突然、しゅぱぁって伸びて広がった何かがあった。肌色の何か。網の目状態の“それ”は、まるで“こうなってくれる何かがあったらなぁ”と願ったそのままに、広い網となって宙を舞ってた花火玉を1つ残さずキャッチしてくれて。
『え?え? これって?』
何が何やら、何が起こっているのだか、まるきり現状が把握出来てないあたしを、とりあえずは舗道の真ん中まで引き戻してくれたゾロさんの傍ら。しゅるんとも、みょんとも、聞こえるような、不思議な音がしたその先に立っていたのは…………。
『これで全部かな?』
花火玉を両腕に抱えて笑ってたルフィだった。
『俺はゴム人間なんだ。』
ルフィが言うには、子供の頃に“悪魔の実”っていうのを食べたんだって。それは“ゴムゴムの実”っていう種類ので、食べた途端に手足がびよ〜んって伸び縮みする身体になっちゃったんだって。
『便利なのね。』
そう言うと、
『だろ?』
ルフィは“しししっ”て笑って、ゾロさんは何故だか…あたしを見て小さく笑ってた。随分と後になってこの話を親方にしたら、
『そりゃあお前、そんな話、信じないか気持ち悪いって思うか。普通はそうなるからじゃねぇのか?』
なんて言う。実際に見たものを信じないほど臍曲がりじゃないし、気持ち悪い? ルフィはいい子だよ? じゃあじゃあ、あたしって“普通”じゃないのかな? でもね、親方も何だか面白がってた。この辺は血なのかなぁ、やっぱ。
「………あ。」
点火場所から戻ってきた若い衆がいたんで、花火玉はその人に任せて、店へと帰って来ていた道の途中から、時計台が正午の鐘を鳴らし始めてはいた。店先まで戻って来たところで、丁度鐘の音は鳴りやんで、
「そっか。もうお昼か。」
ルフィがついのことだろう、自分のお腹を押さえて見せる。今日は一日バタバタしているから、あたしたちも好き勝手に食べることになっていて。棚に置いてたちょこっと大きめの竹の行李を降ろしながら、
「お腹空いてんの? じゃあ、おむすび分けて…。」
あげる…と言いかけたものが途中で途切れた。だって蓋を開けた行李の中には大きめのおむすびが8つもあったのよ? …あ、いや。だから“おやつ”の分も入ってて。(笑) それを一気に全部っ!
「あ〜〜〜っ! あたしのお干ひるっ!」
ホントに“あっ”と言う間もなかったの。気がつけば、ルフィの手にさえ1つもない。もしゃもしゃと大きく豪快にお口が動いてるから、呼べど叫べど後の祭りだ。でもでも、ああんっ。
「…あ〜あ。」
もはや打つ手はないとゾロさんにも判っているらしくって。額を手のひらで覆って、何とも言えない…こっちには済まないなと言いたそうな苦笑をしているばかり。そんな騒ぎを聞きつけてだろう、
「何だ、。みっともねぇぞ。大声出しやがって。」
親方がドタドタと奥から出て来た。後から思ったんだけれど、店先でこんだけ騒ぐ使いっ端ってのもなかなかのもんだわね。それはともかく、
「だって親方、あたしのお昼ご飯…。」
ルフィを指さすあたしに親方は肩をすくめて呆れ、
「一食くらい食わんでも死にはせんさね。手伝ってもらったんなら、そんくらい差し上げな。」
「そんなぁ…。」
それでなくたって今日はバタバタのし続けで、朝もロクに食べてないのにぃ。そんくらいで騒ぐんじゃねぇよとばかり、鼻息荒く奥へと引っ込んだ親方の背中を見送りながら、こっちはこっちで“べそべそ”と泣き声を出してると、
「お前はよっ。」
そんな声と共に、背後で“ご〜んんん…”という何とも奥深い音がして。何だろうかと見やると、、、きゃああああっっ!
「ル、ルフィっ!」
黒光りのする大きなフライパンで頭を叩かれてるっ! 直径50センチはあるわよ、それっ! しかも思いっきり振り下ろしてないか? あんたっ!
「な、何てことすんのよっっ!」
死んじゃったらどうすんのよっ! あわあわと驚いてたのも束の間、ルフィの細い身体をがばちょと引き寄せ、抱え込んだの腕の中。頭を確かめなきゃと帽子に手をかけると、
「ダメだ、。」
そんな声がして、あたしの手を横合いからゾロさんが掴んだ。
「そいつの帽子には勝手に触っちゃいけない。」
「…でもっ!」
叩かれたのよ? フライパンでよ? 頭蓋骨が陥没してたら死んじゃうのよ? 骨が無事でも大変なのよ? ゾロさんたら、何でそんなに落ち着いてるの? あああ、何か混乱しているわ。だってだって………っ。頭の中では“大変”の2文字が点滅しながら縦横無尽に駆け巡ってる。可哀想に痛かったろうにと、ルフィを胸元へしっかと抱えたまま、どうしようどうしようとばかり、わたわたパニクっていると、
「…、苦しいぞ。」
自分の胸元からそんな声がして。やっとのことでハッと我に返ったあたしは、同時に別なことにも気づいて“はっ///”っとなっていた。ついつい…赤ちゃんでも抱っこするかのように後頭部辺りを片手で押さえての、あまり豊かじゃあないけど一応は“乙女の胸元”へ………相手の顔をぐいぐいと押し付ける格好になってたらしい。
「あ、あわわっ!/////」
ホントに怪我をしてたならそれこそ大変。それと…自分でやったとはいえ、気がついた途端に物凄く恥ずかしくなって、今度はパパパッと両手を挙げて後ずさったあたしだ。だって…だってさ、あたしだって一応は女だしさ/////。柄にないけど女の子らしく、顔から火が出そうなほど恥ずかしがっているばかり。そんな気も知らないで、
「おお、サンジ。」
……………何よ、ルフィ。その平然とした声はどういうこと? 怪我は? それと…含羞はにかみは?(笑) 何故だかムッと来たあたしとはルフィを挟んで向こう側。さっき彼の頭を強かに殴りつけた、買って来たばかりらしいフライパンを片手に立っていたのは、ダークスーツ姿のすらっとした男の人だった。絵に描いたような“金髪碧眼”の、端正なお顔をした美丈夫で。どういう訳だか、何かしらのおまじないかそれともポリシーなのか。顔の半分は長い前髪で隠されているのだが、ぎりっと引き上げられた細い眉がお怒りの程を示してる模様。
「レディのお食事を横取りしてどうすんだ、お前はよ。」
こちらさんは、それプラス、
「おまけに羨ましいことされやがってよ。」
ルフィがあたしのささやかな胸に抱き込まれてたことへも異論がありそうな顔になっていて。とはいえ、
「え? 何がだ?」
本人はやっぱりさっぱり判ってないらしく、キョトンとした声を返すばかり。そんなルフィに、ゾロさんが我慢も限界という勢いで吹き出して“あっはっは…っ”と大笑い。
「何だよ、ゾロ。」
「そうだぞ、クソマリモ。何がそんなに可笑しいんだ。」
何だか妙なバランスだけど、どうやらこの3人は知り合い同士であるらしい。正に“苦虫を噛み潰す”というような顔をしていたダークスーツの彼は、やおら気を取り直すと、
「すみません、お嬢さん。ウチのクソ船長が粗相をしたようですね。お詫びをしたいのですが…賄い所はどこですか?」
「え? こっちだけど。」
それだけを訊くのに、何で手を取る必要があるんだろうか。丁度さっきまでゾロさんの大きな手に掴まれていた方の手で。こちらの彼は打って変わって…何とも優しい、さらっとした手のひらをしている。ピアニストのように繊細にして柔らかく…はないけれど、それでも長くてきれいな指だと思った。………で、ウチの台所に何の用があるんだろうか、この人。
一言で言うなら、手際が良い。良すぎる。調理台と流し台と火回りとを流れるように移動しつつ、その場その場できっちり手順を進めてゆき、一往復するごとに着実に…ジャガ芋やお肉やパスタといった材料がそれは判りやすく進化してゆく。お料理をしているのだというのに、その鮮やかさは何だか手品みたいにさえ見えた。そして、
「こんなもんでいかがです?」
使っても構わないと言った食材は、どれもありふれたものばかりで大したものではなかった筈なのに。さして時間もかけず“じゃんっ”とばかりにテーブル一杯に並べられた料理の数々は、一体どこのパーティーメニューだろうかと思うほど、見栄えも匂いも超高級そうな代物ばかり。
「凄げぇ、旨そうっ!」
「こらこら、お前のために作った訳じゃあないぞ?」
眸をキラキラさせているルフィの様子が何とも可笑しくて、
「あたし一人じゃ食べ切れないよ。皆で食べようよ。」
そうと誘う。途端に“やたっ”と喜ぶルフィの頭越し、
「俺はサンジっていいます。」
そういえばすぐさま調理にかかったから彼だったから自己紹介はまだだった。
「あ、えと。あたしはっていうの。」
「ちゃんですか。かわいいお名前だ。」
いやにニコニコと愛想のいい人だ。物も言わないでいきなりフライパンで殴ったりするから、俳優さんみたいなこの見かけを裏切って、気性の荒い怖い人かと思ったのに。でも、せっかくいい男なんだから、も少し控えめに笑った方が良かないか? いかにも、の“満面の笑み”なのだ。にっぱーっと音がしそうな全開の笑顔。せっかくすっきり整ったお顔をしているのに、何だかちょこっと勿体ない。さっき怒っていた時の、ちょっぴり迫力ある鋭い眼差しは、ゾロさんの雄々しさとはまた違った威力があって、何だかクールでかっこ良かったのにね。そんなこんな思っていると、
「そいで、こいつはロロノア=ゾロっていうんだ。」
串に刺されたつみれ団子を頬張りながら、ルフィがゾロさんをフルネームで紹介してくれた。
「ふうん。何かかっこいい名前だね。」
ゾロって名前だけでも、古いお話に出て来た義賊の英雄みたいだと思ってたけど、ファーストネームも何だかエキゾチックな響きがあるような。ところが、
「…おい。」
サンジと名乗った人とゾロさんとが少しだけ眉を寄せる。あたしの前ではあまり声を荒げたくはないらしいが、どうやらきっちりと名前を明かしてしまったことが不味かったらしくって。
「別に隠さなくても良いじゃん。俺の名前だって知ってるもんな?」
「あ、うん。ルフィ…でしょ? モンキィ=D=ルフィ。」
もうフルネームで知ってるよと答えると、途端に、
「「お前はなぁ…。」」
二人ともが呆れたような声を出すから、
「「???」」
こっちはあたしとルフィとでキョトンとしまくり。だって、何で名前を明かしちゃあいけないの? まさかこの人たち、素性を隠してるやんごとない身分の人たちなの? それともさっき聞いた“悪魔の実”の呪いに関係があるの? どっちにしたってあたしには覚えのないお名前だったもんだから、何とも事情が見えなくて戸惑っていると、
「麦ワラのルフィと元海賊狩りのロロノア=ゾロ。懸賞金の懸かってるそんな素性の人間に関わったとなりゃあ、この子に迷惑がかかる。そう思ったんだろ? そっちの兄さんたち。」
「…あ。」
話に割って入ったのは親方だ。どっから訊いてたのよう。油断も隙もないんだから…という顔をしたのが見えたのか、
「こんな良い匂いがしたんじゃあな、仕事になりゃしねぇ。」
そうと言って、あたしが抱えてたお皿から鷄の空揚げを一つ横取りする。
「ああっ。それ、一番大きかったのにぃ。」
相変わらずに手が早い。…でも、兄弟子に言わせりゃあ、あたしが鈍とろいだけなんだそうだけど。(笑) スパイシーでジュイシーな空揚げさんをそりゃあ美味しそうに堪能すると、親方は彼らに向かって改めて口を開いた。
「細かいことは気にしなさんな。こいつはなかなかの大ボケだから、今の今まで気が付いてなかったんだし、こんだけ仲よくなってから気が付いたからには、尚のこと、誰にも口外はしない。」
…大ボケは余計だ。でも、確かにその通り。ただ、
「あたしは黙ってたいけど…。」
それで良いの? と、ついつい親方を窺った。だって、親方は曲がりなりにも町の祭りの運営を任されてる役付きなのだ。作務服の肩に安全ピンで留めている、水色のリボンがその証し。だって言うのに犯罪者や賞金首を庇ったと後でばれたら、おとがめを食うかもしんない。それを案じたあたしだと判ったのだろう。ふふんと鼻先で笑い飛ばしてから、
「なに、あんたらの手配書は昨日見たところなんだがな。」
彼らの方へと向き直る。
「どんな悪さをしたのか、具体的な事件の記載はなかった。そんな風に海賊の手配書で犯罪履歴が曖昧なのがたまにはある。そういうのはな、お触れを出した側に何かしら後ろめたいもんがある証拠なんだよ。海軍が発行した代物だから、大方あんたらの手柄を横取りしての口封じってとこかな。」
途端に3人の…正確にはゾロさんとサンジさんの顔に、どこか強かそうな苦笑が浮かんだから。遠からず“そういうこと”だと言い当てているのだろう。凄いぞ、親方。何でそんなこと、分かるの? 年の功?こらこら
「確かに、悪い奴を取り締まってくれなさるのがお役人や警官、軍人さんたちだがな。政府や海軍、お上の言うことがすべて正しいとか正確だとは限らん。自分で判断せんといかんことだってあるんだよ。」
こっちはあたしに言ったこと。何よ。子供扱いしてさ。大体、ごめんで済んだら警察は要らないだとか、悪さすると牢屋に放り込まれるぞとか、そんな言いようを持って来て小さかった頃のあたしを躾けたのはどこのどいつだ、まったく。言いたいことはそれだけだったのか、ちょろっと兄弟子が戸口から顔を出したのに気がつくと、じゃあなと会釈してそのまま母屋の方へと戻って行った。
「面白れぇ親方だな。」
「そう?」
いつだって良いように揶揄からかわれてるあたしには、ちっとも面白くない人なんだけどもな。
「あんたのこと、随分心配してるみたいだ。」
ゾロさんが言うのへ、
「そりゃあ心配もするだろさ。」
サンジさんがすかさず言い返す。
「こんな、俺以外は得体の知れねぇ、半端な野郎どもにまとわりつかれてりゃあよ。」
「…んだと、こら。」
語調が荒立って来そうだったんで、
「やーね、喧嘩しないでよ?」
一言、差し挟んだ途端、
「ちゃんが言うなら、喧嘩なんかしませんよ。」
サンジさんの豹変ぶりに、相変わらずだよなとゾロさんが呟き、ルフィが愉快そうに小さく笑った。ふ〜む。女の子には完全降伏しちゃう人なんだ、サンジさんて。分かりやすい人だなぁとちょっぴり呆れていると、
「でもま、ホントのところ。弟子とは言っても預かり物のお嬢さんだろからな。妙な虫がつくのは看過出来ねぇんだろ。」
さっき棚に見つけたお酒を桝につぎ、何とも自然な動作で口に運びながら、ゾロさんが感慨深げな声を出す。おいおい、まだ昼間だぞ? まあ、お祭りだからいっか。おいおい それはともかく。普通のお嬢さんになら、今彼が言ったところの理屈も尤もな代物なんだけれど。
「違うのよ。」
「何が。」
「だから。あたしは親方のホントの娘なの。」
「…はい?」
「実の親子なの。だから口うるさいし、物言いにも遠慮しないって訳。」
そんな似てないのかな、これ言うと皆びっくりすんのよね。あ、それとも年齢トシが物凄く離れているからかもね。何せあたしは親方…父さんが50にならんという頃に生まれた子だ。兄さんたちが3人いたが、どの兄貴と一緒でも“お若いお父さんですねぇ”と言われ通しだったっけ。
「親方はさ、選りにも選ってあたしがこの仕事に興味持ったのへ困ってるのよ。それでなくたって危険な仕事でしょ? おまけにあたしはトロ臭いしね。」
「成程。」×3
「………。」
自分で言っといて何だけど、そこでそんなにも大きく頷かないでほしかったなぁ、3人とも。
「それと、外の島のやっぱり花火職人のとこへお嫁に行った親方のお姉さんが、爆発事故に巻き込まれて亡くなってるの。」
これは後から母さんに聞いた。だからって訳でもないが。兄貴たちが別な仕事を選んだのへも、大した感慨はなかったようだった。だけど、だから。尚更に複雑だろうなと、それはあたしも思う。
「自分は好きでやってることだから良い。理解してくれるのも嬉しい。でも。」
「怪我をされたり、死なれたりしかねねぇってこと、誰より自分で身に染みて分かってるから、反対したくもなるって訳か。」
紫煙をくゆらせつつ、奥深い声でそう言ったのはサンジさんだ。店先では我慢してたらしい煙草を、料理が終わった途端に吸い始め、気がつけば大鉢ほどある灰皿がいつの間にか満杯近い吸殻で埋まっているから。この人、すごいヘビースモーカーなんだなぁ。お料理上手なのに変なの。知り合いのコックさんが、
『食いもんに関わる人間は、煙草なんて絶対に吸っちゃあいけないんだ』
って言ってたんだけどもな。だから、火気厳禁なウチとは相性が良いなんて、ちょっと変な理屈も言ってたかな? いまだに意味がよく判んないんだけど。おいおい
「さて。お腹も膨れたし。残りのお仕事片付けなきゃ。」
ごちそうさまでしたと手を合わせてから立ち上がったあたしに合わせてか、
「じゃあ、俺らもここらで…。」
暇乞いをしそうな雰囲気になった彼らだったから、
「え? お祭り、見て行かないの?」
意外に思ってついついそんな声をかけていた。いや、別にここからの暇乞いであって、これから港や町の大通りに向かおうって構えだったのかも知れないんだけれども。…実は早とちりも得意技なのよね、あたし。
「祭り?」
「そうよ。この町の一番の見もの。これのために来てたんじゃなかったの?」
そして、だからこそ頑張ってるあたしたちなのにと、さっきルフィにした説明を、この二人にも繰り返す。
「へえー。事件がらみで急な予定がねぇ。」
それにしちゃあ逼迫してないなとか何とか思ったのか、ゾロさんはまたまた小さく笑って見せる。渋くって良いお顔だにゃあ♪ そして、
「勇者の何のかのには興味はないが、ちゃんの作った花火が上がるんなら、そりゃあ見てかないとだな。」
やさしく笑ってくれたサンジさんが何気に肩へと手を伸ばして来たのを、素早く“ぱっちん”と払い飛ばしたのが、
「って☆ 何すんだ、ルフィ。」
「は俺と最初に仲良くなったんだからな。それに、危ない仕事してて“しゅーちゅー”しないといけないから、気安く触ったらいけないんだ。」
何だか前半は焼き餅っぽく聞こえたんですけど。だって、
「には触っちゃいかんのか。」
「そうだっ。」
「そう言いつつ大威張りで何してんだ、お前。」
ゾロさんが呆れた。…そうなのよね。触っちゃいかんと言っといて、ひしっとしがみつかれたもんだから、
「…/////。」
たちまち真っ赤になってたあたしだった。
「だってさ、、いい匂いするんだ。」
「だからって、そうそうやって良いことじゃねぇぞ。」
「そうだぞ。離れな、ルフィ。ちゃんが迷惑だってよ。」
「や〜だよ〜。さっきはの方から抱っこしてくれたからな。今度は俺からの番。」
「何だ、そりゃ。」
えっとえっと…。何か大変な日だな、今日は。うん。/////
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