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陽世界に迷い出た“負の陰体”である邪妖や悪霊を浄化封殺するため、天聖界の破邪たちが絶対的な効力あるものとして帯びているのが“精霊刀”と呼ばれる刀剣武器であるのだが。それの始まりはというと…。
“奴のあの、和道一文字なんだってな。”
幾星層もの遥かに昔。天聖界の奥の院、天使長という身分の者でさえ、儀礼式典に関係のない形では許しなくして踏み込めない“禁苑”のその奥の。この世の始まりと共にあったものとして祀られていた“聖なる御神木”の傍らに。何時、何処からとも知れず、唐突に現れた不思議な赤子。誰も踏み込めない究極の“聖地”に、何の前触れもなく突然出現した緑の髪の赤子は、此処に居るのだ誰か気づいてという泣き声を聞いた通りすがりの天使長が驚きつつも抱き上げるとぴたりと泣きやみ、それ以降は ひくとも泣かない太々しい子で。その傍らに共にあったのが、純白の鞘に収められたる練鉄の和刀。誰の手にも抜けなかったものが、少しほど育った和子が触れるとあっさりと鯉口を緩めたところから彼のものだと認められ。強靭さと聖力では“境界障壁並み”という、負の邪妖に絶対なる威力とその不可思議な成り立ちを真似て、以降 似た材質の精霊刀が破邪たちの得物ぶきとして天聖人たちの手で作られるようになるのだが、
「あれは、全く同じものを作れない特別にして最強の刀です。」
ゾロのその大振りの手に ぎしりと握られた直刃すぐはの和刀。白鞘に白柄という神々しき拵こしらえで、銘を“和道一文字”といい、邪気を払う咒力を満たした“質”のみならず、重いばかりで難儀なその身を、それでも自在に扱いこなせる存在には、自身の意に添って炸裂する破砕力を存分に提供し、途轍もない鋭い切れ味を発揮する、陰体には脅威なばかりの武器でもあって。
「だのに…それで叩かれても何のダメージも受けないとは。」
雑多で細かい物質が白っぽい靄となって立ち込める亜空間の中。工事用重機のショベルカーを思わせるような、それは巨大な化け物の“手”が宙に浮かんでいるのだが、渾身の力を込めたゾロからの精霊刀での太刀を受けてもびくともしない。そんな相手というのは初めてのことで、
「一体どういう種の邪妖でしょうか。」
精霊刀が効かないだけでもとんでもないその上、何の面識もない人間の身を庇った邪妖。自分をここまで招いた“召喚師”だと見極めてのことらしいとはいえ、
“庇ってやるまでの義理はなかろうに。”
コウシロウ先生が仰有るには武具店の若主人にして、恐らくは…サンジがインターネットにて調べた、謎の拝み屋“百計のクロ”とかいう人物。前々から、あくまでも趣味の範囲で、神道・陰陽道、呪術だの黒魔法だのに凝っていたという話だが、間の悪かったことに、こんな間近にルフィという存在があり、彼へと襲い来た様々な邪妖が発したものから多少は影響を受けもしたせいでか、何かしらの力を授かってしまったのだろうと思われて。とはいえ、
「こう言っては何ですが、クロさんもさして霊感が高い人ではないのですが…。」
彼がこの“亜空間”という、本来ならば壁を越えられない次界に飛び込めたのは、彼がルフィへ触れさせることに成功した“連結の楔”とやらが導きの役を果たしたから…だそうだが、それはあくまでもルフィの側が影響力を受けやすい対象であったからのお話。はっきり言って、どこにでもいる普通レベルの一般人に過ぎない“人間”だというのに、邪妖が一目置いて護るような、そんな“不合理”なことがどうして起こっているのやら。この場に…やはり“乱入”という形で登場なさったコウシロウ先生もまた、怪訝そうに小首を傾げて見せている。
「影響を受けたと言っても、近間にいたルフィくんへの陰体から干渉の気配を嗅ぐことで、ああこれがそれなのかと判別出来るようになった程度、発動力ではなく感応力という面での“能力アップ”を授かったくらいだと思うのですよ。」
何故なら、
「莫大な力を得られるほどに、きちんと順を踏んだ精神修養を行った者が、なのに邪を招くだなんてあり得ない行いですからね。」
神道や修験道の精神修養では、物事の善悪を見極めよという精神が基本になっているもの。だからして、そういったものを順当に修めて気力を高めた人間が“悪行”を手掛けるなんて、話の順がおかしいと、それは大真面目に言い切ったセンセーであるらしく。…でも、それって。
「………あまりに強い我欲からなら、
正道を外れた精神力でも同じような馬力は得られませんかね。」
四字熟語で“勧善懲悪”。あまりに型に嵌まったことを仰せだったのへ、世の悪党にもあまりに激しい欲望をエナジーにして、正しくもか弱き者をあっさりと凌駕出来る憎々しいケースはありますがと、敢えて“現実的なこと”を訊いたサンジへは、
「そうまでの我の強さを持つ人が、こんな非現実的な方向へその気概を向けるなんて、まず稀だと思いますが。」
「…ははぁ。」
にっこり笑ってのお言葉だったが、そりゃそうだわね。次元壁を貫くことが出来るほどの、そ〜こ〜までバイタリティあふるる精神力を持つ“悪人”ならば、もっと現実的で即物的な悪事に手を染めてるんじゃなかろうか。でもでも…う〜ん?
“さすがは学校の先生だよな〜。”
どこか何〜んか割り切れないものがあるんですが、それでもお話の持って行きようがお見事だなと。丸め込まれてしまったサンジさんだったのはともかくとして。おいおい 今はそれどころじゃないだろうが、あんたたち。まったくだ 壁のような盾となって、召喚師を庇った巨大な手は、再び元の中空へと戻っており、
《 陽界まで出るには、その小僧の身を寄り代にせねばならぬらしいな。》
ぐつぐつと耳障りな笑いを含んだ野太い声が、余裕たっぷりに言い放つ。相変わらずに全体像が見えないのが焦れったいが、そんな条件の悪さなぞ何するものぞと、
「………。」
柄に巻きつけられたる綾紐をきちきちと鳴らしつつ引き絞り、額の上、上段へ。その切っ先を じゃきりと構え直した精霊刀。先程、サンジが召喚師の正体を見極めようとして放った攻撃の余波だろう、靄が対流風にあおられてところどころで晴れて来ており、相手の姿も少しずつながら滲み出して来そうな気配。だがだが、そんなものを悠長に待ってはおれぬと、それでも…逸る気持ちを押さえ込み、ゆっくりとした呼吸を刻んで、一心不乱に念を高めていたゾロが、
――― っ!!
かっと双眸を見開いたその途端、何を目指してか、弾かれるように駆け出すこと数歩。そこから足元の地を蹴って、一気に高々と宙へその身を躍らせている。大きな手のひらの中、惑いもないまま滑らかな動作で握りの方向を返された精霊刀は、その両手の中で“逆手”に握り込まれ、大きく振り上げられた反動を乗せて、とある位置へと力強く叩き込まれている。そして、
《 …っ! ぎゃあぁぁっ!!》
慌てず騒がず、深く鋭く気を練った上での攻撃はさすがに効いたということか。がっつりと大きな手ごたえを得たのを腕への弾みとし、中空にてその長身をくるりと鮮やかに舞わせた破邪殿が、向こう側へと見事に着地。そんな気配さえ掻き消して、靄の中に巧妙にも身を潜めていた邪妖が、大絶叫を上げると体をよじってのたうちまわり、もがき暴れている模様が、こちらへもありありと伝わってくる。
《 童わっぱっ! 貴様、貴様っっ!!》
甘く見たのは自分の勝手であろうに、そんな意表を衝かれたことが余程に悔しいのだろう。先程まではああも流暢に紡げていた言葉をさえ乱しまくって、盲滅法、湯気のように垂れ込めていた靄を掻き分け、やっとに現れたその姿はというと、
「…鬼か。」
先の半牛だった獣人に比すれば、もっと人間に似た姿ではある。だが、額の両端から伸びた頑健そうな角や、口元からはみ出している黄味がかった牙、見上げんばかりという小山や壁のような身の丈をした全身を覆う剛毛は、正に鬼と呼ぶにふさわしい風体でもあろう。そもそも“鬼”というのが、牛の角と虎の毛皮を身に帯びた存在とされているのは、方位学でもある“陰陽道”の中、忌むべき“鬼門”というのが東北、すなわち“丑寅”の方角のことであるところから来ているのだそうで。これほど正統派にして最強の、知恵ある“化物”はいなかろう御大将の登場に、
「………。」
先程の手ごたえを糧として、再び呼吸を整え始めるゾロであり、
「…おっと。」
があぁ〜〜っと暴れた余波で伸ばされた、邪鬼の大きな手が。宙に頼りなく浮かぶルフィへまで及びかかったのへは、ゾロと入れ替わるようにその位置へと滑り込んでいた黒髪の師匠が立っているのが相対し。
「此処でなら思うように力を発揮出来るそうなので。」
にぃ〜っこりと笑って、そのまま…長身な頭上へ手をかざすほど、高々と振り上げた腕を、片膝を突きつつ一気に足元まで降り降ろしたその途端。
――― ヴ…ン、っと。
青白い閃光が。彼の背丈ほどもある縦に長い和弓の形になって、幾つも飛び出したそのまま宙を滑空し、掴みかからんと迫っていた巨大な手へ次々に突き刺さったから。
《 あぎゃぎゃあぁぁっっ!!》
これは相当に効いたのか、熱いものに触れたかのように、慌てて引っ込んでしまった鬼の手であって。さすがは かつて“稲妻”と“戦い”を司ってらした天使長様、こんな流動的な場で、それらに沿った勘のようなもの、あっさりと取り戻してしまわれたご様子である。閃光自体は時をおいて消えたものの、相当にじくりと来たのだろう。最初から対峙していたゾロのみならず、自分を挟むように前後へ位置取りをした格好で立ちはだかるコウシロウさんをも、新手の敵として見なした模様。いかにも油断のないキツく尖った眼差しとなり、
《 許さんぞぉっ! その小僧を我に寄越せっっ!!》
があぁっと牙を剥き、今度は両手を大きく振り上げて、改めて…黒須氏が守りしルフィの方へと掴みかかろうとしたのだが、
「そうは行かんっ。」
その背中へと再びの剣撃が鋭くも深々と貫き通り、怒号がそのまま悲鳴の絶叫へと塗り変わる。大きくのけ反った巨体が後ろざまにたたらを踏んで後ずさる。突き立てば、そこはやはり“破邪”の剣だけに効果も出るというもので。肝心なルフィ自身へ直接触れることさえ叶わないまま、良いように突き飛ばされ続けている邪鬼ではあったが、実を言うと…それはこちらも似たようなもの。
「ルフィくんを降ろすことが出来ないのが困りものですね。」
彼らの頭上に浮かんだままな少年は、その背中に、そして彼のまた上空にと浮かんでいる咒陣によっての強固なガードが掛かっており、ゾロやコウシロウ氏が伸ばす手まで…こちらは やわい緩衝によってだが、ふわんと押し戻して触れさせないでいるものだから。無事に収容と運べないのが困った話なのだけれど。
“…そうか。あの邪鬼はルフィと“連結の楔”で同調しているんだ。”
この亜空間へ、本来は不可能な人間であるクロ氏の侵入を許したように、ルフィへと掛けられた咒陣の効力によってつながっている彼らであり。その同調の延長的な作用として…ルフィへとゾロが掛けておいた“防御の咒”の効果までもが、敵である彼らの上へも働いていて。それで、
“選りにも選って、鬼野郎へのあいつ自身の攻撃まで弾いちまってるってことか?”
何とも皮肉な話だが、破邪の精霊刀がこうまで念を尖らせないと効かないなんて。そして、彼を守りたいとする自分たちもが触れられないだなんて、まずはあり得ない話だから。それほどまでに、あの…いかにもちゃちで子供だましな咒陣は、ただならない威力を発揮しているということであり、
“クソ忌ま忌ましい話じゃねぇか。”
封印結界のエキスパートである身なればこそ。余計に憎々しい代物に見える、金髪碧眼の聖封様であったりする。天聖界で一番の伊達男さんが繊細なお顔を歪めている一方で、
《 そうか、そうか。そっちがそう来るならば、我とても考えがあるというもの。》
思わぬ伏兵の出現以降、冷静さを取り戻した破邪の男といい、人間であるらしいのに妙に強い男といい、自分にとっては侭ならぬ状況であるらしいと把握した邪鬼。焦れたように唸っていたが、ふと、傍らにて見物に回っていた存在へと声をかける。
《 我を招きしマスター、何とかしておくれな。》
唐突に、当事者だろうがとばかりの声を掛けられた、自称“拝み屋”のクロ氏。ある意味では望みが叶っての異世界体験をしていたものの、不思議な存在たちが凄まじい斬り結びをこなしている場を前にぼんやりしていたところへ、第三者じゃあなかろうがと自分が招くつもりであった邪妖からすがるような言葉を掛けられてハッとする。
「あ、おう。判ったよ。何をすれば良いんだ?」
これほどまでに恐ろしくも強靭そうな邪妖から、頼りにされているというのが余程のことに快感なのか、気安く応じて無造作な足取りで鬼へと近寄る。こんな得体の知れない“人外”の化け物の傍らにいて怖くはないのか、もはや感性のどこかが吹っ飛んでいるのか。半分くらいは夢心地だろう怪しい足取りで進み出た武具屋の主人へ、
《 もう少し前だよ。どうか我の盾となっておくれな。》
しおらしくさえ聞こえる声音でそんなことを言って、自分とゾロやコウシロウ氏との狭間へと招きいれ、
《 そう。そこだ。》
そこが定位置だよと、薄笑いを滲ませた声で言ったその途端に。
――― え?
あまりに呆気ないこと。ざっくりと。刃渡り数mはあろうかという巨大な鎌のような、鋭くて黒々とした強靭な爪で、その胸元を背後から突き通されている。
「………な。」
他の誰でもない“自分の身”に起こったことが信じられないと言いたげな、何とも言い難い短い声を上げたクロ氏であったが、それへと応じた声は…こちらも何とも無慈悲な代物で。
《 へっ。服従したとまで誰が言ったよ。》
相手の愚かさを嘲笑するような声に、
「な…っ。」
ギョッとしたまま、されど、振り返ることも出来ずにいる彼へ、
《 あの小僧への召喚の咒陣ってなマーキングをしたのがお前だったから、小僧を得られるまでは倒されては困るというだけのこと。だがの、その咒陣の維持には何もお前本人が必要な訳ではない。》
うそぶくように言い放つ鬼の邪妖であり、
“そうだろうよな。”
あれほどの力と知能を持つ邪妖が、たかが人間に屈服する筈がない。存在そのものを脅かすほどの弱点を掴んでおくか、もっと別口の、入り組んで凝った策を用意して搦め捕らねば、跪(ひざまづ)かせるなんて不可能だ。ただ召喚陣を書いた本人だというだけのことで、ああまで知恵のある魔物から、そうそう大事にされたり…若しくは恐れられるような立場にはなれまい。苛立たしげに眉を寄せるサンジが、
「馬鹿がっ。人間に御せるものだと本気で思っていたのかよ。」
召喚師へと恫喝しつつ、忌ま忌ましげに舌打ちをする。そんな彼らを前にして、
《さあ人間、どう食われたい? 陽界へ出られる身となる我の、最初の贄にえとしてやろうぞ。》
「ひっ!」
《痛さが追いつかんほどの速さで食ってやろうか? それとも、先に痛みを感じぬ毒を刺し、それからじわじわ、足元から齧ってやろうか?》
「ひいぃぃいいぃぃっっ!!」
さっそくにも脅し文句だけで相手の血の気を凍らせている手際が、邪妖の本領発揮というところか。
“天下を取ったかってほど舞い上がっていたから尚のこと、効き目もあろうよな。”
ある意味で自業自得なことなれど、非力な“人間”を守るため、敢えて次界壁を越えてまで出動する“スペシャリスト”でもある自分たちだ。いかに手を患わせてくれた手合いだとはいえ、ルフィだけを優先して彼の方は…まさかに見捨てる訳にも行かず、
「先生、援護を頼みます。」
「判りました。」
小さな目配せによる打ち合わせのみにて、サンジが軽く眸を伏せて何かしらの咒を唱え始める。すると…随分と打ち払われてクリアになっていた筈の靄が不意に濃度を増した。
《 …んん? 何をした?》
相手もまた、その感覚の中では視覚索敵を重視しているのか、見通しが悪くなったことへ警戒を帯びた声を出し、
《 ううぬ、詰まらぬ小細工を構えおるか!》
小賢しいと言わんばかり、がなり声を轟かせながら、落ち着かない素振りにて周囲をキョロキョロと見回し始める。
《 そこかっ!》
ざわりとたてがみを震わせて、靄の向こうに立つ陰へ吠えた途端、その口から炎の玉が飛び出しもしたものの、
「残念でした。」
体の前にて腕を薙ぐようにして。一閃しただけでその攻撃を払い飛ばしたのは、黒髪を項に束ねたコウシロウ先生であり。
《 もう一人はっ!》
姿が見えない金髪の若造。その気配を探しかけた自分の手が…いつの間にか軽くなっていることへ、はっとする。
《 な…っ。》
正に、いつの間にか。軽やかな身のこなしで飛び掛かり、黒々と長く延ばされていた鬼の爪の銛(もり)の先から、召喚師を救い出していたサンジであり、
「た…助けて下さいっ!」
その身を貫かれた重傷へ、がくがくと身を震わせてすがりついてくるクロ氏へは、
「安心しな。亜空間(ここ)で負った傷は、お前さんにはあくまでも精神面への代物だからな。」
それだとて痛みは痛みであるのだけれど。陽界の住人たちの精神力、実は結構逞しい。ましてや、こんな馬鹿げたものとはいえ野望らしきものを構えていたような御仁だけに、引っ繰り返せば…こうまでのことをしでかしただけの図太さもあろう。お仕置きをかねて治療は後回しにしてやろうと構えつつ、それだけしか説明してやらないのは、元はといえばこやつに引っ張り回されたことへの、聖封様からのささやかなる意趣返しというところかと。そんな格好での救出が済んで、ますますのこと、邪鬼からは手札がなくなった筈…なのだったが、
《 くくっ、ご親切な輩たちよの。》
邪妖は愉快愉快と笑い始める。んん?と怪訝そうに、それへと気を留めた3人が見守る中、
《 だがの。そやつを救ったこと、すぐさま後悔することとなるぞ?
何しろ、この爪にはそやつの血がある。連結の楔を描いた人間の血がの。》
そんな言いようへ真っ先にハッとしたのが…さすがは封咒の専門家。
「しまったっ。」
慌てて防御の封印結界を重ねようと、宙を引き裂く勢いで印を結びかけたものの、
《 もう遅いわっ!》
その爪の先から滴る血を、ぶんっと振り飛ばした先には。宙に浮かんだままだったルフィがいて。忌まわしい血が飛んで来て触れたのがやわらかい頬の端。
――― その途端に。
これもやはり中空に浮かんで光りつつ、ルフィを宙へと吊り下げていた怪しき咒陣が“ピシリッ”と堅い音を立てて砕け、そして。
「ルフィっっ!」
その小さな肢体が…ふっと、闇の中へ吸い込まれるように消えてしまったのだ。
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*勧善懲悪という言葉が喉から出るのに5分もかかりました。(笑)
如才がないとか、ワクチンとか、
そのものズバリへなかなか辿り着けない言葉が増えたことへ
しみじみと年齢を感じる今日この頃です。(爆)
年のせいもあるんでしょうけど、
活字離れこそが一番の要因なんでしょうね、きっと。
そういえば昔ほどは本を読まなくなったもんなぁ。(ううう…。)
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