月夜見

   the chase of emergency
               ~Moonlight scenery
 

 
          




   不思議だなと思った。
   だってさ、今朝、起きた時はサ、何って思ってなかったもん。
   今日が何曜日なのかも気にならなくてサ。
   そうそう。
   ゾロが起こしてくれたのへ、ちょっと悪戯しちゃったのへ、
   えへへってサ、何か、後からドキドキしたかな?
   だって、思い出してみたらサ、
   ずっと小さい頃に母様にキスしてからの後、
   お口にキスしたの、ゾロが初めてだったから。
   サンジにもナミにもウソップにも、そういうのはしてなかったなって、
   後から思い出して、何か…恥かしくなっちゃったから。/////
   そんなことに気持ちも頭も のほのほってしててサ。
   だから、まさかこんな。
   大事が起こるなんて信じられなくてさ。
   サンジが何処にも居なくなって、心配で心配で。
   ゾロのこと、いつもより何倍も頼もしくて。
   ああ、でもさ。
   空の色とか、潮風の匂いとか、何も変わんないのにな。
   俺、まだ寝てるのかな? 実は…。





 とりあえず、連中の空や海への直接的な国外逃走手段は封じた。手の届かないもっと遠くへ逃げ出される心配への、遠く離れたここから打てる手立ては、これで一応完了。
「よし。ポートへも連絡しといてくれ。警察や機動隊を急行させるようにってな。」
 ブイトールを飛行不能状態にしただけで、余計な殺傷はしていない。だが、何者かに脱出を阻止された、イコール自分たちの行動が何者かに把握されているという理解を与えた訳だから。相手の側にしてみれば、今度は…死に物狂いでの抵抗をしかねない。あのヘリポートの敷地から外に逃がしては不味いからと、そう言い立てたゾロの言葉に、
「判った。」
 持って来た銃砲一式、大きなミニコンテナにまるで玩具のように放り込み、何を思ったか…ズボンの後ろポケットからウソップが取り出したのは、携帯電話だった。いや、それでも通報は出来るのだろうが、
「…?」
 なんだか妙な形の電話だなと、傍にいたルフィが小首を傾げ、そのまま小さな頭が腕の中にまで入り込んで小さなモニターをのぞき込む。好奇心旺盛な仔猫のような行動に、可笑しくて堪らないという顔をして、
「せっかく一日がかりでセットして来たんだがな。背に腹は変えられない。」
 小さなモニター。そこに映し出された地図の上、蛍光色の印をジョグダイアルで移動させ、携帯電話…だと思ってたその装置の真ん中のボタンをウソップが押すと、
「………んん?」
 ちょっとした"間"があってから。

   ――― きいぃいぃ
ぃぃんんん…っ

 ドップラー効果を引き連れて…何かが遠くからえらいスピードで上空へと飛んで来た。それは彼らの頭上を飛び越して、
「ひゃっ!?」
 ヘリポートへと飛んで行き、その先で………。


   ――― ず・どぱーんっ!


 炸裂音と共に弾けた小さめな閃光。昼間用の花火ではなかったらしくて、結構色味の濃い火花が遠い空に花開く。
「………あれって?」
 空に薄い雲みたいにもやもやと広がっている煙を見やって、ぽかんとしているルフィに笑って見せつつ、
「明日の晩に上げようと思ってた花火だよ。まだ弾数はあるから安心しな。」
 でも、思いがけないこととして驚かそうと思って苦労して仕掛けたのに、効果的には半減したかなと、そんなことを言って苦笑する。ああ、成程。薮蚊にめげつつセッティングして来たって話していたのはこれのこと?
"そっか。王宮内には滅多なことで火薬なんて持ち込めないからな。"
 何でもありに思われがちだが、王宮内にも当然"タブー"となっているあれこれはある。特に"危険物"の持ち込みは原則として厳禁とされている。大切な王族の方々の御身への、どんな過ちや悲劇に繋がるやもしれない"可能性"を引き起こさせないためには、最初から火薬だの銃器だのが"存在しない"に越したことはない。警備や護衛の人間であっても、殺傷能力の低い小口径の銃が基本装備で、これは日本やイギリスなどの警察がお手本になっているのだとか。…いや、それはともかくも。
「これでポートの係官も今すぐに"何事だ?"って飛び出してると思うぜ。」
「おおっ、ウソップ、ナイスっ!」
 間近になった童顔がにこやかに弾けて、ルフィは王宮一のメカ博士に抱きついた。ほんに頼もしい陣営ですこと。………傍からは"末恐ろしい"と言われるかも知れないけれど。
(笑)




 ライフル銃の銃声に加えて、王宮の間近で炸裂した不自然な花火。さすがにああまでの物騒な物音へは、誰だって不審だと気づくだろう。先程怪しい輩たちの捕獲と留置を任せた、護衛担当部署である王宮警備部の方々が屋上にも上がって来たので、
「じゃあな、後は任せたぜ。」
「おうっ。」
 それらと入れ違うようにゾロとルフィはエレベーターへと乗り込んだ。階段を使わなかったのは、ゾロの手に…先程述べたところの、王宮内での携帯を基本的には禁じられている小銃が握られていたからだ。通りすがりの誰ぞに見咎められては不味い。
『こういうのが嫌いだってのは知ってるが、場合が場合だ。持ってきな。』
 そんな風に言ったウソップに渡されたものである。屋上の格納庫にあんな物騒な銃器の数々を隠し持ってたことへも一応のお説教を受ける筈で、今回ばかりは状況が状況だったから仕方がないと多少は大目に見られたとしても、それは全てに平穏な"鳧"がついてからのお話。今は立ち止まれない渦中にある彼らであって、色々と"緊急避難"の乱発中。


 【緊急避難;kinkyuu-hinan】

 ①火事や災害、事故などの非常事態に際して、大急ぎで退避すること。
 ②法律用語。急な危難を避けるために、已
やむなく他を害する行為。
  例えば、失火による火事の現場にて、
   脱出するためにと他所様の窓ガラスを勝手に破砕するとか。
   例えば、背後から忍び寄る何かに気づかせようと、
   失礼ながら指差して見せるとか。(ex,シムラ、後ろっ後ろっ!)
ちょっと違うぞ。
   例えば、窮地から救い出してやるために、
   本人に承諾を取る間も惜しんで、
   有無をも言わせず、とんでもない距離の空中滑空を敢行させるとか。
(笑)

   ………失礼致しました。


 静かに階下へと向かうゲージの中、
「………。」
 ジャキっ、カシャンっと、慣れた手つきでチェンバー部分をスライドさせて調子を見、グリップの部分へセットされてあった弾倉
マガジンをチェックし、自動小銃を大きな手の中に構えるゾロに、
"………。"
 ルフィは仄かに冷ややかな何かをその身の奥に感じた。見慣れない銃も何となく怖いし、もっと不慣れな…沈黙の中で怖いくらいに真剣なゾロの横顔を見ていると、頼もしい筈なのに薄ら寒い何かをついつい感じてしまう。銃を扱う戦いは、体を動かす戦いとは別な部分の冷静さや冴えを必要とされると聞いている。殺傷能力の高い武器。ましてや、これから臨むのは無頼な輩同士の銃撃戦じゃあない。少なくともこちからら仕掛けるのは"守るため"の戦い。余計な被害を出さぬよう"一撃必中"を求められるだけに、それだけ緊張感を高めねばならないこと。日ごろ余裕綽々なこの男が、こうまで堅い顔で集中している、それだけ大変なこと。
「………。」
 事態の重さ。それと共に…ゾロの真摯さがそのまま無言のまま物語る、怖いまでの緊張感へと、意識せぬまま息を呑む。だが、
「お前は此処で待って…、」
「やだっ。」
 絶対に言われると分かっていたからこそ、きっぱり即答していたルフィだ。銃を見やっていた冷ややかさが切り替わり、感情を乗せた翡翠の眼差しがこちらのお顔を覗き込む。
「危ないんだ。はっきり言って、お前を守っていては奴を助けられんかも知れんぞ?」
「お荷物になる?」
「…う"。」
 はっきり言われて言葉を飲んだ。いくら何でもここは…嫌われても恨まれても良いからと、置き去って現場へ向かうべきなのだが。それが出来ないというのなら、彼のそばから離れずに、後は警察に任せるという姿勢を取るか。勿論、そんな選択をしていては、隋臣長の身はますますの窮地に置かれることとなりそうだが。
「………。」
 大きな眸はまじろぎもせぬままに、こちらをじっと見据えて来る。それを静かに見据えていたゾロは、銃を革製のホルスターへと収めると、雄々しく隆起した肉置きの肩口に巻き付けるように装着し、
「そんなに心配か?」
 訊いてみた。ルフィはかすかに顎を引いて頷く。
「だって。サンジは俺の大事な"兄ちゃん"だもん。」
「…"兄ちゃん"?」
 こくりと再び頷き、
「どんな時だって傍に居てくれて、自分のことより俺のことばっか優先して。それって俺が王子だからじゃなくって、俺が俺だからだよって。…これはサンジじゃなくてナミが言ってたんだけど、でもそれは俺にも判るんだ。」
 言葉にしにくい感覚的なこと。どこか幼さか余っているせいか、気持ちだけ先走りしちゃってて。判ってほしいけど言い表せる言葉が自分の中に見つからなくて。それが歯痒いとムキになっている顔だと判る。大切なもの、忽
ゆるがせに出来ないもの、真摯にあたらねばならないこと。お顔がかすかにむずがりかかっているものの、だが、癇癪は起こさない。そんなことで押し切りたくはない。単なる駄々ではない"主張"だからだ。
「うう"…。」
 まだ泣き声ではないが、ぐぐっと見張った眸はぎりぎり危うい均衡を保っていて、
"また俺が泣かすのも剣呑だしな。"
 何とか間近にまでなら連れてってやっても良いかと、時間を食いそうな説得はとうとう諦めたゾロだ。彼の無事をこそ優先せねばならない護衛官としては失格ものな判断だが、体さえ無傷なら良いというものではない。今でさえ、身を引き裂かれそうなくらい心配なのだろうに。ヒステリーも起こさず、出来る限り大人しく構えているその我慢と努力は、買ってやらねばならないだろうから。
「分かったよ。…但し、どんな些細なことでも俺の言う通りにすること。それが守れないなら、その場に置いてく。良いな?」


            ◇


 エレベーターのゲージから出て、ポートの方向へ一番に近い通用口へ足早に向かう。
「使える車は…。」
 駐車されてある公用車のどれかを借りて、ヘリポートまで乗りつけようと構えていたゾロだったが、そんな彼と…やはり懸命にくっついて来たルフィとの前へ、イグゾートノイズも猛々しく疾風のように滑り込んで来た鋼鉄の塊りが一つ。
「ほらっ、二人とも早く乗ってっ!」
 エンジン部分をカバーリングで囲うようになったデザインの"フルカウル仕様"のBMW-R100RS。随分とまた古めかしい型なのは、乗るためというよりはコレクション目的で購入された代物だから。だからといって整備は怠ってない辺り、管理している部署の人々の熱い心意気が感じられるが、今はそんな余談に逸れている場合ではなくて、
「三人乗りになっちゃうけど、このさいは"緊急避難"を適用してもらいましょう。」
 フルフェイスのヘルメットの硬質カバーグラスを、ドラーバーズグラブを嵌めた手で引き上げたのは、
「ナミっ!」
 ルフィは心強い援軍にワクワクッと喜びの声を上げたが、
「………。」
 身にぴったりと添うライダースーツ姿であった上に、みかん色の髪をすっかり隠していたがため、誰だか判らなかったゾロの方は呆気に取られているばかり。日頃からも"楚々としている"というほどまでにはお淑
しとやかでもなく、結構闊達で男勝りな面もなくはない佑筆殿ではあるのだが、こ~んな大型オートバイを颯爽と乗りこなせるとは思いもよらずで、
「ほら、何をぼんやりしてんのよ。ヘリポートまで急がなきゃいけないのでしょう?」
「…あ、そうだった。」
 おいおい。しっかりしなさい、護衛官。
(苦笑)



 シートの下、予備のヘルメットを出してもらって王子にかぶせ、ゾロは…傍らに停めてあった別のバイクのやはりシート下からヘルメットを無断借用。ノーヘルで見とがめられては困るからと思ってのことらしかったが、
"…既に法規違反の三人乗りなんだけどもね。"
 さすがは戦闘工作員。偏ってますな、感覚が。
(笑) その、変則三人乗りにて辿り着いたヘリポート。バイクだったのが幸いし、案外と素早く到着出来たがそれでも事態は動いていた。既に機動隊らしき特殊車輛が乗りつけてはいたが、通報して到着したばかりという感が否めない。人だかりはまだ薄いが、それでもただならぬ空気が周辺には満ち始めていて、
「…っ、撃ち合いが始まってるみたいね。」
 停止させたオートバイのアイドリングの低音をつんざいて、パンパン…っという乾いた音がした。ぱたらたたた…とばかりに連続した音もあるところからして、自動機銃も持ち出されている様子。
「微妙なとこだな。」
 何がどう"微妙"なんだか。ゾロはそんな言いようをしつつ、後部座席から降り立って、前に抱えていたルフィをひょいっと抱き降ろす。敷地すれすれ、フェンスのすぐ外。封鎖用のバーを渡しながら入り口にいた係官がこちらに気づき、少し尖った"来るな"という顔を仕掛かって、だが。ヘルメットの下から現れた…ルフィやナミという顔触れにあらためて気づいたらしい。半分驚いたような顔をして動きが止まったのへ、こちらからも苦笑を向けて、
「どうするの?」
 ナミが聞いたのへ、
「このバイク、借りて良いかな。」
 ゾロが応じた。ヘルメットにつぶされかかったブロウを直そうとしてか、みかん色の髪をふるふるっと揺すったナミは、
「…出来るだけ壊さないでよね。」
 くすくすと笑ってそんなことを言い出す機転の良さよ。シートから降り立った彼女からハンドルを譲り受け、
「ルフィ、此処で待ってな。」
 ゾロの響きのいい声ははっきりと届いた。
「…っ。」
 何か言いかけた王子だが、
「約束を忘れたか? 俺の指示に従う。そうだったよな?」
 さすがにこれ以上の危険地帯には連れて行けるものではない。何か言いたげな顔の彼をナミの腕へと託し、
「まあ、待ってな。あと1時間もかからない。助け出した隋臣長に、一番最初に会わせてやるからさ。」



            ◇



 所轄警察へは、ヘリポートからの連絡よりも王宮からの通報の方が早かった。ルフィ第二王子の側近、ウソップという侍従官からの王室専用回線を使った緊急通達で、銃器携帯の恐れがある一味が、ルフィ王子の隋臣長を人質に国外脱出を企てているというもの。詳細はファックスにて届けられ、こちらへ向かう道行きの中でそれを読み込んだ部隊長であり、
"ルフィ王子の隋臣長といえば…。"
 金髪碧眼、長身痩躯。もっと幼き頃からのずっと、愛くるしい王子様の傍らに必ず控えておられる美丈夫で、聡明そうな優雅な身振りなぞも相俟って、秘かに女性ファンも少なくはなく、下手なアイドルや俳優よりよほど人気の高い、この国では知らぬ者はないほどの有名人だ。
"無茶なことをする犯人だよな。"
 国外から来た人間にはそういう事情が今一つ判らなかったのだろうが、例えて言うなら…キムタクや Kinki・kidsをいきなり掻っ攫ったようなもの。
おいおい キアヌ=リーブスやブラピの方が分かりやすかったかな?こらこら
「隊長殿、全員装甲車から降車致しましたっ。」
 隊列を組み、問題のブイトールの周囲を取り囲みにかかる隊員たち。その班長らしき士官が報告にと飛んで来た。
「現在の状況は?」
「はっ! 犯人は2番ポートに籠城中とのことでありますっ。」
 開けた場所に"籠城"というのも妙な言い方だが、人質を盾に立て籠っているには違いない。こんな物騒な騒ぎはそうそう滅多に起こらぬ国。年の若い班長さんは、少しばかり血気に逸
はやってか語気が荒く、興奮してもいる模様。意気込むのもほどほどになと、部隊長さんから宥められつつ、
「偽名にて予約したブイトールに乗り込んだところを、王宮からの阻止行為にて離陸不能状態にされたということで。」
「…うん、それは私も聞いている。」
 此処から見えないではないとはいえ、遥か彼方の空遠く、凄まじい距離がある王宮から一体どんな方法を使ったのやら。遠隔操作出来る何かを前以て設置しておいた…なんて都合の良いものではなかろうし。
"ただ性能が良い銃砲があったからといって、それだけでどうにかなることではなかろうに。"
 まさか…某国がちょいと前まで展開していたところの、ICBMとかいう、衛星に装備された戦略兵器のような。コンピューター制御のレイザー銃か何かを密かに準備されてでもいたのだろうかと、SF小説のようなものを想像し、それこそ"まさかな馬鹿馬鹿しい"と振り払ったその時だ。
「…あっ、こらっ待てっ!」
 後方で何やらざわめいたかなと気づいたのとほぼ同時、制止する甲高い声が上がり、その輪郭を掻き消して、


   ――― ヴァンンっっ!!


 一際高い咆哮が唸ったかと思ったその次の瞬間には、鋼鉄の巨体が陽射しを遮って、隊列の上、高々と宙へと舞い上がる。
「ひえぇぇっっ!!」
 咄嗟に頭をかばって伏せた隊員たちを見事に飛び越え、最前列へ飛び出したオートバイ。操っているのは…ライダースーツでも着ていればともかく、本当にそこいらの銀行や郵便局の窓口にでも座っていそうな服装の"一般人"風の青年だ。ネクタイを肩の向こうへとなびかせながら、だが、あれだけの大型バイクをああまで楽々と操り牛耳る腕力は相当なものな筈で。ヘリコプターやブィトールの発着用にときれいに舗装整備された大地に着地したその瞬間、ぎゃう・きゅきゅきゅきゅ…っと独特の軋むような音を立ててタイヤのゴムがアスファルトを咬んだのを、やはり難無くねじ伏せて車体を立て直す。ネクタイの陰になって紛れていたが、たいそう広いその肩口には拳銃のホルスターらしきベルトが見えて。それをそうと確認した瞬間は"ぎょっ"としたが、
「………おや。」
 ふと。隊長はそのライダーの何かに気づいた。かっちり地味ないで立ちなのに、大型バイクに全く引けを取っていないご立派な引き締まった体躯。大きな背中のその後ろ姿に、何だか何処かで見覚えがあるような。
"あれは…。"
 飛び込んで来たその方向を肩越しに振り返ると、随分と離れた辺りに、小さな人影が二人分。それで…心当たりが"確信"に変わったらしくて。
「部隊長殿っ! あれはっ!」
 取り押さえましょうかっと勢い込んで駆け寄って来た補佐官へ、苦笑を向けた。
「いや。我々は待機だ。彼の援護に回る。」
「はい?」
 ぽかんとした若い部下へ部隊長は苦笑する。
「通達を受けとらんのか? 公安日報はちゃんと読んでおけよ、補佐官。あれは"いるけどいない護衛官殿"だ。」
「………あ。」
 あらら。一応、国内の"その筋"では通達が回っていたのね。
(笑)




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 *さあいよいよ、ちょいと苦手な乱闘シーンでございます。
  これを乗り切らんことにはサンジさんがいつまでも出てこられません。
(笑)
  頑張りますので、しばらくほどお待ちくださいませね?