ロロノア家の人々
     
温泉に行こう!U C  “Tea time”より


        



 お初の露天風呂を堪能したお子たちは、勿論のこと、はしゃぐばかりでなく髪も体もしっかり洗ってもらい。頬っぺもピカピカ、頭から湯気が立つほどほかほかと温もって、カラコロと下駄を鳴らしもって帰って来たお宿の離れ。そこには…大きな膳卓に溢れんばかり、すっかりと夕餉の支度が整っていた。しかも、
「わあっ、栗ごはんだ。」
 お茶椀へたっぷりとよそわれたのは、ぺかぺかのご飯にほくほくの黄金栗が、幾つも幾つも隠れ損ねて頭やお腹を見せている、炊きたての栗ごはんだったものだから、お子たち二人がつい興奮。
「これ、今日拾って来た栗なの?」
「いいや、違うよ。栗は案外とアクが強いからね。皮をむいて一晩は水につけとかなきゃあね。」
「アク?」
「ああ。臭みだったり、食べると口の中がイガイガって苦い膜が張ったみたいになったりしてね。そのままじゃ美味しくないから水や灰につけて抜くんだよ。」
「ふぅ〜ん。」
「今日拾って来た分は、お家に持って帰ってツタに炊いてもらいな。ツタはお菓子も一杯知ってるからね。栗ようかんとか砂糖漬けとか作ってくれるだろうしね。」
「うんっっ!」
 他にもなかなかの豪勢な品々が"これでもかっ"と並んでいる。里芋やギンナン、くわいにシメジなど山の幸一杯の吹き寄せに、大きな鱒(ます)の奉書焼き。ワカサギの唐揚げを甘酢に漬けた南蛮漬けに、小ブナの甘露煮、鹿肉の串焼き。サワガニの素揚げ、野草のてんぷらにナスの煮びたしと野鷄のそぼろ掛け。酢蓮、きんとん。猪肉とタケノコとキノコの甘辛炒り煮の具が一杯詰まった包子
(パオズ)。けんちん汁に茶椀蒸し、おこわの揚げ春巻き…等々と。種類も量も半端ではない。それをこれまた、見ていて気持ちが良いくらいの勢いで片っ端から平らげてゆく、揃って健啖家な一家なものだから、それはにぎやかで明るい食卓で。とはいえ、ゴマ団子と冷やした蜜柑の寒天をデザート代わりにと運んで来た頃合いには、子供たちもどこかとろとろと眠そうなお顔になっていた。それを見やって、
「眠たそうだね。お床を延べようか?」
 お揃いのパジャマの上に袖のない半纏という可愛らしい恰好の二人へと、シマさんが声をかけると、
「平気だもんっ!」
「まだ起っきしてるもん。」
 お返事の威勢はまだまだお元気。一杯一杯"楽しい初めて"を体験した、その興奮状態が未だ覚めやらないのだろう。引き寄せられていたお膝近くに凭れかかって、小さな顎を反っくり返すように自分の頭のその真上を見上げた坊やが、
「お母さん、お風呂大きかったのに平気だったね。」
 ルフィへとそんなことを聞く。だって、怖いもの知らずのお元気な母だが、舟幽霊というお化けと水に浸かるのだけは怖いんだと知っている。悪魔の実の呪いのかかってる海でなくとも、川や池みたいな真水でも、深いと何だか力が抜けるそうで。なのに、今日、皆で入ったプールみたいな大きなお風呂では平気なお顔をしていたから、子供たちにはちょこっと意外だったのだろう。自分の懐ろという間近から案じられて、
「おうっ。ここのお風呂には慣れてるからな。それに、皆と一緒だったから平気だったぞ。」
 元気に応じるルフィだが、
「おや、あんたカナヅチなのかい?」
 シマさんは知らなかったらしくて、キョトンとして見せる。今も昔もそれはそれはお元気な奥方だし、ツタさんからも言伝てをもらっていなかったらしい。ある程度は"プライバー"の範囲であり、微に入り細に入りと何もかも把握する必要はないのだが、露天の温泉を勧めるにあたってはやはり必要な情報だろうからで、
「そうなのよ、シマさん。」
「木登りも駆けっこも逆立ちも、何でも上手に出来るけど、泳ぐのだけはダメなんだよね。」
 子供たちが…本人たちは本気も本気、さも重大な内緒事であるかのように、こそこそと声をひそめて言うものだから。そんな様子が何だか却って可笑しくて、
「そうかい。それは大変だねぇ。」
 眉をぐっと顰
ひそめて見せて、こちらは芝居っ気たっぷりに話の調子を合わせてやるシマさんもなかなかお茶目だ。(笑) それへと、
「周り全部が海ってトコに居たんだのにな。」
 否定はしないがそんなに大層なことじゃあないよん、と、当の本人はからから笑っている。しかも、
「落っこちると、ゾロにいっつも助けてもらってたし。」
 そんな風に付け足したものだから、
「おやおや、おのろけかい。」
 相変わらず仲が良いことと、くすくす笑ったシマさんだった。ところが、
「おのろけ?」
 これが子供たちには耳慣れない言葉だったらしくって。言われた両親もちょこっと釣られて笑った一言だったから、さぞかし楽しい言葉なのだろうと敏感に察して知りたがる。うんうん、こうやって子供は成長してゆくんだねぇ。
こらこら
「ああ、えっと。」
 訊かれたシマさんは、だが、さして困りもせずに、
「お母さんたちみたいなご夫婦なんかが、そりゃあ仲が良いってのを皆に自慢することだよ?」
 あっけらかんと見事なお答えを返すからおサスガだ。そういう機転は客商売で鍛えられているというところか。子供たちとシマさんの何だか愉快なやりとりに、だが、ルフィやゾロが微笑ましげな顔をしていられたのもここまでの話で。
「うふふvv それならいっつもよね、お母さん。」
「そうだよね。仲良いもんね。」
 選りにも選って子供たちがくすくすと笑ってそんな風に続け、お話がこちらへ向けて展開したものだから、
「あやあや…/////。」
 おやおやvv 案外とおませさんなお子たちだ。ご両親、他人事のようにのんびりと傍観者ではいられなくなって来たぞ? しかも、そこへと訊かれたのが、


   「ねえねえ、お父さんとお母さんは、どうして結婚したの?」

   「……………え?/////」×2


「な、ななな、なにをいきなり、そんなこときくんだ、おまえたち。」
「ルフィ、落ち着け。台詞、平仮名だぞ、お前。」
「ゾロだって。ぜんぶ単語でしゃべってるってばさ。」
 だから落ち着け、ご両人。
(笑) 両親のわたわたとした慌てっぷりには気がつかないのか、
「お姫様だったお母さんを攫っていったサメのお化けを、お父さんが三刀流で退治したのよね?」
 みおちゃんがそんなことを言い出せば、
「違うぞ、お父さんが釣り上げた大きな大きなクジラのお腹の中に、お母さんがお船ごと呑まれてたんだよね?」
 お兄ちゃんが力強く…えらいことを言い返すから、
「…おいおい。」
 どうやら"海のお話"がごっちゃになっている模様。
「お兄ちゃんのは違うよね。」
「俺のが合ってんだって。お母さんのお話に出て来るお姫様はビビって人だけだぞ?」
「それだったらクジラさんのお話だって。お船ごと飲み込まれちゃったのはお父さんの方なんだからね。お母さんはそれを追っかけてって助けたのよ。」
「違うってばっ。」
「そうなのっ。」
 …ああ、成程。それぞれがそれぞれに違うシチュエーションで考えてたのを、お互い相容れ合わず。納得が行かないままでいたもんだから、この機会にいっそご本人たちに白黒つけてもらいたくなったんだな。それにしたって…これはまた。
"…お姫様はないと思うが。"
 ですよねぇ。だって、いくら可愛らしい童顔に細っこいお姿なままの彼だとはいえ、昔は…宴会だといえば鼻割り箸から腹踊りまでそりゃあ剽軽にこなしたお調子者だったし、今だって猪退治から裏山までの下駄飛ばしなどなど、そりゃあもう破天荒なまでにお元気なお母さんなのに。子供のイメージとはいえ、略奪されたお姫様という型にどうやって嵌めたのかが不思議だし。それに、片やの方にしても…鯨の腹の中に大人しく飲まれている母上だろうか。まま、アラ探しはともかく。
「どうしてって言われてもなぁ…。」
 多少は劇的だったかもしれないが、それでも彼らが例えに挙げたようなロマンチックな
出会いでは到底なかったし。ましてや、その出会いの瞬間に恋に落ちたという彼らでもない。日々のあれこれが少しずつ積み上げられて育った微妙な代物、一口には説明出来ないし、それより何より。そんな浮いた話を誰かに話せるような柄ではないと、大きな手の中、ぐい飲みをもてあそびつつ、照れたように頭を掻いて見せる父御の丁度お向かい。子供たちの間に挟まって、お食事の面倒を…見てか見られてか(相変わらず、里芋には箸から逃げられているので/笑)、言い争いの余燼からぷくーっと膨れているお子たちをお膝に寄り掛からせていた母御が、ふと、
「んん、ううん・うん。」
と小さな咳払いをする。そして、
「ゾロと母ちゃんが同じ船に乗ってたのは前に話したよな?」
 おもむろに。何をか語ろうとするものだから、
「うん。」
「"ぐらんどらいん"にいたのよね?」
 子供たちも"覚えてるもん"との相槌を打つ。
「そうだ。そいで、だ。」
 深刻そうなお話になりそうなのか、何だか鹿爪らしい顔付きや声になる彼であり、
「………。」
 周囲もつられて、ついつい息を飲んで聞き入らんという態勢。それを見回してから、
「えっとな、母ちゃんは最初から"船長さん"になりたかったから、大きな船に乗り込むんじゃなく、一人で航海しながらまずは仲間集めをしてたんだ。そいで、一番最初に仲間になってくれって誘ったのがゾロだったんだ。」
 何とも子供っぽい語りよう。何も、話して聞かせる相手が子供だから、ではない。こういうことへも相変わらずの不器用者で、
"…そうだったよな。"
 拙い言い回しだが、それに間違いはないとばかり、ゾロもかっちりとした口許の端を上げて小さく笑っている。本来ならば、まずは大きな船に乗り込み、そこで実力なり名前なりを上げてゆき、やがて気の合う仲間を募って、新しい旗印の下に自分たちの船団を旗揚げするもの。だというのに、

   『海賊王を目指そうって言うんだ。
    もうかなりの頭数が集まっているんだろう?』
   『いいや、二人だ。』
   『はあ? …俺とお前だけか?
    たった二人で海賊団を名乗ろうっていうのかよ?』
   『良いじゃん。俺たち強いんだし♪』

 何度思い出しても苦笑が洩れる、これがあの、世界にその名を轟かせた"麦ワラ海賊団"の一番最初、結成&旗揚げに至った時のエピソードなのである。何とも物知らずな、そして大胆な船出をした人たちであったことか。そんなこんなを思い出しているゾロに構わず、ルフィの"お話"は続いた。
「母ちゃんはさ、すぐにもゾロのことが凄く好きになったんだ。強いしカッコいいし、頼もしいしサ。それに…何てのかな、気が合うのが嬉しくてさ。俺が面白そうだって思ったこと、全部が全部同じように好きになった訳じゃないんだろうけど。俺がやりたいって思うだろなっていうのはすぐに判ってくれたし、しょうがねぇなって言いながらも、やりたいことやりたいようにさせてくれたし。」
 ちょっぴり含羞
はにかみつつの告白に、
「………。」
 父上本人はちょいとそっぽを向き、
「お父さん、やさしいもんvv」
 父御贔屓のみおちゃんが"うんうん"と頷いて。
「けどな、ゾロには大剣豪になるっていう野望があったからさ。」
 ルフィは静かにそうと言葉を継いで、
「男なのに男に好かれるのもさ、迷惑なのかもしんないって思ってさ。そいだから母ちゃんはさ、ずっと一緒だって約束してたんだけどもう良いからねって。そんな約束、気にしないで良いよって言ったんだ。」

   「……………。」

 何だかしんみり、皆もつい黙り込む。約束って大事なことだのに、諦めなきゃいけなくなった。大好きだから、だから解放してあげなきゃって思ったお母さん。

  "もう良いからね""気にしないで良いよ"

 切ない言葉だ。とっても元気で明るくて、心配したり膨れたりすることはあっても、絶対しょげないお母さんしか知らなかったから。坊やもお嬢ちゃんも、そぉっとそぉっとお母さんのお顔をのぞき込む。すると、

  「そしたらサ。ゾロも母ちゃんのこと好きだったんだよって言ってくれたんだ。」

 ふふふふふ…vv この辺はお懐かしい『
虹のあとさき』参照ですなvvこらこら

   「「わあvv」」

 よくよく考えたなら…今こうしてたいそう仲が良い二人なのだから袂を分かったままである筈はないのだが、そこが子供で。息を詰めるほど本気で心配していたからこそ、それは高らかで何とも明るい、安堵の想いを込めての歓声が上がった。自分の両親が、それもこちらからも大好きでとても素敵な二人が、いつまでもまろやかに仲がいいというのは子供にとっても嬉しい宝。殊に、どこか子供っぽいところの多い母上には"お友達"や"兄弟"というよな感覚も抱きやすく。なればこそ、シヤワセいっぱいだというお顔をしているのを見るのも、お子たちには身に迫って嬉しいことなのだろう。………で、

   「……………。」

 話の間中、黙ってぐい飲みを傾けていた父御の方が。ただ照れているのかと思いきや、
「ちょっと待て。」
 ふと、口を開いた。
「んん?」
「その話、順番が違うぞ。」
「どこがだ?」
「だから。好きになったのは俺の方が先だ。」

   ………はい?

「とんでもねぇ奴だなって思ってたのが、面白い奴だなって変わってって。そこから"好きだな"って思うまでにはそんな時間はかからんかったんだ。だから俺の方が先だ。」
 …お父さん、酔ってませんか?
「違うもん。俺の方が先。だって、こっちからわざわざ会いに行ったんだぜ?」
「それは仲間にしたかったからってだけだろうがよ。」
「行った理由はそうだったけど。姿見て、喋ってみて、絶対に仲間にするんだって決めたんだから、好きになったのも俺の方が先。」
「そうかな。お前、ウソップだのコックだの、次々に仲間を見つけちゃあ口説くのに急がしそうだったじゃねぇかよ。」
「それは…だから"仲間"としてじゃないか。ゾロを好きって思うようになったのとは種類が違うもんっ。」
 何だか二人の口調が強く大きくなって来た。言い負かされるものかという勢いが増して、傍で聞いているとこれは正しく口喧嘩の様相。
「あやや。」
「えっと…。」
 何だか雲行きが怪しくなってしまった。これが初めてだという訳ではない。ホントの時たま、こういうちょこっとした言い合いをすることもある両親ではある。ただ、いつもだったらツタさんがニコニコと苦笑しながら割って入るのに、それで"はっ"と我に返る二人なのに。今の此処にはツタさんは居ない。ここに来てずっと、せっかくほこほこシヤワセだったのに、自分たちが持ち出したお話のせいで喧嘩になったのならこれは困ったなと、困惑気味に顔を見合わせた幼い子供たちだが、
「さ、あんたたちはこっちへおいで。」
 こそこそっとシマさんが声をかけて来て。その手招きに誘われて、身を乗り出しているルフィの傍らから、とりあえずは"そぉっ"と離れた二人だった。
「どうしよう、シマさん。」
 廊下まで出てそう訊くと、だが、シマさんはけろりと澄ましたお顔でいる。
「良いんだよ、こういう喧嘩はね。」
「だってさ…。」
 罵り合うという代物ではないものの、自分の方が正しいぞと強く言い放って譲り合わない二人には違いなくって。背後の障子を肩越しに見やって、心配だという顔になるお子たちへ、シマさんは"くくっ"と笑うと言葉を重ねた。
「仲が良いからっていう言い合いだから心配は要らないよ。子供たちの前で始めちゃったのはいけないことだがね、それだけ"自分の方が好き"って気持ちが強いんだ。判るね? 好きの言い合いなんだから、心配するこたないんだよ。」
 そだね。どっちが先に好きになったのか…なんてのは、バージョン違いのやっぱり"おのろけ"にすぎないからねぇ。
「あんたたちはこっちで、そうさね、幻燈機があるけど見るかい? ネズミーランドの紙芝居のが幾つかあるよ?」
 幻燈機…今で言う"スライド映写機"のことである。
「わあっ。」
「見たいっ。」
「じゃあ、しばらくはおばちゃんトコに居ようね? なに、収まったら今度は、あんたたちが居ないってビックリして、青くなって探しに来るさ。」
 離れのお部屋を取り囲む回り廊下の端から庭ばきを突っかけて、少し冷えて来たお庭に静かに降り立つ。木々や飛び石が濡れたように光って明るいのは、夜空に真ん丸に程近い見事な月が出ていたからで、
「大っきい…。」
 ぽかんと見上げたお嬢ちゃんの横から、
「ねえねえ、シマさん。」
 坊やがこそっと訊いて来る。
「なんだい?」
「イチョウの木もそうだけど、ここだと何でも大きくなるの?」
「なんでも?」
「うん。大町のオミアゲの甘栗ももっとずっと小さかったもん。同んなじ栗じゃないのでしょう? そいで、お月さんもあんなに大きいもん。」
 天空に浮かぶ金色のお盆を指さす坊やである。お庭に植えられてある木々のすぐ上に見えたから、それとの比較のようになり、自分の知ってる…何にもないお空の真ん中に見るお月様よりも何だか大きく見えたのだろう。
「ああ、あはは。そう見えるかい?」
「うん。」
 真面目なお顔で訊いてくるから、シマさんとしては…ちょこっと思案。そして、
「イチョウや栗はともかく、お月さんは同んなじなんだけれどねぇ。」
 やさしいお声でそうと言った。
「あんたたちのお父さんやお母さん。優しくて楽しい人達だけれど、例えば道場の生徒さんから見ればちょっとは怖い師範なんだろう? お母さんだって、いざって時は頼もしいんだろ?」
「えと…どうかな。」
 大好きなお父さんが"怖い"とは思えないみおちゃんが首を傾げている横で、
「お母さんはカッコいいよ?」
 お兄ちゃんが嬉しそうに言う。
「ほら、タケんとこのシバが凄く吠える怖い犬だったのにさ、お母さんが"お前も大変だな、怖がらせるのが仕事なんだもんな"って話しかけたら、お母さんと俺らには吠えなくなったろ?」
 自分たちにはそれで十分通じる話だからか、どこか省略の多い言い方であり、
"…ふ〜ん。"
 シマさんにも何とか通じはした模様。つまり、彼らのお友達のタケくんのお家のシバという名前の犬が、恐らくは子供たちにもよく吠える怖い犬だったのだろう。
「そうだろ? それと一緒だよ。お月さんはどこのも同じ。見る人の方が違うから違って見えるだけ。」
 にっこり笑って、
「此処じゃあなくても大きくなるよ。たくさん食べて、お父さんやお母さんやみおちゃんや、お友達とも仲良く元気に遊んでいればね。」
 そうと付け足す。と、途端に、
「あやや…。」
 坊やが恥ずかしそうに笑って見せた。どうやら…早く大っきくなりたかったお兄ちゃんだったらしい。
「さ、急いで行こうな。お外はもう寒いから風邪ひくよ。」
 小声でお子たちを促して、母屋のほうへと向かいつつ、
"そっか。やっぱり奥さんは男の子だったのか。"
 …はい? シマさん?
"ツタから聞いてはいたけどさ。あんな可愛い子だものね。"
 もしかして。こんなにも長いこと、どっちだか気づかないままにお付き合いしてたのね。やっぱ大物だわ、シマさんたら。
(笑)

 人の気配もやがては静まり、萩や南天の茂った庭先へと、虫たちの鳴き声が静かに静かに戻って来た、秋の夜長の宵の口。さらさらに透き通った夜陰の中を、音もなく流れてゆく"時間"のせせらぎを、海でも陸でも"同んなじ"の、丸ぁるい月が見下ろすばかり…。





     momi1.gif おまけ
momi1.gif


  「…ルーフィイ。」
  「何だよっ。」
  「子供たち、どうした。」
  「え? …あっ。あれっ?!」
  「(くす…)さっきシマさんが連れてったぞ?」
  「え? どうして?」
  「親ののろけや痴話ゲンカは、まだ早いってコトだろな。
(苦笑)
  「(むむう)…そだぞ。
   ツタさんが言ってたぞ、子供の前でケンカする親はサイテーだって。」
  「そうだな。気をつけないとな。
   いくら仲が良いからだとはいえ、ケンカはケンカだものな。」
  「…………えと。/////
  「ここんとこ、ずっと言ってなかったな。」
  「…何が?」
  「好きだぞ。」
  「…………………………うん。俺も大好きだvv」



      お後がよろしいようでvv




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  〜Fine〜  02.9.23.〜10.6.


  *カウンター38000hit リクエスト
    SAMI様『ロロノア家、子供達が小さい頃の設定で、秋の行事を』


  *お待たせして申し訳ありません。
   相変わらず、何か変な、けどでも幸せな御一家でございます。
   随分と欲張って、秋の行楽をこれでもかと詰め込みましたが、
   彼らには何が束になって来ようと"どんなもんだい"と、
   あっさりクリアして なお物足らない、
   そんな扱いになるみたいでございます。
   こんなですが、少しでもお楽しみいただければ幸いです。

  *………で。
   どういう弾みか、それともそういう周期だったか、
   今回ちょろっと、裏ページものがあったり致します。
   勢い余って"R-15"ですので、いつものところには繋いでおりません。
   読みたいという方は探してみて下さいませですvv
    (ヒント;秋ですねぇ。)