でもネ やっぱりキミが好き♪
      〜かぐわしきは 君の… 7

 

     幕間



 清楚で甘い、それは芳しい匂いは
 果たしてどちらから香り立っているものか。


すっかり油断していた、いやさ、
警戒なんてする必要なぞない相手だと思っていたからこその
文字通り 不意を突かれてのこと。
少しほど寝乱れた寝具の中へ、
あっと言う間に組み敷かれているブッダ様であり。
力ではなく、何かしらの要領の良さでコロンと転がされたらしく、
強引な仕儀とは思えぬほどに軽やかに、
それは優しく鮮やかに処された扱い相手では、
憤りも怒りも ちいとも沸かぬ。
それに、

  あっと言う間にこの身をくるんだ存在は、
  優しい“夜”であり、無邪気な“昼”でもあったから

 「……。///////」

見上げた視野をすっかりと覆い、
頭上にあった明かりを遮った翳りは、
彼のその広い肩幅や懐ろ、
俯いたがため頬から下へと垂れた、濃い色の髪が成したものだったから。
驚きこそしたけれど、不安は一向に沸かなくて。
のぞき込むのにと立てていた肘を突付かれてバランスを崩され、
ぱふりと落ちた先にて ぎゅうと抱き込まれた腕や胸元の感触は、
そのまま彼との密着でもあり。
トレーナー越しの温みと仄かなバラの匂いは
朗らかなお陽様を想起させ、むしろ安堵を誘うそれ。
そう、押し倒されたというよりも、
くるんと上手に回って 体の位置を入れ替えられただけのことであり。
それだけならば、単なる悪ふざけの域でしかなくて。

  ただ、それらを後追いするよに把握していたさなかの身へと
  文字通り 降って来た悪戯っぽいキスだけは、
  まさに想いも拠らぬことだったので

唇が解放されても、
後背の明かりとの拮抗で、
長い髪に縁取られたその表情が すぐには読み取れなかったこともあり。
相手の思惑も判らず、しばし呆然としていたブッダだったが。

 「……もう。///////」

ほんのすぐそこから見下ろして来るイエスの表情が、
何とも言えぬ、それは柔らかな笑顔だと見て取れて。
屈託のないそのお顔から、
一連の所業は単なる甘えから出た単なる悪戯だと判り、

 「びっくりするだろう?」

窘めるような言いようをしつつ、
ゆっくりと手を伸ばし、薄い頬へと触れる。
そんなブッダの手を捕まえて、
そのまま自分の頬へと押し当てるよにして伏せつつ、

 「それはこっちの台詞です。」

拗ねてるんだよと言いたげな
わざとらしくも四角い言い回しが返って来て。

 「目が覚めたらコタツじゃなくて布団にいるし。
  それにブッダもいないんだもの。」

今宵もコタツの定位置で、肘を枕に横になってたはずが、
いつの間にやら うたた寝していたようで。
ふっと意識が戻ったら、
どうしてだろか きちんと敷かれた自分の布団の中にいたのは、
でもね、すぐには不審に思わなかったこと。
きっと寝ぼけていたからだろう、
寝ていたことと布団という組み合わせに違和感はなかったのだけれど、

 ただ、明かりが煌々と灯っているのに、
 誰もいないのはおかしいと、それへはすぐさま気がついて。

要は、コタツはともかく、
自分一人だったことを不満だと憤慨しているイエスであり。
だから悪ふざけをしたのだと、彼なりの正当性を主張するのへと、

 「うん。それはごめん。」

きめが細かくて質のいい蝋のよに、
内へ淡い光を沈めているような、麗しの白い肌におおわれた清楚な美貌。
慈愛の微笑がいや映える、深瑠璃の双眸に、桜色の唇…という、
天界にも稀なる嫋やかな風貌でありながら、
実は…象が投げられる本領を発揮なさったらしい如来様。
あれほど言ったのに、
またまたコタツに当たったままで寝入ったイエスにやれやれと苦笑をし。
布団を敷きつつ、コタツごとじりじりとイエスにも移動いただいて。
最後はひょいと、愛しのダーリンを余裕で抱え上げ、
寝床へ移動させまでしての それから、

 「物干しへタオルを干しっぱにしてたの忘れてて、取りに行ってたの。」

夜中に干したままにしておくのはだらしないしと、
耳の痛いことを仰せのブッダ様で。
ほんの3分も掛かってないよ?とのお言葉にも嘘はあるまい。

 「一人でコタツ片付けて布団敷いたの?」
 「うん。」
 「起こしてくれたら良かったのに。」
 「一応は声掛けたんだよ?」

愛しい愛しいという呪文が聞こえそうなほど
さわさわと優しく囁きあってた二人だが、

  ……どんな風に?
  え?

低められた声で訊かれたブッダ様。
訊き返しつつ見上げたイエスの玻璃の眸は、
かすかに細められていて。

  ねぇ、どんな風に?

少し身を伏せて来たものか、男らしい造作のお顔が近づく。
内緒話でもするように、その声はますますと低められ、
愛しいものを殊更に愛でるような、含み笑いを思わす眼差しがくすぐったい。
近くなった肩口へ、包み込むように手を当てて、

  イエス起きて、風邪引いちゃうよ、って。

ほんの先程、彼へと掛けた声を、
こちらも少し低めた声で繰り返し囁けば、

  わたし、風邪は引かないよ?

ふふと微笑ってお約束の言いようをし、
その言とは関係なく、その身がますますと降りてくる。

  判ってるけど、何となく。

鼻先がくっつきそうなほど近づいたお顔へ、
でもお互いに視線は逸らさぬまま。
相手の瞳へうっとりと
見入ってしまうところまでお揃いでおれば。

  「…?」

小さな瞬きが“いぃい?”と訊くから、
こちらは双眸を軽く伏せ、口許で緩く弧を描く。

 少しずつ吐息が近づいて来て
 少しずつ胸と胸とが重なり合って

多少は加減をしてくれていても、
唇同士を合わせようというのなら、
その身は重なり合わざるを得なくって。
敏感な唇へとやわらかな刺激が降る直前、
投げ出された格好になっていた手が片方、
イエスの長い指に搦め捕られたのは少し意外。
寝起きだからか、随分と暖かく、
キスと同時にそんな悪戯まで出来るなんてと、
一瞬 翻弄されてのこと、
唇が薄く開いたその隙、掬い上げるよに咥え込まれた。
少し開いたそれ同士、
深く合わさり、蹂躙されて。
吐息を混ぜ合わせながら、
やわらかな其処も此処もと喰まれてゆくのが、
くすぐったくて…気持ちが良くて。

 「………。///////」

こちらからも空いてた手を延べ、背中へ掴まれば、

 「〜〜〜。//////」
 「…笑わないの。///////」

キスのさなかにそれはないでしょと、
やはり さなかに窘めるのもどうかだったけれど。//////
口づけだけでは足りなくなって、
もっと欲しくて ぎゅうとしただけなんだのに。//////

  …ごめん。
  ん、んん、やぁ。///////

言葉を紡げば、その刹那 唇が離れる。
それが やぁだと甘える、かわいらしい如来様なのが、
イエスには胸が煮えるほど嬉しかったし愛おしかったけれど。

 「…は…。//////」

うっすら開いた深瑠璃の眸が、
のぞき込む玻璃の視線と合わさって、

 「あ…。//////」

やっと今、
衝動的に甘えてしまったその態度へと、
なんて恥ずかしい…という理性が追いついたようで。
視線がせわしく揺れ、目許が鮮やかに朱に染まる。

  大丈夫。
  ……え?///////

だぁれも見てないんだもの、大丈夫と。
間近だけれど、いつの間にか少し離れていたイエスが、
ふふとその口許をおヒゲごと弧に曲げる。
肩先や頬から真下へと、降り落ちている髪が、
そう、イエスの長い髪が、
丁度ブッダの顔もそのカーテンの陰へと隠しているから。

  ちょっとえっちだったブッダのお顔も甘い声も、
  わたししか見ちゃあいないし、聞いちゃいないから大丈夫。

  〜〜〜〜〜っ。////////


睦言にしては…それこそちょっぴり甘すぎて。
つか、間違いなく一言多かったせいだろう。(笑)
真っ赤に熟れた釈迦牟尼様のお顔をもっと隠したいかのように、
その螺髪が ぶわとほどけてあふれ出し。
あれまあと驚いたヨシュア様が見下ろす先で、
知らない知らない//////と
微妙にイエス様にも因縁のある言いようを紡ぎつつ、
蓮の花のように綺麗な御手にて、
そのお顔を覆ってしまったブッダ様だったのでありました。






    お題番外 “ごろごろvv”




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  *こっ、こここんな傾向のを
   拍手お礼にしたらまずかろうということで。
   本編の途中ですが、幕間としての割り込みでございます。
   甘えたなイエス様が続いたので、
   ちょっと本気出してみましたvv(何のだ)笑
   こんな感じでしたかね、通常運転のイエス様♪


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