ベルニナ・ディアヴォレッツァへ

 昨日の夕方の空を見て今日の快晴を確信したので、サンモリッツ滞在中のメインに、と考えていたベルニナ・ディアヴォレッツァの展望台とハイキングはこの日しかない、と思っていた。ガイドブックによると、太陽の向きの関係上、この展望台は午前中がおすすめ、とのことなので、5時半に目覚ましをかけた。朝目が覚めて窓を開けてみると、思ったとおりの晴天。よし、と気合いを入れてさっさと身支度を整え、レストランがオープンする7時を待って朝食。レストランにはまだ誰もいなかった。

雲ひとつない快晴の朝です。 朝食のレストランは7時からなんですが、一番
乗りでした。
ハイキングに備えてしっかり食べなきゃ!
ミューズリーにフルーツをたっぷりのせて

 すばやく食事を済ませ、荷物の確認。これから登ろうとしている展望台は標高2984mのところにある。いくら真夏と言えども、今いる地点よりも1000m以上登るわけだし、このサンモリッツでさえも朝晩は長袖の上着が必要なくらい肌寒い。そこで、服装は半袖Tシャツの上に長袖Tシャツを着、ウインドブレーカーも着込んだ。そして、リュックにはトレーナーと軍手を入れた。もちろん、サングラスと帽子、日焼け止めやタオルも持った。そして、スイスパス、時刻表、携帯電話、カメラと電池と広角レンズ。水は駅のキオスクで調達する予定(後日わかったのだが、駅のキオスクで買うと高い! スーパーマーケットの2〜3倍します)。

 駅までは坂道をずっと下りて行けばいいだけなので、わかりやすい。まだ朝早いせいか、人影もまばらだし、空気が澄んでいて気持ちいい。ついにあの、写真で見た氷河や雪を頂いた山々に出会える、と思うと更に足取りも軽くなる。駅のキオスクでミネラルウオーターを買い、時刻表でホームを確認して移動する。既に電車は止まっていた。ドアの横についているボタンを押してみるとドアが開いたので、電車の中で出発を待つ。ここからベルニナ・ディアヴォレッツァまで約40分。車窓からの風景も楽しみだ。

サンモリッツ駅 時刻表でホームを確認します 箱根登山鉄道と姉妹鉄道なんですね。
8時45分発のティラノ行きの電車です、
という表示
この電車に乗ります
このボタンを押すとドアが開きます 豪華な雰囲気の1等車の車内 車窓から雪を頂いた山が見えてきました
ベルニナ・ディアヴォレッツァ駅に到着 小ぢんまりとした駅舎

 電車を降りるとロープウエイの乗り場はすぐ目の前。人の流れに乗ってチケット売り場に行き、スイスパスを提示して「割引になりますか?」ときいてみると、25%の割引になる、とのこと。ロープウエイのチケットは往復でCHF21(約1930円)。このロープウエイで山頂まで行けば氷河が見れるなんて、あたりを緑に覆われたこの駅の風景からは想像できない。しかし、ロープウエイに乗って登っていくと、どんどん風景が変わって行き、やがて残雪が見えてきて、そしてついに氷河がその姿を現した。

ここからロープウエイに乗ります。 ここでチケットを買います。 スイスパスの提示で25%の割引になります。
私が買ったのは往復のチケットです。
ロープウエイに乗り込みます。
氷河が見えてきた!

 山頂駅でロープウエイを降りると、さっきまでとは全然違う、ひんやりとした空気に包まれていた。レストランや土産物屋さんの入っている建物を通り抜けて外に一歩出た途端、私の目に飛び込んできたのは雪に覆われた山と、その山すそからまるでヴェールのように柔らかな曲線を描く氷河。普段から登山だとかハイキングの経験などほとんどない私にとっては、生まれて初めて見る風景だ。感動のあまり思わず「うわぁ〜〜〜」と声をあげてしまった。真夏に、しかもこんなに簡単にこのような風景に出会えるなんて、まるで現実の世界から一瞬にして別世界に飛んで来てしまったようだ。目の前に広がる景色に吸い込まれるように見入っているうち、ふと気付くと周りに人の姿はほとんどなくなっていた。同じロープウエイに乗って上がってきた人たちはみんな、ここを出発地点に歩いて移動を開始したらしい。私は展望台から先へ進み、ゴツゴツとした岩の上を渡って少し下へ降りてみた。歩きながら足元を見ると、むき出しの岩の間から小さな花がたくさん顔を覗かせているのを見つけた。こんな環境の中でも立派に花をつける植物の生命力に驚かされた。日当たりがよく、座り心地のよさそうな岩を見つけて腰を下ろし、改めて目の前の山々を眺めた。辺りはシーンと静まり返って物音ひとつしないし、私の視野には人の姿もない。標高4049mのベルニナアルプスの最高峰、ピッツ・ベルニナをはじめとする山々を独占しているような気分だ。月並みだけど、「本当に、ここまで来てよかった!」と自分の行動力を褒めてあげたくなった。

ロープウエイを降りると目の前にはこんな風景
が広がります!
ここの標高は2973mです。
3つのピークを持つピッツ・パリュー(3905m)
中央からやや左よりの三角形の山がベルニナ
アルプスの最高峰、ピッツ・ベルニナで標高は
4049m
氷河の拡大写真です。 ピュテウマ・オルビクラレという花
アルパイン・ムーン・デイジー
少し雪の上を歩いてみました。意外と柔らかく
てびっくり。
万一足を滑らせたらここを滑り落ちます…(汗)
何時間眺めていても飽きない風景です。

 結局そのまま1時間以上座り込んだまま山を眺めていた。そろそろ体が冷えてきたし、お腹も空いてきたので、山頂のレストランで昼食をとってから降りることにした。寒いけど、この風景をまだ眺めていたかったので、外のテーブルについた。注文したのは、これもHamuさんの情報で「グラピオン」という微炭酸の葡萄のジュースがおいしい、ということだったので、そのグラピオンと、冷えた体を温めるために赤ワインのリゾット。美しい景色と澄んだ空気の中で食べる食事は、すごくおいしく感じた。

お腹が空いてきたので山頂のレストランで
昼食
さすがにアルコールはやめてグラピオンという
微炭酸の葡萄のジュースにしました。
(CHF4.5/約380円)
…だけど、これは赤ワインのリゾット(笑)
(CHF21.5/約1980円)

 食事を済ませ、少し休憩してから、名残惜しいけれど山を降りることにした。このあとハイキングをするつもりなので、あまり遅くなってもいけないし。(実はこの展望台に上がってきてから既に3時間経過していた)

 ロープウエイを降り、ここからはいよいよハイキング。ガイドブックを見て私が選んだコースは線路沿いに二駅先のモルテラッチまで歩く、初心者向けコース。このコースなら常に線路が見えているので絶対に道に迷うことはない。どんなにゆっくり歩いても1時間半もあれば目的地に着くだろう。出発地点の駅前からはいろいろな方向にハイキングコースが分かれていて、どっちへ行っていいのか一瞬迷ったが、駅から50mほど離れたところでハイキングコースの標識を発見。モルテラッチ方面へ行く道を確認して出発。コースの前半は視界の開けた道で、線路を常に右手に見ながら歩く。景色がいい、というわけではないけれど、足元の高山植物を立ち止まって眺めたりしながらのんびりと歩いた。後半は林の中を歩いて行く道。途中人とすれ違うこともあまりない静かなコースだけど、分岐点ごとに標識が立っているので安心だ。全行程を通じて平坦な道なので、ほとんど休憩らしい休憩も必要なく(途中で暑くなったのでTシャツを1枚脱ぐために立ち止まった程度)、1時間20分ほどでモルテラッチ駅に到着することができた。

 次の電車は、時刻表を見ると、上りと下りが同じ時刻に出発することになっている。しかし、駅のホームは片側にひとつしかない。一体どうやって乗るんだろう、と思っていると、私が乗るのとは逆方向行きの電車が先に到着し、ホーム側に停車した。これじゃあ、サンモリッツ方面行きの電車に乗れないのでは?と不安になり、車掌さんに「サンモリッツ方面行きの電車にはどうやって乗ったらいいんですか?」と聞いてみたら、「あとから来るからここで待っていれば大丈夫ですよ」とのこと。しばらくするとサンモリッツ方面行きの電車が到着し、今停車している電車の向こう側に停車した。どうなるんだろう、とちょっと不安に思っていると手前の電車が先に発車した。するとホームにいた人たちが線路を横断しはじめた。…なるほど、そういうことなのか…。私も線路を横切って無事、電車に乗ることができた。

ロープウエイから見た氷河 ベルニナ・ディアヴォレッツァ駅にこんな電車が
止まってました。
この電車には乗らず、二駅先までハイキング
します!
この標識を見れば迷うことはありません。
カンパヌラ・シュウキツェリ
鮮やかな色の虫が止まってました。
線路が見えるハイキングコースです。 岩にも目印が付いています。
方向は間違っていない、と一安心。
この石の列はなんだろう?
びっくりするくらいきれいな水の色です。
さあ、もうすぐゴールです!
この線路を渡ると モルテラッチの駅に到着です!
これはティラノ行きの電車 エリオフォルム・シュウキツェリ
これも反対方向へ行く電車です。 お疲れ様の1杯(笑)。

 サンモリッツの駅に着いたところで、ホテルの運転手さんが「ハロー、マダム」と声をかけてくれた。一昨日、駅で迎えてくれた運転手さんだ。しっかり私の顔を覚えていてくれたらしい。もちろん車に乗せてもらい、無事ホテルに到着。念のため足のマッサージをして、シャワーを浴びて着替えて、今度は街へ繰り出すことにした。なんて元気なんだろう、私(笑)。まずは老舗のチョコレート屋さん「ハンゼルマン」でトリュフと夏季限定のフルーツチョコレートを買い、次に土産物屋さんで2005年のカレンダーを2種類ほど買った。そして、「エンジャディナ」というレストランで夕食。チーズフォンデュは二人前から、というところがほとんどだけど、ラクレットなら一人前から作ってもらえるのでは、という口コミ情報をもらったので期待していたんだけど、残念ながらこのお店ではラクレットも二人前からしか注文できなかった。仕方ないのでお店の人のすすめでレシュティのピザにしてみた。結構おいしかったんだけど、スイスに来てチーズフォンデュもラクレットも食べれないなんて…ちょっと悲しいかも…と、思わず他のテーブルでチーズフォンデュを囲む日本人旅行客をちょっと羨ましげに眺めてしまった。

やたら元気な私、街の中心部までお買い物&
晩ご飯
「ハンゼルマン」でチョコレートを買いました。 学校広場
「エンジャディナ」というスイス料理のお店
ハウスワインをいただきました。口当たりがよ
くて飲みやすかったので、つい、おかわりを
いただいちゃいました。
(CHF9.6/約880円)
とにかく生野菜が欲しくて…グリーンサラダ
(CHF8/約740円)
チーズフォンデュは一人じゃ注文できないだろ
うからラクレット、と思ってたのに…やっぱり
これも二人前からでした。
仕方ないので、このお店のおすすめのレシュ
ティのピザ(CHF19.5/約1790円)
結構おいしかった!

 明日はベルニナ急行と同じルートを通って終点のイタリア・ティラノまでのショートトリップの予定。今日と同じ時間の電車に乗る予定なので早起きだ。ホテルに戻った時にはまだ外は明るかったけれど(もっともこの時期のヨーロッパは午後9時過ぎまで明るいんだけど)、ゆっくり休むことにした。




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