憧れのノイシュバンシュタイン城へ!

 今日のJALエクスプレスの出発時刻は午前8時。昨日よりも2時間も早い行動開始だ。眠い目をこすってレストランで朝食をとる。昨日ガイドさんが「ヒルトンなら朝食にヴァイスヴルストが出るはず」と言っていたので、よく探してみると、隅の方に鍋を発見。昨夜食べたばかりだけど、やっぱりミュンヘンでの朝食はヴァイスヴルストを食べないと(笑)!

今朝も朝食はホテルのレストランのブッフェ
ヴァイスヴルストがありました

 今日は昨日とはうって変わり、バスの乗客は30人くらいいた。最初に向かったのはルートヴィヒ2世が2番目に建てた城、リンダーホーフ城だ。彼の建てた3つの城(ノイシュバンシュタイン、リンダーホーフ、ヘレンキームゼー)のうち、長期間滞在したのはこのリンダーホーフ城だけなのだそうだ。この、人目を避けるには格好の深い谷は彼にとって非常に魅力的だったのだという。ところで、このルートヴィヒ2世、精神的に病んでいたと伝えられているが、実は医師による検査などは一切行わないまま鑑定書が提出され、特権停止の措置がとられてしまった。そして、ミュンヘンから25kmほど離れたところにあるシュタルンベルク湖のほとりにあるベルク城に幽閉されたが、その翌日、医師と共に散歩に出かけ、謎の死を遂げたのだそうだ。

 リンダーホーフ城の城内は写真撮影もOK(ただしビデオはダメ)。ここもガイドツアーでの見学。途中、写真を撮るのに夢中になっていたら、みんなとはぐれてしまってちょっと焦った(笑)。昨日見たヘレンキームゼー城と同じく、これでもか、というくらいのロココ調の装飾のされた城内は本当にまばゆいばかりの煌びやかさだった。

午前中はルートヴィヒ2世の建てた二つ目の
お城、リンダーホーフ城へ
お城の入り口の天井部分 天使が持っている
布には「多くのものに劣らず」という意味の
ラテン語が書いてあるんだそうです。
ロココ調の装飾のなされたピアノの形のハル
モニウム
黄の小室
窓から見た庭 謁見の間
王の寝室
寝室の窓から見える庭 食堂の天井画 マイセン陶器のシャンデリア
天井画の一部が彫刻になっています 「魔法の食卓」
鏡の間 象牙でできたシャンデリア
滝の庭園
フローラと天使の噴水
ひな壇式庭園 実は外壁の工事中でシートがかかってます…

 リンダーホーフ城見学の後は、ノイシュバンシュタイン城に向かう途中にあるシュバンガウという街で昼食。JALユーロエクスプレスのオプションの昼食ははずれがなかったので、今年も事前に申し込んでおいた。案内されたレストランは山小屋風のホテル(名前を聞いたんだけど忘れてしまいました)のレストラン。飲み物は別料金なのだが、迷わずヴァイツェンドゥンケルを注文。同じテーブルについたのはドイツ語の堪能な女性(ミュンヘン在住だそうです)と彼女のお姉さんとその娘さん。夏休みを利用して遊びに来たお姉さんの家族を案内中なのだそうだ。「ドイツにはおいしいものがないのよね。本当においしいと思うのはホワイトアスパラくらいかしら?」と彼女はこぼしていた。「今度はぜひ、ホワイトアスパラが食べられる季節に来てみてくださいね」と彼女は言っていた。そうしてみると、このレストランの食事はかなりおいしい方かもしれない。メインの肉料理はさっぱりしていて食べやすかった。

昼食はシュバンガウのホテルのレストランで ヴァイツェンドゥンケル 2.6EUR(約380円)
豚肉を醤油風のソースで煮込んだもの アップルパイとアイスクリーム

 昼食後はいよいよノイシュバンシュタイン城観光。ずーっと前から写真などで見て、憧れを抱き続けてきた城だ。「いつか行ってみたいな」と思いつつも実現させることは難しいのではないか、と思っていたその城を、ついにこの目で見ることができる! 物語に登場するような外観からは想像のつかない、ルートヴィヒ2世の悲しみが秘められた城。政治や人間社会に失望し、また、自らの同性愛的傾向に苦しみ、このような山岳地帯に引きこもり、空想の世界に生きた孤独な王。知れば知るほど早くこの城を見てみたい、という思いは強くなっていった。

 ルートヴィヒ2世の父、マクシミリアン2世の城であり、ルートヴィヒ2世が幼少時代を過ごしたホーエンシュバンガウ城が見える駐車場でバスを降り、そこからはマリエンブルク橋までシャトルバスに乗って登っていく。ここも時間指定のガイドツアーでのみの見学。指定の時間まではまだ少し時間があるとのことなので、ノイシュバンシュタイン城の外観が美しく見えるマリエンブルク橋に行ってみることにした。橋の上から見るノイシュバンシュタイン城は、まさに、写真などでよく見たそのままの姿だ。かなりの混雑で押し合い圧し合いの中、高所恐怖症であることも忘れて、橋桁から身を乗り出して夢中でシャッターを押した。

 私たちが参加するのは14時20分からのガイドツアー。それぞれがオーディオガイドを借りて、それを聞きながら進むものだ。城内は撮影禁止(ただし、窓からの景色は可)。昨日見たヘレンキームゼー城、午前中に見たリンダーホーフ城の内装が絢爛豪華だったのに対して、この城ではリヒャルト・ワーグナーのオペラの原作をモチーフにした装飾がなされているため、少し趣が違う。それというのも、この城はもともとはワーグナーに捧げる殿堂にするつもりで、実際城の3階にはワーグナーが長期滞在することを期待した客間が作られる予定だった。しかし、時の経過と共にルートヴィヒ2世の社交嫌いがエスカレートし、結局その客間が完成することはなかった。即位から4年後の1868年に建築が計画されたこの城の、枠組みが完成した1892年には王は既にこの世を去っていた。城内の見学を終える頃には、ずっと私の心の中にあった憧れとは異質の、物悲しさが残った。

ノイシュバンシュタイン城が遠くに見えてきま
した
ノイシュバンシュタイン城のすぐ近くにある
ホーエンシュバンガウ城はルートヴィヒ2世
の父マクシミリアン2世の城です
ノイシュバンシュタイン城を裏手から見たところ
ここはお城に向かうシャトルバスの乗り場
マリエンブルク橋の上から見たノイシュバン
シュタイン城
更に上っていくとお城が近くに見えてきました
お城の入場チケット ガイドツアーでのみ見学
できます(8EUR・約1170円)
お城の外観と窓から見える風景のみ撮影可
お城の窓から見た風景 右上に見えるのがマリエンブルク橋

 城からの帰り道はシャトルバスを使わず、緩やかな坂を歩いて下った。下の駐車場でJALユーロエクスプレスのバスに乗り、ミュンヘン市内に戻る。その道中でガイドさんが「もし、音楽に興味がおありでしたら、今夜フラウエン教会で行われるオルガンコンサートに行ってみてはいかかですか?」と言っていた。去年訪れた、どこかの教会でたまたま聴いたオルガンの音色のあまりの美しさに鳥肌が立ったことを思い出し、行ってみることにした。19時開演とのことだが、ホテルに戻ってきたのは18時半近かったので、急いでフラウエン教会に向かう。教会の入り口のところへ行くと、「オルガンコンサートをご希望ですか?」と声をかけられたので、そこでチケットを買い、教会の中に入った。真ん中辺に席を取り、演奏が始まるのを待つ。プログラムを見ると、1900年頃の比較的新しい時代の作曲家の曲ばかりだった(できればバッハの曲が聴きたかった…)。しかし、教会で聴くオルガンの音色は、時にはドーム型の天井から降り注ぐように聴こえ、時には壁という壁からあふれ出てくるようにも聴こえ、この中にいると信心深くはない私でさえも、神様の存在を信じたくなる気がした。イスラムの寺院もそうだが、音響がもたらす心理的な効果は大きいのかもしれないな、などと考えながらオルガンの演奏に聴き入った。

夜はフラウエン教会のオルガンコンサート。
初めて教会内部で本格的なオルガンの演奏
を聴きました。チケットは8EUR(約1170円)

 コンサートが終わった後はそのままぶらぶら歩いて、晩ご飯はビアレストランへ行ってみることにした。選んだのはゼンドリンガー通りにある、ミュンヘンのビール会社、ハッカー・プショールの直営店、「アルテス・ハッカーハウス」というお店。なんとこのお店には持ち帰り自由の日本語メニューがあった。いかにもドイツ語を直訳したと思われるメニューだけど(例えば「刻んだ肺の酸っぱいクリーム煮」「盛りだくさんの軽食」「オーブンでこんがり焼いた豚すね肉半分」など)、わかりやすくてありがたい。せっかくミュンヘンにいるので、ということでバイエルン地方の特別料理の中からミュンヘン風煮込み牛肉スライスという料理を注文してみた。このお店のメニューはほとんどサラダがセットになっているのも嬉しい。ビールはもちろん、ハッカープショル。この国はビールが割と安いのがビール好きにとってはありがたい。

晩ご飯は伝統的なビアレストラン、「アルテス・
ハッカーハウス」で
ハッカープショル 3.1EUR(約450円) ミュンヘン風煮込み牛肉スライス 
12.7EUR(約1850円)
丸いものはパンの団子、と書いてありました

 昨日のように1リットルも飲んだわけではないけれど、昼間よく歩いたせいか、ほろ酔い加減。ライトアップされた市庁舎の前の広場では、音楽の演奏をしているグループがいたりして、人垣ができていた。私もその人垣に加わってしばらく演奏を聴いていた。演奏している人たちも、まわりで聴いている人たちもみんな笑顔だ。やっぱり今年もこの街に来てよかった。大好きになってしまったミュンヘンの街とも今夜でお別れだと思うと少し悲しくなってきた。

ライトアップされた新市庁舎

 部屋に戻ってきたのは11時過ぎだっただろうか? 明日はいよいよ国境を越えてスイス入りだ。初めての国、スイス。一体どんなところなんだろう? それよりもまず、これからの鉄道を使っての行程は楽しみである反面、少々不安でもある。前回はほとんどがバスでの移動で、しかも日本人ガイド同行だった。でも今年は全て、自力で移動していかなければならない。期待と不安を胸に、明日の長旅に備えて早めの就寝。




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