ハイジに会いに、マイエンフェルトへ

 今日は「アルプスの少女ハイジ」の原作者であるヨハンナ・シュピリが愛した街、マイエンフェルトへ出かける日。テレビのアニメで見た、あの風景のモデルとなった場所だ。結構長い時間歩くことになると思ったので早起きしたはずだったのに、気付くと8時過ぎ。すぐに出かけられる仕度をしてホテルのレストランで朝食。ミュンヘンのホテルに比べるとずいぶん品数が少ないけれど、さすがにチーズの種類は充実していて、いろいろ選べるのだが、冒険のできない私は無難なカマンベールだけにしておいた。

朝食はホテルのレストランで パンとチーズ、ハム、その他ヨーグルトや
フルーツ、シリアルがありました

 朝食を済ませ、忘れ物がないか荷物の確認。服装は半袖Tシャツに長袖Tシャツの重ね着をし、念のためウインドブレーカーをリュックサックに入れた。靴は登山靴(トレッキングシューズで充分と思われますが、たまたま登山靴を持っていたので)。日差しが強いので帽子とサングラス、日焼け止め、汗拭き用のタオルも必需品だ。いらないだろうと思いつつも一応、滑り止め付きの軍手もリュックに入れた。そして、ガイドブックから切り取ったマイエンフェルトのページ、インターネットで調べてプリントした電車の時刻表、レンタルした携帯電話、カメラと予備の充電池と広角レンズ。詳しい地図やミネラルウオーターなどはマイエンフェルトについてから調達するつもりだ。リュックを背負っていざ、出発。フロントの女性スタッフが「ハイキングですね?」と笑顔で見送ってくれた。クールの駅まではもちろん徒歩。思わず「口笛はなぜ〜♪」と口ずさみながら軽い足取りで駅へ向かった。

マイエンフェルトに行くために電車に乗ります 座り心地がすごくいい…
15分ほどでマイエンフェルトに到着

 マイエンフェルトの駅で電車を降り、まずは駅前の売店でミネラルウオーターを買い、次に詳しい地図を手に入れるために観光案内所へ向かう。しかし、観光案内所に置いてあった日本語の地図も、それほど詳しい、というわけではなかった。…この地図で無事に辿り着けるんだろうか? 一抹の不安を胸に、それでも出発。

駅前の案内板 ここからハイジ村まで40分だそうです
マイエンフェルトの街

 マイエンフェルトの古い街並みを抜けると、まもなく「Heidiweg」と書かれた赤い標識を見つけた。これに従って歩いて行けば迷うことはないだろう…とはいえ、この標識が向いている方向は「Heididorf」とは違う方向。本当にいいの? ますます不安が募るが、思い切って赤い標識通りに進んでみることにした。あたりは一面の葡萄畑だ。この辺はワインの産地としても知られているのだそうだ。もしハイキングを終えて時間があったら、帰りはこの辺でワインを飲んでいこうかな?などと考えながら葡萄畑の中の道を歩いていく。それにしても…どんどん道幅は狭くなり、観光客らしき姿はもちろん、人影すらない。そしてついには足元に壊れたコンクリートのブロックが転がる、牧草地のようなところに出てしまった。さすがにこれは違うだろう…。既に歩き始めて40分は経っていたが、このまま進んだら迷子になってしまいそうだ、と諦めて元来た道を引き返すことにした。(しかし、あとでわかったのだが、このまままっすぐ進むと「ハイジの泉」に行くことができたらしい。)

「Heidiweg」と書かれた赤い標識に従って
進みます
一面の葡萄畑です。この辺りはワインの産地
なんだそうです
どうやらそのまま進めばハイジの泉だった
ようです。

 気を取り直して、今度は「Hotel Heidihof」の標識に従って歩いていくことにした。手元の地図で見る限り、このホテルの近くにハイジ村があることは間違いなさそうなのだ。こちらの道はさっきの道とは違って舗装されていて、観光客らしき姿もちらほら見られるし、今度こそハイジ村に辿り着くことができそうだ。ハイジ村の少し手前にあるホテル、ハイジホフに着いた時には、駅を出てから1時間半経過していた。…駅前からここまで40分のはずだったのに…(涙) もともとの出発時間が遅かったこともあり、既に日はかなり高くなっていて、暑い。朝食が遅かったのだけど、この先昼食の取れるところはないので、ここで昼食を兼ねて休憩をとることにした。屋外の木陰のテーブルにつき、これからまだ歩くんだけど、やっぱりビール。食事は軽めのものがよかったので、「ハイジのお気に入り」というネーミングの野菜のラビオリにした。

ハイジ村まであと5分! ハイジホフで昼食休憩にします
木陰は涼しくて気持ちいい ハイキング中なのに…ビール…(笑)?
「ハイジのお気に入り」というネーミングの
野菜のラビオリ(CHF21.4/約1970円)

 食後少し休んでから「アルプスの少女ハイジ」の世界を再現したテーマパーク、ハイジ村に向かう。ハイジ村までは歩いて10分とかからずに到着。パーク内には作品から推測して建てたという「冬の家」があり、冬の間山から下りてきたハイジとおじいさんが暮らしたデルフリ村がここにあたるのだそうだ。「冬の家」はハイジの時代に使われていた民具などが置かれていて、内部も忠実に再現された博物館になっている。少し先にあるギフトショップでチケットを買い(CHF5/約460円)、中に入ってみた。入ってすぐのところにあるのは納屋で、階段を上がるとキッチンと食堂、更に上の階にはハイジの部屋。ハイジやペーター、おじいさんの人形やクララの車椅子などもあり、なかなか凝った造りになっていた。

ハイジ村の看板 ハイジホフからはこの道を進みます
ハイジ村に到着です。日本語で「ようこそオリ
ジナルのハイジの村へ」と書いてあります。
ハイジの冬の家 中は博物館になっています
博物館のチケットはCHF5.0(約460円)
ハイジとペーター…らしい…(汗) ハイジの部屋
キッチン
おじいさん… クララの車椅子
冬の家の庭 ハイジ村

 ハイジ博物館をあとにし、ここからはいよいよ本格的なハイキングコースだ。大半の観光客はこのハイジ村で引き返していくが、やはり、あのハイジの家を見ずには帰れない。この機会を逃したら二度とこの地を訪れるチャンスはないかもしれないのだ。「冬の家」の裏手から今度は青い標識に従って歩いていく。歩き始めてまもなく道が険しくなった。…まさか、ずっとこんな道が続くの(汗)? だとしたら…引き返そうか…と弱気になる。でも!絶対ハイジの家を見るんだ!と自分に言い聞かせ、根性で前へ進む。幸い、この山道はすぐに終わり、舗装された緩やかな坂道に変わった。これなら歩いていけそうだ。引き返さなくてよかった。この青の道にはところどころにハイジの物語に関係した標識とモニュメントが設置されていて、楽しみながら登っていけるようになっている。標識は全部で12箇所で、ひとつめの標識が先ほどのハイジ村、12番めの標識から少し登ったところにはあの、ハイジの家があるのだ。

ここから青の道へ! こんな山道なの?…嘘でしょう…?
でも、こんな道はここだけです。
標識
※ここから先の看板についての説明は
ハイジ財団オフィシャルパートナーサイトを参照
させていただきました。
やぎの小熊と白鳥 牧場へ戻る途中にここでペーターとやぎ達が
喉の渇きを癒したと看板には書いてあります。
この水がすっごく冷たくて気持ちいい!
こんな風に看板が立っていて、ハイジの物語
が書いてあり、その隣にモニュメントがあります
アルムおんじの薪集め 「おじいさんが暖炉の薪を集めた場所」 ファルクニスの眺め
「ここからマイエンフェルトで一番高い山が見え
ます。そこには鷹の巣があって、ペーターの
やぎを狙っていました」
木彫りのフィギュア 「木からはいろいろな形のフィギュアを作ること
ができます」
スナック・プレース 「グラウビュンデンの谷を眺めながらひと休み
してはどうですか?」
アルムおんじの場所
「アルムおんじとハイジが村へ下る時にはこの
ベンチでひと休みしました」
ペーターの場所 「ここはペーターがクララの車椅子を崖の下に
落として壊してしまった場所です」
ウッド・チューン 「毎朝牧場へ登っていく時、ペーターは自分が
やってきたことを木のかけらで遊びながら
知らせました」
ツリーハウス
「ハイジとペーターはこんな形をしたツリーハウ
スからヤギ達を見張っていました」

 ハイジ村を出発してから歩くこと1時間半、マイエンフェルトの駅からのトータルだと約3時間。ついに12番めの標識の前にやってきた。あと3分、と書かれた看板を見て思わず涙ぐんでしまった。こんなに遠い異国の地で、あまり詳しい情報もないままにたった一人でここまでやってきたんだから…。看板から矢印の示す方向へ登っていくと、まもなく、見覚えのある小さな家が見えてきた。ハイジの家だ! 本当に、アニメで見たあの通りの家が目の前に迫ってきているんだ! 疲れも忘れ、自然と歩く速度が上がっていく。ついにここまで来たんだ!! 小屋の前に辿り着くと、アニメに出てきたおじいさんにそっくりな管理人さんが「私の家にようこそ! さあ、中に入って休みなさい。」と笑顔で迎えてくれた。小さな山小屋の中にはもう一人初老の男性がいて、私に椅子をすすめながら「遠いところからよく来たね。…飲むかい?」と赤ワインを片手に微笑んだ。「ありがとう。いただきます」と答えると小さめのコップにワインを注ぎ、更にパンとチーズを切り分けてくれた。そして「あなたのようなチャーミングな女性に出会えて幸せだ。さあ、乾杯しよう!」 思わず爆笑してしまった。その後もその男性、ワインを飲みながら、お世辞の嵐。こんなに褒めてもらったのは初めてだ(笑)。

 3〜40分経った頃、そろそろ帰ろうと会計を頼むと(この山小屋はカフェなんです)、「これは私のおごりだよ。」とその男性。お礼を言って山小屋を出ようとすると、「近道を教えてあげるから、一緒に帰ろう。途中に車を置いてあるから駅まで送るよ。」 …大丈夫なんだろうか…とちょっと不安でもあったけど、この男性、管理人さんの知り合いみたいだし、悪い人じゃなさそうだし、お世話になってしまうことにした。もし一人だったら絶対にわからなかった道を教えてもらい、車に乗せてもらったお陰で1時間ほどでマイエンフェルトの駅に戻ってきた。親切な男性に何度もお礼を言って駅前で別れたけど、せっかく聞いた名前を忘れてしまったこと、写真を撮らせてもらうことを忘れてしまったことが心残りだ。

ハイジの牧場
「ここはハイジとアルムおんじが夏の間暮らし
ていたところです」
あと3分、の表示に思わずうるうる…(笑) ハイジの家が見えてきました!
テレビで見たのと同じ家だぁ〜〜 ついに到着!!
山小屋の管理人さん ホントにアルムおんじ
みたい!
家の2階部分 偶然居合わせたバートラガッツに住んでいると
いう男性がワインをご馳走してくれました。
そして、チーズとパンも!
更に更に、帰りは近道を案内してくれた上、
途中から車で駅まで送ってくれました!
親切なおじさんに心から感謝!!

 思いがけない親切に出会い、気持ちよくハイキングから帰ってきたのはいいけれど…体は悲鳴をあげていた。足がパンパンに張っていて、クールの駅からホテルまでがとてつもなく遠く感じた(実際には10分くらいなんだけど)。この調子だと、一度部屋に入ってしまったら二度と外に出る気力はないだろう、と思ったので、駅前のCOOPでビールと水、パンと果物を買って今日はゆっくり休むことにした。スイスでの初めてのスーパーマーケット。ビールが安いのには驚いた。果物も量り売りで好きなだけ買えるのも嬉しい。

 部屋に着くとシャワーを浴びて、持参した脚用のマッサージジェルを使ってマッサージ。その後これも持参した湿布をふくらはぎと足の裏に貼っておいた。(これが大正解! 翌日は嘘のように足の疲れが取れていて、筋肉痛にもならなかった)

疲れ果てていたので晩ご飯は帰りがけに
駅前のCOOPで調達してきました。
シャワーを浴びて、もう一歩も外に出たくない
状態でした。
ビールはCHF1.5(約138円)
ビールのつまみ(笑)CHF1.2(約110円) ハムのサンドイッチ(CHF4.9/約450円)
果物は量り売りです。(確か2個買って
CHF1.25/約115円)

 買ってきたパンとりんごの簡単な夕食を済ませて、今日はかなり早めの就寝。明日はサンモリッツへの移動日。また列車での旅だ。




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