●平成18年11月9日(木), 日帰り ★ 総所要時間: 5 時間 20分 ★ ハイキング標高差: 400 m
福島県と山形県にまたがって、東西に2000m級の峰を連ねているのが「吾妻連峰」である。
この吾妻連峰は、東西に大きく二つの火山群から形成されている。西側のエリアでは深い針 葉樹林に包まれており、最高峰の 「西吾妻山」 (2035m) をはじめ 「西 大嶺(だいてん)」 (1982m), 「中大嶺」(1964m) などが連なる。間に「中吾妻山」 (1931m) の峰をはさみ、東側の エリアでは「東大嶺」(1928m), 「烏帽子山」(1879m), 「前大嶺」(1911m), 「一切経山(いっさい きょうざん)」(1949m), 「吾妻小富士」(1707m), 「東吾妻山」(1975m) などがあり、こちらの方が 火山活動としては新しく、いまだに火山景観むき出しの部分を多く残している。 中でも一切経山は、現在でも山肌を露にして活動を続けている活火山だ。ちなみに、吾妻連峰
は「吾妻山」として総称され、日本百名山にも選定されている。 ![]() 今季最後となる山行は、その吾妻連峰の東エリアを代表する東吾妻山と一切経山の、2山へ
の登頂を含む山上の周回ハイキングを計画した。 そこは、吾妻山のシンボル・吾妻小富士を 擁する、吾妻観光の拠点でもある。 山上には火口湖や火山荒原、高層湿原などが多く見ら れ、各山頂からの展望も申し分ないほど素晴らしい。 また、夏季ならば高山植物も豊富で、ハ イキングには最適の空間であるといえる。 当日の天候は、すこぶる良く晴天に恵まれたのだが、現地では2日ほど前に降雪があり、山
上部にはかなりの積雪が残っていた。 昨年の「磐梯山」 (1819m) に続き、今回もギリギリのタ イミングで登山できたが、この辺りの山は既に冬支度に入っており、今季の通常登山は閉山 間近といったところだった。(実際に、山上へ登る為の道路「磐梯吾妻スカイライン」は、11月 15日頃で冬季閉鎖となるそうだ。) 吾妻小富士 (磐梯吾妻スカイラインより)
![]() 横浜からは距離がある為、早朝(AM4:00)に出立。湾岸線から外環道を経由して東北自動車
道に入り、福島西ICで一般道に降り15kmほど走ると、西の方角に目指す一切経山と吾妻小富 士の姿が見えてきた。 元々山肌が露出した山なので目立つとは思うが、うっすらと残雪で白く なっており、ひときわ鮮やかに青空に映えていた。 山頂の天気も良さそうだが、そうなると心配なのは道路の方だ。念のため、滑り止め(タイヤ
チェーン)は持参しているのだが、装着するのは面倒である(笑)。 磐梯吾妻スカイラインの入口 料金所に到着すると 『路面凍結、滑り止め必要』 との表示があった。 料金所のおじさんに早 速、ノーマルタイヤであることを指摘されたが、持参していることを伝えると、上の方で部分的 に凍結している箇所があるので充分注意して走るように…、という事で通行を許可された。 この有料観光道路は、ちょっと通行料は高いものの途中の景観は実に素晴らしく、快適な山
岳ドライブを楽しむことが出来る。 ![]() 有料道路のほぼ中間点付近に位置する「浄土平」(1575m) が、今回のハイキング基点となる
場所だ。 観光のメインスポットでもある為、大きな駐車場とビジターセンター、お土産の売店・ レストハウスに加え、天文台までもが揃っている。 有料駐車場のすぐ脇に シンボル的存在の 「吾妻小富士」 が横たわっていて、20〜30分程度
で火口に上がって “お鉢巡り” ができるほか、隣の 「桶沼」 や 「浄土平湿原」 などには木道 や遊歩道が整備されており、比較的軽装でも短時間で周遊することが可能だ。 多くの観光客はそちらの方に向かうようだが、それらの喧騒をよそにビジターセンターの横か
ら浄土平湿原の木道へと進み、中ほどの分岐から 「一切経山」 への登山道に入る。 ![]() 一切経山の名の由来は、その昔に空海和尚が山中に仏教教典の 「一切経」 を埋めたとい
う伝説 (埋めたのは、空海(弘法大師)ではなく、安倍貞任だとする説もあり、どうも定かではな いようだ…?!) による。 近年では、昭和52年(1977年)に噴火があったそうで、部分的に火山ガスの発生している箇所も
あった。 登山路は北寄りの裸地尾根で、火山岩の浮石が多いザレた急登の斜面を、落石や スリップに注意しながら登ってゆく。 途中、山腹の噴火口を見下ろす縁を通る。 この辺りから 山頂までの間は、殆どがガレ場で遮る物が何もない為、景色を楽しみながら登れるので疲れ を感じさせない。 ![]() ![]() 一切経山・中腹の火口跡 中腹から眺める、浄土平と吾妻小富士
振り返ると後方には、浄土平と桶沼を一望し、特にポッカリと巨大な火口をこちらに向けた吾
妻小富士の景観は豪快でスゴイ!! 尾根上にあがり平坦路になると、「酸ヶ平(すがだいら)」 からの道を合わせる分岐点に至り、北側の傾斜が緩んだ火山裸地帯を 更にひと登りすると、 広々とした一切経山の山頂(1949m)へと到着した。 ![]() 広くなだらかな山頂には、一等三角点と 高く積み上げられた石積みの塔 「空気大感謝塔」
があるのみで、視界を遮る物は何もないので360度の大パノラマが展開する。 同時に、風を避 ける遮蔽物もない為、冷風の吹きさらし状態で少し寒かった。 風が冷たくなくても、強風時は注 意が必要だ。 東方面には阿武隈高地と福島盆地一帯、南側では吾妻小富士が脇にくっつくように見え、
西方面では磐梯山の他に 「飯豊(いいで)連峰」 も見える。そして、北側には吾妻連峰の西エ リアの山々、西吾妻山, 西大嶺, 中大嶺 をはじめ、遠く雪山と化した 「蔵王山」 (1841m) や 仙台平野をも見渡すことができる。 ![]() ![]() 山頂から眺める、吾妻小富士の火口 “ 吾妻の(魔女の)瞳 ” 五色沼
更に北側へ、少し歩を進め山頂の北縁に立つと、眼下に息を呑むような美しい光景が飛び
込んできた。 「吾妻の瞳」とか 「魔女の瞳」とも呼ばれる 「五色沼」だ。 コバルトブルーの水 面色が太陽光線の具合や時間,場所によって様々に変化するそうで、実際この 日の五色沼の 色調も微妙に変化して見え、とても美しく神秘的であった (写真では、その色調の変化がうまく 表現されないので残念だ)。 うっとり見取れていると、引き込まれそうな不思議な感覚だった。だが足元は、切り立った断崖
のような山の縁なので、うっかり近づいたら大変なことになる(笑)。 一切経山・分岐から眺める、酸ヶ平と鎌沼
![]() 一切経山からは往路を少し戻り、先ほどの分岐点で直進して酸ヶ平方面へと下る。 眼下には 「酸ヶ平湿原」 と 「鎌沼」, 「東吾妻山」 を一望するが、この辺りは火山の影響で植
物が殆ど生えていない一切経山とは全く対照的で、様々な高山植物が咲き誇り (夏場で!) 、自 然の庭園のような美しい光景が続く。 酸ヶ平避難小屋を過ぎると木道に変わり、湿原の分岐点 「酸ヶ平」 に立つ。 木道を南下し
て、右側に酸ヶ平湿原と 「前大嶺」 を見ながら鎌沼へと向かう。 ![]() ![]() 酸ヶ平湿原より、後方に一切経山 酸ヶ平から、鎌沼へ向かう
鎌沼 と 東吾妻山
![]() 鎌沼は文字通り鎌の形をした美しい沼で、水面には東吾妻山を映出し、太陽光を眩しく反射
して輝いていた。 沼畔を半周ほどして沼を離れると、一段高い所に移動して、平坦で火山荒原 の広がる 「姥ヶ原」 に出る。 木道伝いに姥ヶ原を横切り、南端の十字路(分岐点)まで来ると東吾妻山はすぐ目の前だ。こ
の分岐点を左に下れば、出発点の浄土平に戻ることができる。下山はそのルートを使うが、こ こでは直進して東吾妻山・登山口へと進む。 ![]() ![]() 鎌沼畔を半周回して東吾妻山へ向かう 姥ヶ原、東吾妻山・登山口
なだらかで長い裾野をひいた弓形状の東吾妻山は、針葉樹林帯に覆われた静かな雰囲気
の山だ。外からは雪があるようには見えなかったのだが、登山口からコメツガ,シラビソ等の針 葉樹林帯に入っていくと、ナント!! 登山路には全線で雪が積もっており、急きょ! 雪山登りの状 態となった (汗)。 結局、樹林の外側表面の雪はすぐに溶けて消失したものの、登山路など内 側地面の積雪は、樹木に陽を遮られてそのまま残っていたのである (笑)。幸い、先人の足跡 も残っていたし、通路が判らなくなる程ではなかったので、そのまま雪道を登って行くことにし た。 やがて樹林帯を抜けハイマツ帯に出ると、一気に視界が開けて 東吾妻山・山頂(1975m) に到達した。 ![]() 東吾妻山・山頂 (1975m) 磐梯山と裏磐梯の湖沼群、左側は 猪苗代湖
この山頂からの眺望も全方位バツグンで、一切経山から西に延びる緩やかな稜線、中吾妻
山と重なった最高峰の西吾妻山をはじめとする西側エリアの山々と、それらに囲まれた「谷地 平湿原」が一望の下だ。 南西方面では、磐梯山と裏磐梯高原に点在する湖沼群もよーく見 渡せる。 そして、その左側には広大な 「猪苗代湖」 も姿を見せていた。 ![]() ![]() 山頂より、西吾妻山と吾妻連峰・西部方面 山頂より、一切経山と鎌沼を望む
下山は、往路をそのまま戻る。 再び雪道の針葉樹林帯に入り、先の姥ヶ原・十字路まで下
山し、分岐点を浄土平方面へと向かう。 始めのうちは東に伸びる木道を緩やかに下って行く。 右側にはたった今登頂してきた東吾
妻山を、左側には周回してきた鎌沼と、前大嶺から一切経山に続く稜線を眺めながらの木道 歩きは快適だ。 夏場であれば、周囲の湿原や草原はお花畑と化して、高山植物が咲き乱れ ているのであろう。 姥ヶ原・分岐から、浄土平へと下山する
![]() 道はほぼ直線的に下ってゆくが、やがて木道が途切れて傾斜のついた下山路となり、正面
に吾妻小富士を見下ろす位置まで来ると、階段などが増えて一気に高度を下げてゆく。左側 に一切経山の山肌を見上げるようになると、吾妻小富士の見えている火口の大きさも次第に 小さくなってきて、ようやく浄土平湿原へと戻ってきた。 最初に一切経山への登山口を分岐した浄土平の木道に合流し、周回登山の完了である。
![]() 木道から浄土平Pへと帰還して車に乗り込む。 朝よりも当然のことながら人は増えており、観
光バスで訪れた観光客らが集団で吾妻小富士や桶沼方面へとハイキングを楽しんでいた。 吾妻小富士のお鉢めぐりも、もう少し時間と体力に余裕があれば行きたい所だったのだが、今
季はこれにて終了である (笑)。 磐梯吾妻スカイラインの景観はホントにすばらしいので、帰りの車中は充分に堪能しながらゆ
っくりと下山した。 温泉はスカイラインを出て、すぐの場所にある 「高湯温泉」 の日帰り共同浴場「あったか
湯」へ行ったのだが、運悪く定休日に当たってしまった。 高湯温泉は、乳白色の湯を湛えた 野趣満点の露天風呂との事で、是非立ち寄りたかったのだが、やむを得ず断念した。 代わりに、もう少し福島西ICに近い、隣の 「土湯温泉」 に向かい「日帰り温泉・樹泉」を利
用した。 高台に建つ温泉宿 「観山荘」 の別館・日帰り専用施設で、眺めの良い露天風呂と開 放感あふれる大浴場が自慢。 との事であったが…、残念ながら ”イマイチ” だ。 露天は狭く て、囲いも大きく、オマケに巨大なひさしが天を覆っているので開放感は殆どない。 僅かに正 面のスペースだけが開放されているものの、樹木に遮られて景観もイマイチ。 パンフにある ” 山々を見渡す露天風呂” とは、もう一方の女湯の方だったのかしら… (笑) 単純泉で循環利 用、休憩所の利用も別料金のようで、これでは 『日帰り温泉紀行』 的評価としては、”2点” と いったところだ。 まあ、山登りの疲れと身体を暖めることができたので、目的は達した(笑)。 帰路は長いので、
地元の美味しそうな蕎麦屋に立ち寄り、福島西インターへと向かった。 ![]() ( 2006.11.25記 ) ![]()
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