皆 神 山 MINAKAMIYAMA
皆神山 (659m)

皆神 神社

松代 温泉
   皆神山 (659m), 松代町・東条より
平成23年 8月28日(日), 現地日帰り
   ★ 総所要時間: 2時間 15分
   ★ ハイキング標高差: 288 m
   行程行程・ハイキング
   行程ルートマップ


  北信州の歴史の町 「松代」 は、かつて真田十勇士の里・十万石の城下町であった。 また、
武田信玄上杉謙信が対峙した戦国の大戦 「川中島の戦い」 の地であり、幕末の思想家・
久間象山
の出身地としても有名な場所だ。
その地に、周囲の山々から離れて ポッカリと浮かんだ小島のように存在している完全な独立峰
が数々の謎と神秘に包まれた 「皆神山」 (659m) である。 まるで 盛土して人工的に造られたか
のような山容であるが、地質学的には、30〜35万年前に形成された 安山岩質の 溶岩ドーム
(溶岩円頂丘)
で、中央部の窪みは、噴出した溶岩の粘性が高くて流出せずに 地下へ逆戻り
した為とされている。
その窪みを挟んで、山頂部は 東側 (659m) と 西側 (642m) の 2つの峰から成る。山頂には「
神神社 (熊野出速雄神社)
」 を主格として、いくつもの境内社があり 全国各地の様々な神が奉
られている。 モーゼキリストの名まで記された石碑もあり、まさに "皆神" の名に相応しい ス
ケールだ。 古代には八百万の神々が集ったとされ "群神山" と呼ばれていたそうだ。

           北側山麓の 大日堂 前P

  松代の正面・北側山麓に 「大日堂」 があり、その裏手から登山道が伸びている。 かつてはこ
れが皆神神社への正式な参拝路であったが、現在では反対側の南麓に車道が整備されており、
参拝者も 車で山頂に乗りつける事ができる。 ツマリ、登山の対象からは 既に外れた山ともいえ
るが…、郷里でもある この地に存在する "謎の里山" に挑むべく (笑)、今回は敢えて 車ではな
く (インチキなしで)、参道を歩いての登頂をめざした。
ちなみに山頂には、神社の他に小さな ゴルフコースが造られており、山腹には 畑 もある。

  1965年から 1971年にかけて発生した 「松代群発地震」 は、ピーク時の2年間で 有感地震 6
万回越、1日当たり 最大585回 (約2.5分に1回の割) もの 地震が連発する、世界的にも稀な長期
地震だ (有感地震は5年半に及び、無感地震は ナント! 今現在でも毎日のように発生しているの
だそうだ)。
その群発地震の震源が、当初は全て 皆神山の直下 3〜5km で発生していたのだ。 震度5相当
が 9回、震度4で 48回、3が 413回…、 全体の規模はマグニチュード (M) 6.4相当で、死者こ
そ出なかったものの 被害は甚大で、震源域も次第に拡大していった。
地下溶岩上昇の影響による 岩盤の膨張と破壊が群発地震の原因 と考えられているが、観測記
録を見ると、正に "この山そのものが揺れていた…" と思えるほどの 特異的な現象である。
この地震活動の前後で 皆神山は約1m 隆起し、付近には 「松代地震断層」 が発見された。地
割れ群からは 大量の湧水が起こり、地滑りや液状化現象を誘発している。 そして、謎の 「発光
現象
」 (1966年当時、数か月にわたり何度も記録されている) の存在だ。 この地震を契機に、皆
神山が色々な意味で世界的に注目されるようになった。

     公開されている松代象山地下壕 

  ちょうど…と言うか、この皆神山から 「象山」 (476m) まで約10kmに及ぶ 地域の地下には、第
二次世界大戦の末期に 大日本帝国軍部が本土決戦の最期の砦として、極秘裏に大本営軍司
令部や 参謀本部, 皇室, 政府等の 重要拠点をこの地に疎開させるべく、巨大な 地下要塞 (坑
道) が築かれていた (実際には75%の工程を終えた時点で終戦となった為、完成には至らなかっ
た)。
群発地震の際には、その地下壕跡を利用して 気象庁が地震観測所を設置し、詳細な観測が
行われた (現在でも 世界屈指を誇る地震観測所として、高性能観測機が活躍している)。 また、
これを機に 地震予知研究が大きく飛躍し、現在の 「地震予知連絡会」 が発足している。
また、群発地震に伴い 1967年に付近の重力調査も行われた。 これによると 皆神山の中心部に
低重力域のあることが分かり、その地下には "マグマ溜まり" を起源とする 縦800m, 横1500
m, 高さ200m の巨大な空洞が存在する、と推定されている。 山頂中央部の窪みは、その空洞
のために大きく陥没した…、との説もあるようだ。

           大日堂・裏手の登山道(参道)・入口


  松代町の中心部を抜けるとすぐに、皆神山の全貌が目の前に現れた。 低山なのにどこから
見ても、すぐにそれとわかる特徴的な山容だ。 北山麓にある 大日堂を目指し、車1台がやっと
通れる程の細い車道を進み、大日堂の入口脇にある 3台ほどの駐車スペースに車を止める。
だがここは、美味しい水が こんこんと湧き出ている 「松井の泉」 と呼ばれる 地元では有名な
湧水の取水口に隣接しており、水を汲みに来る人が絶えない所でもあるから、本来ならば登山
のように長時間の駐車は遠慮すべきなのかもしれない (苦)。 実際、我らの到着と入れ違いに
2台の車が (取水して) 去り、身支度を整えている間にも 2台の車と 1台の自転車が来て、それぞ
れ水を汲んで持ち帰っていった。 確かに冷たくて美味しい水だ。
昔、この山に登る山伏 (修験者) たちはこの泉で 禊 (みそぎ) をして、身体を清めてから入山
したという。

      
          樹林帯の中の 急登                      石 鳥 居

  廃墟のような 大日堂の左側から裏手に回ると 小さな 「大日池」 に面した所に、舗装された細
い歩道が現れた。 どうやらここが 参道入口 (登山口) らしい。 舗装道は 200mほどで、樹林帯の
中を 深くえぐられたような急坂の登山道に変わる。 低山と思って 少しナメていたが、結構な急登
が つづら折り に続いている (汗)。
参道沿いには 「丁石」 と呼ばれる小さな石碑が、山頂までの 一丁間隔 (一丁とは60間、現在の
約109m に相当する長さ) に置かれていたというが、全部で十八個のうち 現存しているのは 数個
のみだそうだ。
急登が終わったところで 「小丸山古墳」 への分岐が現れた。 この辺りは山頂中央部の 窪んだ
部分に相当するようだ。 分岐を直進し、更に緩やかに登ると 「石鳥居」 に到着する。 鳥居をくぐ
ると、間もなく樹林帯を抜けて 山頂部の畑地帯に出た。 舗装された畑の小道を緩やかに登ると、
南麓からの車道と合流し、そのまま車道を歩いて 皆神神社の 「山門」 に到着した。

          皆神神社・山門 と十八丁石(左手前)

  山門の横には小さな池が 3つあるが、この池は "底なし沼" ではないか と思われるほどに深
いらしい。見た目には ごく小さな池なので浅そうなのだが、物干し竿を繋いで調べたところ 10m
以上の深さである事が 確認されたという。
更に、この池は全国的にも珍しい 天然記念物クロサンショウウオの産卵池」 となっている。
普通なら 黒山椒魚は山奥の清流に産卵するものだが、なぜこのような 山頂の溜め池 (お世辞
にも綺麗とはいえない !!) を産卵場所に選んだのか…?! 
これまた "皆神山の謎" の一つとされている。

       
       黒山椒魚の産卵池、 底なし沼か !?             皆神神社・本殿

 山門から境内に入ると 正面に皆神神社の 「本殿」 があり、周囲には 様々な神社の石碑や
祠などが沢山並べられていた。 本殿の裏手に回り、山頂の最も高い地点に出ると 「富士浅間
神社
」の社がある。 この辺りが 事実上の頂上 という事になるが、それを示す標柱は見当たらな
い。 山頂からの眺めは秀逸で、「千曲川」 沿いに広がる松代町、川中島町に点在する 名所・
史跡などが一望できる他、晴天時では 北アルプスの眺めも一段と素晴らしいということだ。
ちなみに 三角点は、ナント!! 山頂ゴルフコース中の 5番ホール・グリーンサイドにあるそうで、
一般の人は立ち入り禁止 という事だ (不思議…というか、ヘンな山だ!! ) 笑。

  充分に休んだところで 下山に取り掛かる。今回は往路をそのまま戻ったが、車道を歩いて
下り南側山麓に出るのもなかなか面白そうだ (笑)。 南側斜面にも 「天の岩戸神社」 と呼ばれ
ている謎の古墳や 洞窟、空塚などもあり、時間があれば探検気分で山麓をハイキングしてみる
のも一興かもしれない。

                松井の泉 

  大日堂前に戻り、最後にもう一度 「松井の泉」の名水を飲んだ後、次は名湯 「松代温泉」 で
疲れを癒すことにした。 そこは皆神山から歩いて行くことも可能な距離にある 「国民宿舎・松代
荘」にある。 日帰り入浴で何度も訪れているが、何度入っても素晴らしい温泉だ。


  さて、最後に 皆神山に纏わる疑惑 というか、伝説的な話題についても 簡単に触れておこう。
80年代初頭の頃からだと思うが、この山が "世界最古にして最大のピラミッドではないか!?"
との疑惑が囁かれ始め、群発地震に続き 再びこの山が大注目されるようになったのだ。
どちらかというと SF的要素の強い仮説であったり、コジツケ的な理論であることも否めないが…、
確かに この山には不可思議で、常識では説明できない 謎の部分が多いのも事実だ。
ここでは その詳細を挙げる事はしないが、山頂の 参拝者用駐車場に 「謎の皆神山ピラミッド
物語
」 と題された説明文? というか、興味深い内容の (凡人には カナリ難解な SF物理学!? 的
な内容だが…) 看板が立てられていた。
ずっと研究し続けている 専門家(?) の方も何名かいるようで、それぞれに著作物や映像類も数多
く出版されている。  また、毎年 5月には 地元自治会により 「ピラミッド祭り」 なるものも 開催さ
れ、"皆神山・ピラミッド説" は新たな信仰の対象となっているようだ。

                                             ( 2011.9.8記)

      
          参拝者用駐車場に掲示された 「謎の皆神山ピラミッド物語」 (一部)

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