松岡慈子先生不当人事不服審査 第4回公開口頭審理を傍聴して 横浜市立大学の未来を考える『カメリア通信』第41号(2006.7.1)

 

資料

「脳卒中から助かる会」ホームページ

“市民派”中田市長のダーティーな素顔

「ひでーなあ、こんな事をやっているのか」 市長は全部知っていた!! ――“青戸病院と同じ”・“マズイ。何があっても削れ” 醜悪!!「横浜市立脳血管センター」医療ミス“市長ぐるみ”隠蔽工作の全貌(2006.2.2)

“市民派”中田宏横浜市長の“ダーティーな素顔” 「一楽重雄: 松岡滋子先生不当人事不服提訴 第1回口頭審理傍聴記」 横浜市立大学の未来を考える『カメリア通信』第36号(2006.1.10)

松岡慈子先生不当人事不服審査、第3回公開口頭審理を傍聴して(2006.5.10)

『手術は実績作り』 脳血管医療センター訴訟 「東京新聞」神奈川(2006.6.15)

 

 

横浜市立大学の未来を考える

『カメリア通信』第41

2006628(不定期刊メールマガジン)

Camellia News No. 41, by the Committee for Concerned YCU Scholars

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松岡慈子先生不当人事不服審査 

第4回公開口頭審理を傍聴して

国際総合科学部

一楽重雄

これまで3回の審理に引き続き,第4回目の口頭審理(616日)を傍聴した.今回の審理は,これまでと少し違った局面が出てきた.というのは,横浜市が,これまでの口頭審理の展開を「まずい,この流れをどうにか止められないか」と思っていることが伺えるのである.

今回は,松村ビル別館のいつもより少し狭い部屋で行われた.なぜか,名札をした市の職員が,一般の傍聴席の一番前の席3つを占めた.私は,市の職員が仕事で来ているなら傍聴席ではなく処分者側代理人の席につくのが自然だと思って「仕事で来ているのか,どうして処分者側代理人の席につかないのか」と直接尋ねてみた.

すると「仕事です.あそこは,代理人ですから」ということであった.まぁ,それ自身はそれほどのことではないので,それ以上追求はしなかった.しばらくすると,その3人のうちの2人が,人が入れ替わっている.

若い職員は上司に命令されて席を取りに来たのであった.これはルール違反と思うが,それはさておこう.上司2人は,名札によれば行政運営調整局の部長,担当部長であった.部長というのは,市の職階でいうと相当上であり,この2人は市の人事の実務上のトップとNO.2であろう.

審理が始まると冒頭に処分者代理人が「これまで請求者側が立証しようとしていることは本件と関係がない,時間の無駄である.本件で問題なのは,この配転が請求者にとって,不利益処分であるかどうかであって,関係ない質問はしないように」と主張したのであった.

青戸病院の医療ミス事件の判決があって,亀田さんの件もいずれ立件されることを恐れているのだと思う.実際,第3者が亀田さんの件も青戸病院と同じと指摘したのであった.この点については,後で記す.前回までの審理では,このような主張はほとんどなされなかった.

確かに,委員長は,必ず審理の始まる前に質問予定時間を聞くのだが,守られた試しがない.同じような質問を繰り返し繰り返し行い,時間の無駄をしているのは,むしろ,処分者側である.委員長はぜひ審理の指揮を適切にして欲しいと思う.

さらに,処分者側代理人から「前回の証人と今回の証人に圧力をかける,あるいは,脅迫の意図で電話が掛かってきており,今回から非公開にして欲しい,そして,その電話をかけた本人を傍聴席から退出させてほしい」と委員長に要請したのである.

そこで,まず15分の休憩となり,非公開の委員会で審議をした.その結果は,法的に非公開にする理由がなく,退席させる法的根拠もない,というようなことであった.

その際,不思議だったことは,まず,山本証人に脅迫じみた電話をかけた本人を退席させるようにと,まるで本人が特定されているような主張であったことである.名前をなのって電話をしたのであれば,脅迫というほどのことになるのであろうか.

これまでの公開審理で,中田市長が3回も松岡医師,栗田医師と会っていたことや,医療事故と事故隠しの実態がどんどん明らかになって,前回と今回の審理のあいだで,市長が代理人らに激怒したというのが,私の推測である.

やっと,実質的な審理が始まると,処分者側の質問趣旨は,これまでとほとんど同じで,松岡医師の怒り方がいろいろと証言された.そして,医師に対しての松岡医師の「不穏当な」発言もいろいろ証言された.大部分は,どういう状況で言ったのかが明確でないので,本当に不穏当であったのかどうかは疑問である.

そして,山本元センター長も明確に,しかも,力を込めて証言したのは,松岡先生は,神経内科のNo.3であって,看護師や医師を指導する立場であったこと,指導すること自体を注意したことはまったくなかったことであった.そして,前回と同様,看護部から上がってくる松岡先生の言動について,山本先生も現場を確認することは,たった一回を除いてまったくなかったことであった.

これまでの証言で現場の看護師に確認したのは,第2回の証人に立たれた畑先生だけであり,畑先生は当該看護師が「それほどでもなかったですよ」という回答を得たこと,松岡先生の態度が常軌を逸しているというようなことではなかったことを明確に証言したのであった.

山本証人は,松岡先生が困った先生で,前任者の本多元センター長の時代から,センター長が転出させたがっていたと証言した.あるいは,出身大学の教授に確かめて,松岡先生がセンターに来られたのは「医局人事ではなかった」と回答を得た,などと証言した.要するに,松岡先生は鼻つまみで周りから嫌われていたのだということを立証したかったようである.

もしも,本当にそうであったなら,自分がセンター長の間に松岡先生を転出させるのが,センター長としての責任ではなかったのか.山本証人は,医療ミスの件については,非常に敏感な反応をして「医療ミスかどうかは,これからのこと」,「争点になっている微妙なことなので証言は控える」などと言ったのである.

処分者側代理人から,甲27号証の確認を求められ,あっさり「石原先生の手紙ですね」と認めた.この手紙には,「本件は基本的に慈恵医大青戸の件と同じと思います」と書かれていたことも認めた.そして,石原先生にこの部分を抜いた報告にするように頼んだのではないか,という質問には「違います」と否定した.そして「これは,警察の調書で分かると思うので,コメントを差し控える」と言ったのであった.

請求者側からの「医療事故を認めて,早く患者家族に謝罪するように一番主張したのは,松岡先生ではないですか」という質問には,素直に「そうです」と答えた.

また,山本証人は,ある患者について医師の診断ミス(証人によれば,「見解の相違」)と看護師の「ミス」(証人は,ミスと言ってしまい「ミスと言ってはまずいですね,・・・」と正直な発言)が重なった際,主治医を松岡先生に交代させ,その際,患者家族に「松岡先生は,神経内科のN0.2ですから」と説明したことも証言し,医師として信頼していたことが浮き彫りになった.

最後に,請求者側から亀田夫人のMRIフィルムが証拠申請された.これは「松岡医師が,医療ミスと告発していたことが,きちんと根拠のあることであったことを立証するためのもの」ということであった.当然のように,処分者側は証拠採用に「不知」とした.

山本証人は「このMRIフィルムは見たことはない」と証言したが,これは不思議である.当然,事故調査のセンター内の小委員会,外部の調査委員会のどちらでも,このフィルムは重要証拠の筈である.当時,センター長であった山本先生が見ていないということは,常識では考えられない.

次に,福島元センター長が証言に立った.見たところ穏やかな紳士であるが,証言内容を検討すると,要するに衛生局から,松岡先生をセンターから転任させるためにセンター長になるように頼まれ,それを実行したということのようであった.実際,着任早々に松岡先生の転任について,衛生局幹部と打ち合わせているのである.

福島証人は,松岡先生を配置転換させるに当たって「患者から意見を聴いたか」という質問に対して「私は外科医だから聴いていない,残って欲しいという患者さんが大勢いたのも事実です」と平気で答えた.そもそも,患者のことを少しでも考えたことが伺える証言は,ひとつもなかった.

このあたりで,傍聴席からは「患者のことをまったく考えていない,あまりにひどい」という嗚咽が漏れてきた.まったくそうであって,患者のことを少しでも考えたら松岡先生の配転はなかったであろう.

福島証人は,松岡先生が配転されてセンターに平穏が戻ったと言った.「では,なぜ医師不足が解消しないのか」という質問に「松岡先生が帰って来ると言っていることも影響している,松岡がいなくなったら医師を派遣すると言った教授もいた」と証言した.かなり,無理のある証言ではないだろうか.一人の医師が怖くて医師を派遣できないという教授があるのだろうか.あるとすれば,そのような教授も困りものである.

また,松岡先生の配転は「医療事故とはまったく関係ない」と彼と市の立場を守る証言をしたのであったが,山本証人とは異なり,実にあっさり「医療事故」を認めているのである.

今回の二人の証人の証言に共通していたのは,まったく患者のことが出てこないことであった.長い年月のうちに,医師としての原点を忘れてしまったのであろうか.

面白かったのは,処分者側代理人が,福島証人に「市民からすると,医師不足の今,松岡医師を配転させたのは,センターにとってマイナスではなかったか,ということになるかと思うが,その点は?」と質問したことであった.彼らも,私たちのこの点についての主張が説得力のある議論と思ったのだろう.もちろん,それを否定してもらう意図で質問したのであろうが,証人は「他に選択肢がなかった」と答えるにとどまった.

確かに,今回の審理は,配転が松岡医師にとって不利益処分であったかどうかが争われているのであった.行政として配転が適当であったかではない.残念だが,おそらくは人事委員会も自らの立場を超えて,市民の立場から見て行政として適当な人事であったかどうかを判断する,ということはないだろう.

しかし,今回の審理を通じても明らかになったのは,処分者側の主張によったとしても,松岡医師は医師としての問題はなく「内科の専門医,神経内科の専門医で,いい方であり,指導内容も問題なく」,ただ,もっぱら「声を荒げる,長時間怒る,人格を攻撃する」ということが問題であり、そのことが原因でチーム医療が損なわれたということであった。

それに加えて,退院サマリー,カルテ,オーダーの問題も喧伝された.これらの点に問題がまったくなかったかどうかは別として,これが配転の理由になるとは思えない.診療については,センター長であった山本証人も大変信頼していたことが伺えるし,なにより患者の信頼が厚かったのであるから.

患者のことを考えれば,いますぐに松岡先生をセンターに戻し,少ない神経内科医の一人を確保すべきである.それをしないとすれば,市民のための行政ではなく,政治的配慮にゆがんでしまった行政と言わざるを得ない.

このところ横浜市は裁判で負けている保育園民営化,そして,裁判の直接の被告ではないようだが,ゴミ施設建設の談合の件では,「横浜市が損害賠償を請求しないのは違法」との判決が出た.横浜市大改革脳血管医療センターの問題も,裁判になれば横浜市が敗訴すると私は思っている.

このような横浜市の行政の実態に,一刻も早く市民は目覚めなければならない.

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編集発行人: 矢吹晋(元教員) 連絡先: yabuki@ca2.so-net.ne.jp

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